今回この作品を投稿するに当たって、原作の単行本を読んだのですが、梅雨ちゃんがかわいすぎるので、「もうこれオリ主作ってケロインにしちゃおう!」って感じなことを真っ先に思いついたので、ヒロインもといケロインは梅雨ちゃんです!で、今回は、主人公の転生回になります!
夢を見た。
母の体から産まれ出て、元気に産声をあげる小さな赤ん坊、その赤ん坊が産まれて一ヶ月以上経った、赤ん坊の目は既に開き、動くものを目で追う頃だろう、確かに赤ん坊の目は開いていた、だが、その赤ん坊は、目の前に可愛らしい人形を持ってきても微動だにせず、赤ん坊の親が指を出しても反応しなかった―――
音の出る玩具には反応したのに。
その赤ん坊―――僕は、光を失っていた。
夢を見た。
僕が光を失っていたことが分かってから三年経った、僕は目が見えないにも関わらず、上手に歩けるようになった。
歩けるようになった僕は家の中を良く歩いた、良く歩いて、歩き尽くした、一階も二階も、押入れの中、箪笥の中まで、全て、そして、飽きてしまった。
家の中の冒険に飽きた僕は、大好きな両親に外で歩きたいと言った、両親は僕の目のことを気にして答えを渋った、が、必死に外に出たいと駄々をこねる僕に両親は折れ、庭に出してくれた。
初めて外で歩いた僕はそれはもうはしゃいだ、地面の上を歩いて、ざらざらとした土を触って、また地面の上を歩いて―――何かに躓いて盛大に転んだ、両親は慌てて僕の元へやってくると、大丈夫か、どこか痛い所は無い?等と聞いてくる。
僕は泣き喚くことなく立ち上がると、両親に、素直に痛いところなんて無い、そう言った。
両親は、え、と、声を出すと、恐る恐る僕に聞いてきた、膝を擦りむいて、沢山血が出ているのに?
それを聞いた僕は、初めて聞いた単語に見えない目を輝かせ、血って何!?と聞き返した。
僕は、痛みを失っていた。
夢を見た。
僕が痛みを失っていたことが分かってから十三年経った、僕はもう何かに躓くことなく歩くことが出来るようになっていた、そして、妹が僕が生まれて四年目に産まれた。
僕と違って目も見えるし、痛みも感じる、普通の女の子だ、僕はそんな妹が僕の両親と同様で、大好きだ、そして、その妹としっかり手を繋いで沢山の人でごった返した駅のホームにいる。
その日は家族みんなで出かけていた、今は帰りの電車に乗るためにこの人だらけのホームに家族皆でいる、因みに今妹は、僕と母さんの手を握っている、この人ごみである、万が一にもはぐれないようにと用心しなければいけない、父さんは妹と手を繋げなくて母さんの横でしょんぼりしているだろう。
そんなことを考えていると、僕がいる場所の前、電車が通る場所からどさり、と何か、妹よりも小さな子供が落ちた音が聞こえると同時に女性の悲鳴と、ガタンゴトンと少し遠くから電車の走行音が聞こえた。
周りの人ごみがざわめき始める、落ちた子供はその場から動かない、いや、動くことができないのだろう、心臓の音はちゃんと聞こえている、僕は、母さんに妹を任せて、人ごみの中を走り出す、人とぶつからないように人と人の間を上手く移動する。
そして、子供が落ちた場所の、すぐ横に飛び降りた。
時間が無い、心臓の音が聞こえる方に手を伸ばし、僕の腕力では少し重い子供の体を抱きかかえて持ち上げ、
「早くこの子を引き上げて!」
そう叫んだ、それからすぐに僕の手に乗った子が引き上げられた、そして、電車がすぐそこまで迫って来ている、間に合わないか。
僕は体を反転させ、足を動かす、一歩踏み出し、そのまま二歩目を踏み出した瞬間―――
ぐしゃり、と聞いたことの無い音が聞こえて、僕の体は宙を舞った、そのまま吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられる、勿論痛みは感じない、意識もかなり朦朧としているが大丈夫だ、まだ生きている―――
そのまま僕は意識を完全に失った、やっぱり何も見えず真っ暗な中、意識が覚醒し、何も見えない目を開ける、どうやら仰向けに寝かせられているみたいだ、幸運なことに、僕は電車に轢かれても生きているらしい、しかし、少し変だ、足、いや、下半身が何も感じていない、背中には柔らかい敷布団の感触を感じているのに、下半身だけは何も―――
