飛鳥と悟りの物語   作:桂木ヤユ

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今回飛鳥もさとり出て来ないですが、第二章開幕といった感じです。


~止まった時間~

 雨が降っている。それは冷たくて暖かいような不思議なもの。身体は段々冷たくなっていくのに自然と胸が躍る。理由は分からないけどそう思うんだもの。私は変な子ってよく言われるからそのせいかもしれない。

 

「へんな子でいいよー。」

 

 足元のこいしを蹴飛ばす。ちゃぽと音がして水たまりに落下する。

 

「さっきまで雨に打たれるだけのこいしは気が付いたら水の中。」

 

 私は少し可笑しくなって笑う。

 

「人生なんてそんなものだよ?理不尽でー不合理ー。だったら楽しまないと損じゃない。

 

 軽やかにスキップする。泥が跳ねてスカートにかかる。

 

「お姉ちゃんはそこが頭が固いんだよねー。」

 

 私は立ち止まりどんよりとした雲を見上げる。辺り一面雲で覆いつくされていて晴れる様子はない。

 

「元気にやってるかな?お姉ちゃん。また人間なんか信じてないといいけど。」

 

 私は再びスキップする。

 

 フンフンフフーン♪フンフフー♪

 

 私は立ち止まる。前方で人間が鼻歌を歌いながらスキップしている。

 

「あーあ。楽しい気分だったのに。なんで私が楽しいときに邪魔するのかなー。人間は。」

 

 私は服の中に入れておいた包丁を取り出す。

 

「大丈夫よ。今日はいい雨日和だから、血なんてすぐに洗い流してくれるし、遊ぶ気分でもないからすぐ終わらせてあげる。」

 

 ふふふ。私は人間の近くまで駆けていきその心臓にめがけて包丁を突き立て…。

 

『無暗な殺生はやめろ。名も無き妖怪よ。』

 

 私は立ち止まると、声のした方に向けて包丁を突き出す。しかし私と変わらないような身長の子供は身体を少しひねると軽々と躱した。

 

「神に仇名すとは良い度胸だね。名もなき妖怪。」

「さっきから名も無き妖怪名も無き妖怪ってうるさいんだけど。私には古明地こいしっていう名前がちゃんとあるのよ。」

「ごめんねー。なにせちょっと異質な妖怪みたいだからさキミ。古明地っていうことはさとり妖怪と繋がりがあるの?」

「さとりは私のお姉ちゃんの名前だよ。お姉ちゃんのこと知ってるの?」

 

 見たところ私より小さいけど私たち妖怪とも人間とも違うように見える。まあ本人が神って言ってるんだから神様なんだろうけど。邪魔しないで欲しいよね。

 

「姉のことは風の噂程度かな。嫌われ者のさとり妖怪が人間と仲良くしようとしてるって妖怪たちが笑ってたのを聞いたくらいさ。」

「世間では優しいっていうのかもしれないけど、そんなの、何の意味もないつまらないことなのに。何回裏切られても学習しないんだから。でもお姉ちゃんは純粋だからね。そんな健気なところも好きっ。」

 

 私は見えないお姉ちゃんを抱きしめるように腕を広げてくるりと回る。自称神様はそんな私を冷たい目踏みするような目で見ている。

 

「あっそうだ。その噂してた妖怪って今どこにいるか知ってる?」

「知らないなー。元より興味もなかったし。」

「そっかー。」

「探してもこの辺りにはいないと思うよ。それにただでさえほっといたら死んでく妖怪を殺してもなんにもならないしさ。」

「元より意味なんてないよ。意味のあることなんてお姉ちゃんと私のことだけ。あとは全部どうでもいいことだもん。」

「えらく閉じてるねー。まあさとり妖怪の力のことを考えたらキミの今の姿も必然といえば必然かもね。」

「なにか言った?」

 

 私はきょとんとした顔でそっちを見る。

 

