愛されキャラも楽じゃない   作:LiveAddiction

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ご愛読いただき、ありがとうございます。

最近カラオケに行って思ったことなのですが、アニメ第二期ラブライブ決勝で歌われた『あの曲』を入れた際に、間奏の部分で『綺羅』ツバサの映像が流れるのは一体どういうことなんでしょう。私には、受け狙いとしか思えないのですが...。

さて、今回はそんな綺羅ツバサの登場回です。
皆様に少しでもお楽しみいただければと思います。


第3話 お嬢様も楽じゃない

なんとか自宅へと帰ることのできたわたし、綺羅サクラ。みんなに抱き付かれた時にはマジで死ぬかと思ったよ。

 

「ただいま」

 

「「おかえりなさいませ、お嬢様」」

 

「ありがとう」

 

家のやたらどでかい門を開けてくれた二人の執事に手短に感謝を述べる。そして、玄関へと続く長い道のりを歩いていく。その左には執事たち、右にはメイドたちがそれぞれ一列に並んでいる。メイドたちの最前列にいる女性が一歩前に進み出てわたしの右に立つ。彼女はわたしの専属メイドをしてくれているレイチェル。ロシア系アメリカ人でモデルのように整った顔立ちとスタイルを併せ持つ才色兼備のスーパーメイドだ。腰の辺りまで伸ばした金色の髪がさらっと風になびいて一層その美しさを醸し出している。私をにこやかに見つめる青い瞳がとても印象的。彼女は元々は、綺羅ホールディングス・アメリカ支社で働くキャリアウーマンだった。わたしの両親がアメリカ支社を訪れた際に彼女のことをとても気に入ったらしい。結果として、今では綺羅家の立派なメイドとして働いてくれている。語学に堪能な彼女は、英語、ロシア語、日本語を完璧に使いこなす。そう、彼女はまさにパーフェクトレディなのだ。ただし、ある一点を除いては。

 

「おかえりなさいませ、サクラお嬢様。お荷物をお持ちいたします」

 

「あら、ありがとう、レイチェル。でも、そんなに重くないから大丈夫よ」

 

わたしがそう答えた途端に、レイチェルの顔色が真っ青になる。まるでこの世の終わりが来たというような表情だ。流石にわたしもこれはヤバいと思い、すぐに訂正する。

 

「ど…どうしようかな、ちょっと疲れてるからな~(完全に棒読み)。レイチェル、お願いしても良い?」

 

「はい、サクラお嬢様!」

 

先ほどまでの表情とはうって変わって屈託ない笑顔をわたしに向けるレイチェル。これがレイチェルの困った一面なのだ。本人曰く、わたしに仕えるのは至上の喜びらしい。

 

わたしが玄関へと向かって歩いていく度に左右の執事たちとメイドたちが頭を下げて礼をする。レイチェルはわたしの鞄を持って半歩後ろをついて来る。「レイチェルもみんなも、そんなにかしこまらなくても良いのに」と以前レイチェルに言ったところ、「全ての者が綺羅家の執事やメイドであるということを誇りに思っているのです」というよくわからない返事が返って来た。それ以来、「まあ、本人たちがやりたいなら良いか」ということで好きにさせているのだ。

 

玄関前に待機していた執事とメイドが扉を開けてくれる。そして、わたしの目に飛び込んでくるのは眩い輝きを放つシャンデリアとその灯りに照らされるように圧倒的な存在感を放つ螺旋階段。ホントにここはどこの高級ホテルだよと思わず言いたくなる。とりあえず、わたしは靴を脱いで、わたしを待っていてくれたらしいお母様に挨拶する。

 

「お母様、ただいま帰りました」

 

「お帰りなさい、サクラちゃん」

 

わたしのお母様は、和服の良く似合う大和撫子。綺羅家は洋風屋敷なのに、なぜいつも和服姿なのかは未だに謎だ。そして、このお母様、実年齢よりとても若く見える。お母様、お姉ちゃん、わたしの三人で歩いていると、よく三姉妹に間違えられるのは娘として嬉しいやら恥ずかしいやら…。

 

「今日はお仕事はお休みなの?」

 

「うん、ママは今日は午前中だけだったのよ。パパは夜に帰ってくるわ」

 

