Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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第44話 帝国独逸面です。

天の川銀河オリオン腕とあるG型恒星のハビタブルゾーンにある第3惑星に東富士演習場という戦車道の競技場があり、高校選手権大会の決勝戦が行われていた。

ケーニヒスティーガーと称する重戦車の車内では、敵フラッグ車であるⅣ号戦車を視認していた。

「前方二時に敵フラッグ車を確認!」

「よし、照準合わせ」

 

「照準よし!敵フラッグ車に合わせました。」

ケーニヒスティーガーの車長である銀髪の少女はほくそえむ。

「一発で終わらせてあげる。」

 

さて一方、大洗女子の三式中戦車がようやく前進した。

そのときケーニヒスティーガーの砲弾は大洗フラッグ車であるⅣ号へ向かって放たれ、Ⅳ号の装甲に命中したかに思われた時、ケーニヒスティーガーの乗員たちは戦車の車内から消えた。

 

「うう…ん。ここは…どこなの….。」

ケーニヒスティーガーの車長である銀髪の少女は薄暗い部屋でうつぶせになっていたが起き上がる。そこはスタジオの裏手のような場所だった。

彼女は驚くべきものをみた。

 

ステージのような場所で既視感のあるオレンジ髪の少女が薄緑と白のドレスのような服をまとい杖を振るっていたのだ。その背景には中世のような風景が映し出されている。

(あ、あれは….大洗Ⅳ号の通信手…)

「どうだ…気が付いたか。」

気が付くと自動翻訳機が首につけられているようだった。

「ここはどこであなたはだれなの?」

「あの少女に見覚えがあるだろう。」

「あるわ。わたしたち全国高校戦車道大会の決勝戦を戦っていて相手校のフラッグ車の通信手よ。あの女は。」

「そこまでわかっていたら話は早いな。実はお前たちは負けることになっているんだ。あの試合で。」

「なんですって!!」

「それを勝たせてやろうとしたら時空が歪んでねえ。」

男は薄ら笑いを浮かべる。

「戻してよ。」

「そうはいかない。この世界の戦いに勝ってもらわないとね。」

「そんなこと知らないわ。とにかく元に戻して。」

「わからないか?お前が目の敵にしているあの女の仲間、栗色の子犬のような女がこの世界にいる。まつろわぬ叛乱軍の指揮をとっているのだ。それを倒さない限り戻れない。」

銀髪の少女は降参した。

「じゃあ、どうすればいいの?」

「これからわれわれの訓練を受けてもらう。フェザーン独特の船隊指揮だ。戦車隊を指揮してきたお前なら覚えられるだろう。」

「....わかったわ。」

不承不承訓練を受けているうちに戦車で面倒だと思っていた部分を気にしないでいいことに気づく。

「そうね...重さがないから履帯の負担とか、ビーム砲だから砲弾の数とか考えないぶん楽だわ。」

「そうだろう。」

同意を求める男に微笑で返す。

そしてフェザーン国境付近の帝国領内の海賊討伐に向かう。

はじめはとまどいを見せた少女も鍛えられ上げて海賊討伐に戦果をあげられるようになっていった。

 

銀髪の少女は、海賊討伐のかたわら帝国軍士官学校の試験を受けさせられた。ナーヴギアに似た睡眠学習機-昼間は、丹田呼吸をリズミカルに行って記憶し、寝ているときは脳波をミッドα波とθ波にして記憶させる優れた装置-で楽々突破した。

 

東富士演習場のHS地点、Ⅳ号戦車とティーガ—Ⅰの残骸の近くに栗色の髪の毛と濃い栗色の髪が散乱していた。空中にあいた穴から現れた壮麗な鎌をかついだ女は濃い色の髪だけを数本を拾うと穴に消えていった。

女は銀色の廊下をあるき、立ち止まると廊下の壁がスライド式に開き、女は入っていった。

そしてしばらくすると、スライド式の戸が開き、みほの姉そっくりの黒褐色の髪を持つ凛々しい少女が現れた。

ただし、彼女はみほに関する記憶は欠如しおり、ただ戦車道と艦隊指揮の知識のみが記憶されていた。

 

