新米提督が艦娘に着任しました――雨開の艦艇、これより提督の指揮に入ります――   作:低蓮

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投稿が大幅に遅れてしまい、申し訳ありませんでした!
決して新年のセールでGTAとかWoTとか色々購入して、そっちに感けていたとかそういうことではないので、平に、平にご容赦を……

さて、鎮守府編は日常(?)系が多いので、霈の活躍が見たい! という方は今しばらくお待ち下さい。日常のネタなんてすぐに尽きて、戦闘方面へまっしぐらになりますから!(

では、本編へどうぞ!


(鯖缶は)譲れない

 連れ立って食堂までやってきた三人は、現在艦娘による波の中に沈み掛けていた。

 『冬隠れ』が起きたのは、言ってしまえばたった(・・・)一ヶ月前。

 そのため少なくない数の艦娘にが時雨のことを知っており、夕立と連れだって歩いてくる時雨の姿をみとめた艦娘が驚きの声をあげると、瞬く間に時雨達を幾重にも取り囲んでしまった。

 我関せず、と通り過ぎようとした霈も無事ではなく、事件後に着任したために不思議そうに時雨達を取り巻く渦を眺めていた艦娘は、見慣れない霈の様子に興味を持ったらしく、根掘り葉掘り聞き出そうと殺到してきた。

 

 

「時雨?! 貴女今まで何処に……いえ、そんなことより、無事だったのね?!」

「時雨、おっそーい! もう、心配したんだからね!」

「☆×△☆○□ー?!」

「赤城さん、せめて口の中のもの飲み込んでから喋って!」

「うぇ……? ええと……」

「おおぅ……っぽい……?」

 

 

「ねぇ、あなた見ない顔だけど、どこの船なの?」

「青葉、気になります!」

「それにしても、長い刀ねー……これ、ちゃんと振れるのかしら?」

「うお……おいちょ、離せ……?!」

 

 

 もみに揉まれた三人がようやく開放されたのは、加賀を伴った提督が来てからだった。

 その間の一時間、時雨と夕立は再会の感動や何をしていたかなどをしつこいほど聞かれ、霈はその容姿や所属などをこれまたしつこいほど聞かれて、ヘトヘトになっていた。

 提督のやんわりとした注意の声と、加賀の叱咤で散り散りになった艦娘の間をぬって机に着いた三人は、ほぼ同時にがん、と音を立てて机に突っ伏した。

 

 

「再会はたしかに嬉しいけど……こうも根掘り葉掘り聞かれるとこう……クるものがあるね……」

「め、目が回ったっぽい……」

「うおぉぉ……酔った……人ごみに酔った……」

「あなた達、食事の席でだらしないわよ。もっとシャキッとしなさい」

「まぁまぁ、加賀さん。時雨たちも疲れているんだし、大目に見てあげてくれないか」

「ダメです、こういう些細なところを徹底していかないと。提督、貴方も貴方です。声を張るときはもっとビシっと言ってください。どっちつかずの声量では周りに示しが……」

「わ、分かったよ加賀さん……そうだ、日頃のお礼に今日のご飯は奢――」

「――時間を無駄にしてはいけませんね。間宮さんもお忙しいでしょうし、さっさと注文してしまいましょう」

 

 

 変わり身が早いとはまさにこのことか、そう思わせるほど加賀の態度は提督の一言で豹変した。

 長々と説教をたれようとしていた加賀は、今や獲物を見つめる狩人(ハンター)のような眼差しで間宮に特盛りを注文した。

 それを苦笑しながら受諾して、厨房の奥へと消えていく間宮。

 それを見送って席に戻ってきた加賀は、何かをやり遂げたような(おとこ)の顔をしていた。

 

 

「……なんというか、扱い慣れてるな?」

「お互いをよく知ってるからこそ……なのかな……?」

「どっちかというと、加賀さんが提督さんに飼いならされてるっぽい……」

 

 

 その光景を横目で見ながら、三人もご飯を確保するべく席を立った。

 間宮は厨房の奥に消えてしまったので、変わりに厨房の手伝いをしている妖精にオーダーを頼む。

 しょうちつかまつった、と何故かいい笑顔でサムズアップしてくる妖精に若干の不安を抱きながらも、大人しく席に戻って待つこと数分。

 まず、加賀の前にとてもでかい丼が運ばれてくる。

 大の大人の一抱えほどもある、と言えば大きさが伝わるだろうか。

 その丼の三分の二まではほかほかの白米がぎっしりと、しかしふんわりと盛られており、その上には黄金に輝く卵で鶏肉を閉じたものがこれでもかと乗せられている。

 俗に親子丼と呼ばれるものであったが、余りにもスケールが違うのでそれをみた時雨達三人は呆然となった。

 

