牙狼〈GARO〉 -女神ノ調べ-   作:らいどる

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遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。
今年一年も、『女神ノ調べ』をよろしくお願いいたします。




第12話  選択

 

 

 

 

 

 

「1,2,3,4! 1,2,3,4!」

 

――音ノ木坂学院・屋上。

そこにはダンスの練習をするμ’sメンバーたちの姿があった。海未のリズム取りに従って踊るその姿は息がぴったりと揃っている。

――そう、見えていた。

 

 

「――あうっ!」

 

床に何かを打ちつける音と、軽い悲鳴。

その正体はバランスを崩すように尻餅をついて倒れた希だった。痛そうに腰をさする彼女を心配するように、他のメンバーたちが慌てて駆け寄った。

 

「希ちゃん!大丈夫!?」

 

「あいたた……ごめんな穂乃果ちゃん。ウチならほら、ちょっと転んだだけやから大丈夫や」

 

穂乃果をはじめとして心配そうな表情で見つめるメンバーに対して、希は安心させるかのように笑顔を浮かべて答えた。

だがその中で、表情が晴れない者もいた。

 

「……そうは見えないけど」

 

「にこっち?」

 

にこだ。

彼女は怪訝そうな――問い詰めるような表情で希のことを見つめていた。

 

「アンタ今朝から変よ。どこか上の空になってるみたいだし」

 

「え~?ちょっとバランス崩しただけやし、そんなことあらへんよ」

 

にこの言葉にケラケラと笑って答える希。

いつもと変わらない朗らかな笑みのそれは、にこの言葉はただの思い込みで、事実何ともない“ように見える”。

そしてそこに、にこに同調するように絵里が前に出た。

 

「だとしても派手に転んだみたいだし、大事になる前に保健室で診てもらうべきじゃないかしら?」

 

「もう、心配症やねエリチは」

 

困ったような笑みを浮かべる希。

一見普段と変わらないような彼女の姿を、穂乃果、ことり、凛、花陽は心配そうに。絵里とにこは怪訝な表情で。そして海未と真姫は憂いを帯びた表情で見つめていた――

 

 

 

 

 

 

――保健室。

 

「……うん、特に心配はなさそうね」

 

「ありがとな真姫ちゃん、さすがお医者さんの娘さんやね♪」

 

「別に、これくらい大したことないわよ」

 

あれから、絵里をはじめとしたメンバーたちに診てもらうように圧された希は保健室にいた。

希自身は何度も「大丈夫」だと言ったのだが、「怪我をしていたらどうする」という至極真っ当な意見によって、ほぼ強制的に保健室に行くことになったのだ。

希の意志を無視する――ともとれるかもしれないが、裏を返せばμ’sの皆がそれだけ希のことを大事に想っていることの証でもあった。

 

そしてメンバーを代表して真姫に引っ張られる――もとい、付き添われる形で保健室を訪れたのだが、保険医が留守にしていたこともあり、多少医療知識を持つ真姫が見ることになったのだ。

その結果は打撲や足を捻った様子もない、健康体そのものだった。わかってはいたがほっと胸を撫で下ろす希。

 

対する真姫は使った道具を棚の中へと戻していく。

その最中、希に背を向けたままぽつりと呟いた。

 

「……ねえ、希。この間はどんな用があったの?」

 

「んー? ……バイト先の神社でどうしても外せない仕事があっただけやで?」

 

「……そうなの」

 

真姫の言うこの間とは、初めて番犬所を訪れた――デストラップの討滅に向かった日のことを指しているのだろう。

とはいえ本当のことを言うわけにもいかないため、適当な言い訳で誤魔化す希。

騙しているようで少々心苦しいが――そんなことを考えていると、真姫が再び口を開いた。

 

 

「希、何か隠してるでしょ」

 

どきり、と心臓が跳ね上がる。

気づいた時には、真姫は振り返って希のことをじっと見つめていた。こちらをじっと見据える真姫の視線に、できるだけ平静を装うようにして答える。

 

「……そんなことあらへんよ?」

 

「……そう……」

 

希は平静を装うので必死だった。

実際のところ、真姫の言葉は確信を突いていたのだ。

希の隠し事――それは今、彼女の中で大きく占めている悩み事のことだった。

 

――魔戒法師を続けるために、μ’sを、音ノ木坂の生徒を辞めるか否か。先日オルトスに問いだされた選択のことだった。

魔戒法師を――ホラーと戦うことを決めたのは紛れもない彼女自身の意志。人々を、μ’sのみんなを守りたいと思ったが故に、彼女は法師を辞めるなんてことはしたくなかった。

 

だがそれでも――音ノ木坂を、μ’sを去るというのは話が別だ。

彼女が最も大事にしている居場所であり、何が何でも手放したくない友達、それがμ’sだ。

そんなμ’sを手放さなければいけないというのは、元来寂しがり屋であった希にはあまりにも酷な話だった。

 

魔戒法師としてμ’sのみんなを守りたい。だがそのためにはμ’sを手放さなければいけない。その選択が、希のことを大いに悩ませていた。

にこに言われたときには否定したが、今朝からずっと上の空になっていたのはそれが理由だった。法師を諦めるか、μ’sを諦めるか――希にはどちらを選べばよいのか、わからなかった。

 

 

「ねえ、希」

 

「ん?」

 

「希は……遠くに行っちゃったりしないわよね?」

 

不安げな――涙をこらえているようにも見える表情の真姫に、希は何も答えることができなかった。

 

 

 

**

 

 

 

「奥様、お茶をお持ちしました」

 

一方同じころ、園田家にて彩牙はお茶汲みの手伝いをしていた。

盆に茶と茶菓子を載せ、襖を開けた先では海未の母が客人――日舞の関係者と談笑に華を咲かせている姿があった。

上品な笑みを浮かべているその姿は、妙齢でありながらもとても高校生の娘がいるとは思えない美しさを醸し出していた。

 

「ありがとう彩牙さん、いつもご苦労様ですね」

 

「勿体ないお言葉です。それではお客様、奥様、ごゆっくりお過ごしください」

 

茶と茶菓子を差し出し、早々に客間を後にする彩牙。

空になった盆を片付けるため、台所へと足を運んでいくその最中、ふと希のことを想った。

 

海未の友人で彼女と同じスクールアイドルであり、そして魔戒法師でもある希。

だが彼女は今、これまでの暮らしを――一介の高校生であることを、μ’sであることを捨てるかどうか迫られている。それは海未たちμ’sの皆と別れることも意味していた。

 

最初から――少なくとも記憶があるころから――魔戒騎士として生きてきた自分とは違う。希はつい先日まで何も知らず、ただの女子高生として生きてきたのだ。

当然それまで積み重ねてきたものが――友人とそれにまつわる思い出がある。

それらを捨てろと言われて、そう簡単にできるものなのだろうか。

 

彼女の気持ちがわかる――などとは、彩牙には到底言えない。

記憶がなかった彩牙と希では、あまりにも違い過ぎるのだ。置かれた状況もその立場も、積み重ねてきたものの重さも。

だから彩牙はこうするべきなどとは言わない。希が自分で決めなければ何も意味がないからだ。

 

そうしている内に、台所に辿りついていた。

盆を拭き、元の場所に戻す。そうして一息つこうとした時、彩牙の視界にあるものが留まった。

テーブルの上に無造作に置いてあった“それ”を見た瞬間、彩牙の目は大きく見開かれた。

 

「――っ!? ザルバ、これは……!」

 

『ああ、指令書だ。だがこいつは……』

 

そこにあったのは一通の封筒――番犬所の指令書だった。

だがその色は普段目にする赤一色ではなく、漆黒に染まっていた。

漆黒の指令書――それは決して断ることのできない、厳命であることを意味していた。

 

『どうやら、面倒なことになりそうだな』

 

警戒するようなザルバの言葉を耳にしながら、彩牙は険しい表情で指令書を見つめ、それを持つ手に無意識に力を籠めた。

 

 

 

**

 

 

 

――虹の番犬所

 

「……あ、彩牙くん」

 

「希、君のところにも来たのか」

 

「うん、お仕事ってあんな風に来るんやね」

 

指令書の招集により番犬所を訪れた彩牙だったが、そこには既に先客がいた。

その一人が希だ。とは言っても彼女は彩牙とほぼ同時に番犬所に訪れたのだが。

彼女も彩牙と同じように黒い指令書によって呼び出されたのだ。

ちなみに彼女の場合は帰ろうとしたときの下駄箱の中に入れられていたのだが、それは割愛しよう。

そしてもう一人――

 

 

「なんだ、お前まで来たのか。オッサンはともかく俺だけで十分なのによ」

 

「……その言葉、そっくりそのまま返してやる」

 

コテツだ。

彼もまた二人と同じように黒い指令書を受け取り、ここにいた。

だが彩牙と対面した瞬間挑発的な言動をとり、彩牙自身もその挑発に乗るかのように言葉を返す。

火花を散らすように睨み合う二人。顔を合わせた途端に険悪な雰囲気となった彩牙とコテツを不安そうに見つめる希の視界に、ある人物が映りこんだ。

 

「……」

 

壮年の魔戒騎士――大和だ。

彼は言い争う彩牙とコテツを一瞥すると呆れたように溜息を吐き、静かに佇んでいた。

この場における一番の年長者である彼に対し、希はやや緊張気味に話しかけた。

 

「あの……あなたは……?」

 

「……む。私は魔戒騎士の大和という者だが……そうか、お前が彩牙の言っていた法師の……」

 

「は、はい。ウチ、東條希っていいます。よろしくお願いします!」

 