うちの両親は綺羅ホールディングスの会長とCEOを務めている。お父様が会長で、お母様がCEO。その関係で両親は海外への出張など多忙を極めており、家族が一堂に会せる時はそんなに多くはない。今夜は久々に家族全員での夕食ができそうだ。そう思うと、なんとなく嬉しくなる。今のわたしはニコニコ笑顔だ。

 

「サクラちゃん、今日はね、シフォンケーキを焼いたの。食後にみんなでいただきましょう」

 

「シ、シフォンケーキですと!?」

 

お母様の手作りシフォンケーキということでさらにテンションが高くなるわたし!うん、だって仕方ないじゃん。家族のひいき目なしに見ても絶品なんだから。そして、うちのメイドたちが淹れてくれる紅茶との組み合わせは最高なのです!

 

「ありがとう、お母さま、ホントに楽しみ!」

 

「うふふ、喜んでもらえて何よりだわ」

 

「そういえば、お姉ちゃんはもう帰ってるの?」

 

「一時間くらい前かしら?」

 

ということは、お姉ちゃんがいるのは十中八九わたしの部屋だな…。

 

「それじゃ、また夕食の時にね。それまでは自室にいるよ」

 

「たまにはお姉ちゃんとも遊んであげてね」

 

「いや、ほぼ毎日遊んでるんだけど。というか、一方的にお姉ちゃんがわたしと遊ぼうとするって言うのかな。まあ、いいや。レイチェル、鞄はここまで大丈夫よ」

 

わたしはレイチェルから鞄を受け取り、螺旋階段を上りながら2階にある自室を目指す。お父様の書斎、お母様の書斎、お姉ちゃんの部屋を通り過ぎ、その先にある『サクラ』というプレートの吊り下げられた部屋の前に立つ。この扉を開けた先にある光景を想像すると、正直言って開けるのを躊躇ってしまう。でも、わたしは覚悟を決めた。少し深呼吸をしてドアノブに右手をかけてドアを開ける。するとそこには、やはりわたしの姉である綺羅ツバサが居た。UTX学院の制服姿だ。ドアの開く音で気づいたらしいお姉ちゃんがわたしに全速力で駆け寄って来て抱き付いてくる。

 

「おかえり、サクラ!風邪はもう大丈夫なの?今日の学校は楽しかった?誰からもいじめられたりしてない?もしそうなったらお姉ちゃんが音ノ木坂に乗り込んで行って…」

 

「お姉ちゃん、マシンガントーク過ぎ。風邪はもう大丈夫だから学校に行ったんだよ。クラスのみんなとも仲が良いし、問題ないって。だから、間違っても乗り込んでくるのはやめてよね。そこまでする必要は絶対にない」

 

「な、何を言うの、サクラ!私は愛する妹のためなら、いつだって全力を尽くすのよ!」

 

結論を先に述べよう。わたしの姉、綺羅ツバサは人知ではとうてい計り知ることのできないシスコンなのだ。きっとA-RISEの綺羅ツバサのファンになったばかりの人たちは、本当のお姉ちゃんを知ったら我を失うだろう。いつの時代だって、アイドルは「偶像」に過ぎないのだ。いやぁ、真実は時に人を傷つけるね。まあ、熱烈なファンにはすでに知れ渡ってる事実なんだけどね。もっとも彼らには、シスコンがあっての綺羅ツバサということでむしろ大歓迎らしいが。うん、よくわからん。

 

「昨日までわたしが風邪引いてた間、お姉ちゃんたら、毎日学校休もうとしてたもんね」

 

「は?何言ってるの?そんなこと当たり前じゃない。サクラのためなら、学校なんてなんとでもなるわよ。ま、お母様が強引にリムジンに私を乗せたせいで、仕方なく学校に行っちゃたけど」

 

「…。いや、毎日早退して家に帰って来てたじゃん」

 

そうなのだ。なんとこの姉は学校には行ったものの、私のことを心配するあまり、連日早退してきたのだ。重ねてお詫びいたします。A-RISEのファンになったばかりの皆様、ごめんなさい。本当の綺羅ツバサはただのシスコンなのです。

 

「そういえば、お姉ちゃん。今日はA-RISEの活動は良いの?」

 

わたしはふと気になったことを口にしてみた。たとえこんな滅茶苦茶な姉であろうとも、大人気スクールアイドルグループA-RISEのリーダーには違いないのだ。こんなに早く帰って来て良いんだろうか?

