深遠なる迷宮   作:風鈴@夢幻の残響

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お久しぶりです。
魔法少女リリカルなのは EXCEEDS Gun Blaze Vengeance記念


Phase108:「決戦」

 結局の所、決戦の場に集ったのは総勢六十名弱といったところだった。

 これを多いと見るか少ないと見るかは意見の分かれるところじゃないだろうか。

 そもそもの千名の召喚者の中でも戦えない人は居ただろう。その戦える者の中で生き残っている者の数に加え、この階層での戦いの参加条件の厳しさを考えると、むしろ多い方なのでは、とすら思えてしまう。

 ちなみに『蓄魔石(マナ・クリスタル)』は最終的に全部で千二百ちょいできたので、一人につき二十個ずつぐらい配れた感じだ。日産二百個ぐらい。頑張りました。

 ともあれ、第四層に出た直後のストーンサークルで『軍神』──ワイズマンさん達と合流したところで、先日渡した分からさらに増産した『蓄魔石(マナ・クリスタル)』を渡した後、参加人数を確認してから思ったことを告げた。

 すなわち、ザーランド本体へ当たるのはフェイトとなのは、はやてのみ。俺とアルトリア、咲夜、レミリアはこちらで眷属の迎撃に当たる、というもの。

 「しかし……」と悩むワイズマンさんへ、そう判断した理由を述べる。

 一つ目は、あの三人の機動力、戦闘力を考えると、空を飛べて戦闘機動を取れる者でなければ足手まといになるだけであること。この時点でここに集った者の大半は弾かれる。

 二つ目は、それを行える俺や昨夜、レミリアまであちらにいってしまうと、もしもこちらに飛行型の眷属が来た場合、対処するのが不可能と言わずとも難しくなることだ。

 それを説明すると、ワイズマンさんはしばし考えた後で「そうだな……」と深く溜め息を吐いて頷いた。

 

「こうなってくると、第二層の凶鳥に多数の飛行能力者がやられたのが痛いな」

 

 そう言って再度溜め息を吐いたワイズマンさんへ「それはもう、言っても仕方が無いでしょう」と『蓄魔石(マナ・クリスタル)』を配り終えて戻ってきた『神眼』──長良さんが宥める。

 

「準備完了ですか?」

「ええ。後は迎撃位置へ着けば」

 

 流石に転移陣(ポータル・ゲート)の直ぐ側で敵を迎え撃つ訳にはいかないので、しばらく進んだところに布陣することになっている。

 万が一後ろに逸らしてしまっても、ゲートに辿り着く前に追いつけるように。そしてザーランドからの酸の竜息(アシッドブレス)が届かない位置だ。

 ワイズマンさんが「出発するぞ!」と声を掛け、全員が歩を進める。

 六十名程が行軍しているとは思えないほどの重い沈黙。砂漠の歩き辛さだけではない、酷い緊張感を含んだ静寂の中、しばらく進んだ辺りでワイズマンさんが歩みを止め、それに倣って全員が足を止めた。

 遠くに見える砂嵐がジワリジワリとこちらに近づいているのが解る中、長良さんが全員に作戦を伝えに行く。

 作戦……と言っても、やることはパーティ単位で連携を組み、腐竜の眷属を確実に仕留めて行く、といった程度。

 後は状況に応じて上手く敵を纏め、高火力範囲スキルで滅却する、というものか。

 それを尻目に、俺は俺で戦闘準備を整える。事ここに及んで目立つだのなんだのは度外視だ。……第三層で既に皆の前でアルトリアや咲夜を召喚しているのだし。

 

「『召喚(サモン):フェイト・テスタロッサ!』」

 

 いつものように伸ばした手の先に発生した球状魔法陣。それがカシャンと砕けて消えると共に、目の前にバリアジャケット姿のフェイトが姿を現した。

 今回は行動を事前に伝えていたので、既に準備を整えた状態で待っていてくれたようだ。

 

「葉月、いよいよだね。頑張ろう?」

「ああ。頑張ろうな。──『連鎖召喚(チェイン):高町なのは!』」

 