「うむ」

 

そう言ったっきり再び黙り込み、静かに目を閉じる大和。

そんな彼に対し、希はさっきから気になっていたことを問いだした。

 

「……それで、あの……止めないんですか?あの二人」

 

希が差した先にあったのは、先程から互いを挑発するような言い争いをする彩牙とコテツの姿があった。

売り言葉に買い言葉といわんばかりに言い争いを繰り広げる二人はヒートアップしたのか、取っ組み合い一歩手前という姿を晒していた。互いを睨み合うその表情からは、最早歯軋りが聞こえてきそうな勢いだった。

 

「……勝手にやらせておけ。剣さえ抜かなければ掟破りにはならん」

 

「え?でも……」

 

「何度言っても聴かんのだ。言うだけ無駄だ」

 

「……そ、そうなんですか?」

 

呆れ返ったように――諦めを含んでいるようなその言葉に、希はもう一度彩牙とコテツの方に視線を向ける。

 

 

「――上等だ!どっちが強いかハッキリさせてやる!」

 

「ああ、この間の決着をつけてやる!」

 

 

「……ホントに大丈夫なんやろか」

 

とても落ち着きそうにない二人の姿を目にし、不安げに呟く希。

それと同時に、呆れ返ってしまう大和の気持ちがわかってしまうのであった。

 

 

 

 

「――よう集まってくれたのう」

 

そんな折、突如辺りに響いた声。それは一体いつから居たというのか、いつものソファにどっしりと腰かけたオルトスのものだった。

神官である彼女の登場により、希や大和は勿論、それまで言い争いをしていた彩牙とコテツもその喧噪をピタリと止め、オルトスと向き合った。

そうしてこの場にいる者の視線を一身に受けたオルトスは満を持したように口を開いた。

 

「お主たちを呼んだのはな、ちと厄介な事が起きてしまったのじゃ」

 

「……ホラーが出たんですか?」

 

「いや、そうではない。“まだ”の」

 

希の問いに奇妙な返答をするオルトス。

疑問符を浮かべる希をよそにオルトスは再び口を開いていく。

 

「お主らは“ガザリウスの門”を聞いたことはあるかの?」

 

「……それはまた、厄介なものが……」

 

オルトスの言葉に、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる大和。

だが聞き覚えのないその単語に彩牙にコテツ、そして希の三人は首を傾げた。

 

「……知ってるか?ゾルバ」

 

『……ええ。大昔に闇に堕ちた法師が作り出した魔導具です』

 

『こいつがまた厄介な代物でな』

 

ザルバとゾルバの話ではこうだ。

ガザリウスの門とは大昔に闇に堕ちた魔戒法師が闇の力を得るために作り出した、魔界からホラーを召喚する魔導具なのだ。その材料には陰我の溜まった素材が――主に人骨などが使われると云う。

そして周辺の陰我を集めて濃縮することで、強大なホラーを呼び寄せるゲートとなるのだ。それこそ最初から固有の姿を持つ強大なホラーを。

 

だがガザリウスの門はそれだけではない。最大の特徴は“複数使用が前提であること”なのだ。

各地に配置された門がその周辺の陰我を集め、複数の門の内一台に集められた陰我が一点に集められるのである。しかもどれが本体か決まっているわけではなく、一台一台が本体としての機能を持つ――生物でいう群体と同様の性質があった。

その上一台を潰しても蓄積された陰我は別の門へ送られるため、確実に一台も残さずに潰さなければホラー召喚を近づけてしまうという厄介な事極まりない機能も持っていた。

 

「そんな物がこの街に……?」

 

「うむ。門が設置された場所には既にいくつか目処をつけておる。お主らには手分けして門を破壊してもらうぞ」

 

「わかりました」

 

「虱潰しか……ま、仕方ないか」

 

「――行くぞ」

 

門の破壊のため、番犬所を後にしていく彩牙にコテツ、そして大和。

その後に続こうとした希だったが――

 

 

「希、ちょいと話がある」

 

その背にかけられたオルトスの声が、希の歩みを止めた。

振り返った希の視線の先には、指令の内容を伝えた時とはまた別の意味で険しい表情を浮かべたオルトスの姿があった。

 

「あの、なにか……?」

 

「……先日の話の件、答えは決まったかの?」

 

「っ! それは……」

 

オルトスの言いたいことはすぐに分かった。

法師として生きるために学校を辞める決心がついたかどうか聞いているのだ。

しかし希はまだそのことについて答えを決めていない。決められていない。

答えに詰まった希に、オルトスは仕方ないと言わんばかりにため息をついた。

 

「……わしもすぐに答えを出せとは言わん。じゃがな、いつまでも目を逸らしてばかりではいられんぞ」

 

「……はい」

 

 

わかっていた。

いつまでも引き延ばしていられるようなことではないと。

わかっているからこそ、答えを出すことができなかった。

 

 

 

**

 

 

 

――夜の街・その一角

 

「――えいっ!」

 

掛け声と共に放たれた、魔法衣に身を包んだ希の魔導筆の筆先から伸びる光。

その光は鞭のようにしなりながら伸びていき、何もない空間で突然ピタリとその動きを止めた。

――いや、“何もない”のではない。その光の先端はまるで何かを引っ張っているかのように震え、光の先にある空間は陽炎のように蠢いていた。

そして――

 

「てぇいっ!」

 

何もない空間から光が引っ張り出したのは、人骨でできた門――ガザリウスの門だった。

多くの闇を纏った門は防衛機能が働いたのか、自らを引き摺りだした希に対して闇でできた手を伸ばす。

希の首を締め上げようと、その手が彼女の目前まで迫った時――

 

「――ムンッ!」

 

横から割り込んできた一振りの剣が、闇の手を両断した。

長い刀身を持つ剣――魔戒剣を振るったのは、黒いコートに身を包んだ壮年の男――大和だった。

彼はその鋭い目つきでガザリウスの門を睨むと、懐から魔導筆を取り出して五芒星の陣を描き、その陣を魔導筆で一突きした。すると五芒星の陣から五つの光弾が門に向かって飛び出していった。

五つの光弾を浴びたガザリウスの門は悲鳴のような断末魔を上げ、纏っていた闇が天に昇っていくように消えていく。すると最後に残った人骨の門はガラガラと音を立てて崩れていった。

 

大和が門を破壊する一連の流れを、隣で頭に刻みこむようにじっと見つめていた希。

そんな希に、大和は手にしていた魔導筆を改めて見せつけるように向き合った。

 

「よく覚えておけ。これが法師が門を封印する術だ」

 

「……はい!」

 

希は今、大和と共に行動してガザリウスの門を潰しに回っていた。

お互いに初対面の二人が行動を共にする理由だが、それはガザリウスの門の破壊方法にあった。

 

ガザリウスの門の破壊は通常のエレメントを浄化するのと同じ方法であった。故に彩牙とコテツはそれぞれ単独で門の破壊が可能であった。

しかし魔戒法師であり、素人でもある希は法師としての浄化方法を知らなかった。その上、彩牙とコテツも、法師ならではの方法は知らなかった。もっともこの二人は魔戒騎士なのだから知らなくて当然だが。

 

そこで挙がったのが大和だった。

魔戒騎士であると同時に魔戒法師でもある彼は、法師ならではの浄化方法をよく熟知していた。

そのため彼が希と行動を共にすることで、法師による浄化方法を彼女に伝授する――というのが、今に至る理由であった。

 

「では次に行くぞ。今夜中に片付けられる分は片付けておく」

 

「は、はい!」

 

次の門がある地点へと向かって歩き出す大和の背を、慌てるように追いかける希。

自分は法師なのだ。大和がやってみせた浄化方法とその術をしっかりと身に着け、自分一人でもできるようにならなければならない。

今は無数にあると言われている門を一つでも多く破壊しないといけない。自分のことで悩んでいる状況ではないのだ。

 

――そう思っていた時だ。

 

「法師の道を歩むために、これまでの生活を捨てるかどうか決められずにいるそうだな」

 

「――っ!?」

 

背を向け、歩みを止めないままの大和の言葉に、希の意識は一気に冷え切った。

いったん頭の隅に追いやっていた――いや、“目を逸らしていた”といっても過言ではない問題を突き付けられ、凍ったように固まる希。

こちらに背を向けている大和の姿が、まるでいつまでも決められずにいる自分のことを責めているように感じた。

 

「……私は、今のお前が法師の道を歩むべきではないと思っている」

 

「っ! どうしてですか、素人のウチじゃ頼りないからですか!?」

 

大和の言葉に思わず食ってかかる希。普段声を荒げるような真似をしない彼女にしては珍しいことだった。

しかしそれも無理はない。確かに希は魔戒法師としては未熟だ。彩牙たちのように鍛えているわけでもない。豊富な種類の術を扱えるわけでもなく、唯一胸を張れるのが防壁のみだ。凄まじい法力を持っているとは言われているが、比較対象のない彼女にはいまいちその実感がなかった。

 

だけどそれでも、仮にもホラーと戦うことを決めた身だ。

今はまだまだ未熟かもしれない。だがこれから自分に足りないものを、業を磨いていこうと決めていたのだ。

それを無下にして未熟だからやめろと言われるのは、いくら温厚な希でも我慢できなかった。

 

しかし、大和の答えは違った。

 

「そうではない。お前には法力も、それを活かすための下地もある。修練を積めば十分に立派な法師になれるだろう」

 

「なら、どうして――――」

 

 

 

 

 

 

「自分が進むべき道を決められない者に、背中を預けることはできん」

 

