飛鳥と悟りの物語   作:桂木ヤユ

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 桃子先輩メイン回。すまない…話が暗くてすまない…。
さとり様の発言で多少疑問に思うところがあるとは思いますがそれは彼女が思考を読んで会話しているからです。


~居場所~

 一階のトレーニングルームでトレーニングウェアに着替えた全員で集まっている。

 

「というわけで今日はダンスレッスンなんだけど、みんなまだまだ基礎体力がついていないからアップも兼ねて少し外走るわよ。」

「えっ…桃子は別に体力は大丈夫かなーって。」

「私も…歌…の方が好きだし…。」

「何言ってるんですか二人とも!これはあの夕日に向かって走れ!とかいう熱血スポコン展開ですよ!」

「いや…そんなには走らないんじゃないかな。アップって言ってるしさ。」

「まあそうね。アップっていうのは怪我をしない為っていうのもあるし、近くの公園に行って帰って来るくらいかしら。」

「でもよく考えたら怪我しない為に走るっていうのは少し矛盾してるような気もするね。いや鶏が先か卵が先かって話の方がしっくりくるかな。」

「飛鳥知らないの?体は急には動かないのよ。だから激しい運動の前とかに体を暖める為にアップが必要なの。それは歌うのでも踊るのでも同じ。」

「桃子はちゃんとアップの意味は知ってるみたいね。じゃあ何で走りたくないのかしら?」

「えっ…それは…とにかく外は嫌なの!」

「…私は…走る…よ。」

「えっ杏奈もそっち側!」

「歌…と同じって…言われて…頑張らない…と。」

「歌ばっかりじゃない杏奈は。」

「そういうわけ…じゃないけど…。」

「まあ桃子ちゃん。私たちみんなで走るし大丈夫だよ。」

「みんなって言ったって個人は個人でしょ!」

「その意見には僕も同意だ。ヒトって生き物はどこまでいっても孤独な生き物なのさ。」

「もう二人して…。みんなでアイドル頑張ろうって決めたでしょ。こういうときにPがいれば上手く丸め込んでくれるんだけど。ここ最近営業ばっかりで。」

「みなさん、少しいいですか。桃子さんはここで走って他の方々で外で走ってくるのでどうでしょう?桃子さんにも何か事情があるのでしょう。それに私もここで待ってますから。」

「しょうがないわね。桃子もそれでいい?」

「私はいいわよ。別に走りたくないって言ってるわけじゃないし。」

「ん?でも最初に言ってたような…。」

「飛鳥ちゃん、しー!とりあえずさとりちゃんの言う通りにしておこう。ね?」

「じゃあそうね四十分くらいしたら戻ると思うわ。桃子はそうねえゆっくりでいいから十五分ね。」

「分かったわよ。」

「じゃあさとり、先輩を頼んだよ。」

「私にできることなんて見ていることくらいですけどね。」

 

 残された私たち二人には気まずい空気が流れている。先ほどの会話の後ですし仕方ないですね。

 

 さてどうしましょうか。桃子さんはむすっとした表情でぐるぐるとランニングを続けていますし。

 

「ごめんせっかく見学に来たっていうのに。」

「いえ、急に押し掛けたのは私の方ですし。」

「さとりは何歳?」

「…13歳です。」

「わたしより年上なんだから別に敬語とか使わなくていいわよ。さとりはアイドルでもなんでもないんだし先輩ってわけでもないし。」

「敬語を使う方が多いので最近ではすっかり慣れてしまっていて、むしろ話しやすいんですよ。」

「そうなの?まあいいけど。」

 

 そこで会話が途切れてしまった。うーんやはり敬語というものは距離を感じてしまうものなんでしょうか。

 

 まあそこはそれとして。桃子さんは年齢にしては様々な経験をしているようですね。大人の世界というものを知ってしまっているというか。家庭環境もよくないようですし。家族…ね。

 

「実は私両親がいないのですよ。」

「えっ?」

 

 彼女は驚き振り向いた。まあでしょうね。

 

「交通事故でね。それで私には妹がいたんですが別々の所に引き取られてしまって。」

「そう…。」

「まあ引き取られた先でもあまり上手くいってないのですよ。そりゃそうですよね。急に転がり込んできた他人な訳ですから。」

「…さとりは寂しくないの?」

「それは寂しいですよ。でも仕方のないことですから。」

「そんな!諦めちゃっていいの!」

 

 彼女は口調を荒げて言った。

 

