・投稿先間違えました。お知らせくださった皆様本当にありがとうございます。
『第四層』から『マイルーム』に帰ってすぐに、咲夜とアルトリアの身体を球状魔法陣が取り巻いた。
「本当にギリギリでしたね」という咲夜に同意し「また後で」と告げると、お待ちしていますと言い残して消えていく。
一度息を吐く、と、フゥ……と思ったよりも大きな音が漏れ、「大丈夫?」とフェイトに問われた。
大丈夫と返したけれど、とりあえずソファに座らせてもらう。
……色々なことが一度に起きすぎて、流石に少し疲れた。一度それを認識してしまうと、ドッと疲れが押し寄せてくる。
その時、右隣になのはが座り、右手が彼女の両手に取られた。
ただそれだけなのに、じんわりと、暖かさが広がってくる気がして。
「大丈夫。私達が、最後まで力になります。葉月さんも、弥生さんも、絶対に助けてみせるから」
なのはの言葉に続くように、後ろからソファーの背もたれ越しに、首に腕が回されてきた。
顔のすぐ横に、フェイトの顔。
突然のことに驚いていると、フェイトが「なのはの言う通りだよ」と囁いて。
「私達も、一緒に頑張るからね」
自分のことを想ってくれているのが感じられて、有り難くて、嬉しくて。そんな二人に「ありがとう」と返して──
「ちょっと突然色々なことが有りすぎたから、気持ちの整理が付かなかっただけだから、大丈夫だよ。……それとフェイト、流石に少し恥ずかしい」
そう言うと、「あはは」と誤魔化すように笑いながら、パッと離れるフェイト。そのまますぐに、俺の左隣に座った。
……と、そうだった。
「少し早いけど、次の咲夜の召喚に合わせるのに一度還るか?」と問うと、俺を挟んでなのはと顔を見合わせたフェイトが「じゃあ、そうするね」と頷いたので、その場で送還。見送った。
(……ところでハヅキ)
……ん?
何かを窺うような、アルトリアからの念話。
(以前も言いましたが、フェイトにしろナノハにしろ、恋人にするにはまだ少し幼いのではないでしょうか。……ヤヨイ、でしたか。貴方の妹にはどう紹介するのですか?)
いや、そんなんじゃないから。
(とは言えこうも見せつけられますと……私としても少々複雑な気持ちになるのですが)
ええと……何かごめん。
◇◆◇
記憶を受け取ったフェイトは、『第四層』に行く前にアクセサリを貰えたことに喜んだ後、『第四層』から戻ってきた後の自分の行動に、……葉月の言葉じゃないけど、流石に私も自分で恥ずかしい……と悶えたとか。
「……けど、こっちでも逢いたいな……」
漏れ出た言葉は、儚くも、遠い願いか。
けれど、口を突いて出た言葉を「だめだ」と首を振って否定する。
それを願うことは、「元の世界に帰る」という葉月の想いを否定することになってしまうから、と。
フェイトとて、葉月には元の世界に帰ってほしいと思っている。妹さんとはきっと不本意な再会になってしまっただろうけど、それならばそれで、二人揃ってご両親の元に帰してあげたいと、フェイトは思う。
だけど──考えてはいけないと思っていても、解っていても、浮かんでくる想いを消すことはできなかった。
◇◆◇
三時間ほどが経ち、再びフェイトとなのは、咲夜を召喚する。
姿を見せた直後、「喚んでもらってすぐで申し訳ないのですが」と咲夜が切り出してきた。
「お嬢様から、次に喚ばれたら葉月さんに『ステータス』を確認して貰うようにお願いして、と言われまして」
「はぁ……いやまあ、それぐらい良いんだけど」
……何でまたレミリアがと思ったけれど、別に見るだけなら何も支障は無いしと思い、「解った」と頷いてステータスウィンドウを開き──そこに表示された文字に、思わず「は?」と漏れた。
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※※【ユニークスキル:派生スキル】の情報が更新されました!※※
『
【召喚可能キャラクター】
フェイト・テスタロッサ:『高町なのは』
アルトリア:召喚不能
十六夜咲夜:『レミリア・スカーレット』
八神はやて:『リインフォース』
・該当する特定異世界との接続が拒絶されました。『アルトリア』の状態により、『アルトリア』の連鎖召喚が無効化されます。
・『アルトリア』の連鎖召喚無効化に伴い、『アルトリア』のスキル使用不能時間に減少補正が掛かります。
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「え、いや、ちょっと待って」
思わず混乱。
咲夜に先程のような言伝をしたということは、レミリアには
「何がありましたか?」と訊いてきた咲夜に、「レミリアが喚べるようになった」と返すと、彼女は「なるほど、そういうことですか」と頷いた。
「そういうことって……何か知ってるのか?」
「えーと……ちゃんと聞いた訳では無くて、あくまでも予想なんですけど……恐らく、お嬢様はご自身の『運命』を操作されたのかな、と」
『運命』の操作。それはすなわち、レミリアの能力である「運命を操る程度の能力」のことだろう。
……それにしても、それって何だかとても重大なことのような気がするんだけど。
「……何でまたそんなことを?」
「これも予想ですけど……多分、話を聞くだけじゃ満足出来なくなったんじゃないですかね?」
それで良いのか紅魔館の主。
……知ったからには喚んだ方が良いよな、と言うと、「そうですね」と頷く咲夜。
フェイトからは「どんな人なの?」と訊かれたが……
「強い力を持つ吸血鬼で、昼間でも割と普通に出歩けるデイライトウォーカー。流石にいきなり襲われるようなことは無いと思うけど……」
無いよな? と咲夜に訊くと、「大丈夫だと思いますよ」と苦笑を浮かべられる。
「私の予想の通りでしたら、お嬢様が仕向けた状況ですからね」
「ん……まぁ、俺に出来るのはいつもと変わらずに、頼むだけだしな。……やりますか」
それじゃあ召喚を、と思ったところで、アルトリアから「一応私も出て側に居ましょうか?」と問われたが、首を横に振る。
そんな風に警戒するのも失礼だしな、と答えると、咲夜がふふっと小さく笑った。
「……どうした?」
「いえ、何でもありません。……ありがとうございます」
さて、気を取り直して。
『
「『
出現した球状魔法陣は、いつもフェイトやなのはを喚び出すときと同じような大きさ。
それが砕けて消えて、現れたのは、一見フェイト達と同じ年の頃に見える女の子だった。
ふわりとウェーブのかかった、青みがかったミディアム程度の銀髪と、その上に被った赤いリボンの付いたピンクのナイトキャップのような帽子。
襟や裾などにレースの付いた、白っぽいピンク色の上下揃いの洋服。腰の辺りで大きな赤いリボンで留めて、スカートは踝当たりまであるロングスカート。
まるで、精巧に作られた美しい人形のように、可愛らしくも凜とした彼女の中で何よりも目立つのは、その背から生えた大きな蝙蝠のような羽だろうか。
大きな赤い瞳でこちらをひたと見つめるその相貌と整った顔立ちは、強い意志と高い知性を湛えていて──見つめられるほどに、ゾクリと背筋が震えた。
「初めまして、ニンゲン……いえ、『長月葉月』、だったわね?」
──レミリア・スカーレット。永遠に紅い幼き月。
紅魔館の主は、そう言って、見た目に似合わぬ──されどよく馴染んだ──艶然とした笑みを浮かべた。