「……っ!」

 

頭をガンと打ちつけられたような衝撃が走った。

自分の道を決められない者はいざという時に決断を下すことができず、それが原因で自分や仲間の命、果てには守るべき者の命さえも危険に晒すことに繋がりかねない。

フラフラして答えを出さない者に頼ることはできない――大和の言いたいこととは、そういうことだったのだ。

 

去っていく大和の背中に、希は何も言い返すことができなかった。

 

 

 

**

 

 

 

――音ノ木坂・屋上

μ’sの練習場所となっているその場所では、今日も変わらずにラブライブに向けて練習に励むμ’sの姿が――

 

「…………」

 

「――希。ねえ希ってば」

 

「…………あっ。ごめんなエリチ、どうしたん?」

 

――違う。いつも通りではない。

その中の一人、希は練習の最中にふらふらとした動きを繰り返し、絵里の呼びかけにもすぐに応じられないほどに意識が朦朧とした様子を見せていた。

絵里をはじめとしたメンバーたちはそんな彼女が怪我でもしないかと心配し、なかなか練習が進まずにいた。

 

「寝不足かしら? ちゃんと寝なきゃダメよ」

 

「あはは……ごめんなぁ、面白い占いの本見つけてついつい夜更かししちゃったんよ」

 

「それで体調崩してちゃ世話ないわよ。アイドルたるもの自己管理は大切よ!」

 

「はーい」

 

絵里やにこに窘められた希は普段と変わらないように気丈に答えたが、やはりどこかふらついていた。

そんな様子を、海未や穂乃果をはじめとした他のメンバーたちも心配そうな眼差しで見つめていた。

 

「あんなにふらついている希ちゃん、始めて見ました……」

 

「何か困ってるのなら凛たちも何か助けになりたいにゃ……」

 

「そうですね……」

 

今もまた、ダンスをしようとして足が覚束ない様子を見せる希。

そんな姿を目の当たりにして、海未は思った。ここ数日、彩牙が毎晩家を空けていることと何か関係があるのだろうか――と。

 

 

 

 

 

 

――ガザリウスの門の探索及び破壊を始めてから数日が経過した。

希は現在、日中は普通の女子高生としてμ’sの活動を、夜は法師として大和らと共に門の探索と破壊を行うという生活を送っていた。

日中にガザリウスの門の探索を行わないのは彼女が女子高生としての生活を疎かにしないため――というわけではない。日中に探索を行わないのは彩牙やコテツ、大和たちも同じであった。

 

それというのも、ガザリウスの門の特性が理由だった。

ガザリウスの門が陰我を集められるのは夜間だけなのだ。それ以外の時間帯では機能を停止し、休眠状態に入る。

その間、門は人界と魔界の境目に潜むことで身を守り、現世から干渉することは一切不可能になってしまうのだ。

それ故にガザリウスの門を破壊するには陰我を集め、干渉が可能である夜間に限られるのである。

 

その結果、まだ法師としての経験が浅い希の睡眠時間はじわじわと削られて今に至る――というわけだ。

なお、彩牙たち騎士の三人に関しては、少ない睡眠時間で十分に体を休める術をとうの昔に身につけてある。そうでなければ昼間にエレメント捜索、夜にホラー討滅というタイトな生活サイクルを送ることはできないからだ。

 

その上、これまでの生活を――μ’sを捨てるか否かという、彼女にとってこれ以上なく辛い選択が希の心を、身体を蝕んでいた。

病は気からとはよく言ったものだ。

 

 

――希……このままじゃ……

 

そんな事情は知らなくとも、痛々しい希の姿がいたたまれなくなったのか、絵里はちらりと穂乃果に目配せをした。

すると絵里の視線を受けてか、穂乃果は少し考えるようなそぶりを見せ、そして――

 

 

「……ああーーーっ!! 宿題がまだ残ってるの忘れてたーーっ!海未ちゃん、ことりちゃん、教えてっ!」

 

「ええっ!?どうしたの穂乃果ちゃん!?」

 

「夏休みの宿題ならこの間つきっきりで――」

 

そう言いかけた海未だが、穂乃果の目を見て思い留まった。穂乃果の目は「話を合わせてくれ」と語っていたのだ。

彼女の目、そして今の状況を考えた海未は穂乃果の意図が読めた。

今は“口実”が必要なのだ。

 

「……まったく、仕方ありませんね穂乃果は」

 

「私もお手伝いするね♪」

 

「二人ともごめんねぇ……じゃっ、そういうわけでわたくし高坂穂乃果は誠に勝手ながら練習を早退します! みんなまたねー!」

 

そう告げてあっという間に屋上から去っていった穂乃果たち2年生組。

その姿をメンバーの多くがポカンとした表情で見つめていた中、凛が何か閃いたような表情を見せ――

 

「にゃああぁぁぁーーーっ!! 凛も宿題忘れてたよぉーー!真姫ちゃん手伝って!お願いっ!」

 

「ぅええっ!?わ、わかったから引っ張らないでよ!」

 

「凛ちゃん、私も手伝うよ!お腹すかないようにおにぎり持っていくからね!」

 

「というわけで、緊急事態発生のため凛たちも今日は早退します! いっくにゃーーー!!」

 

穂乃果たちに続くように、凛を先導にして嵐のように去っていった1年生組。

余談だがこの数分後、凛の言ったことは事実であることが明らかになるのだが、それは隅に置いておこう。

 

そうして屋上に残ったのは絵里、にこ、そして希の3年生組だけとなった。

呆然とした表情を浮かべる希に対し、絵里とにこは仕方ないと言わんばかりに含みのある笑みを浮かべていた。

 

「……これじゃ、練習どころじゃないかしら?」

 

「そうねぇ、にこにーの可愛らしさの秘訣を伝授できないんじゃ仕方ないわよねぇ」

 

「……えりち、にこっち?」

 

困惑した表情で絵里たちを見つめる希。

普段だったら逆の立場であろうその光景が可笑しいのか、絵里はクスリとした笑みを隠し切れなかった。

 

「ねえ二人とも、帰り……どこか寄っていかない?」

 

 

 

 

 

 

――秋葉原、小通りのクレープ屋。

いつか来たことのある小さなクレープ屋に、希たち3年生組の姿はあった。

 

「はい、お待ちどうさん!」

 

「ありがとうございます」

 

恰幅の良い女店主からクレープを受け取る絵里。チョコレートソースがたっぷりと乗った彼女好みのクレープだ。

それを手に、先にクレープを買っていた希とにこの下へと早足で駆け寄っていく。そうして三人揃って満面の笑みでクレープに舌鼓を打つ。

 

「ん~っ! やっぱり美味しいわねここ!」

 

「ホンマやね♪ 隠れた名店っていうんやろか」

 

「穂乃果もいいとこ見つけてくれたわよねー、にこに相応しい味だわ」

 

和気藹々と笑い合う三人。

共にクレープを食べ、笑い合う絵里とにこの姿を見て、顔には出さずに希は考える。

――やっぱり、二人といるのは……いや、μ’sの皆といるのは楽しい。いつまでもこうやって一緒に笑い合いたいと思う。魔戒関連のことがなければ、知らなければそうしていただろう、と。

 

しかしその反面で、その笑顔を失ってしまうかもしれないと考える。

法師の道を捨て、一般人としての道を選んだら自分にホラーと戦う力は――皆を守る力はなくなってしまう。そうなったらホラーから皆を守れない。ホラーの手によってこの笑顔が失われてしまうかもしれない。

だが法師としての道を選んだら今この時は――μ’sの皆と共に笑い合う時間は失われてしまう。幼い頃からずっと望んできたこの時を手放すのはあまりにも心苦しい。

 

一体どちらを選ぶべきなのか――

考えを巡らせていた、そんなときだ。

 

 

「――希、何かあったの?」

 

おもむろにかけられた声。

意識と視線をそちらに映すと、そこには希の顔を心配そうにじいっと覗きこむ絵里とにこの姿があった。……いや、にこの方はやや不機嫌そうに見えた。

表情に出てしまっていたのだろうか――そんなことを考え、希はいつものようにあっけからんと表情を浮かべた。

 

「何もあらへんよ。ちょっと寝不足の疲れが溜まってるだけで――」

 

「何か悩みがあるってことぐらい、わかってるわよ」

 

希の言葉を遮ったのはにこだった。

驚きの目で彼女の方を見ると、呆れたような表情で希を見つめていた。

 

「あそこまでぼうっとしてたらね、寝不足以外にも何かあるってわかるわよ」

 

「話して希、一体何があったの?」

 

「……」

 

絵里とにこの言葉に押し黙る希の中に、葛藤が生まれる。話してしまってよいものか、と。

普通に考えればホラーとの戦いに関することを、いくら友とはいえ普通の人間に話すことは許されないだろう。話さないべきだと、希の中の法師としての心が告げる。

しかし――

 

「言いたくないなら無理に話す必要もないわよ」

 

「……ううん。あんな、二人に相談したいことがあるんよ」

 

希の中の少女としての心は、打ち明けるべきだと告げていた。

いくら魔戒法師としての道を歩もうとしても、希はまだ若干17歳の少女なのだ。背負いこめるものには限度がある。

彼女にとってあまりにも心苦しい選択についての悩みを共に打ち明けることを、一体誰が責められようか――

 

 

 

 

 

 

 

 

「………つまり、話をまとめると」

 

「どうしてもやりたいこと――もとい、やらなきゃいけないことがあって、それをやりぬくためには学校を辞めるように言われて悩んでるのね」

 