 ふわりと微笑んで手を差し伸べてきたフェイトのそれを取り、頷いてからなのはを『連鎖召喚(チェイン・サモン)』で喚び出す。

 球状魔法陣から現れたなのはもまた、フェイトと同じようにすでにバリアジャケット姿だった。

 周りから注目されているのを感じるが、事前にワイズマンさん達が言い含めてくれていたのだろうか、特にこちらに言ってくることはないようだ。……そんな訳なので周囲は気にしないことにしてどんどん次へ行く。

 まずはアルトリアを召喚し、そこから多重召喚(マルチサモン)と連鎖召喚で咲夜とレミリア、はやてとリインフォースを召喚した。

 はやてを喚んだ際に、彼女は車椅子ではなくソファに座っていたらしく、危うく転びそうになったところを抱き留めた──なんて一幕も有ったが、そのはやてもユニゾンをして準備完了である。

 ……はやてを屋外で召喚する際は気を付けないとだな。

 そしてフェイト達へ作戦を説明し、今回は三人に負担を掛けてしまうけど……と謝って。

 

「気にしないでください。適材適所? っていう感じで!」

「なのはの言う通りだよ。……それよりも、葉月の方も大変だろうから気を付けてね? 今回は私もすぐに助けに来られないから……」

 

 心配げに詰め寄ってくるフェイトを「こっちにはアルトリア達が居るから大丈夫」と宥めるも、心配してくれるのは嬉しいので、それに関しては「ありがとう」と伝えておく。

 

「……っと、そうだ、念のためこれも持っていって」

 

 フェイト達にももしものために、『蓄魔石(マナ・クリスタル)』を五個ずつ渡す。

 いざと言うときにカートリッジの代わりぐらいにはなるだろう、と伝える。

 

「葉月の分は?」

「俺もほら、これ」

 

 フェイトに問われたので、懐から『蓄魔石(マナ・クリスタル)』を取り出して見せる。

 フェイトの金色となのはの桜色。そして最後の方で籠められるようになった、はやての白色。それぞれ二つずつ。

 ちなみにフェイト達に渡したのは、俺が魔力を籠めたやつだ。そこはまぁほら、お守り代わりと言いますか。

 それを見て、フェイト達は顔を見合わせてから嬉しそうに笑った。

 

「ほな、いってきます。葉月さんもがんばってな」

「行ってきます!」

「ん、頑張ろうね」

 

 はやてとなのは、フェイトがそれぞれ声を掛けて来て、その場にふわりと浮き上がると、ある程度高度を取ったところで砂嵐に向けてスピードを上げて飛んで行った。

 それを見送っていると、「行っちゃいましたね」と後ろから声を掛けられた。

 振り返るとフェイト達が飛んで行った方を見ている弥生が居て──「心配か?」と声を掛けると、少し考えた様子を見せた後、コクリと頷く。

 

「私は、あの子達がどれ位強いかっていうのはこの前ここで助けに来てくれた時しか見てませんから……けど、兄さんが思ったより落ち着いてるのは、やっぱり信頼してるから、ですよね?」

「そうだな。彼女達とはずっと一緒に戦ってきて、何度も助けられてきた。あの三人なら、ザーランドにだって負けないよ、絶対に」

 

 だから、俺達は俺達で、やるべき事を確りとやろう。

 むしろ腐竜の眷属達をさっさと片付けて、フェイト達の助けに行ってやるさ。そう答えて、強く拳を握った。

 

 

◇◆◇

 

 

 葉月達の元から、砂嵐──『腐竜・ザーランド』へ向けて飛び立ったフェイト達。

 以前の経験から、高度を上げすぎると逆に時間が掛かることが解っているので、ある程度の高さで上昇を止めて飛んでいく。

 そうして進んで行くと、前方の砂嵐に先行し、こちらに向かってくるモノが見えた。

 地上に蠢くソレらと、空に犇めくソレら。腐竜の眷属達だ。

 

「フェイトちゃん!」

「……地上は葉月達に任せるけど、空は出来るだけ削りながら行きたい」

 

 良いかな? と申し訳なさげに答えたフェイトに、なのはとはやては顔を見合わせてから笑って頷き合い、もちろん! と異口同音に答えた。

 そうしているうちに、彼我の距離は一気に詰まる。

 

「ハァッ!」

 