 

「……でかくね?」

「戦艦や空母の人はたくさん食べるって聞くけど……初めて見たよ」

「威圧感が凄いっぽい……」

 

 

 そんな三人の声は、一心不乱に丼へと向かっている加賀には届くことはなかった。

 程なくして、三人の前にも同様に食事が持ってこられる。

 加賀の丼と比べてしまえば手に乗りそうなほど小さく見えてしまう器に、しかしぎっしりと敷き詰められた光沢のあるそれ。

 贅沢に一皿に丸々一つの具材を使用した外見は、知る人ぞ知る有名な食べ物。

 

 

 まるで自己主張をするかのように、その器にはでかでかと「鯖」の文字が――

 

 

「――ってうぉい! これ鯖缶じゃねぇか!」

 

 

 何故か三人の前にはちょこんと鯖缶が一つだけ置かれたのだった。

 困惑する時雨と夕立、そして霈は我慢ならないというように声を上げる。

 霈の上げた声に反応したかのように、厨房の奥から間宮が顔を出した。

 

 

「ごめんなさいね、加賀さんの特盛りに力を入れすぎちゃって……」

 

 

 てへ、と柄にもなく舌を出した間宮は、伺うような視線で時雨達を見やった。

 霈は更に言葉を重ねようと口を開いたが、それを時雨が押しとどめた。

 

 

「まぁ、無くなってしまったものは仕方がないさ。加賀さんはこの鎮守府の貴重な戦力だし、僕たちは鯖缶(これ)でも十分足りるから」

「それに、あんなに量が多い料理を見た後だと、お腹が空く気がしないっぽい……」

 

 

 そんな二人の様子に毒気を抜かれたのか、霈はため息を吐きながらも大人しく席に座り直した。

 時雨と夕立が頂きますと言って食事を開始するのを横目で見ながら、霈も鯖缶に手を伸ばそうと思い正面を見る。

 

 

「にゃー(パク」

 

 

 なんかいた。

 いや、なんかというか、猫がいた。

 それは良い、鎮守府にだって猫の一匹や二匹はいるだろう。

 問題は、その猫が咥えているものであって――

 

 

「にゃっ(ダッ」

「あ、おいこら待ちやがれ?!」

 

 

 霈の食事()を咥えた猫は霈を一瞥すると、出口の方へと駆け出していった。

 食事が逃げ出したことで一瞬フリーズしかけた霈だったが、すぐさま我に返ると背負っている刀に手を添えつつ追いかけ始めた。

 霈の怒鳴り声と、おそらく妖精のであろう「やたらめったら、ぬかないでほしいです?!」という悲鳴は段々遠ざかって行き、やがて聞こえなくなった。

 その光景に一様にフリーズしていた面々だが、いち早く我に返った間宮がポツリと呟いた。

 

 

「鯖缶なら、お代わりもあるのに……」

 

 

 時雨は内心、そこなの? と突っ込んだが、声には出さなかった。

 そしてふと、先程から何かの音がずっと鳴り続いていることに気がついた。

 そちらに視線を向けた時雨は、己の一つの過ちに気がついた。

 あまりの突発的な事態に、提督でさえフリーズしていると思ったのだが。

 

 

「…………ッ(むしゃむしゃ」

 

 

 目の前で起きたことに一切動揺を見せず、ひたすらに己の目の前の朝食()平らげる(殲滅する)ことに意識を傾け続ける加賀に、時雨は一航戦の誇りを見た。

 そして、この場においてその時雨の勘違いを正せるものは、居なかった。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

「ひさめさん、ここにはほかのかんむすもいるです! だからかたなをふりまわすのは、きけんです! あ、みぎにまがったです」

「んなことは分かってるよ! だから極力当たらないように気をつけてんだろ?! ここ右だな?!」

「あたらないようにするまえに、そもそもぬかないでほしいです! あ、いまそとにでたです!」

 

 