「聞こえてないわけないと思うんだけどなー。いや、そうか。元より聞いちゃいないってことかな。」

「それじゃあね狸さん。次はそんなおんぼろの神様じゃなくてお姉ちゃんに化けてね。」

 

 私は笑顔でウインクすると軽やかに歩き出す。

 

 

 

 

「やれやれ。見抜かれるとはのう。これでも自信はあったんじゃが。」

「無理して神様に化けるからじゃない?適当な妖怪に化ければよかったのに。」

 

 いつの間にか後ろの木の上でぬえが寝転がっている。

 

「こればっかりは気分屋な自分が悪かろう。」

「とか言うけど本当はあの子を救ってあげたかったんじゃないの?」

 

 飄々としてるくせに相変わらず相変わらず鋭いの。

 

「…老婆心ってやつじゃよ。壊れた子供を正しい道に導いてやるのが先輩の務めじゃて。」

「私だったら悪の道に導いてやりたくなるけどね。」

「その方がまだ救いじゃったのかもな。」

「っていうと?」

「あの子は道を歩いておらん。同じところをずっと足踏みしとる。」

「ときにはそんなときもあるさ。でもそこを乗り越えたら一段と成長できるんじゃない?」

「それは漫画の読み過ぎじゃ。」

 

 あははーと笑うと言葉を続ける。

 

「だって面白いものは面白いしー。いやー人間って凄いよね。こんなん思いつくんだから。」

「お主もたまには妖怪らしいことせんか。」

「だってもうUMA考えるの飽きたんだもん。いい加減UFOも飽きられてるしさ。」

「そんな様子だとお主も消えてしまうぞ?」

 

 声のトーンを低くして言う。けれどぬえは相変わらずに楽しそうに話す。

 

「まあそうなったらなったで考えるよ。えっとなんだっけな。そう『幻想郷』。そこは妖怪の国だって言うじゃない?そこで生きるのも悪くないかなーって。」

「独り身は気楽でいいのう。」

「別にマミゾウも旦那も子供もいないからもう独り身じゃん。」

「はは、同じ独り身でもわしにはまだ慕ってくれるものたちがいるからな。おいそれと動くわけにはいかんのじゃよ。」

「やっぱ私みたいな気楽に生きてるやつが人生勝ち組だね。さっきの子みたいに思い悩んで壊れることもないし、マミゾウみたいにし苦悩することもないし。」

「どや顔で語ってるところ悪いがさっきからあの男性お主の下着を見ておるぞ。」

「えっ?うそ!?」

 

 ぬえは慌てて木から飛び降りると、顔を赤らめながら短いスカートを伸ばそうとする。

 

「嘘じゃよ。誰もおらんよ。」

「もう焦ったじゃない!騙したわね。」

「化かされる方が悪い。」

 

 ふぉっふぉっふぉ。

 

「もー!」

 

 ぷんすかと怒るぬえの声を聴きながら考える。あの子のことを。さとりのことを。

 

「さとりの方は今大阪にいるんじゃったかな。ふむ。一度話してみた方がいいかもしれんな。」

 

「何わけわかんないこと言ってるのさ!ちゃんと私の話聞きなさいよ!」

「そんなに恥ずかしがるのならもっと長いスカート履けばいいじゃろ?ほれ前にわしが見繕ってやったやつがあったじゃろ?」

「えーあれ古臭いもん。可愛くないしー。」

「そうかのう。いいと思うんじゃが…。」

 

 

 

 

 その頃飛鳥たちは選挙活動に勤しんでいた。




 辛うじてフレデリカ出てますがほぼ東方です。選挙関連の話にしようかとも思ったのですが、先のことを考えると外せない内容でしたので今回はこういう形になりました。

 今回もお読みいただきありがとうございます。閲覧者数が四千を超えて驚いていますが、それ糧にこれからも書いていこうと思います。気軽に感想等頂ければ嬉しいです。





PS 中間で美玲がタイプ別十四位という好成績で嬉しいです。
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