新米提督が艦娘に着任しました――雨開の艦艇、これより提督の指揮に入ります――   作:低蓮

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今年最後の更新、でもないかもしれない更新です。
ついに鎮守府編、と言っても日常を書ききれる自信がないのでどうなることやら……
そもそも、すでに何か色々と設定がおかしい気も……ぬぐぐ、うがぁ!
えぇい、この際全て独自設定と偏見で押し通してみせる! あれこれもう艦これじゃ(

では、新章始まります!


鎮守府編
提督、艤装が届いているよ


「はふ……む~~~~~~」

 

 

 今日も起床時間前に目が覚め、夕立はベッドの上で伸びをする。

 なんとも気の抜けた声とともに伸ばされた身体は、コキコキと小気味のいい音を鳴らしながら新しい一日を迎えるための準備を始める。

 まだ寒い気温の中で、夕立はベッドの上で軽く準備運動をした後、同室の娘を起こさないようにそっと扉から出る。

 

 

「うーん……今日もいい天気っぽい!」

 

 

 廊下に出た夕立は、正面の窓から顔を覗かせる雲一つない晴天を目にして、今日はいい日になるっぽい、とふんわりと笑みを浮かべる。

 そして、いつも日課のように足を運んでいる場所へと、今日も向かうのだった。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

「ひぐぅ……時雨、しぐれぇ……」

「君はいつまで泣いているんだい……?」

「だって、だってぇ……」

 

 

 神通達に案内される形となった時雨は、その神通達と艦隊を組んで航行していた。

 とは言え、未だに泣き止む気配のない雷がずっと抱きついてくるので、動きづらいことこの上ないのだが。

 

 

「抱きつかれていると舵が切りにくいんだ、そろそろ離れてくれないかな?」

「そんな……やっぱり私の事嫌いになった……」

「……」

『あ、お前今めんどくせぇこいつ、って思っただろ』

「余計なお世話だよ」

「よ、余計な……」

「あぁ、雷に言ったわけじゃないんだ。それと、本当に離れてほしいな」

「お姉ちゃん、時雨さんも困っているし、そろそろ離してあげるのです」

「しつこいと、本当に嫌われる」

「あぅぁ……わかったわ……」

 

 

 渋々といった体で離れていく雷の慰めながら、電は申し訳無さそうな視線を時雨に送ってきた。

 その視線に、気にしてないからと手を振りながら、己の内にいるであろう霈に話しかける。

 

 

「霈、突然会話に入り込んでこないでくれないかな。思わず普通に反応しちゃったじゃないか」

『悪い悪い。けど、否定しなかったってことはそう思ったんだろ?』

「余計な……いや、そりゃすこしは思ったさ……」

『まぁ、お前のこと心配してたわけだし、大目に見てやれよ?』

「君に言われなくてもわかってるさ」

 

 

 若干むくれたようにそういう時雨に、霈は苦笑しながら押し黙る。

 溜息をつく時雨の耳に、神通の呼びかける声が届いてきた。

 

 

「全艦、改めて単縦陣へ。これより各艦は接岸したのち、上陸してください」

 

 

 その声に、若干乱れていた後ろの雷たちがきちんと単縦陣を敷き直す。

 きちっとするところはするんだね、と半ば感心しながら時雨は正面へと視線を戻す。

 三日月形の縁の部分のように湾曲し、突出した埋立地から、海を睨むように30.5cmの要塞砲が二基配置されている。

 その内側には、対空銃座や高射砲が無数に立っており、一種の林のような錯覚を覚える。

 そして、それらに守られるようにそびえ立つ堅牢な建物こそ、深海棲艦に反撃の狼煙を挙げる本拠地(ホーム)であり、軍略的に重要な施設。

 

 

 時雨にとってはとても懐かしく感じる、艦娘たちの集まるトラック島(我が家)であった。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

「提督、正面海域を担当していた第二艦隊が帰投したわ」

「ん、有難う加賀さん。変わったことはなかったかい?」

「これが報告書よ」

 

 

 鎮守府内の執務室で、提督が一人の艦娘から資料を受け取る。

 彼女はこの鎮守府において、提督の雑務の補佐から身の回りの世話までをも受け持つ『秘書艦』と呼ばれる存在だった。

 名を、加賀型一番艦、加賀。

 あまり表情を表に出さないことで有名な、鎮守府の頼れるおかん的存在だった。

 

