Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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さてⅣ号でアマ無線2級ライセンスとりたてで決勝戦に臨んだオレンジ髪の少女は...


第3話 やだもー、ここアメリカ...じゃないよね。

「う、ううん...。」

オレンジ色のウエーブかかった髪の少女は上体を起こして起き上がろうとする。

パンツァージャケットと白いプリーツスカートはすすで汚れていた。

あたりを見回すと、だれかの家のようだ。

女の子が二人あらわれる。くすんだ明るい金髪だ。一人は10歳前後であろうか。

「Who are you,Miss?Where do you come?」

(英語?ここはアメリカなの?)

沙織はあたりを見回す。

「My name is Saori Takebe.I'm Japanese. Where am I?」

片言の英語を必死に話してみる。

「ここは、私たちの家。」

女の子の返事は英語であるが沙織にはなんとか意味が分かった。

奥から30代くらいであろうか。女の子を呼ぶ母親と思われる女性の声がする。

「だれかいるの?シャルロット。」

「見たことのないおねえちゃんがいる。」

簡単な英語であり沙織にもこの程度なら意味が分かる。

女の子たちの母親もくすんでつやがないが明るい金髪の美しい女性だった。

沙織は同じ質問をされ、相手に日本人であることがわかると、金髪の美しい二児の母親は自動翻訳機をもってきた。

「日本という国があったとするとあなたはかなり昔の人ということになるけど...うそついているように思えないわね。」

「あの、いったいここはどこなんですか?」

「ここは惑星ハイネセンの高級軍人の官舎よ。」

「ハイネセンって?」

「わたしたち自由惑星同盟の首都よ。そうね。あなたが本当に日本の出身だとしたら信じられないことだけど数千年前の地球からはるか未来のこの星へタイムスリップしたことになるわ。」

若い母親は信じられないという驚きを貌に浮かべながらもあくまでも冷静である。

一方、沙織はきょとんとしてしまう。状況がまるでわからない。

「ここはアメリカじゃないんですね。」

「そうよ。申し遅れたわ。わたしは、オルタンス・キャゼルヌ。」

「オルタンスさん、よろしくお願いします。」

「ところで、沙織、そういうことだったら行くところがないんでしょう。ここでしばらく暮しなさい。夫にも相談してみるわ。なにか元の時代の地球に戻れる手段がないか。」

思い出したように夫人は娘たちに向き直り

「あなたたち、沙織おねえちゃんに、よろしくお願いします、っていいなさい。」

と言うと、シャルロット・フィリスとその妹アンリエッタは

「沙織おねえちゃま、よろしくお願いします。」

とぺこりと頭を下げた。

「よろしくね。」

沙織は微笑みをうかべ、幼い姉妹たちの手を握って応える。

ヤンにキャゼルヌ家の支配者と呼ばれたキャゼルヌ夫人はあくまでも冷静だった。沙織が嘘ついているようには見えない、だいたい帝国のスパイや政府のスパイだったらどうどうと不安気な顔で倒れているはずないし、話せないことは致命傷だ。だから彼女の言っていることは本当なんだろう、なんとかしてあげたい、という気持ちになっていた。

一方、キャゼルヌ家の姉妹たちは無邪気に沙織に話しかける。

「ねえねえ。おねえちゃんって、『魔法使いソフィー』にすごく似てるね。」

「え?それって何?シャルロット?」

「今人気のテレビアニメなの。主人公の女の子がね、変身すると魔法使いソフィーになるの。主人公はホシミヤ・アイちゃんって言っておねえちゃんと同じ日本人の女の子なの。それでディンギーって小型宇宙船を操縦するのが上手で、ディンギーの大会で何回も優勝している女の子なの。でね、そのアイちゃんは、あるとき魔法の杖の光華ザートに魔法少女ソフィーとして選ばれるの。」

「それで「ミラシエーン」と言うと魔法使いソフィーに変身して、ミッドガルトという別世界で、ガヌロン帝国の魔王コシチェイやその部下でずるがしこい悪者の将軍グラナストと戦うの。」