希は話した。

己が抱える問題――法師として生きるために学校を、学生を辞めるか、もしくは法師として生きるのを諦めて普通の人間として生きるかを。

ただし、流石にホラー絡みのことを話すわけにはいかないので、その辺りは適当に誤魔化していたが。

一連の話を聞いたにこは、怒ったように口を開いた。

 

「名付け親のくせにμ’sを抜けるなんて許さないわよ!……って言いたいところだけど、それと天秤にかけるほど大事なことなのね」

 

「……うん、そうなんよ。ウチにとってはどっちもすごく大事なことやから、どうしたらええのか頭こんがらがっちゃって……」

 

そんな簡単に決められるようなことではなかった。

法師の道を諦めるには彩牙たちのこと、ホラーのこと、海未のこと、多くのことを知りすぎた。μ’sを――学校を辞めるには絵里やにこ、彼女たちをはじめとしたμ’sのメンバー――友を、思い出を作りすぎた。

どちらも捨てるにはあまりにも大きすぎるため、希は決断を下せずにいた。

 

 

「……ねえ希、一つ聞いていいかしら?」

 

ふいにあがった声。

それはこれまで沈黙を保ちながら話を聞いていた絵里のものだった。

 

「希はμ’sのことも、やりたいことっていうのも大事で、手放したくないのよね?」

 

「……うん、そうやで?」

 

「アンタ、ちゃんと話聞いてたの?」

 

呆れたような視線を絵里に向けるにこだが、当の絵里は不思議そうな表情を浮かべていた。

そんな彼女の姿に、自分は何か可笑しなことを言っただろうかと、希は思った。

μ’sを抜けるかもしれないということ自体可笑しな話ではあるが、そのことについてではなさそうだった。

一体何のことについて――そう考えていると、何か答えに辿りついたかのような表情の絵里が口を開いた。

 

「希、その答えはあなたの中でもう出てるんじゃないの?」

 

「…………え?」

 

絵里の言葉に呆然とした表情を浮かべた希が、気の抜けた返事をしたのも無理はなかった。

――答えが出ている?自分の中で?ありえない。もしそうだったらこんなに悩むような真似はしていないではないか。

そんな考えを見抜いたのか、絵里は仕方ないと言わんばかりの表情を浮かべた。

 

「……まさかこの言葉を、あなたに返すことになるとはね」

 

「えりち……?」

 

「ねえ、希――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――希の本当にやりたいことって、何?」

 

 

――ウチの、やりたいこと?

ウチがやりたいのは、法師としてホラーから人々を――みんなを守りたくて。でもえりちたちμ’sのみんなと一緒にμ’sを続けたくて。

でもどっちか選ばないといけへんから…………あれ?

どっち、か……?

 

 

呆然と、自分が抱いていた悩みに疑問を持つ希。

そんな希に、絵里が優しい声色で語りかける。

 

「……少しくらい、自分の気持ちに我儘になってもいいんじゃない?」

 

その言葉で、希は理解した。

自分の答えを。自分はどんな道を選ぶべきか――いや、選びたかったのか。

そう、絵里の言う通り答えは最初から自分の中にあったのだ。ただ「できるわけがない」と思い込み、無意識に蓋をしてしまっていただけで。

そのことに気づき、希の表情が晴れやかになっていく。暗闇の中に差し込んだ、一筋の光のように。

 

「――そっか、そうやったんやね。ウチの答えは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――しばらく後

 

「それにしても以外ね。希もあんな風に悩むことがあったなんてね」

 

秋葉原の街の中を、並んで歩く絵里とにこの姿があった。

あの後、希は大事な用事があると言って先に帰ったため、こうして二人で街の中を歩いていたのだ。

 

そんな中、にこは希の思い悩む姿に思いを馳せる。

彼女にとって希はいつも一歩引いたようなところから何か企んでいる……とまではいかなくとも達観しているところがあり、うじうじ悩むようなイメージがなかったのだ。

それ故に、物事を決められずに悩むという姿は心から珍しかった。

 

「あら、希ってああ見えて内気で結構寂しがり屋なところがあるのよ」

 

「そうだったの? あまりそうは見えなかったけど」

 

「まあ、今じゃ滅多に見れないからね」

 

「へぇ、カメラにでも撮っておいた方がよかったかしら?」

 

軽やかに言葉を交わしていく絵里とにこ。そこにはもう希のことを心配している様子はなかった。

希はもう大丈夫だろう。

あの晴れやかな笑顔にはもう、悩みこむ様子は見えなかった。彼女は自分の悩みに、彼女なりの答えを見つけたのだ。そうでなければあんな笑顔を浮かべることはできない。

大事な友達が元気を取り戻したことに安堵している中、ふと思い出したかのようににこが呟いた。

 

「……そういえば、希の“やりたいこと”って結局何だったのかしら?」

 

その呟きは、夕焼けに包まれた街の喧噪の中に消えていった。

 

 

 

**

 

 

 

――同じ頃、街の一角。

 

「……これが、残りの門の位置ですか?」

 

「そうだ、昨夜のうちに目星をつけておいた。これらで最後だろう」

 

人目の付かない路地裏の中に、間に何か挟んでいる彩牙と大和の姿があった。

二人の間に広げられているのは、所々に目印がつけられたこの街の地図。昨夜のうちに大和が目星をつけていたという、残りのガザリウスの門の位置だった。

二人は今、今後の門の破壊の方針を練っていたのだ。なおこの場にいないコテツはエレメントの浄化に回っており、後程大和が連絡するとのことである。

 

今一度、彩牙は大和が示した地図に視線を移す。

――確かに、この数ならば今夜中にすべて破壊することができるだろう。“四組に”分かれれば十分に行えるはずだ。

そんなことを考えている中、不意に大和が口を開いた。

 

「お前はあの娘……東條のことをどう思う」

 

突然切り出してきたのは希についての話題。

今現在自らの在り方について悩んでいる彼女が“どんな道を選ぶのか”と聞いていた。これまでの暮らしをすべて捨てて法師として生きるのか、法師を辞めてこれまでと変わらない一般人としての道を選ぶのか。

 

「……それは希が決めることです。俺にはかんけ――」

 

「“お前は”どうしてほしいのだ」

 

――違った。

“どちらの道に進んでほしいと思っているのか”。希がどちらを選ぶと思うのかではなく、どちらを選んでほしいのかと聞いていたのだ。

大和の質問の意味を理解した彩牙は――

 

「……それこそ、俺には関係のないことです。俺の願いなど、彼女の選択には関係ないですから」

 

あっけからんと、表情を変えることなく答えた。

そんな彩牙の態度が不思議に思ったのか、大和は再び口を開いた。

 

「……随分と余裕そうだな。お前が紹介したのであろうに、心配ではないのか?」

 

「確かに、心配してないと言えば嘘になります。ですが――」

 

彩牙の脳裏にあの日の光景が浮かび上がる。

希が法師として戦うことを決め、彩牙と初めて共に戦ったあの日のことを。

あの日、希は悩みながらも最後は自分の心に従って道を選んだ。

だから今度も――

 

 

「希はきっと、自分のやりたいように……そんな道を選ぶと、信じています」

 

 

 

**

 

 

 

――その日の夜、街の一角

 

 

「……えいっ!」

 

華やかな掛け声と共に、魔導筆で描いた五芒星から放たれた光弾が人骨でできた門に命中し、そこから漏れだした闇が宙に解けて消えていく。

そこには単独でガザリウスの門を破壊する希の姿があった。その隣には魔戒法師の大先輩である大和の姿はない。

数日間の探索に渡って大和に術の使い方を教えられたため、今では一人で門の破壊ができるようになったのだ。この物覚えの良さも、彼女の美点なのだろう。

 

そうして門の探索と破壊を行う希だが、その表情は昨日までとは違って非常に晴れやかなものだった。

術を身に着けたことでスムーズに門の破壊ができるようになったのもあるだろうが、やはり一番の理由はずっと悩んでいた選択肢にようやく答えが出せたことだろう。それも満足のいく答えを。

 

と、そこでふと思った。

自分が出したその答えを、オルトスはおろかまだ誰にも話していなかった。

もう急ぐようなことではないが、やっぱりちゃんと話しておきたいと思った。ちょうど今日でガザリウスの門をすべて破壊できるはずなので、終わった時に話そうと思った。

 

「さて、ウチの分は今ので最後のはず――」

 

今日の探索を始める前に大和に教えられた分では、自分のノルマは今の門で最後だったはずだ。

まだ残っているかわからないが、他の人に合流して手伝おうと思った時――

 

「――――っ!! な、何なん今の……!?」

 

――ぞわり。

背筋に走った激しい悪寒。

恐ろしさすら感じるその悪寒に何事かと思い、魔導筆を再び構えて辺りを警戒するが、周囲には何もなく、何の気配もない。それがかえって不気味だった。

そんなとき、魔法衣のコートの裏側から震える何かを感じた。

 

「……彩牙くん?」

 

それは大和から連絡用にと渡された魔戒符だった。

表面に筆で描かれたザルバの顔が浮かんでいることから、通信相手は彩牙だということがわかった。

もしかすると今しがた感じた悪寒と何か関係があるのだろうか――そう思い、通信に応じた。

 

「彩牙くん、どうか――」

 

『ヤバイことになったぞ嬢ちゃん!!』

 

魔戒符の向こうから聞こえてきたのは、ザルバの切羽詰まった声だった。

よく耳を澄ましてみると、ザルバの声の背後からは剣戟の音や獣の鳴き声のようなものまで聞こえていた。

 

「どうかしたん!?」

 

