Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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「なんだ、あの少女は?」
キャゼルヌがフレデリカの執務室やヤンの執務室に出入りするみほを見かけて、軍の事務員に話しかける。
「なんでも最近フレデリカ中尉の下で働くことになったアルバイトさんだそうですよ。」
「そうか…。」




第2章 数奇な運命です。
第12話 事件です。 


キャゼルヌは、フレデリカの手伝いをしている栗色の髪の少女が気にかかった。

沙織と同じあんこうマークのパンツアージャケットに白いプリーツスカート、

どうかんがえても関係がないとは思えない。

「ヤン。この娘とどこで会ったんだ?」

「実は、アスターテ会戦のさなか、敵を背面展開で攻撃しようとしたときに突然艦内にあらわれたんです。こういった事態は機密なのでどのように手続きするか困っているんですよ。」

「困っていたって??全く。お前さんが用兵学では右の出るものがいないというのも認めるし宇宙で屈指のすぐれた指揮官であるのもみとめるが、それ以外はほんとうに困ったやつだな。」

キャゼルヌはしばらく考え込んでいたが

「わかった。彼女を亡命者として手続きをする。ところでな、実は俺のところにも不思議な少女が家の中に突然あらわれたんだ。」

「キャゼルヌ先輩、それは初耳ですよ。」

「しかも、あの娘と同じこういう服を着ていたんだ。」

背中にあんこうマークの描かれたパンツァ―ジャケットと白いプリーツスカートを着た沙織の写真を見せる。

「そうなんですか?」

「そうですね。これはまったく同じです。」

フレデリカが代わりに答えた。

「それから、あの娘。ヤン中将を女子高生にしたみたいで...ほっとけないんです。」

フレデリカはほほえむ。

「仕事熱心なのと部屋がきれいなのが決定的な違いですけれど...。」

「ミス・グリーンヒル...。」

ヤンは恥ずかしそうに少し顔を赤らめる。フレデリカはかわいくてたまらない妹か娘について嬉しそうに話す姉か母親のようだった。

「ものを崩したり、ころんだり、机をひっくりかえしちゃったり、よく壁にぶつかったりするんです。この間は、かばんからものが落ちているのに気が付かなかったり。」

「ほんとにだれかさんみたいだな。」

「でもすごい頭のよい娘でそこも閣下そっくりで。」

「で、キャゼルヌ先輩、その写真の娘というのは?」

ヤンは話をもどそうとする。

「ああ、この娘で、サオリ・タケベって言うんだ。当時の日本語だと姓が先だから武部沙織っていうことになるな。」

「そういえばミス・ニシズミも日本人だと言っていました。会わせてみましょうか。何かわかるかもしれない。」

「そうだな。彼女も仲間がいないか、と家内にたずねていたそうだからそれがいいだろう。」

 

「何?沙織がいない?」

「はい。今日は、テレビ放映があるコミケということで、魔法使いソフィーの扮装をして放送されれば、先日のユカリって娘に会えるかもと言ってでかけたのですが...。わたしもついていたのにごめんなさい。」

「沙織お姉ちゃまは、かっこいいけどなんかこわいお兄ちゃまにつれていかれたの。あのテレビに映ったお姉ちゃまの友達に会わせるって。」

シャルロットが不安そうに父親にはなす。さすがに彼女としてもどうしようもなかったのだ。むしろシャルロットが人質にならなかっただけよいと言えるかも知れない。

「友達に会わせる?沙織をみただけでどうしてそれがわかるんだ?」

しばらくキャゼルヌは考え込み、くやしそうに下唇をかむ。

「まずかったな。まさかとは思うがこんなに早くかぎつけてくるとは...。」

(沙織がこの家にいることを知っていたのか?しかし、どうやって...)

「あなた、一部始終を話すわ。何が起こったか....。」

キャゼルヌ夫人は楽しい休日が暗転したその日の出来事を語り始めた...

 




夫人の話を聞き終わったキャゼルヌは妻を責める気にはならなかった。
横暴な亭主の汚名を避けたのでもなく、家庭における妻の「権力」に遠慮したのでもない。自分がそこにいても同じことをしただろうと思ったからだった。
翌日、キャゼルヌは後輩である黒髪の青年に話す。
「ヤン、沙織がさらわれた。」
「どうしたんですか。先輩。」
「家内とシャルロットといっしょにコミケに行き、例の魔法使いソフィーのコスプレをしてたそうだ。家内が食事の場所をさがしていた間にスカウトを装ってつれさったそうだ。たった3分程度の出来事で、わざわざシャルロットだけとんでもない場所で迷子として引き渡してきたそうだ。」
「なにかありますね。先輩。」
「うむ。辛抱づよくスキを狙っていたとしか思えないな。」
「官舎に盗聴機があるかもしれないですね。」
ヤンがそう言ってため息をつく。
「芸のないやつらだ、といいたいところだが...同盟憲章から考えて、盗聴自体は通信の秘密を侵す人権侵害ということになるから証拠能力はないはずだがな。」
「だからこそ、誘拐したんでしょう。情報自体には価値がありますから。」
「なんのために...。」
「魔法使いソフィーのスポンサーを探る必要がありますね。」
「オウム電脳か...」
ネットで調べてみると
「フェザーン資本のユグドラシルがからんでいるという噂の堪えない会社みたいだな。」
「ユグドラシルですか....。」
ヤンはユグドラシルグループをさらにネットで検索する。
「関連会社でマスコミ関連は、リストレエコノス紙とデイリームンド紙...。」
「もろ地球教のにおいがするな。」
キャゼルヌは一瞬苦笑するが、すぐに怒りを含んだしかめ面をする。
「ヤン...。」
「じつはな沙織の友人のユカリという娘が憂国騎士団にとらえられている可能性があるんだ。」
「そうですか...なるほど。先輩つながりましたね。」
「あまりうれしくない話だな。」
「とにかく対策を考えましょう。」
「そう...だな.」
キャゼルヌは後輩の青年の言葉にうなづいた。


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