ガラガラ、引き戸をあける音が聞こえた、ということはここは病院なのだろう、気絶していたし当たり前か、引き戸を開けた人、看護婦さんだろうか?が、僕の寝ている所まで近づいてくると、あっ、と驚いたような声を上げ、大丈夫ですか、意識は?僕の目が開いていることに気付いたのだろう、僕の状態を確認しようとしてくる、僕は、はい、大丈夫と、返事をした、少し掠れた声での返事だったけど、看護婦さんは、よかった、今すぐにでもご家族方に連絡します、と言って体を反転させた。
「あの!待ってください、僕の足、というより下半身がおかしいんです、何も感じないし、動かすこともできなくて」
僕は、この部屋から出て行こうとする看護婦さんを咄嗟に呼び止めて、質問した、目が覚めてからずっと感じていた違和感について、看護婦さんは、前へ踏み出そうとした足を止め、少し躊躇しているように立ち止まって僕を見ていたが、ごめんなさい、と一言だけ言って病室から出て行ってしまった。
このとき僕は自分の下半身に何があったのかを理解した、その後、医者の人にも告げられて、あの事故で僕の足は、右足の膝から下が千切れて何処かへ吹き飛び、左足の膝から下は皮だけで繋がっていた状態で、最終的に切断したことが分かった。
まあ、左足はあってもなくても同じようなものだが、僕は脊椎を損傷したらしい、下半身が完全に麻痺してしまっていた。
僕は、足を失った。
夢を見た。
僕が足を失ってから二年経った、僕は病院でのリハビリを終え、家にいる、が、最近特に調子がおかしかった。
僕の体重が異常な程減少している、僕の身長は無くなった膝から下を入れずに約160cmある、が、僕の体重は30kgしかない、一週間前までは59kgあったのに。
僕はもう十八歳だ、下半身が麻痺しているけど、リハビリをして、腕だけでも半日は這いずり回れるくらいの筋力と体力があった。
それでも今では、すっかり筋力も体力も無くなってしまっていた、さすがにおかしいと、病院に行ってみると、僕に下半身が麻痺していると教えてくれた医者から、肝臓癌、それもステージ3、ぎりぎり手術ができるらしいことが告げられた。
僕の両親はすぐに手術するようにと言って、僕はすぐに手術した、結果は成功、僕は死ななかった。
が、手術中に大量出血し、その際に輸血したのだが、その中にエイズウイルスに感染した血液があったらしく、僕はエイズになってしまった。
隔離こそされなかったのだが、手術後の僕の体はぼろぼろになってしまった、まともに起き上がることすらもできないほどに。
僕は、外の世界へ出る権利を失った。
夢を見た。
僕が外へ出られなくなってから二年経った、僕は体中に生命維持の器械などをつけて。
僕は病院のベッドの上で目を開けていた、ガラガラ、引き戸を開ける音が聞こえた、引き戸を開けた人物は、そのまま歩いて僕のベッドの傍に置いてある椅子に座ると、今日の調子はどう?元気?と僕の体調を聞いてくる。
この声、と言うよりも、足音は母さんだ、父さんも一緒だ、妹も来てくれている。
僕は、うん、元気だよ、と答えた、母さんはよかった、と呟くと、今日ね―――と、いつものように話を始める。
僕が外にすら出られなくなってから、僕の家族は毎日のように僕の寝ている病室に来て、色んな話を聞かせてくれた、テレビで放送されている番組について、今日学校で何があったのか、会社でこんなことがあった、そんな話を毎日してくれる。
僕はとても恵まれている、失ったもの以上に、幸せを感じさせてくれる、そんなことを思っていると、母さんが、もうこんな時間になっちゃった、と恐らく時計を見ながら言った。
もう帰ってしまうのか、少し寂しいな、いつものことなのに、今日は情けないことを思ってしまった、母さんと父さんが立ち上がる、しかし、妹は立たない、何故だろう、どうしたの?僕は妹に尋ねる、妹は、あたしはまだ話していく、と言ってくれた。
これは顔に出てしまっていたかな、でも、情けない僕は妹の厚意に甘えることにした、もう少し、もう少しだけ―――
ピーポーピーポー、妹と話していると、少し遠くから救急車のサイレンの音が聞こえてきた、どうやら救急車はこの病院へ向かって来ているようだ、しかし、何故だろう、嫌な予感がした。