 

「…。サクラ、全部口に出てるわよ。なかなか言ってくれるじゃない」

 

またしてもわたしの考えは口に出ていたらしい。ちょっと、お姉ちゃんが引き攣った表情を顔に浮かべている。あっちゃ、ちょっと言い過ぎたかも…。

 

「サクラ…。でも、そんな天然なサクラも大好き!お姉ちゃん、困っちゃう!」

 

訂正しよう。全然、言い過ぎじゃなかったらしい。お姉ちゃんはわたしの目の前で体をクネクネしながら悶えている。もう何も言うまい。別世界へとトリップしたお姉ちゃんを止めることなど、不可能なのだ。ああ、不可能はあったよ、真姫ちゃん。

 

しばらくして、こちらの世界(?)に戻って来たらしい、お姉ちゃんがさっきの質問に答えてくれた。

 

「えっと、A-RISEとしての活動だっけ?ああ、勿論今日もやってるわよ」

 

「でも、いつもより早く帰って来てるよね?」

 

「だから、ここでやってるのよ」

 

お姉ちゃんの「ここ」という言葉に、わたしは悪い予感がした。残念なことに、この手の予感はよく当たる。当たり過ぎる。

 

「ここって、もしかしなくてもわたしの部屋だったりする?」

 

「そうよ。A-RISEにとってサクラの部屋は聖地なんだから」

 

いや、意味わかんないし!どういう理屈なんだよ!ちょっと待てよ、ということは、もしかして、あんじゅさんと英玲奈さんも居るの!?

 

「ちょ、ちょっと待って落ち着こうか、わたし。いくらお姉ちゃんだからって、そんなことはないよね?」

 

「そんなことってなあに?」

 

わたしの言葉の真意を計りかねるといった様子で、わたしに尋ねてくるお姉ちゃん。わたしは意を決して、お姉ちゃんに聞いてみる。

 

「ねえ?お姉ちゃん、もしかして、もしかしてだけど、あんじゅさんと英玲奈さんも、わたしの部屋に居たりする?」

 

「…?当たり前でしょ。A-RISEはあんじゅと英玲奈と私の三人なんだから」

 

「やっぱりいたー!いや、当たり前じゃないし!なんで、A-RISEの活動拠点がわたしの部屋になってるの!?」

 

「いや、わりぃ、わりぃ。わたしも、他の二人もさ、サクラの部屋が一番落ち着くのよ。ごめんね、サクラ、てへぺろ!」

 

「…。お姉ちゃん、全然悪いと思ってないでしょ」

 

「ははは、バレちゃった?」

 

「お姉ちゃん…」

 

わたしは怒りのオーラを纏いながら、お姉ちゃんに目を合わせる。きっとお姉ちゃんには、わたしの姿はまるで仁王像のように見えていることだろう。

 

「サ、サクラ…ちゃん。ひぃ!」

 

お姉ちゃんは、腰が抜けてしまったらしい。それでもわたしから逃げようと、必死で後ずさりしている。

 

「お姉ちゃん、本気で謝らないと、一週間口聞かないよ」

 

わたしの言葉を聞いた途端に、お姉ちゃんの顔色が急に青ざめる。そして、見事なまでの土下座である。

 

「すみませんでした、サクラ様!どうか、それだけはお許しください!」

 

「本当に反省してる?」

 

「はい、それはもう!」

 

「仕方ないな。お姉ちゃんが壊れてるのはいつものことだからね。良いよ」

 

その言葉がわたしの口から出た瞬間に、お姉ちゃんが抱き付いてくる。

 

「ありがとう、サクラぁ!わたしはあなたみたいな妹が居て本当にうれしいわ」

 

「まったく、ホントに調子良いんだから」

 

なんだかんだで、これがわたしたち姉妹のコミュニケーション(?)なのだ。わたしも本気で怒っているわけではない。かなりあきれ果てて、かつ困り果ててはいるが。

 

「それで、お姉ちゃん、あんじゅさんと英玲奈さんはどこ?」

 

わたしはファンシーな調度品で整えられた自室を見回すが、どこにも二人の姿を認めることはできない。

 

「あんじゅはサクラのベッド、布団の中よ。英玲奈はクローゼットの中よ」

 

…!?嘘、だよね?嘘と言ってほしいわたし、綺羅サクラです。

 

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