Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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ヤンがイゼルローンへの帰路についたときそれは起こった...






第43話 同盟も帝国も異変発生です。

4月1日、ヨブ・トリューニヒトが、統合作戦本部長暗殺未遂を受けて責任ととると称し、突然最高評議会を解散すると宣言した。4月12日に選挙が行われ、新任の評議員は、当選と同時に就任するという。選挙が終わるまでトリューニヒトは、評議会議長代行ということになったが全て秘書を通すと放送された。

4月3日、惑星ネプティスで軍の一部が蜂起、要所を占拠したというニュースがはいった。

カルデア66号では、艦長のラン・ホ―少佐が動揺していたので、ヤンは、

「この艦を攻撃してくる危険はない。わたしが保証する。貴官は当初の予定通り我々をイゼルローンまで運んでほしい。」

といって安心させると、ラン・ホー少佐は元気になり、

「全く心配ない。落ち着いて各自の任務に勤めよ。」

と艦内放送を行った。

 

イゼルローンでは...

「西住殿、どうします?」

との優花里の問いに、みほは

「ヤン提督があと数日で到着します。今後別の場所でも反乱がおこる可能性もあるので、あわてても仕方ないかな。」と答えて様子見を決め込んだ。

4月5日、惑星カッファーで軍の一部が蜂起、要所を占拠の報が流れる。遠くの星系の出来事ゆえラン・ホー少佐が動揺することはなく、イゼルローンでもみほはやはり動かないことにした。

4月8日、ヤンとユリアンの一行は、ついにイゼルローンに到着した。

「おかえりなさい。」

みほたちとシェーンコップ、キャゼルヌなど留守番組がヤン一行を出迎える。

「ただいま。」

「西住中将。」

「はい。」

みほは何か尋ねるような目つきになる。

「まもなく長官から「ラブレター」が届くはずだよ。」

「よかったです。」

みほはかすかに頬を赤らめる。

「え、みぽりん。ビュコック司令長官からもラブレターが来るの?」

「武部殿。」優花里が苦笑する。華も苦笑して「沙織さん。」と沙織に話しかける。

「え?」

「叛乱鎮定の命令書ですよ。」

「なあんだ。え?やだもーわたしってば...」

沙織もかすかに赤くなって頬を両手でおさえる。

「そういえば今日はキャゼルヌさん家で夕食をたべようって。わたしも」

「コック要員で呼ばれているのですね。」

「そうなの。久しぶりにオルタンスさんとわたしの力作をぜひ食べてもらうんだから。」

「気楽に夕食がたべれたらいいんだけどな。」

コーネフ少佐がつぶやき、沙織が

「コーネフさん、気楽にって??」と問いかえす。

「このところ、夕食時にどこかの惑星で反乱がおこっただの凶報が多いのさ。」

「そうなんだ...。」

「武部殿、ニュース見ていないんですか。」

「え、えへへ...だって、大事なことはみぽりんとゆかりんが伝えてくれるじゃん。」

「そういえば、確かにそうですね。」

優花里は、あごに親指を当てて少し上を向くそぶりをしてみせる。

夕食を食べ終わり、

「さあ、デザートですよ。」

とオルタンスが呼びかけてデザートが運ばれ、皆が口にし始めた時だった。

テレビ画面に緊張した面持ちのアナウンサーが映し出される。

「緊急ニュースです。惑星パルメレンドで軍の一部が蜂起しました。蜂起した部隊は、二手に分かれて一方が管制センターを一気に占拠。もう一方が宇宙港へ向かっているもようです。」

戦車や装甲車が走っている様子が画面に映し出される。ヤンとキャゼルヌは顔を見合せたが、デザートをゆっくり食べ、前者は紅茶、後者はコーヒーを飲み、指令室へ向かっていく。

ユリアンは、アッテンボローに会う。

「聞いたか、ユリアン。どうやらこうやってみると平和なのはイゼルローンだけみたいだな。」

「ええ...。」

「ここには、ヤン提督だけじゃなく、ミス・ニシズミって一見虫も殺さないような女の子なのに、一個艦隊を指揮してみせる人材がいるんだろう。どうせならイゼルローンが嵐の中心になればいいのに。」

