家族的アパート『セラフ』へようこそ。   作:コンソメパンチップス

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ども。コンソメです。
タグ文字数限界越えてミスって今もっかい書いてるなんて言えない。
お待たせしました。終わりのセラフほのぼのです。
短いので電車に乗っているときにでもどうぞ。


第零週間 家族を失った者達へ
○一人目-アパート『セラフ』-


 

これは、とあるお話。

家族が失われてしまった者たちの、絆の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優兄!優兄!」

一人の男の子が、兄と思わしき男の子に寄り添ってきた。

「なんだよ…」

優兄、と呼ばれた男の子は、構うのも面倒らしく、そっけなく本を読んでいる。

「優兄、遊んでよ!」

ぐいぐい、と兄の服の袖を引っ張る弟。

「私も遊んでー!」

もう一人、妹らしき人物が近寄ってくる。

「何なんだよ…本が読めねえだろ」

いかにも鬱陶しそうなそぶりを見せるが、その顔は満更でもなかった。

「まったく優ちゃんったら、ホントはうれしいのに、素直じゃないなー?」

少年と同い年くらいのもう一人の少年が、他の妹や弟と遊びながら話しかける。

「はぁ!?んなわけねえだろミカ!」

優、と周りから呼ばれている少年は、少し顔を赤くしながら怒鳴った。

「うっそつけー。耳赤いぞー」

背後から一人の少女が、優の頬を強くつねった。

「い…いたたた!やめろよ茜!」

たくさんの兄弟たちに囲まれながら、優は必死に茜と呼ばれた少女の手を振り解く。

「あーもー…わかったよ。遊べばいいんだろ」

優がそう言ったと同時に、周りの子供たちが一斉に喜び出す。

 

彼らは家族。

『義理』という一文字で繋がれ、百夜という名字で紡いだ、

一つの幸せな家族。

 

 

不幸を歩んできた彼らだからこそ、感じられる幸せ。

 

 

幸せに生きているからこそ、求めたくなる幸福。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸福になるほど、近くなっていく…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶望。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は一瞬で過ぎ、東京のある一角。

電車の音が少し遠く、人通りもそんなに多くない、東京の中の過疎地域。

そんな殺風景な街の通りに、一人の少年が歩いていた。

「ここが…例のアパートか?」

ピタッと立ち止まり、一つの建物に視線を向ける。

アパート『セラフ』。

少年が目的地としていた、大小偏りのないごく普通のアパートである。

「ピコンッ」

少年の携帯に、一通のメッセージが届く。

少年はポケットから端末を開き、メッセージを確認した。

 

〈優ちゃん、そろそろアパートついたと思うんだけど、どう?当たった?〉

 

軽い調子でかかれたメッセージに、無意識に少年は苦笑いしていた。

「あいつ…ほんと勘だけはすげーな…」

あまりのタイミングの良さに、もはや監視されてるんじゃないかと思われる勢いだった。

 

【ああ。今着いた】

ピコンッ

〈ホント!?やったビンゴだ!〉

 

【こんなどうでもいいことでメールすんなよ…ミカ】

ピコンッ

〈いいじゃんこんぐらいさー…ちゃんと大家さんに挨拶してね!〉

 

【はいはい。わかってますよ】

 

少年は返信するのも面倒になって携帯をしまう。

「とりあえず、挨拶だけして部屋の準備するか…」

キャリーバッグに大きなリュック。

片手には取ってのついたバッグ。

まるで海外旅行でもいくかのような格好で、少年は歩きだした。

 

 

 

 