『いいか嬢ちゃん!決して一人でこっちに来るな!大和と合流してから―――っ!小僧!!』

 

「ザルちゃん!?ザルちゃん!!」

 

ブツリ。と、それっきり通話が途絶えてしまった。

今のザルバの声、後ろから聞こえてきた戦いの音、どうみても只事ではない。あそこまで切羽詰まったザルバの声は、希は聞いたことがない。

もしかすると、さっきの悪寒の正体はこれだったのかもしれない。

 

「――っ、彩牙くん……!」

 

通信が途絶えるや否や、すぐに希は駆け出した。

ザルバは大和と合流してから来いと言っていた。つまりそれだけ深刻な事態が起きているということだ。

そんな中に自分一人だけで向かったら危険では済まないだろう。大和と合流してから行くのが賢明な判断だろう。

 

だが、希はそれまで待つことができなかった。

友達が危険な目に遭っているかもしれないのに自分だけ安全な位置にいるなど、希にはできなかったのだ。

 

 

 

**

 

 

 

――それは、時を少しだけ遡る。

 

「どうだ?ザルバ」

 

『ああ、次が最後の一つだ』

 

大和が示した情報をもとに、次々とガザリウスの門を破壊してきた彩牙。大和の情報が確かだったこともあって門の破壊は順調に進み、己の分は残り一つになっていた。

そうして辿りついた先はコンテナ置き場だった。積み上げられたコンテナ群が迷路のようになっていた場所だった。

 

その中を迷うことなく進んでいく彩牙。

そうして辿りついたのは少し開けた場所だった。まるでコンテナでできた広間のような空間の一角に、ザルバが反応した。

 

『あったぞ、あの隅の辺りだ』

 

ザルバが指した箇所――角のようになっていた箇所に、僅かながら空間の歪みを感じた。

遂に見つけた最後の一つ。いざ破壊しようと歩を進めていくと、横から割り込むように一つの人影が現れた。

それを目にした彩牙は、思わず眉を顰めた。

 

「……コテツか」

 

「なんだよ、お前もこっちにいたのか」

 

そこにいたのはコテツだった。彼も彩牙の存在に気づき、「げ」と言いたげな表情を浮かべていた。

しかしそこで気を取り直し、普段の不遜な表情を浮かべたコテツが、改めて口を開いた。

 

「それで、お前の方はまだ終わってないのか?」

 

「いや、あれが最後の一つだ」

 

「奇遇だな、“俺も”あれが最後の一つだ」

 

そう言ってコテツが指したのは、つい先程彩牙が見つけた門だった。

――しばしの間、沈黙が辺りを包む。

 

「……」

 

「あっ、てめ」

 

彩牙がガザリウスの門に向かって歩き出し、それを追うように歩き出したコテツが彩牙を追い越していく。歩みを速め、コテツを追い抜き返していく彩牙。またも追い抜いていくコテツ。

歩みが進むたびにその足は速くなっていき、互いが追い抜くのを繰り返していく。やがて歩みは早足になり、終いには互いに全力疾走する形となった。

 

――どんな形であれ、コイツに負けるのだけは我慢ならない!!

 

そんな子供じみたような思いと共に駆け出していく二人は、どんどんガザリウスの門へと距離を縮めていく。

やがて門が目前に迫った時、互いよりいち早く破壊しようとほぼ同時に魔戒剣を抜いた時、それは起きた。

 

『……っ!これは……!』

 

突然空から降ってくるように現れた闇色の靄。

それらは迷うことなく、一つ残らずガザリウスの門へと吸い込まれていき、大量の闇を吸収した門は闇色の光を放ち、胎動するような鼓動を打つ。

事態の急変を前にした彩牙とコテツはそれまでいがみ合っていたのが嘘のように、一刻も早く門を破壊しようと魔戒剣を突き出した。

二振りの魔戒剣がガザリウスの門へと突き刺さろうとした時、扉が開く音が響き――

 

 

 

噴き出した闇が、二人を襲った。

 

 

 

**

 

 

 

「……はあっ、はあっ……!」

 

――数分後

その場に現れたのは、ザルバからの通信を聞き付けた希だった。

余程急いできたのか呼吸は乱れ、顔には珠のような汗が張り付いていた。しかしそれらを気にも留めず、辺りをぐるりと見渡した。

 

「なんなん、これ……!?」

 

そこは彩牙がいるはずのコンテナ置き場だった。しかしその様相は本来の姿から一変していた。

積み上げられていたコンテナは無残に散らばり、中には大きく窪んだものや、食い破られたかのように破損しているものがあった。

地面もあちこちが抉れており、希はまるで戦場にいるかのような錯覚を覚えた。

ホラーと戦ったにしても、ここまで大荒れになるなど想像もつかなかった。

 

「彩牙くん、どこにおるん……!?」

 

これでは彩牙の無事がますます不安になる。ザルバの話では相当深刻な状況にいるはずなのだ。

急いで探さなければと思い、足を踏み出そうとした時――

 

 

 

 

――目の前を、“何か”が猛烈な速さで通り過ぎていった。

 

「きゃあっ!? い、一体何が……?」

 

勢いのあまり突風まで起こして通り過ぎた“何か”は轟音と共にコンテナへと衝突した。

砂埃が舞い上がって辺りを包み、咄嗟に目を庇う希。

やがて砂埃が収まり、“何か”衝突したコンテナの姿が露になると、その正体が判明した。

 

 

『く……そ、がっ……』

 

そこにいたのは灰色の鎧を纏った騎士――灰塵騎士カゲロウこと、コテツだった。

身体がコンテナにめり込んだカゲロウは呻き声を上げながら身じろぎをするが、やがてがっくりと項垂れるように意識を失い、鎧が解除された。

そうして露になったコテツの姿は全身血や痣だらけであり、満身創痍と言った様子だった。

そこでコテツであることがようやくわかった――鎧を纏った姿を初めて見たのだから当然だが――希は驚愕の表情を浮かべ、慌ててコテツの下へと駆け寄った。

 

「コテツくん大丈夫!? 一体何があったん!?」

 

『東條、さん……危険、です……』

 

意識を失ったコテツに代わって答えたのは、首から下げられたゾルバだった。

おそらく表面にできた傷により言語機能に不具合が出たのだろう、彼の言葉もまた絶え絶えであった。

そして――何があったのかという希の疑問はこの直後、明らかになるのだった。

 

「――っ!?」

 

突然背後から現れた気配。それと同時に感じた、今までにない恐怖と悪寒。

反射的に魔導筆を取り出し、振り返る希。その先にあったのは、コンテナの上からこちらを見下ろす巨大な長い“何か”だった。

竜か何かと見間違えるような“それ”は、ゆっくりと希の方に向かって身を乗り出し、点滅を繰り返す照明に照らされて姿が明らかになった。

 

一言で言うのなら、それは巨大なムカデだった。

しかしその身の各所には悪魔のような翼が生えており、その巨体を悠然と宙に浮かべていた。

そして頭があるべき部分からは一糸纏わぬ女性の上半身が生えていた。――その上半身だけで希の二倍近くはあり、肌は人間ではありえないほどの青白さであったが。

 

“それ”は紛れもなくホラーだった。きっと最後に残ったガザリウスの門から出現したのかもしれないと、希は推測した。

しかし彼女は知らなかった。目の前にいるのはただのホラーではないということを。

そこにいるのは非常に強力な力を持ち、“使徒”の称号を与えられたホラー。

その名は――

 

 

 

 

――魔装ホラー・アバドン!

 

 

『ホホウ、今度ハ魔戒法師ガ現レオッタカ。ソレモ女子トハ妾ノ大好物デハナイカエ』

 

「……っ!」

 

アバドンにその存在を認知され、魔導筆を構える希。

蛇に睨まれた蛙のように絶対的な強者に怯える心を奮い立たせ、魔導筆を握る手に力が入る。ホラーと戦った経験はまだ少ないが、それでも目の前にいるホラーがこれまでとは桁違いであることはすぐに分かった。

その証拠に魔戒騎士であるコテツは今、自らの後ろで倒れているのだから。

 

『いけません、東條さん……あなたでは奴には……』

 

「そうかもしれへんけど、コテツくんを見捨てることなんてできへんよ!」

 

ゾルバの言葉に、希は毅然と返した。

今自分が逃げるなりしたら、アバドンは気を失っているコテツを容赦なく喰らうだろう。

それがわかっていたからこそ、希は逃げるという手を取らず、アバドンの真正面から立ち向かっていた。

 

『ホホホ……ソレデハオ望ミ通リ二人仲良ク喰ラッテヤルトシヨウカノウ!』

 

「っ!」

 

その言葉と同時に、その巨体を躍らせて襲い掛かるアバドン。

凄まじい勢いで迫るアバドンを前に恐怖心を抑え、魔導筆で防壁の陣を描こうとする希。

そしてアバドンの巨体が目前まで迫った、その瞬間――

 

 

『――オオオオオォォォォォッ!』

 

『ヌウッ!?』

 

突然横から飛び込んできた人影がアバドンに体当たりし、よろめかせたのだ。

突然のことに動揺を隠せない希だったが、その正体はすぐに明らかになった。

 

「彩牙くん!?」

 

そこにいたのは黄金の騎士――ガロの鎧を纏った彩牙だった。

しかしその鎧は所々が欠け、内側から噴き出てきたと思しき血で汚れており、如何にアバドンに追い詰められていたかが読み取れた。

その瞬間ガロの瞳と希の瞳――同じ緑色の瞳が見つめあった。

 

『希、コテツを!』

 