次の日、母さんと父さんが死んでしまったことを伝えられた、病院から家へ帰っている途中に、交差点で信号を無視して突っ込んできたトラックに父さんの運転する車の横に直撃、そのまま母さんと父さんは押しつぶされて、即死だったそうだ。
僕は、大好きだった両親を失った。
夢を見た。
僕が大好きだった両親を失ってから二年経った、僕は相変らず器械を体中につけ、生き続けていた。
ガラガラ、引き戸を開ける音が今日も聞こえてきた、この足音は、■■ちゃんか、■■ちゃんは僕が足を失ったときに助けた子供だ。
僕の住んでいる、今は入院しているのだが、地域に引っ越してきたらしく、僕がこの病院に入院していることを知って、会いに来てくれたらしい。
初めて会いに来てくれたときに急に謝られたのは少し困惑したのだが。
まあ、色んな話をしてくれるからそれだけで嬉しいのだけれど、■■ちゃんは。妹とあまり上手くいっていないようだ、僕は仲良くしてもらいたいのに。
それにしても、今日は妹が遅い、何か用事でもできたのだろうか、■■ちゃんも、今日は妹さん遅いですね、と言った、彼女も疑問に思っているらしい、今日は結局妹は僕に会いに来ることは無かった―――
次の日の夕方、■■ちゃんと話して、■■ちゃんが帰ってから少しして、看護婦さんに、妹が殺されたことを伝えられた。
僕は、大好きだった最後の家族を失った。
夢を見ている。
僕が大好きだった妹を失ってからどれくらい経ったのだろうか、僕はまだ生きていた。
■■ちゃんと話をしながら、ずっと、生きていた、でも、それももう終わる。
どうやら病院の外は雨が降っているらしい、ザーザーと水が落ちる音が聞こえる、落ちた水が屋根をを伝って落ちていく音が聞こえる、人によってこの音は不快に聞こえるかもしれないが、僕はこの音が好きだ。
僕は、目と痛みを失っている代わりに、耳が良かった、だから、音を聞くのが好きだ。
ケロケロケロ、蛙の鳴き声が聞こえる、この音も好きだ、ケロケロケロ、また聞こえてきた、雨の落ちる音と合わさって、とても綺麗な音になっていく、ケロケロケロ、今度は増えた、どんどん増えて、蛙の大合唱になった。
やはり、僕は恵まれている、最期に好きな音を聞いて―――
心臓の音が、止まった、体温が、無くなった。
僕は、全てを失った。
まだ夢を見ている。
とても暗い暗い、何も見えない、どこかにいた、やっぱり何も見えない、そのままこのどこかにいつづける―――突然、僕は落ち始めた、落ちる、落ちる、落ちている、どこまでも落ちていく、何が起こっているのだろうか。
「……は…っぽ……だ」
何か聞こえた、おかしいな、僕は全てを失ったんだ、何故聞こえるのか、不思議でならない。
「からっぽの君に問おう!」
今度ははっきり聞こえた、からっぽ?僕が?ふむ、実に的確なことを言うな、確かに僕は全てを失った、故に、からっぽなのだろう、で、何を僕に問うというのか。
「君には、君自身のからっぽを埋めてもらわなくてはならない!」
からっぽを埋める?埋められるのか?今更。
「君のからっぽは君次第で埋めることができる!やってみなくちゃわからないぞ!今更だなんて言うな!」
怒鳴られてしまった、ふむ、この声の言う通り、僕自身のことだ、やってみなくちゃどうなるなんてわからないだろう、しかし、ただ落ちているだけなのにどうやって埋めるのか。
「あぁ!だから君に、新しい人生をあげよう!さぁ!手を伸ばせ!」
新しい人生……僕は、この声の言葉を聞いて、思った、欲しい、と、あれだけ恵まれた人生だったのに、思ってしまった、欲しい、新しい人生が欲しい、僕の最初から失われていた目が、痛みが、失った足が、外にでる権利が、大好きな家族たちが!
また、皆で、幸せになりたい!
僕は手を伸ばした、ひたすらに、ただ暗いだけのどこかに、何かがでてきた、いや、見えたんだ、僕の腕が。
「君は選んだ!新たな人生を歩むことを!さぁ!行け!君には幸せになる権利が、義務がある!」
最後に声が聞こえて、僕は、どこかへ消えていった、新しく得た、人生を歩むために、全てを失い、からっぽになってしまった僕自身を埋めるために―――