「…諦めなかったら何か変わるんですか?」

「それは分かんないけど!でもきっと何かあるわよ!」

「そうですね。私もこの事務所を見てそう思えるようになりました。上手く言葉にできないですけれど、家族がいたらこんな感じなのかなって。」

「なんなのよ!急に!分からないって言ったり分かったようなこと言ったり。」

「こんなわたしだから思うんですよ。今回のこともただのすれ違いだってね。桃子さんは繋がりを欲している。本当はみんなと一緒にいたい。でも…。」

「あーもう分かった分かったわよ。私が悪いのよ。」

「悪い人なんていませんよここには。だからもっと周りを頼って甘えればいいと思います。」

「甘えるとかそんな子供みたいなこと…。」

「子供とか大人とか関係ないですよ。もっと素直に生きればいいんです。仮面なんて被る相手はここにはいません。」

 

 私は桃子を優しく抱きしめた。

 

「もう!そりゃ私だって…そうしたいけど。心の中がぐちゃぐちゃなの。私も私が分からないもん。」

「少しづつ踏み出していけばいいんですよ。今だって我慢せずに泣いたらいいんです。今見ている相手なんて世界で私くらいですよ?」

 

 エーンエンエンと彼女は堰を切ったように子供らしく泣き出した。

 

 そのまましばらく彼女が泣き止むまで抱きしめ続けた。

 

 

「ありがと。」

「私は思ったことを言っただけですよ。」

 

 家族のことはすべて嘘だけれど。それでも大人であろうとするあまり綱渡りを続ける彼女を見てはいられなかった。

 

 かわいそうだからと理由で慰めてしまうのは何よりもそんな自分を、そんな良いことをする自分を認めて欲しい承認欲求からくるものなのかな。

 

 まあそこも含めて大人なんてろくなものではないと思う。人間の大人よりもっと長くの時を生き、知ってしまっている自分はやはり、もっとろくなものじゃないのだろう。

 

「…アップ…で、も…もう…つ…つかれた。」

「まあ…最初はそんなもんよ。」

「やっぱり…肉体労働は僕の専門じゃないな。もっとこう思考労働みたいな…ないかな。」

「残念ながらアイドルは肉体労働よ。二人とも百合子を見習いなさい。」

「私運動は苦手なのですごく疲れましたけど…なんかこう…楽しいような…。」

 

「それはない。」「…それはない。」

 

「まったく楽しそうね。…。二人ともまだまだね!私なんかこのトレーニングルームの中100周はしたわ!」

「確かにずいぶん服が濡れている。まさかここに残ったのは秘密の特訓の為だったのかい?」

「ま、まあね。それよりアップも終わったことだし、ダンスレッスン始めるわよ。飛鳥に杏奈もまだまだいけるわよね?」

「望むところさ。」

「えっ…ちょっと休憩を…。」

「とりあえず私お茶取ってきますね。」

「ありがとう百合子。」

 

 

「さとりちゃんありがとうね。なんだか桃子もすっきり顔してるし。何か言ってくれたのでしょう?」

「いえたいしたことは言ってないですよ。少しズルをしましたから。」

「?Pみたいなこと言うのね。じゃあここからダンスレッスンだから期待しててね。ランニングよりは見甲斐があるわよ。なんなら一緒にやっても…。」

「いえ、見てるだけで十分ですよ。私は。」

 

 

 

 このみ:二人で話して何か仲良くなったみたいでね。

 このみ:あの桃子が積極的に話しかけてたのよ。

 峰岸透:それは何かお礼しないといけませんねぇ。

 峰岸透:ところでこのみさん。さとりさんの苗字ってなんでしたっけ?

 このみ:えっと確か古明地…だったかな。

 このみ:それがどうかしたの?もしかして知り合いとか?

 峰岸透:いえいえ。人の名前はフルネームで覚えないと失礼じゃないですかぁ。

 このみ:そうかな?まあしばらくは飛鳥のとこにいるらしいから。お礼を渡すなら事務所に顔出せばいいと思うわ。

 峰岸透:そうですか。ありがとうございます。っともう十二時回っていますよ。そろそろ寝ないとこのみさんのアダルティーな体に悪いですよ。

 このみ:嫌味言ってないで寝なさい。

 このみ:(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

 峰岸透:そうですね。おやすみなさい。

 このみ:おやすみー。

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
いやー今回8割シリアスでしたね。本当は日常もっと描く予定だったのに気が付いたらこうなっていた。何が起こったのか(ry
今回さとり様と桃子先輩ばかりで主人公の飛鳥が全然出ていない。
まあ次回こそは大丈夫かな。
 
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