 朝食も終わり、任務や何やで艦娘の姿が少なくなった鎮守府内の廊下を、霈は誘拐犯()を追いつつ爆走していた。

 少ない、とは言っても完全に居ないわけではないので、何度かぶつかりそうになりながらも最悪の事態だけは回避している。

 当の猫は勝手知ったる鎮守府内を自由自在に駆け巡り、霈を翻弄していた。

 が、執念の結果か、ついに三階で霈は猫を追い詰めることに成功した。

 逃すまいと、ジリジリと迫る霈を、観念したのか猫はじっと見据えている。

 

 

「ぜぇ…漸く、追い詰めたぞ……ぜぇ…さぁ、どう罪を償ってもらおうかぁッ」

「ひさめさん、ぶっそうなことかんがえてるです……?」

「あ? ただこの盗人()を血祭りにあげるだけだが?」

「じゅうぶんぶっそうです?!」

「食べ物の恨みは恐ろしいんだよ!」

 

 

 さぁ、と己を捕まえんと迫り来る霈を見て、猫は何を思ったのか、開いている窓からぴょんと身を躍らせた。

 唖然とする妖精をよそに、霈も躊躇なく後に続く。

 

 

「待てや俺の飯!」

「って、なにやってるんですひさめさぁん?! ここはさんかいです?!」

「三階程度、死にゃしねぇだろ! ……多分」

「むちゃくちゃです?!」

「そんなことより俺の飯だ! 捕まえたぞ!」

 

 

 空中で器用に猫をキャッチした霈。

 猫も流石に諦めたのか、抵抗しようとはせずに捕まるがままになっている。

 猫を抱えたまま器用に空中で体を捻り、見事に足から着地することに成功した霈だったが、三階から飛び降りたために無事とはいかず、着地時に自分の膝で顎を打ち付けるという凄惨な代償を負うことになった。

 

 

「くぉ、おぉぉぅ……」

「だ、だいじょうぶです……?」

「な、なんとか……」

 

 

 痛みをこらえつつ、飛び降りた場所に目をやる霈。

 三階という高さは下から見ると割と高く感じ、よく躊躇なく飛び降りれたな、と内心冷や汗を書いていた。

 そんな内心の焦りを押し隠しつつ、霈は手元の下手人()へと視線を向けた。

 霈によって両前足(両腕)を捕まれ、ダランと足を垂らした状態で霈の手にぶら下がっている猫は、まるで何をするんだ、とでも言う風に霈を見つめている。

 そして、その口にはすでに鯖の姿はなかった。

 

 

「……俺の、飯……ッ」

「だから、おもむろにかたなをぬこうとしないでほしいですっ!」

「ぬあぁッ!」

 

 

 怒りに任せて猫を放り投げた霈だったが、猫は空中で綺麗に三回転し、地面に足をつけるやいなや脱兎のごとくかけ出した。

 それをやや呆然としながら見送った霈は、ふと視界の端に見慣れないものが写り込んでいるのを見つけた。

 確認してみると、岩に何かが書き込まれている。

 

 

「なんだこれ……墓標?」

 

 

 大きな岩を削って作ったらしきその墓標には、少なくない数の名前が書き連ねられていた。

 日付や原因、海域などを記した墓標の前で、一体幾人の艦娘達が涙を流したのだろうか――

 

 

「――ん? これって……」

 

 

 名前を順に眺めていた霈は、あるところでその視線を止めた。

 最近彫ったばかりなのか、未だに苔が生えておらず、他のものよりも整った体裁を保つ、その名前。

 その横に、本来ならば咎められるであろう、しかし、誰も咎めることなど出来ない落書きが彫られているのを見て、霈はため息を吐いた。

 

 

「……慕われてるな。けど、どうなるか……」

 

 

 彫ったものと彫られたもの、その二人の姿を想像しながら、霈は少し考えにふける。

 霈が腹が空いていることを思い出して、食堂を求めて十数分鎮守府を彷徨うことになるのは、それから数分後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

属:白露型駆逐艦弐番艦

名:時雨

日:一月

因:鎮守府近海にて行方不明。護衛任務中、新型艦と遭遇した可能性大

――信じてる




譲れないとか言いつつ結局鯖缶持って行かれた霈。
なんというタイトル詐欺(

さて、もうおわかりだと思いますがこの作者に文才なんてものは存在しないため、日常()な物語が出来上がってしまっています。所々にネタを挟むってどうやるの……

こんな話があと数話続くかもしれませんが、どうぞお付き合いの程を。


ここまでのご閲覧、ありがとうございました

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