「っ! う、うん!」

 

一瞬呆然としたもののすぐに気を取り直し、コンテナに埋まったコテツを助け出す希。それを尻目に、ガロはアバドンに斬りかかっていく。

牙狼剣を振るい、斬りかかっていくガロ。しかし牙狼剣を振るう腕のみならず、全身の動きが重いものとなっていた。

その理由はわざわざ説明するまでもなく、今のガロの姿を見れば明らかだった。

故に――

 

『ホホ。軽イ、軽イノウ』

 

『――っ!』

 

アバドンの指に軽々と受け止められたのは、無理もないことだった。

 

『マサカ、ガロガココマデ弱クナッテオルトハ期待外レモイイトコロジャ。ソレニ――』

 

『ぅ――おっ!?』

 

驚愕を隠せないガロの身体が、アバドンの指に掴まれた牙狼剣ごと持ち上げられ、そのまま宙に投げ出される。

そうして投げ出されたガロの周囲をアバドンの胴体――ムカデのそれが取り囲む。

 

『ソノミスボラシイ姿ハ何ジャ、妾ノ知ッテイルガロノ鎧ハ忌々シイ輝キヲ放ッテオッタゾ。ソレデガロヲ名乗ロウトハ――』

 

取り囲んだアバドンの胴体から生える脚――ムカデの脚そのものであるそれらが、骨が砕けるような音と共にその形を変えていく。

あるものは剣に、あるものは槍に、あるものは槌に。

そして、振りかぶるようなそぶりを見せると――

 

『――身ノ程知ラズニモ程ガアル!』

 

『ぐああああああっ!!』

 

一斉に、取り囲んでいたガロに向かって襲い掛かった。

防御もままならないまま、嵐のような凶器の猛攻に晒されるガロ。

斬り裂かれ、突き貫かれ、叩きつけられ、その猛攻はあまりにも凄まじく、外からはガロの姿が確認できない程だった。

やがてガロの叫びも聞こえなくなり、アバドンの脚がその動きを止めると、力なく項垂れたガロの身体が崩れ落ち、地に落ちると同時にその鎧は解除された。

 

血まみれになり、倒れ伏す彩牙。

その姿を、アバドンは愉快そうに笑いながら見下ろしていた。

 

『ホホホホホ、呆気ナイノウ。忌々シイガロノ系譜ガコンナ形デ終ワルコトニナルトハナ』

 

そうして倒れ伏す彩牙に手を伸ばすアバドン。喰らおうとしていることは明白だった。

その手が彩牙の身体に届こうとした時――

 

『ムッ!?』

 

バチリ、という音と共に弾かれたアバドンの手。

手が届こうとした瞬間、彩牙との間に淡い紫色に輝く壁が現れ、アバドンの手を弾いたのだ。

突然のことに驚いていると、どこからか伸びてきた光の鞭が彩牙に巻き付き、その身体をアバドンの下から引っ張り出した。

アバドンがその光の鞭を目で追った先には、傍らにコテツを横たわらせ、魔導筆から伸びる光の鞭で彩牙の身体を引っ張る希の姿があった。

 

『ホ、小娘ガ無粋ナ真似ヲシテクレタノウ』

 

「彩牙くんたちはやらせへんよ!」

 

彩牙の身体を手元まで手繰り寄せた希は横たわる二人の前に立ち、魔導筆を構え、毅然とした表情でアバドンを睨みつける。

だがアバドンは愉快でたまらないと言わんばかりに高笑いし、希の目の前まであっという間に距離を詰めた。

その素早さに驚きつつも咄嗟に防壁を張る希。それと同時にアバドンの脚が防壁とぶつかり合った。

 

――お、重い!こんなんを彩牙くんは何度も……!――

 

アバドンの脚による一撃は想像以上に重く、もしこんなものを生身で受けてしまえば自分の身体など粉々に砕けてしまうだろうと、希は思った。鎧を纏っていたとはいえ、彩牙はこんなものを何重にも受けたのだ、立てなくなるのも無理はない。

一瞬でも気を緩めればすぐに防壁を破られてしまうかもしれない。そんな危機感と共に防壁を張り続ける希に対し、アバドンは愉快そうな笑みを崩さずにいた。

 

『ホホホ、ワカル、ワカルゾ。幾人モノ騎士ヤ法師ヲ見テキタ妾ニハワカル。キサマ、“ナリタテノ”法師ジャナ?』

 

アバドンの脚、その一本がその形をチェーンソーに変え、エンジンの唸り声と共に防壁に襲い掛かる。

防壁が削られていき、その欠片が火花のように舞い上がる。

 

『ナント愚カナ娘ヨ。半端ナ覚悟デ首ヲ突ッ込マナケレバ平穏ナ余生ヲ送レタモノヲ』

 

チェーンソーに変化したアバドンの脚が防壁を削っていく中、もう一本の脚がまたもその形を変え始めた。

螺旋を巻いたドリルへと変化したその脚は金切り声のような唸り声を上げ、チェーンソーと同時に防壁へと襲い掛かる。

ドリルによって防壁にヒビが走り始め、希は負けじと防壁を維持する力を更に籠める。

 

『サア、陰我ニ満チタコノ世ニ絶望シテ死ンデユクガヨイ。全テ妾ガ喰ウテヤルワ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さっきから何言うてんのかなぁ」

 

『ナニ?』

 

アバドンの脚の猛攻により防壁が破られかけている希。

これまでにない危機を迎えているにもかかわらず、その表情は恐怖にも絶望にも染まっていなかった。

そこにはただ、決して諦めないという強い意志が現れていた。

 

「確かにウチは半端だったかもしれんよ。ひょっとしたら勝手に絶望してたのかもしれへんね」

 

そう、アバドンの言うことも一理あった。

半端な覚悟だったが故に、法師を辞めるか学校を辞めるかで悩んだ、迷い続けた。迷いに溺れるあまり、決めることができないと勝手に絶望していたのかもしれない。

 

「でもウチは決めたんよ。誰になんて言われても、ウチの決めた道を行くって」

 

だけど気づいたのだ。

答えは見つからなかったのではなく、最初からあったのに見て見ぬふりをしていただけだったのを。勝手に諦めていたということを。

自分に足りなかったのは、その答えを選ぶ覚悟だったのだ。

そのことに気づいた今、もう迷うことはない。その答えを背負う覚悟はある。

なぜならそれは――

 

 

 

「ウチはただ、ウチのやりたいようにやるだけなんや!」

 

 

――自分が心からやりたいと願うことなのだから。

 

 

 

『……クダラヌ。ナラバソノ思イヲ抱イタママ、妾ニ喰ワレルガヨイ!』

 

「――っ!」

 

毅然とした希の答えが面白くなかったのか、アバドンは防壁を削っていたチェーンソーとドリルに更に力を籠めた。

そうして防壁の全面にヒビが広がっていき、遂に限界が訪れ、ガラスが砕けるかのようにして防壁は割れ、砕け散っていった。

 

ガラスの破片のように舞い、消滅していく防壁の欠片。

それを前にした希は驚愕に満ちた表情を浮かべるも、すぐに気を取り直し、また新たな防壁を張ろうとする。自分と、後ろで倒れ伏す彩牙とコテツを守るために。

だがそれよりも早く、チェーンソーやドリル――アバドンの脚が彼女らに襲い掛かる。

もはやそれらの凶器によって希の身体が無残に引き裂かれるかと思われた、その時――

 

 

『――ム? ヌオッ!?』

 

脚が届く寸前、アバドンの身体は“なにか”によって後方へと引っ張られ、その巨体は地面へと打ちつけられた。

何が起こったのか――突然の出来事に驚きを隠せない希の目に、アバドンを引っ張った“なにか”の正体が映し出された。

 

それは一筋の光の鞭だった。

アバドンの胴体――ムカデの身体の尾の端に巻き付いていたそれはアバドンからしゅるりと離れると、発生源へと戻っていくように縮んでいく。

光の鞭が縮んでいった先には、一人の男がいた。

光の鞭の発生源――魔導筆を携えた男は鋭い瞳でアバドンを見下ろしていた。

 

希は、その男に見覚えがあった。

先日まで共に門を破壊して回っていた、自分と同じ魔戒法師であると同時に魔戒騎士でもある男――

 

 

「――大和さん……!」

 

――鬼戸大和が立っていた。

 

『ヌゥ……マタ魔戒法師カ。イイトコロデ邪魔ヲシオッテ……!』

 

体勢を立て直し、恨めしそう大和を睨むアバドン。並の人間ならば睨まれただけで失神してしまいかねない程の威圧感を放っていた。

しかし、それであるにも拘らず、大和は何事もないかのようにアバドンを無視し、希のことをじっと見つめていた。

 

見つめられていることに緊張感を覚える希。

数秒間であるはずなのに何分間もそうしているような錯覚を抱いた時、大和がその口を静かに開いた。

 

 

「……いい目をするようになった」

 

「……!」

 

穏やかでいて、それでいて力強い瞳と言葉。

それらが自分に向けられていることに気付き、希の表情は明るいものへと変化していった。

――認められたのだと。共に戦える者として。

 

『妾ヲ無視シヨッテ!人間風情ガ生意気ナァァァ!』

 

無視された怒りに震え、その巨体を躍らせて大和に襲い掛かるアバドン。

大和は迫りくるアバドンを前に狼狽えるそぶりを見せず、魔導筆を懐に仕舞い、代わるように抜いた魔戒剣で足下を一突きした。

それと同時に大和の足下に蒼い光の輪が広がり、やがてそこから鎧のパーツが飛び出し、大和の身体に装着されていく。

 