宇宙暦793年、帝国暦484年1月、同盟領を進んでいたへルクスマイヤー伯爵家の宇宙船は突如爆煙に包まれ、乗っていた青年軍人ベンドリング少佐と10代の金髪の少女マルガレーテ・フォン・へルクスマイヤーの姿が消えていた。

マルガレーテのもっていたぬいぐるみがあちらこちらが傷んで転がっていた。片目の周囲が黒ずんでいた。

同時に大洗女子学園で高校生活を送ろうかと考えていたものの、結局高校生活を送らないことにした少女は、学園艦からの帰途の船内でおこった爆発に巻き込まれた。そしてマルガレーテよりやや年上と思われる物静かで褐色がかった銀髪の少女は、自分が宇宙船のなかにいることに気が付いた。

少女は起き上がって、近くにあったぬいぐるみをひろいあげると、どこからともなく包帯が目の前に投げ出される。

少女は包帯をひろいあげぬいぐるみの傷んだ部分にまきつけたり、腕をつったりして満足そうにぬいぐるみをながめていたが、男の存在に気づいて向きなおって

「ここは、どこ??あなたはだれ?。」

と問うた。男は笑みを浮かべながら

「気にするな。1600年後の宇宙船の中だ。」

「どうして...。」

「ふふ、「彼女」とまた戦ってみたいのだろう?」

「!!」

おどけなさの残る少女にみほの写真をみせる。

少女はうなずいた。

「元の世界に戻して。」

「こちらの言う通りにするんだ。そうしないと元の世界にもどれないぞ。ただし、この宇宙船が撃沈されても死なないから安心しろ。ああ、その「みほ」という少女を倒すのも元に戻れる条件のひとつでもある。」

「わかった。やる。」

少女はいつしか帝国領内の海賊討伐の特務部隊に組み入れられ、訓練を受けるとめきめきと頭角をあらわした。

三人の少女は、特別教室に集められた。銀髪の少女は、彼女が所属していた母校で目の敵にしていた栗色の髪の子犬のような同級生の姉にしか見えない濃い栗色の髪の少女と小柄であどけなさの残る少女と同じクラスにされた。銀色の髪の少女は幸せだった。なぜなら忌むべき同級生の姉でありながら彼女にとっては尊敬してやまない濃い栗色の髪の少女は、その妹に関する記憶も知識も全くなかったから自分だけを見てもらえる充実感と幸福感にひたれたからだった。

また、元の世界に戻りたい一心で、男性の士官学校卒業生と同時に試験を受けた。優秀な成績で卒業し、その優秀さゆえに嫉妬を受けたため、身分や女性に対する優越性にこだわらず、実力主義のラインハルト揮下に配属されたのは当然のなりゆきだった。むしろ貴族の士官たちは、けむたい女を厄介払いできたと喜んでいたくらいだった。

銀髪の少女は、海賊討伐にも功を上げ、その旗艦はケーニヒスティーガーと命名された。いつもともに戦線にあった濃い栗色の髪の少女は、旗艦をヴィットマン・ティーガーと命名され艦首の両舷には白く縁どられた赤字で212番が表示された。

二人はその功績を認められ、ラインハルトのクーデターに軍務省の要人拘束を命じられたのだった。

 

一方、小柄であどけなさの残る褐色がかった銀髪の少女は、士官学校の過程を2年で修了し、再び海賊討伐の特務部隊に戻った。

へルクスマイヤー伯爵家の宇宙船の名を聞くとキルヒアイスがその少女をひきとると言い出し、小柄であどけなさの残る少女は、キルヒアイスの分艦隊の指揮をまかされた。そして彼女は、まさに今、惑星オーディンの衛星軌道上に、ロイエンタール艦隊の隣りに艦列を並べ、片眼の周りがパンダのように黒く、包帯だらけのクマのぬいぐるみをかかえて艦橋の中央に立っていた。今は旗艦センチュリオンの艦橋が彼女が指揮を執るために立つべきキューポラだった。

 




三人の外伝を書くつもりがないので一話でまとめさせていただきました。ご容赦くださいm(_ _)m

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