Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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第149話 激戦!ランテマリオです。

「エリコの微笑みβじゃ。」

今度は帝国軍のシステムの三重のプロテクトがやすやすと突破され、帝国軍のシステムがかき乱される。

「ほ、砲撃が不能です。」

「通信不能!」

 

「連絡用シャトルを出しますか?」

「いや、この亜空間ソナーの画面をみてみろ。」

帝国軍はこの戦闘にそなえて、亜空間ソナーを多くの艦にとりつけ、多量の亜空間ソノブイを放ったが、ソノブイは激しい戦闘のために潰されて役に立たない。

ソナーから描かれる画面は激しく乱されていたが、亜空間から放たれる魚雷や画面の反応から「亜空間のサメ」すなわちビューフォートの次元潜航艇が亜空間をうろついて帝国軍を攻撃しているのは明らかだった。

「今連絡用シャトルをつかったら一隻残らず沈められる。しばらくの辛抱だ。シャトルを使用するのは最後の手段だ。」

キルヒアイス艦隊の幕僚で、エリコの電子攻撃を徹底的に分析した士官がいた。

そのワクチンソフトは、亡くなったキルヒアイスをしのんで「バルバロッサ」と名付けられた。この戦いのために満を持して投入される。

「「バルバロッサ」発動。それまで、オルタナティヴシステムを立ち上げろ。」

帝国軍はスパルタニアンと同盟艦隊の砲撃、亜空間キャニスター、ビューフォートの次元潜航艇の攻撃で通常空間及び亜空間からの十字砲火を浴び、この間、一挙に1万5千隻を失った。対する同盟軍は3千隻で、キルレシオ5:1というラインハルトの艦隊がかって味わったことのない損害比だった。

しかし、帝国軍は、午睡から覚めた恐竜のように同盟軍に襲いかかる。

「意表返しに敵の電子の女神の泣き顔や蒼ざめた顔を送ってやれ。」

「了解。」

帝国軍のオペレーターたちは同盟軍に「電子の女神」エリコの青ざめた顔や泣き顔の画像を送りつける。

 

「帝国軍から受信です。こ、これは...。」

「ふむ、帝国軍はミズキ中佐にかなり頭にきているらしいな。」

 

そのころ第14艦隊旗艦ロフィフォルメでもその画像が受信された。

「エリちゃん。」

「?」

「これ。」

帝国軍が自分の蒼ざめた顔や泣き顔を同盟軍に送っているらしい。

エリコは苦笑する。

 

ランテマリオ星域では、帝国軍は、じわじわと攻勢を強めていた。

背後に回り込まれ、次元潜航艇とエリコの微笑みによる一方的な損害を出していたが、オルタナティヴシステムと「バルバロッサ」による回復で立て直してきている。

「分厚い中央を突破するのは包囲を招くと考え、敵の総司令官のいる第一の頭を狙いつつ、背後に回り込んで攻勢をかけ、敵が反転攻勢するまでのタイムラグで兵力差をつめようとかんがえたのじゃが...さすがじゃな。」

「さすがに名にしおうローエングラム公の艦隊ですね。これほど整然と迅速に、しかもすきなく反転してくるとは...。」

 

同盟軍は、攻勢を緩めなかったが、このまま正面で戦っていると数の差で負けてしまう。小惑星帯へむかって後退していく。

 

ワーレン艦隊が同盟軍の左側面から攻撃をかけ、デュノネイ分艦隊などは、3時間で840隻から130隻まで撃ち減らされる。

「くさびを打ち込め!」

ワーレンが命じるが、

「撃て!」

それに対してワーレン艦隊に猛撃をしかけるのは、新任の艦隊司令でありながら老練なライオネル・モートン中将である。

「くっ」

ワーレンは舌打ちを禁じ得ない。

 

「ワーレン艦隊のさらに外側から敵の後背に回り込め。」

ファーレンハイトは命じる。

「!!」

ガガガガガ...

艦内に異音が響き始める。

「どうした。」

「恒星風です。計器が、計器類が使えません。」

恒星ランテマリオの恒星風が磁気嵐をともない計器類に影響を与えている。

ファーレンハイトも舌打ちせざるを得ない。

その間に同盟軍は帝国軍への射線を維持しつつ小惑星帯へもぐりこんでいく。

「なかなか勝てぬものだ。老人はしぶとい、メルカッツもそうだったが...。」

ラインハルトは独語し、

「シュトライト少将。」

「はっ。」

「戦線が膠着している。むやみな攻勢をかけても仕方ない。この間に0.3光秒全軍を後退させ、将兵に休養と食事をとらせよ。」

 

「亜空間キャニスターがもうありません。」

「こんなときに...。仕方ないな...われわれだけでなんとかするしかないか...。」

同盟軍の予想外の善戦をささえてきたのはビューフォートの次元潜航艇艦隊である。廃棄用の旧式魚雷を部品交換で転用して亜空間キャニスターに詰めて帝国軍を苦しめてきたが、帝国軍は、亜空間爆雷と亜空間用SUMで対抗してきた。亜空間内の移動トレースをかき乱してきたが、それでも防ぎきれず20隻のうち5隻が沈められている。

 

2月9日、圧倒的ともいうべき兵力差が生きてきた。帝国軍の被害は3万隻弱にまで達し、全体で6万5千隻ほどになり、同盟軍の被害も2万隻を超えて、全体で3万隻を切ろうとしている。帝国軍の艦列にあいた穴は一瞬のうちにうまったが、同盟軍のそれは埋まらなかった。四散する艦では、兵士は気化したり、宇宙空間に放り出されて即死した。エネルギー中和磁場と装甲で敵の攻撃に耐えても艦内が高温となって焼け死ぬ兵士が続出した。また船体の破片が突き刺さったり、致命傷を負って多量の出血で死ぬ者、帝国軍でも被害を受けた艦は同じであったがまさしく地獄絵図であった。

 

同盟軍は小惑星の陰に隠れてたくみに砲撃し、光の槍に貫かれて四散する艦があるものの、見かけとしては血の代わりにエネルギーを流出させ、肉の代わりに装甲板を四散しつつも戦い続ける。破壊された艦の背後から別の艦が砲撃を帝国軍にあびせる。帝国軍の諸将が「巧妙な」と舌打ちしたのは、スパルタニアンが帝国艦のエンジンを破壊し、ふらふら艦列をみだしたり、ぶつかったりしているところを、同盟艦隊の射線に貫かれたり、次元潜航艇の魚雷に貫かれる。また、スパルタニアンは、追いかけられていくうちに、敵艦を味方の射線に引き込み、後背や下方から致命的な一撃をあびせる。

 

全体としては帝国軍の優位は動きようがなかったが、指揮系統の統一と行動の秩序を保っている。

「やはり使わざるを得ないか....。」

ラインハルトは独語したのち、通信士官を呼んだ。


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