「へええ。おもしろそう。」

「あ、『魔法使いソフィー』が放映し(やっ)てる。」

シャルロットがソファについているリモコンを押すとテレビが映った。

---

「ふつふっふ。ジークフリード、ソフィーそこまでだ。」

赤毛の弓使いの青年と錫杖を持って白と薄緑色のドレスをまとった沙織そっくりの少女が気持ちの悪い薄ら笑いを浮かべる騎士と戦っているようだった。

「えー、やだもー、この人、肩とおなかが丸出しじゃない///。」

ヒロインが自分そっくりなので沙織は赤面してしまう。

敵とおもわれる黒ずくめの騎士は鎖つきの棘付き鉄球、メテオハンマーを振り回して二人を襲う。

「なにを、グラナスト。ムーテイラフー!」

ソフィーが錫杖ザートをふると光の弾丸がグラナストと呼ばれた敵の騎士を襲う。

「はっはっは。そんなものはこの俺には効かん。」

「ソフィー!」

赤い髪の青年が話しかける。

「ジーク、ケガしてるのに...」

「俺に力をかしてくれ。」

ジークフリードが弓をかまえ、ソフィーがザートを弓に近づけると光の渦が矢にまとわりついていく。

グラナストが二人に襲いかかろうとするとソフィーは錫丈をふるって

「ファルヴァルダ!」と叫び、光の壁ができ、グラナストのメテオハンマーを跳ね返す。

「うぐぐ。」

光の壁がメテオハンマーを跳ね返している間に、再びジークフリードの矢にソフィーはザートをあてる。そして今にも矢を放とうとしたとき

---

 

「三人とも夕食のしたくができたわ。」とオルタンスの呼び声が聞こえる。

「ママー、いまいいところなのに。」

「録画してるんでしょ。あとにしなさい。今日はチーズフォンデュよ。沙織、自分の家と思ってくれていいからしっかり食べなさい。それからあなたも今日から家族なんだから家事を手伝ってもらうわ。事情が事情だから家賃をいただくわけにもいかないし。」

「はい。わたし、家事は得意なんです。いつもすてきな男子があらわれたときにいいお嫁さんになれるように備えているので。」

「それはたのもしいわ。ときどきつくってもらおうかしら。」

「はい。」

沙織は満面の笑みを浮かべて返事をする。おちついてみて思い出す。

(みぽりん、華、麻子、ゆかりんはどこへいっているんだろう...)

「あの...。」

「なあに、沙織。」

「わたし以外に近くに4人女の子がいませんでしたか?薄い栗毛の娘や黒い長髪の娘やくせっ毛の娘が...」

「いえ...わたしの家にいたのはあなただけだわ。」

キャゼルヌ夫人はかすかに顔をくもらせる。

「そうですか...。」

「沙織の仲間がいるのね。」

「はい。」

「この星のどこかに保護されていればいいわね...。」

「はい。」

そのときキャゼルヌ家の当主が帰ってきた。

「ただいま。」

「おかえりなさい。」

「おかえりなさい、パパ。」

「おや、この娘は?」

オルタンスが沙織が突然現れたこと、はるか過去からタイムスリップしたらしいことを伝える。キャゼルヌは、頭を回転させ、亡命者の手続きを応用して沙織が同盟市民として暮らせる手続きを考える。

「沙織、明日には君が同盟市民として暮らせるよう手続きをとるようにするよ。家内が言うようにここは君の家と思ってくれていい。それから君のなかまたちのこともさがそう。」

「ありがとうございます。キャゼルヌさん。」

「いや、同盟はあたたかく亡命者を受け入れることが国是だからな。君は過去からやってきた珍客というのが実情であっても、ある意味亡命者と同じだから気にしなくていい。それよりも君の仲間たちを探して元の世界に戻れるようにしないとな。」

「はい。」

沙織はあかるく答えた。

 




果たして残りの三人は...

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