Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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第97話 悲しい現実です。 

「軍隊に入れていたのは、13%で、前線に送っていたのは0.5%!」

「えーと、「この数字は何を意味するのか?彼ら支配者層のいうようにこの長い戦争が正義の実現のために不可欠なものだとしたら、なぜ彼らは自分の息子たちをそれに参加させず、特権を利用して徴兵逃れをやるのか。それは自分たちの命を、この戦争に差し出す価値がないとみなしていることの証左ではないのか?同じ質問状を政府に提出したがいまだ納得のいく回答がない。」だって。」

情報通信委員長ボネの「回答の必要を認めず。違法な街頭行動を厳に慎まれたい。」との回答が載せられ、その顔写真のあるべき部分には、「本人の肖像権を侵害しているとの申し立てにより、削除されました。」と記載され、許可印の押されたエドワーズ委員会が街頭行動を起こす旨の申請書の写真がのせられていた。

またそのブログの記事には、誹謗中傷の書き込みが多くなされ、一週間前のものは削除されていた。誹謗中傷とともに削除されたことについての誹謗中傷が同じ人物たちによってふたたび書き込まれ、見るに堪えない状況であった。

このことはタブロイド判のプレセンテが載せた以外、同盟のジャーナリズムはほとんどとりあげなかった。電子新聞、立体TVも政治権力と関係のない芸能人のスキャンダル、犯罪、人情話を知らせるだけで、エドワーズ委員会の活動は無視しているのだった。

匿名の動画で、エドワーズ委員会のデモの様子を中継しているものがあった。警官隊がでてきてそれを規制し、警官隊のなかには委員会のメンバーを突き飛ばしているものもあった。仕方なく裏通りにまわると、プロテクターを着けた男たちがあらわれた。

フレデリカと沙織は絶句し、次の瞬間には叫んでいた。

「憂国騎士団!」

憂国騎士団は、特殊セラミック製の棍棒で殴りつけ、銃声のならない銃で撃ち殺して逃げ去っていった。警官は遠巻きにながめていて、憂国騎士団が去るとけがをしているエドワーズ委員会の会員たちに手錠をかけ、次々に逮捕していった。

ヤンとみほの捜索をフレデリカと沙織は続けたが、ビュコックと、ことの次第を知ったレベロが協力してくれたが、二人の行動は見えない壁と鎖によって阻まれた。

ある日、ビュコック邸にレベロがたずねてきた。

「おお、レベロ委員。」

「ああ、長官おじゃまします。お二人にもお話があって。」

「さあさあ、どうぞお上がりください。」

夫人がスリッパを用意する。それは、二人というより、正確には片方にのみであったが、吉報というには難しいものの有益な情報であった。

「ミス・グリーンヒル、ミス・タケベ」

「レベロさん」「レベロ委員長」

「査問会の行われている場所がわかったぞ。」

「「どこなんですか?」」

「人的資源委員長のホワン・ルイから聞けた話だ。さすがにトリューニヒト派だけではまずいということで査問官に加えられているのだが、後方勤務本部のC庁舎だ。」

「ミス・タケベには申し訳ないが、査問を受けているのはヤン提督だけらしい。」

「じゃあ、みぽ...西住中将は...どうなっているんでしょうか。」

「残念ながら、ハイネセン宇宙港に到着後、トリューニヒト邸に連れ込まれたらしいが、それ以降行方不明なのだ。」

「ええっ...。」

「ふむ。レベロ委員。それでは、わしがかけあってみるとしようか。ふたりともわたしの大切な部下だ。わしには上司として部下の状態について知る権利がある。」

「そうですな。長官ならあるいは...。」

レベロは不安そうであったが一縷の望みを期待したいという気持ちをにじませながら答えた。

しかし、その結果は拒絶だった。

「国家機密によって見せられないだと。わしは、司令長官だ、上官だから部下について知る必要がある、といっても国防委員長からの命令で機密にするよう言われたいうし、第何条第何項の規定なのかと聞いたら、とにかく国家機密だからの一点張りだ。それはそうだろう。査問会なんてものは同盟憲章にも同盟軍基本法、同法施行令、施行規則にもないんじゃからな。そういやみをいって引き返さざる得なかった。すまん二人とも。」

「いいえ。ありがとうございます。」

「今度は、関係者に面会を申し込むか...あの調子だとうまくいくとは思えないが...。」

もちろんというべきか、その努力は拒否をもって報われた。しかも尾行つきというおまけまでつく。何もできないことを承知している。 あからさまな圧力なのはあきらかだった。

またようやく数人程度の証人をみつけて話を聞き出せたものの、二度目の面会ではなにかにおびえながら証言を拒む。

フレデリカは、なんとかベイをつかまえたが、今度も、たくみに言葉を左右して言い逃れようとする。

「大尉。いい加減にしたまえ。仮にヤン提督がいなくなった場合、君の軍での立場が悪くなるぞ。」

「そうなのですか。帝国軍の攻勢にどう対処するつもりですか。あまりの態度を取られるとマスコミ各社にリークも辞しません。」

「ふん。これは傑作だな。マスコミ各社はわれわれの味方さ。どこも取り上げてはくれんよ。無視か冷笑されるだけだ。」

「どこも取り上げてはくれない、無視か冷笑されるだけ?」

フレデリカがベイの目をにらみつけながら言うと、ベイは、はっとして後悔と狼狽の色をひらめかせて、それをかくそうと平静を装う。言ってはいけないことを口走ったことによる態度に間違いなかった。

政治権力とジャーナリズムが結託するということは、権力者に不都合な情報は流されなくなり、国民にとって真に重要な情報が知らされないことになる。はるか20世紀の昔、ファシズム、軍国主義国家、社会主義国家でそのような情報の統制が行われ、20世紀末から21世紀初頭には、軍産複合体、国際金融資本などの意図にしたがって各国政府は、自由貿易に関する国際条約を結んだが、その条約には投資家や多国籍企業が裁判で勝つよう条項をつけられていた。ある国にとっては、国民が貧富の差にかかわらず医療を受けられる保険制度、地域の個性ある作物や食品を生み出してきた種子保護に関する制度など優れた制度があったが、それを不当な障壁とするものだった。また国際金融機関の貸し付けによって、多国籍企業を含めた民間企業が水道事業に参入可能になる法令を通過させた。各国の国会では国際間の信頼関係の美名のもとに詳しく知らされず、その間あいかわらずマスコミは芸能人の恋愛や不倫問題を連日流しているのだった。

 

翌日、フレデリカは、マシュンゴ准尉が読んでいたタブレットをあわてて隠す場面にでくわした。

「准尉、どうかしたの?」

「はい...実は...。」

マシュンゴは、ためらいながらタブレットを渡した。


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