 

「ふむ、特に異常は……?」

「提督、どうかしたのかしら?」

「……これが本当なら、実に喜ばしい限りだね」

 

 

 そう言って、提督は加賀へ手に持っていた報告書の一部分を指で指し示す。

 その部分を見た加賀は、驚きに目を丸くした後、穏やかな微小をたたえて言った。

 

 

「そうね、忠犬がぶんぶん尻尾を振っているのが目に浮かぶわ」

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

 ピットに座り込み、ぼうっと海を眺めていた夕立は、いつの間にか時間が過ぎていたことに気がついた。

 静かだった鎮守府は起きだした艦娘達によってざわめきだし、早速食堂に向かう艦娘もチラホラと見え始める。

 夕立も朝食を食べるべくピットから立ち上がり、もう一度海へと目を向けた時、視界の端で朝一番の哨戒任務にあたっていた第二艦隊が上陸に移っているのが見えた。

 あの事件以降、日課となっている第一艦隊以外の全艦隊による哨戒任務。

 大変だな、とどこか遠目で見ていた夕立は、ふと違和感を覚えた。

 

 

 ――第二艦隊って、5人もいたっぽい?

 

 

 確か、出て行く時は4人だったはず、と増えたであろう艦娘をよく見ようとして。

 夕立はその姿を見た瞬間に、無意識の内に駆け出していた。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

 久々の大地、というべきなのだろうか。

 神通の後に続いて上陸した時雨は、ふとそんなことを考えた。

 船が大地を恋しがる、というのもおかしな話だが、艦娘は人の姿をなしているためそこからくる感情ではないか、と当たりをつけた。

 

 

『改めて、でっけえ建物だな』

「深海棲艦には通常兵器は殆ど効かないんだけど、それでも簡単にやられるようじゃ海の安全を保てないからね」

『なるほどなぁ』

 

 

 それとなくしみじみとしていると、神通の声で意識を引き戻された。

 

 

「では、皆さんは装備を点検後食堂へどうぞ。時雨さんは、私と一緒に執務室まで来てくださいね」

「「「了解(なのです)(!)」」」

 

 

 神通の声を聞いた駆逐艦三人が、装備の損傷を確認した後、勇んで食堂へと駆けていった。

 それを眺めつつ、時雨は神通へ声をかける。

 

 

「それじゃ、僕達もそろそろ――」

 

 

 しかし、その言葉が最後まで紡がれることはなかった。

 突然横合いから衝撃を受けて、時雨の身体が宙に浮く。

 まさか、どこからか深海棲艦が、と一瞬体をこわばらせたが、衝撃を受けた脇腹は特に異常がなく、むしろなんだか柔らかい感触が伝わってきた。

 何が当たってきたのか確認しようと、脇腹に目を向けた時雨は、思わず息を止める。

 

 

「――ゆう……?」

 

 

 が、直後足が離れたにしては妙に長い滞空時間と、妙な浮遊感に襲われ、恐る恐る(した)を見た時雨は。

 

 

「あ」

 

 

 盛大に、2月の冷たい海へとダイブすることになった。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

「それで、そんなに寒そうに震えているのか」

「こ、この僕を、ここまで追い詰めるな、なんてね」

「こ、これじゃ戦えないっぽ……くちゅん」

「はぁ……加賀さん、二人に温かい毛布と、飲み物を」

「了解したわ」

 

 

 提督の目の前で寒さに耐える濡れネズミが二匹。

 苦笑しながら経緯を語ってくれた神通に礼を言って下がってもらい、毛布と温かいコーヒーによって一息ついた濡れネズミの片割れ(夕立)に、提督は語りかけた。

 

 

「それで、夕立。嬉しいのはわかるけど、あまり危ないことはしちゃいかんからな?」

「うー、申し訳ないっぽい……」

「時雨も、あんまり責めないでやって欲しい」

「大丈夫さ、もとよりそんなつもりはないよ」

「それは良かった」

 

 

 苦笑しながらも優しい目で夕立を見やる時雨に、心配ないと確信した提督は安堵の溜息を吐いた。

 せっかく再開した二人の仲が、こんなことで微妙になってしまうのはいただけない。

 最も、心配するまでもなく二人は親友足りえる存在だったわけだが。

 

 