光が収まった時、そこにいたのは――波紋騎士・イブだった。

 

『――ムンッ!!』

 

目前まで迫ったアバドンに、イブは手にした大剣――波紋剣を振りぬいた。

それと同時に離れた場所にいた希が思わず目を庇うほどの凄まじい風圧が起こり、それをまともに喰らったアバドンはイブの脇に吹き飛ばされ、そこにあったコンテナ群に突っ込んでいった。

そうしてイブは再度希と向き合い、ただ一言を発した。

 

『背中は任せるぞ』

 

「―――! はいっ!」

 

気合の入った希の返事を見届け、イブはアバドンが吹き飛ばされた場所に向かった。

そこにはコンテナ群に体半分が突っ込んだアバドンがピクリとも身動きをしていなかった。

ゆっくりと、だが力強い足取りでアバドンに近づいていくと――

 

『ムウッ……!』

 

突然アバドンの胴体が動き出し、無数にある脚がイブに襲い掛かった。

すかさずイブは波紋剣で受け止め、弾き返し、脚を両断したが、アバドンに大したダメージ受けた様子はなかった。

 

『……手応えはない、か』

 

無論、無数にある脚の一本でしかないということもあるだろう。しかし弾き返したとき、イブは脚の攻撃による衝撃を増幅してアバドンに返したのだ。

にもかかわらず、アバドンに目立ったダメージがあるようには見えない。それはつまりアバドンの耐久性はイブの想定以上ということだ。

 

この様子では波紋剣による波を放っても大した効果はないだろう。

そんな時、アバドンの体半分が埋まっているコンテナ群が動き出し――

 

『ホホホホホ! タカガ魔戒騎士ガ妾ヲ倒セルト思ウテカ!』

 

高笑いをあげ――それでいて、イブに対する怒りの形相を露にしたアバドンがコンテナを撒き散らしながら起き上がる。

起き上がったことで降ってくるコンテナを避けたイブの前に、脚を大剣や槍など多数の武器に変化させたアバドンが襲い掛かる。

 

いくらイブが腕の立つ騎士であろうと、一度に迫りくる多数の武器に剣一本では立ち向かえないだろう。先程の黄金騎士のように圧倒的武装をもって蹂躙してやると、アバドンは考えたのだ。

イブの危機を感じた希だったが、その表情は驚愕に包まれた。イブは迫りくる多数の武器を前に回避できず――否、避けようとも防ごうともしなかったのだ。

 

――大和さん、どうして!?

 

捌ききれないと考え、諦めたのかと思い、希は援護に動こうとした。しかしすぐに違うと気づいた。

イブの瞳から闘志の炎は消えていなかったのだ。

その証拠に避けようとも防ごうともしないイブだが、その代わりに波紋剣で地面を一突きしていた。

 

甲高い音が鳴り響き、イブの足下に蒼色に輝く陣が現れる。

陣から放たれる光は強くなり、やがてイブの姿を包み込むほどに強く輝くと――

 

 

 

――途方もない衝撃が、アバドンを襲った。

 

『――ナニッ!?』

 

衝撃に弾き飛ばされ、武器に変化していた脚がバラバラに崩れ落ちたアバドンは今一度イブのいた場所に視線を向けた。希もつられるように再度視線を向けた。

そこにはイブの身の丈の二、三倍はある蒼色の光があった。

未だ強く輝くその光は突然フッと消え、代わりにそこにいる“モノ”の姿が露になった。

 

そこにいたのはイブだった。

いや、正確にはイブだけではない。“あるもの”に跨ったイブの姿があった。

それは一頭の馬だった。しかしただの馬ではない。イブと同じように蒼い甲冑に身を包んだ雄々しい馬の姿があった。

希は、その馬からザルバやゾルバに近しい気配を感じ取っていた。

 

――それは大いなる力。

百体のホラーを討滅し、試練を乗り越えた騎士のみが所有することを許される力。

魔獣の魂が封じ込められたその馬は、騎士の足となり、盾となり、矛となり、共にホラーを打ち倒す存在。

魔界より召喚される大いなる力。その名は――

 

 

 

 

――魔導馬・仇武(アダム)

 

 

『ハアッ!!』

 

――ヒヒィィィィィン!!

 

イブの檄と共に咆哮をあげ、駆け出した仇武。

甲冑の擦れ合う音と蹄鉄の足音を響かせながら、まっすぐにアバドンへと駆け抜けていく。

それをただ見ているアバドンではない。そのムカデのような巨体をしならせ、鞭のように叩きつけた。

 

しかし仇武はそれを軽々と避け、イブが波紋剣でアバドンの脚を斬り落としていく。

それだけに留まらず、仇武はアバドンの胴体に飛び乗り、その巨体を一本の道にして駆け抜けていく。

アバドンは脚を駆使して攻撃するが、仇武はそれらをことごとく避け、それを操るイブの波紋剣によって斬り落とされていく。

やがてアバドンの頭頂部――女性体の下まで辿りつくと、すれ違いざまに波紋剣を一閃する。

 

『ギィヤァァァァァァァ!!』

 

宙に跳び、地面に着地し、火花を散らしながらアバドンに振り返る仇武。それと同時にボトリと響く、肉の塊が落ちる音。

イブの視線の先には、両腕を失い、痛みに悶え、憤怒の形相で睨みつけるアバドンの姿があった。

すれ違いにざまに振るわれた波紋剣を防ぐため、咄嗟に構えた両腕が斬り落とされたのだ。

 

『妾ノ美シイ腕ガ!妾ノ美貌ガ! 許サヌ、許サヌゾコノ痴レ者ガ!』

 

怒りに身を任せ、再度イブに襲い掛かるアバドン。

イブはそんなアバドンを前にしても落ち着きを失わず、波紋剣を横向きに構えた。

イブは構えた波紋剣の刃を仇武の鬣に――弦のように硬くそびえ立つそれに押し当てる。

 

一呼吸。狼の唸り声と共に大きく息を吐き出すイブ。

やがてアバドンが目前まで迫った時――

 

 

 

 

 

弦が響く音と共に、波紋剣を一気に引き抜いた。

 

『――ギャアアアァァァァァ!?』

 

それと同時に響き渡る、アバドンの苦痛に満ちた悲鳴。

弦の音と同時に全身に発生した鈍く深い激痛が、アバドンの巨体に襲い掛かる。

イブはただ仇武の鬣を波紋剣で弾いているのにどういうことか――その答えは、一部始終を見ていた希の目にはっきりと映っていた。

 

アバドンのムカデのような胴体――先程仇武が駆け抜けたそこに、いくつもの小さな印があった。

それは馬の足跡――仇武の蹄鉄の跡だった。それらが弦の音に共鳴するように輝いていたのだ。

そう、これこそが仇武を召喚したイブの真骨頂。

仇武の蹄鉄の跡は云わばスピーカー。波紋剣で仇武の鬣を弾き鳴らすことで蹄鉄の跡に対象を破壊する“波”を送り込んでいるのだ。

 

『ソノ音カ! ソノ耳障リナ音ヲ止メヨ!!』

 

自身を襲う激痛の原因が、イブが弾き鳴らす音にあると読んだアバドンは、脚を槍に変化させ、イブに向けて突き出した。

迫る槍を前にしてもイブは躊躇わず、波紋剣で仇武の鬣を弾き続ける。

やがて槍がイブに突き刺さろうとした時――

 

『――ナニッ!?』

 

突然現れた紫色の壁がアバドンの槍を弾き、へし折った。

何事か――いや、考えるまでもない。この壁をアバドンは先程まで目にしていた。

そう、先程自分が破ったこの壁を張ったのは――

 

 

「そうくるやろなあって、思ったで」

 

魔戒法師の少女――希だった。

不敵な笑みを浮かべ、魔導筆を構える彼女はアバドンのことをまっすぐに見つめていた。

してやったりと言わんばかりのその表情と、今もなお自らを襲い、徐々に増していく苦痛にアバドンは更に強い怒りに包まれる。人間で言うならば頭に血が昇ったと表現するのが適しているだろう。

 

『コ……ノ……ッ! 小娘マデモガ妾ヲ愚弄スルカァッ!!』

 

その叫びと共に放たれたのは、アバドンの脚だった。

切り離し、砲弾のように飛び出したそれは単純な凶器となり、希に襲い掛かる。

しかしイブを守るために――より強固なものとした防壁を張り続ける希にはそれを維持するため、襲い来る脚を防ぐ手立てはない。

そして目前まで迫った脚が希の身体を無残に吹き飛ばすかと思われた時――

 

 

 

――ガキンッ

 

 

突然響いた金属音。それと同時に勢いを失い、見当違いの場所で地に落ちた脚。

希が防いだのか――違う。希にはイブを守る防壁の維持のため、そんな余裕はない。

その答えは彼女の前にあった。

そこには二人の男がいた。白いコートと黒いコートに身を包み、血まみれで倒れていた二人の少年の姿が――

 

「寝てばっかりってのも、カッコつかないしな!」

 

「すまない希、遅くなった」

 

「――彩牙くん! コテツくん!」

 

魔戒剣を振るい、迫っていたアバドンの脚を弾き飛ばした彩牙とコテツの姿があった。

先程まで倒れ伏していた二人の騎士の復活に、希の表情に晴れやかな笑顔が宿る。

 

それとは対照的に、アバドンに怒りと絶望が織り混ざった表情が現れる。

絶対的強者であるはずの自分に歯向かい、一度打ち負かされたにもかかわらず、ここまで虚仮にされたことに激痛を越えた怒りが現れる。

この場の全員をただ殺すだけでは収まらない。じっくりと嬲り殺しにして喰ってやらねば気が済まなかった。

 