 一閃。

 前肢が翼になった、所謂『ワイバーン』タイプの腐竜の眷属とすれ違い様にバルディッシュを一閃したフェイト。

 物理刃では抵抗が重く、損傷が浅いことを確認。

 

「バルディッシュ!」

《Crescent form》

 

 フェイトの意を汲んで、バルディッシュが形状を変えて魔力刃が伸び、大鎌の形状を取る。その瞬間、フェイトは右手の人差し指に填めた指輪が、淡く光を発したように感じられた。

 そのまま先程とは別の眷属へと振り抜くと、今度は易々と翼を断ち切り、地上へと落下していく。

 

《Buster》

「シュートッ!」

 

 それをなのはがショートバスターで撃ち抜き、肉体の多くを消滅させて損傷を拡大させる。

 そのままだと別の眷属に取り込まれてパワーアップされるか、ザーランドが取り込んで吸収してしまうから、可能なら消し飛ばすのが一番であるからだ。

 

「リイン!」

「はい、我が主」

 

 はやてもまた二人に負けじと、最初にフェイトが斬り付けた腐竜の眷属へと魔力砲で追撃を放ち、撃ち墜とした。

 散開した三人は一度合流、頷き合ってから再度別れ、戦場の空を縦横無尽に飛び回る。

 対する腐竜の眷属は、数に任せてフェイト達へと襲い掛かるも、機動力では完全にフェイト達が上を行っていた。

 

「フェイトちゃん! はやてちゃん!」

「うん!」

「オッケーや!」

 

 無秩序に飛び回っているようで、その実上手く腐竜の眷属達をひとまとめにするように誘導していた三人は、示し合わせたように再度散開。

 群を三方から囲むように位置取りした直後、それぞれが展開した魔法陣の上に立ち、デバイスを構えた。

 

「サンダースマッシャーッ!」

「ディバインバスター!」

「ブリューナク!」

 

 

◇◆◇

 

 

 ここから少しばかり離れた空に、遠雷のように、魔力が線を引きほとばしるのが見えた。

 金色のそれに続き、ピンク、白の線が走り──着弾時に巻き起こる、魔力の反応爆発が空を彩った。

 

「始まりましたね」

 

 それを見て、隣に立つ『軍神』──ワイズマンさんにポツリと呟くと、彼は頷いて振り返り、後ろに居る者達へ視線を向けた。

 

「皆の者、今見えたように、戦いが始まった。時期に此処にも敵が押し寄せて来るだろう。

 空中の敵は『彼女達』が相手取ってくれるとはいえ、たった三人……それも、ザーランド本体も相手にしながらである以上、恐らくそれなりの数は抜けて来ると思われる。それらはこちらの空を飛べる者達が引き受けるように。

 そして他の者は全員、素通りさせる地上の敵に当たる。

 配布した『蓄魔石(マナ・クリスタル)』を有効に使え。出し惜しむなよ、ここが正念場だ!」

 

 やがて、大量の何かが地を駆けたことにより巻き起こされただろう、砂嵐と見紛うほどの砂塵が見えてきた。

 

「総員抜剣! 武器を構えよ、魔力を滾らせろ! さあ来たぞ、お客さんだ。盛大に迎えてやれ!」

 

 ワイズマンさんの激励を耳に入れながら、開戦の合図に備えて魔力を練り上げ、魔力砲の発射準備を整える。

 ワイズマンさんとは逆隣に並ぶ仲間達へと視線を走らせ、頷いて──

 

「先ずは遠距離。よく引き付けろ、焦るなよ──よし、撃てぇ!」

 

 その合図と共に、俺達を含め、遠距離攻撃が可能な者達が全員、各々が放てる最大威力を撃ち放った。

 巻き起こる爆煙。そしてそれが晴れるより前に、再びワイズマンさんの声が上げられる。

 

「さあ次は接近戦だ。怖じ気づくなよ、お前達は独りではない。お前達の隣には我等が居る! 頼もしき戦友達が居る!! 遠慮はいらん、たらふく食い尽くせ! 総員、突撃ぃぃぃいい!!!」

『おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

 

 裂帛の気合を上げて、迫り来る腐竜の軍勢へと切り掛かった。




はやてちゃんの砲撃魔法名はちょっと種類がみつからないので、かつて有ったInnocent(ゲーム)から取りました。
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