「そういえば、時雨の雰囲気がなんだか違うっぽい」

「瞳の色のせいかな? いつの間にか、色が変わっちゃってたんだ」

「本当だ、お揃いっぽい?」

「若干違うけどね。と言うより、夕立も前は赤くなかったんじゃないかい?」

「色々あったっぽい。気にしないで」

 

 

 言われて、時雨の瞳を見た提督は確かに、と喉を唸らせた。

 元々空色(スカイブルー)だった時雨の瞳は、今は深紅色(スカーレット)へと変じている。

 対する夕立は、影で泣きはらしたせいなのか真紅(クリムゾン)へと変わっており、見た目はとても似通っていた。

 二人は、互いに事情をなんとなく察したのか言葉もなく小さな笑いを漏らす。

 が、加賀がさり気なく行った咳払いによって現実に戻ってくると、慌てて正面の提督へと視線を戻した。

 そんな様子を微笑を漏らしながら眺めていた提督は、さて、と話を切り出す。

 

 

「君たちが行方をくらませて約一ヶ月、此方では見つかることは叶わなかった。だから、色々と聞きたいこともあるんだけど、それはひとまず後回しにしよう」

「…………」

「単刀直入に聞きたい。他の娘は一緒ではないのか? 安否はわかるか?」

「少なくとも、一緒ではないよ。安否は……わかってる限りだと、皆沈んだかな」

「……そうか、済まないことをした」

「大丈夫さ、提督はわるくない」

 

 

 何かを我慢するような、儚げな笑顔。

 それを直視できなくて、提督は目をそらした。

 

 

「引き止めて悪かった。時雨、君の方から何か報告することはあるか?」

「特に……あ、一つだけあったよ」

「聞こうか」

「えっと、霈。出てこれる?」

『ん? はいよ』

「霈? 一体何の……」

 

 

 そう言った途端、時雨の傍らで一瞬フラッシュが焚かれたかのような光が瞬く。

 思わず目をつむり、再び開けた時、先程まで何もなかった空間に、さも違和感なく立っている人物がいた。

 

 

「よっす、時雨の……なんだ? 自立型水陸両用特殊兵装? の霈だ、よろしく提督さん」

 

 

 いや、艦娘(天使)がそこにいた。

 大人しそうな顔とは正反対の言葉遣いをしながら、向日葵のような大輪の笑顔を咲かせている。

 一瞬呆けたように見つめるしかなかった提督は、再度加賀の咳払いによって我に返る。

 

 

「あ、ああ。よろしく、霈君。て、兵装?」

 

 

 慌てて返事をした提督は、聞き逃しそうになった単語を聞いて眉をひそめた。

 

 

「んー、まぁ色々とややこしいわけなんだが、俺は艦娘じゃなくて艤装の部類に入るらしいんだよな。実感ないけど」

「そ、そうか……まぁ、そのことものちのち聴くとしよう。今はもう、朝食を食べてきなさい」

「了解したっぽい! いこっ、時雨!」

「了解したよ。それじゃ提督、また後で」

「俺はお呼びじゃないか? まぁ、飯くらい貰ってもいいよな。んじゃまた」

 

 

 口々に言いながら、執務室を後にしていく三人。

 出て行った扉を暫くじっと見ながら、提督はふと言葉を漏らした。

 

 

「霈、か」

「提督、そこだけ聞いたら憲兵のお世話になりそうだわ」

「そ、そんなつもりで言ったわけじゃないぞ? 船だったら聞いたことがないなと思ってな」

「わかっているわ。自立型水陸両用特殊兵装、だったかしら?」

「艤装が意思を持つというのもあれだが、そもそも何故艦娘のような姿をとっているのか、色々興味深いね」

「時雨がどんな目にあったのかも、きちんと調べないといけないようね」

「そうだね……さて、加賀さん。我々もそろそろご飯を――」

「――だめよ、先にこれを処理してから。それまでは私もご飯を我慢しますから」

「そりゃ無いよ、加賀さん……」

 

 

 情けない声を上げながら泣く泣く溜まった報告書に手を付け始めた提督が、食堂に姿を表したのはそれから一時間も後のことだった。




というわけで、時雨と夕立の再開シーン。因みに夕立はまだ改ニになってません。目だけ赤いの。

文才がなく情景描写はこれが現界。何方かもっと文才の上がるアドバイスとかしてくださいませんか(切実
わかりにくいところも多々あると思いますが、どうぞ寛大な心で読み進めてください。

ここまでのご閲覧、ありがとうございました

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