アパートの階段近くに、例の大家さんらしき人が立っていた。

「よお、お前が百夜優一郎か。随分と大荷物だな。それと遅すぎだ」

見た目はすごく若いその大家さんは、少年の名を呼ぶ。

遅い、と言われたが、さっきのメールの相手、百夜ミカエラが丁度よくメールしたあたり、彼は少年が遅刻すると知っていたのだろう。

「あんたが大家の一ノ瀬グレン?」

季節はすでに冬。

悴む両手に突き刺さる寒さに耐えながら、少年は相手の名前を確認した。

「初対面にタメ口使われるのは初めてだ」

「それはあんたもだろ」

少年、優一郎は鋭いツッコミを大家、グレンに指摘する。

「俺は大家だし年上だから許される」

「どうでもいいから鍵」

不自然な屁理屈を述べるグレンに、優一郎は冷めた様子で鍵を要求する。

「全く…短気な奴だな」

グレンは仕方なさそうに鍵を鞄から取り出す。

優一郎はそれを奪い取るように取り、さっさと階段をあがっていった。

通路の右側に二つくらい部屋があるが、優一郎の部屋は正面に見える、そのまま通路の奥までまっすぐ進み、突き当たったところにある。

扉の目の前まで到着し、

グレンからもらった、いや、奪取した鍵を差し込んだ。

形はピッタリ。

当然ではあるが、あのグレンの性格上偽装でもされているのでは、と優一郎は感じていたのだ。

ドアノブに手をかけ、ガチャリ、と部屋を空けた。

全く何もない。

引っ越しをした以上それが当たり前なのだが、あまりの殺風景な空間に少し違和感を優一郎は覚えていた。

「…妙なもんだな」

優一郎が持ってきたものは必要最低限のもの。

テレビやベッド、エアコンはすでに準備されているが、それ以外のものは全く用意されていなかった。

「はあ…重かった…」

優一郎はドサッと荷物を地面においた。

今まであまり感じなかった疲れが今になって優一郎の体にのしかかった。

「きゅーけー、きゅーけー」

そう言って彼はベッドに横になった。

疲れと同時に、妙な眠気が優一郎を襲う。

すこしずつ眠気に侵され、ウトウトし始めた頃。

「お隣にも挨拶せず、気持ちよさそうに寝るなんて、随分と常識がない人ですねぇ」

部屋の中で女性の声がした。

優一郎はハッと自分が眠りかけていたことに気づき、ガバッと起きあがる。

玄関に、一人の背の小さい女性が立っていた。

「…誰だお前」

優一郎は眠そうな顔で女性に聞いた。

「失礼ですね。歴としたお隣さんですよ。普通引っ越した側がお隣さんに挨拶するものじゃないですか」

女性は玄関付近から動こうとしない。

「扉の向いてる方向が違うから『お隣』じゃねーよ」

「屁理屈は結構です」

優一郎は少し小さな欠伸をした。

「で…名前は?」

「普通はそっちから紹介するものでしょうに…私は柊シノア。あなたの部屋のすぐ近くに住んでいる者です」

女性、柊シノアは、優一郎に愚痴を言いながらも、自ら名前を紹介した。

「…で?何しにきたの?」

優一郎はシノアに聞いた。

「はあ…私はグレンさんに頼まれて、あなたに生活面のことについて説明をしに来たんです」

シノアは優一郎の失礼ぶりに呆れて、ため息しかつけなくなった。

「生活面?」

優一郎が復唱する。

「はい。よくよく見てください。この部屋、何か変だと思いませんか?」

シノアが唐突にクイズを出し始めた。

優一郎は何もつっこまずとりあえず大人しく答える。

「…なんか寂しい」

「ブッブー!マイナス10ポイントです」

「ポイント制かよ…」

優一郎は訳がわからない、と言った仕草を見せる。

「正解は、キッチンがない!でした」

シノアが言った言葉に反応し、優一郎が周りを見渡す。

確かに、キッチンは一つもなかった。

「…ガスコンロでも買えと?」

優一郎は少し間を空けてから質問する。

「違いますよー。今からそれを説明するんです」

そういうとシノアは部屋に上がってきた。

「ここにスライド式ドアがあるのに気づきました?」

シノアが指さした方向に、気でできた扉があった。

一見クローゼットのようにも見えるが、どうやらそうではないらしい。

「さあさあ開けてみてください」

シノアが促し、優一郎は仕方なさそうにロックを解除し、開けてみる。

するとそこには…

 

 

 

「…なにこれ」

「はい、この通り通路があるんです」

ドアの向こう側には、玄関側の外の通路と同じような構造の通路があった。

ただ、床は木でできているし、天井や壁も存在している。

「…これは何のための通路?」

何事にも無関心な優一郎でも、これには呆気に取られる。

「まあまあ、着いてきてください」

シノアがついてくるよう指示する。

優一郎は黙ってついていった。

優一郎の部屋以外のところにもドアがあるのはつまり、他の部屋もこの通路と隣接しているとわかる。

「じゃ、このおっきいドアを開けてみましょう」

まるでゲームのチュートリアルのようにシノアは話を進めていく。

優一郎はもう好きにしろとばかりに強くドアを開いた。

 

そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キッチン?」

「ピンポンピンポーン大正解。ここはつまり『セラフ』に住む人たちが食事をするときに使う兼用リビングアンドキッチンなのです」

…は?

優一郎は思わずそう言いたくなった。

なんで赤の他人とこんなところで団らん組まなきゃいけないんだ。

もんもんと不満が募るも、表には出さなかった。

しかし、優一郎には別の心配事が心境に存在していた。

「…当番制か?」

優はその恐れていたことを一応シノアに聞く。

「当然じゃないですかぁ。誰か一人に任せきるのは余りに酷すぎるでしょう?」

シノアがとーぜん、といった顔で返答した。

まじかよ、優一郎はその場にしゃがみ込んだ。

こんなの聞いてない。

このアパートにこんなルールがあったなんて聞いてない。

 

誰かと馴れ合う必要はない。

とりあえず住めればそれでいい。

あの時の自分の慎重さが欠けていたことを恨む。

優一郎は今になって、自分の選択に後悔し始めた。

「理解しましたか?あなたにはこれから、私たちとともに、『家族』のように、このアパートで生活してもらいます。百夜優一郎さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の言葉など、優一郎の耳には入らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、家族を失った者たちの物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶望を希望へと巻き戻す、

優一郎たちの爽快な日常を描いた、

誰も知らない物語。

 




お疲れさまです。
短かったですよね?
幻想行進曲疲れたらちょっと書くくらいなんで短いし投稿遅いんですよ。
少しずつ進めていくんで暖かい目で見てください。
幻想行進曲もよろしくです。
それじゃあまたね!
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