しかしこの場にいる人間には、アバドンのそんな思いなどどうでもよかった。

目の前にいる魔獣を討滅すること――彼らにあるのはそれだけだった。

 

『グ、ギ、ガッ……! ヤ、止メヨ……ヤメヨォォォォォ―――!』

 

仇武の鬣を弾き鳴らすイブの動きが、激しさを増していく。それと同時に響く音も荒々しさと深みを増していく。

それに呼応するように、アバドンの全身に印された蹄鉄の跡がその輝きを増していき、堅硬な外骨格にヒビを走らせていく。

他に何も考えることができないほどの苦痛――体が内部から崩壊していくような感覚のそれに苦しみ、のたうち回るアバドン。

 

やがて、アバドンの全身がヒビに覆われ、その内側から蒼色の光が漏れ出すとイブは波紋剣を鬣から一気に引き抜き、弦の音が鳴り響くと同時に波紋剣は一回りも二回りもある巨大な大剣――波紋斬馬剣へと姿を変えた。

そして仇武を駆けらせ、瞬く間にアバドンの下へ接近するとすれ違いざまに波紋斬馬剣を振りかぶり、その巨体を一刀両断した。

 

『ギィィヤァァァァァァァァ――!』

 

断末魔を響かせ、蒼い輝きと共に爆散するアバドン。

こうして邪悪な魔導具に導かれ、人界に現れた使徒ホラーは人間を喰うこともないまま、討滅されたのだった。

 

 

 

**

 

 

 

――虹の番犬所

 

「答えは出たのかの?」

 

「はい」

 

アバドンを討滅した後、ガザリウスの門が全て破壊されたことの報告も兼ねて番犬所を訪れた希が、主であるオルトスと向かい合っていた。後方では彩牙と大和が彼女の姿を見守っていた。尚、コテツはいつの間にか姿を消していたため、この場にはいなかった。

 

オルトスが問うのは法師を続けるために今の学生としての生活を捨てるか否か、その答えを希に問いかけていた。

誤魔化しは許さないというオルトスの視線を浴びる中、臆することはない希は自らが見つけた答えを口にした。

 

「どっちもやめません。それがウチの答えです」

 

「……それは、学生でありながら法師を続ける、ということか?」

 

「はい」

 

「……あえて聞こう、何故じゃ?」

 

法師も学生――μ’sもどちらも続ける。それが希の出した答えだった。

あのとき、絵里に言われて希はもう一度考えた。自分の本当にやりたいことは何なのかを。

法師として皆を守ること。学生として、スクールアイドルとして友達と共に今ある青春を駆け抜けること。どちらがやりたいことなのか。

答えは“どちらもやりたい”だった。しかし生来の臆病さによるものなのか、両立できるわけがないと無意識に決めつけてしまっていたのだ。

 

しかし希は、もうただの臆病で内気な少女ではない。

絵里に初めて話しかけたあの日、そしてμ’sに関わりを持つことを始めたあの日から、勇気をもって前に進むことを決めたのだ。

そして今、また勇気をもって前に進むべき時が来たのだ。一介の学生でありながら、魔戒法師としてホラーと戦う道を歩むことを。

そしてなにより――

 

「ウチがそうしたいって、どっちもやりたいって思ったからです」

 

どちらもやりたい、その本心を偽りたくなかったからだ。

そんな彼女を値踏みするような冷たい視線で見つめるオルトス。その視線から目を逸らさず、まっすぐに見つめ返す希。

互いの間に沈黙が流れ続けた時、その場に第三者の声が割り込んだ。

 

「……俺は、希の答えを支持します」

 

第三者――彩牙が希の隣に現れ、オルトスにまっすぐ向き合った。

驚いた表情の希が彼を見つめる中、彩牙は続けて口を開いた。

 

「希は自分が納得できる答えを出しました。自分を納得させられる人間にこそ、人を守ることができるのではないかと、俺は思います」

 

「彩牙くん……」

 

「それに俺が傍にいないとき、学友である希なら血の匂いに誘われたホラーから海未のことを守ることができると思います。……海未のことを救いたいという思いは、俺も彼女も変わらない筈です」

 

彩牙の言葉を受けても尚、オルトスは冷たい視線を崩さない。

だがそれでも希と彩牙は、オルトスにまっすぐと向き合い続けた。

 

 

「――よいではないですか。やらせましょう」

 

その時、新たな声がその場に響き渡った。

後方で希のことを見守っていた大和のものだ。彩牙のように希の隣に立つというようなことはしなかったものの、その声ははっきりと響き渡った。

 

「過去にも一国の指導者としての顔を持った騎士がおりました。それと比べれば東條のは可愛いもの、好きにやらせても問題はないでしょう。それに――」

 

 

 

 

 

 

「――仲間の選んだ答えは、尊重してやらねばなりますまい」

 

 

静寂に包まれる番犬所。

誰もが皆、希の、彩牙の、そして大和の言葉を受けたオルトスの反応を待ち続けていた。

幾らほどの時間が経過したのだろうか、その沈黙を破ったのは――

 

 

 

 

――呆れ返ったような、大きなため息だった。

 

「まったく、お主と言い彩牙と言いコテツと言い、若い連中はどうしてこうも儂の言うことを聞かんのじゃ。それに大和、お主までそっち側に立ちおって」

 

ため息と共にそう漏らすオルトス。

仕方ないと言わんばかりに呆れ返った表情だったが、心なしかどこか嬉しそうでもあった。

 

「勝手にせい。じゃがお主が決めたこと、吐いた唾は飲みこめぬぞ。それを肝に銘じることじゃな」

 

「――はい!」

 

そう言い残し、掛けていたソファごと闇の中へと消えていくオルトス。

それをずっと見続けていた希は認めれれて安堵すると同時に、これからのことに気が引き締められる。

これからは今までの日常生活に加え、本格的にホラーとの戦いに関わっていくことになる。どちらも疎かにしないと決めた今、それは大変なものになるだろう。

だがやるのだ、やりきらなければならない。

それを全て承知の上で、自分はこの道を選びたいという選択をしたのだから。

 

そんな希の肩にポン、と手が置かれた。

振り向けばそこには希と同じように安堵しつつ、凛々しい表情を浮かべた彩牙の姿があった。

 

「改めてよろしく頼む、希」

 

「……うん! これからもよろしゅうな、彩牙くん!」

 

一人の仲間として今一度、希は心からの笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……親子揃って、言い出したら梃子でも動かん奴らじゃのう」

 

その呟きは、誰の耳にも入ることはなかった。

 

 

 

**

 

 

 

――都内某所

 

「……これで支度は整った」

 

夜の闇に包まれたその場に、その男の姿はあった。

夜に溶け込むような闇色のローブに身を包んだ男――闇法師は今、“あるもの”を仕掛け終わったところだった。

 

今回の仕掛けは、闇法師にとってとてもスムーズに行った。

わざわざガザリウスの門という“目くらまし”を街中に設置した甲斐があった。そのお陰で番犬所の目は完全にそちらに向かい、こちらには邪魔が入るという手間が省けたのだ。

 

これで準備は整った。

後は時が来ればこの仕掛けが発動し、己が目的を果たすための一歩になるだろう。その目的を果たすためにも、黄金騎士にはあの少女を守り続けてもらわねばならない。

目的を果たす前に死んでしまうということがないように――

 

そうして闇法師はその場を――とある校舎を後にした。

桜の木々が並び立つ、その校舎を。

 

 

 

***

 

 

 

にこ「にっこにっこにー☆ みんなのアイドル、矢澤にこニコー♡」

 

にこ「にこはー、まかいきしとか、ほらーとかよくわからないけどー、みんなに笑顔になってもらいたいニコー☆」

 

にこ「……えっ、嘘!予告!?」

 

 

にこ「え、えーと! 次回、『偶像(アイドル)』!」

 

 

 

にこ「…………なによ、なんか文句あんの?」

 

 

 

 




魔戒指南


・ 魔導馬・仇武
イブが召喚する魔導馬であり、海のように深い蒼色の甲冑を纏っている。
その鬣は竪琴の弦のようになっており、波紋剣を弓にして弾き鳴らすことにより、蹄鉄の印をつけた相手へ直接波を流すことで身体を崩壊させることができる。
また、他の魔導馬と同じように召喚した騎士の剣を巨大な斬馬剣へと変えることができる。


・ 魔装ホラー・アバドン
ガザリウスの門より出現した、使徒ホラーの一体。
悪魔の羽を生やした巨大なムカデの胴体に、頭頂部は一糸纏わぬ女性の肉体を有している。
ムカデの脚一つ一つを様々な武器に姿を変えることで、圧倒的な手数によって相手を圧倒する。その姿は正に自在に宙を駆ける武器庫とも言える。
また、騎士や法師は勿論、同胞たるホラーをも見下している傲慢な性格の持ち主でもある。


・ ガザリウスの門
太古の昔、闇に堕ちた魔戒法師により作られた禁断の魔導具。
人骨などの陰我に満ちた材料で作られた門であり、周囲から陰我を取り込むことで魔界からホラーを召喚する。
複数使用が前提であり、一つの門が破壊されたとしてもそれまで溜め込んだ陰我は別の門へと送られ、全て破壊しない限り強力なホラーを呼び出しかねないリスクがある。
また、日中は人界と魔界の境目に潜むことで身を守るため、破壊するのは夜に限られる。

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