Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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議長。

何かね。ベイ君。

あの女がハイネセンスタジアムで集会を開くそうです。

そうか。ベイ君よかったな。手間が省けたではないか。

全くです。やつらは気が短いから頭に血がのぼって早速弾圧をするでしょう。
一石二鳥というものです。

ふむ。しかし、フォーク君だったか、士官学校出の成り上がり者の彼は、用兵は下手でアムリッツアで2000万人殺したようだが、なかなか陰謀については狡猾なようだから気を付けたまえ。

はつ。尻尾はつかませません。
閣下の手の者の地球教徒が動いていますから。


第58話 ハイネセンスタジアムの悲劇です(前編) 

「あなた方軍人は経済のことがわかっていない。ハイネセンは現在ほかの星域と隔離された状態にあります。ほかの星から物資が流れてこないのだから、いきおい自給するしかない。そうすると物資が不足し物価の高騰が起こるのです。流通機構の統制をやめて報道管制を緩めない限り、物資不足と物価の高騰は続きます。」

「そんなことを聞いているのではない。統制によって物価を高騰させない方法を聞いているのだ。」

経済の統制を一任されているエベンス大佐は問い返す。

「経済は生き物です。統制したところで予定通りには動きません。軍隊には上官が部下を殴ってでも命令に従わせようとしますが、そういう感覚で経済を論じられては...。」

「なにを。われわれは銀河帝国の専制主義者どもを倒して、人類社会に自由と正義を回復する。そのつぎはお前たち拝金主義者だ。金で人の心や社会を支配できるなどと思い上がるなよ。」

「それでは、物価が高騰しているんだから高額紙幣を発行しては?」

フェザーン商人はあきれたように言う。

(功績ある軍人ではなく、インフレを昂進させた無能な財政家として名を残すがいい。いい気味だ。私はもう知らん。)

救国会議政府は、1000ディナールで発行していた戦時債券を100万ディナールと交換できることにした。紙切れになるかもしれないという噂を押さえるためだった。それから預金封鎖を行い、すべて預金相当額を戦時債券としてのみ金融機関の窓口で引き下ろせることにしたため、一時は混乱した。また物資の流通ルートを押さえて、銃で脅し、すべて安い価格で買いたたいた。そしてハイネセンは配給制になった。また悪徳商人の摘発を行い、その財産を召上げた。

「どうだ、銃で脅したら物資を差し出したではないか。お前たちのいうとおりにする必要はないということだ。もう用はないから出て行け。」

フェザーン商人は何も言わずに出ていこうとしたが、その後頭部をエベンス大佐は撃った。

バキュー――――ンンン

銃声の後、商人はぐえっと言って口からも血をふいて倒れた。

「秘密を知っているやつを生きて帰すわけにはいかん。われわれの窮状が知れる。」

そして部下に汚いものを指差すように商人の遺体をの運搬を命じた。

「こいつを片付けろ。」

妙なうわさが流れていた。救国会議のメンバーの中にトリューニヒトへの内通者がいるという噂である。

プリンケプスは、エベンス大佐とベイ大佐に命じてうわさの発生源を押さえるよう指示した。

しかし、それは明かされることはなかった。後に生き残った者の処遇が、泥棒に鍵の見張りをさせていたことを明らかするのである。

さて、6月22日。国家行事にも使用されるハイネセン記念スタジアムにぞくぞくと人があつまってきていた。人の流れは朝から始まって、スタジアムだけでは収まらず最高評議会ビルのふもとまであふれ30万人を超えていた。

「なにやら人があつまってきています。」

「何が起こっているんだ?」

「「暴力による支配に反対し、平和と自由を回復させるための市民集会」を称しています。」

これまで同じような集会が数千人単位で行われてきたのをひそかに取り締まって、一切報道させないできた。集会が開かれているという通報があると、警察が来て、見せしめに数名ほど逮捕し、数日後に開放し、報道はさせない。しかし、今回ばかりは隠し通せそうもない感じだった。

「首謀者をさぐらせろ。」

「あの女か」

集会を開いている女性が特定された。それはかってテルヌーゼン補欠選挙で反戦市民連合候補ソーンダイク事務所のトップであり、先日の選挙で反戦派の急先鋒、公衆の面前でトリューニヒトを弾劾したことでも知られるジェシカ・エドワーズその人だった。

救国会議の幹部は最高執政官と称する男に目通りを願って通される。

「最高執政官閣下。」

「なんだ?」

「いま、「暴力による支配に反対し、平和と自由を回復させるための市民集会」で群衆どもが集まっています。」

最高執政官と呼ばれた血色のない細面の男は目をつりあげ、

「許せん。最高執政官のわたしの命令が聞けないというのか。そいつらを逮捕しろ。何をしてもかまわない。秩序をとり...すのだ。」

アムリッツアのヒステリーの後遺症かいくつかの言葉が不明瞭になるようだった。

戒厳令にもかかわらず彼女が拘禁されなかったのは、救国会議側が政府と軍部の最高幹部をとらえておくのが精いっぱいで野党まで手を回す余裕がなかったからだった。

集会を解散させエドワーズ議員を拘禁すべしとの命令が下され、クリスチアン大佐が三千の武装兵を率いてハイネセン記念スタジアムに向かった。

武装兵率いてスタジアムに乗り込み、入り口を固め銃で群衆を威圧するとクリスチアン大佐はジェシカを探し出して拘禁するように部下に命じた。

ジェシカは自分から、大佐の前に現れ

「わたしはここにいます。なぜ武装兵が平和的な市民の集会を邪魔をするんでしょうか。」

「秩序を回復するのにきまっている。大人しく我々に従え。」

「秩序ですって?暴力によって秩序を乱したのはあなた方救国会議のほうではありませんか。いったい何をもって秩序をだとおっしゃるのですか。」

「秩序の何たるかは、我々が決める。」

「衆愚政治のもとでゆるんだ同盟の社会をわれわれが矯正し、正常化させるのだ。空疎な平和論を唱える奴らが、命がけでモノを言っているかたしかめてやる。だれでもいいから10人くらいここへならべろ。」

「はつ。」

命令をうけた兵士たちが10人ほどの参加者をひきづってきた。参加した市民達から抗議のどよめきが上がる。

クリスチアン大佐は一瞬せせら笑って腰に装備されたブラスターをこれ見よがしに抜く。

「高邁なる理想を抱くお前たちにたずねたいことがある。」

「平和的な言論は暴力にまさるというのがお前たちの持論らしいが間違いないかね。」

「そうだ。」

一人の青年が震える声で応じた。

大佐は兵士にめくばせし、銃床で青年を突き飛ばし、鈍い音がした。

倒れたところをガチャリと手錠をかけた。

「つれていけ。」

若い男は連行されていった。


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