「いえ、それは無理ですよ。アッテンボロー提督。」

「なぜだ?スコット提督の補給艦隊の救援はどうなんだ?みごとだったじゃないか。同盟にはローエングラム侯もキルヒアイス提督もいないんだぞ。」

「それよりもミス・ニシズミは優秀な方だからこそ、艦隊指揮をまかせて昼寝するって言い出しかねないですよね。補給艦隊の救援は、ヤン提督が予想していてキャゼルヌ少将が心配していたのに、ミス・ニシズミがやりますって手をあげて、ヤン提督と練った作戦です。西住中将は、でしゃばらないのでヤン提督に指示されたことなら無理目なことでもあんなふうに奇策をつかってでもやりとげますが、逆に言えばそれ以上のことはしません。とことんまで追い込まれないと嵐の中心にはならないかと。」

「そうか、つまらないな。」

 

そんなことを話しているとヤンとみほがやってきた。

「おお、ユリアン。」

「ヤン提督、西住中将。」

「むこうでもはじまったようだぞ。」

報道によると、ローエングラム侯についた貴族は、マリーンドルフ伯爵家、ウエストパーレ男爵家、クラインゲルト子爵家、シャフハウゼン子爵家とそれぞれの親戚縁者の一部、進歩派貴族のリヒター家とブラッケ家などごくわずかで、いずれも領民への賦課が少ない善政を行っている領主という共通点があるという。それ以外の門閥貴族はブラウンシュバイク公の別荘があるリップシュタットの森に集結し、リヒテンラーデ・ローエングラム枢軸に反対するリップシュタット盟約を結んだ。盟主はブラウンシュバイク公オットー、副盟主は、リッテンハイム侯ウイルへルム3世をはじめとする3740名。正規軍と私兵を合わせた兵力2560万。ゴールデンバウム朝を守護し奉る神聖な使命はわれわれ伝統的貴族階級にあり、専横する佞臣どもは討伐されるべし、正義と勝利は我にあり、大神オーディンにご照覧とご加護あれかしと盟約にはうたいあげているという。

 

歴史上リップシュタット貴族連合と称される-実態は権力闘争のかけひきをしつつ、ラインハルトとリヒテンラーデ公への反感からあつまった烏合の衆であったが-組織が生まれたのだ。

 

しかし、ラインハルト側の反応はすみやかだった。シュワルツエンの館を夜襲しようとしたブラウンシュバイク公の部下フェルナー大佐の部隊を返り討ちにした。貴族たちはすみやかにオーデインから自領へ飛び立った者、宇宙港へ駆け込んだ者は、ミッターマイヤーの警備兵に、専用船で飛び立った者はキルヒアイスの監視網にとらえられた。

同盟では軍務尚書エーレンベルク元帥と統帥本部総長シュタインホフ元帥が拘禁されたという報道のみであったが、8000名の武装兵を率いて軍務省にあらわれ、数秒間のにらみ合いの末、軍務尚書を拘禁したのは、長い銀髪の目つきの鋭い娘だった。

「なんだ。お前は?」

銀髪の目つきの鋭い娘は、不敵な笑みを浮かべ

「閣下に時代が変わったことをお伝えに参りました。」

と前かがみになって慇懃に片腕をふる。一見シェーンコップがみほにしたのと同じ所作であったがその内容は正反対で、ほぼ恫喝だった。

エーレンベルク元帥ががっくりと肩を落とした。その娘は、数少ないまともな上級貴族である元帥の身柄を拘禁して、帝国全軍の指揮命令系統を押さえた。

統帥本部を押さえて、統帥本部総長シュタインホフ元帥を拘禁したのは、やはり8000名の武装兵を率いた耳にかかる程度の濃い栗色の髪の、物静かだが覇気がにじみ出るような目つきの鋭い娘であった。




同盟と帝国でほぼ同時に異変が起こった。

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