今日は二月一三日。杏奈は百合子とともに杏奈の部屋でこたつに入っている。部屋はクーラーの音とキーボードをカチカチと叩く音がしている。
「明日ってバレンタインだけど杏奈ちゃんはもうチョコレート作ったの?」
「いや…まだ…だよ。」
二人はパソコンの画面を見つめキーボードを操作しながら話している。
「じゃあ一緒に作ろうよ!」
「ありがとう…。一人じゃ…自信なかったし…。」
「溶かして固めるだけだし簡単だよ。でも誰かと一緒に作る方が楽しいから。杏奈ちゃんもまだだったら一緒に作りたいなって。」
「うん。嬉しい…。」
百合子さんは優しい。それに趣味が合うこともあってよく私の部屋で一緒にゲームをしている。
「あっ百合子さん、ヘイト稼ぎ過ぎ。そっち行ったよ。」」
「ああ、ごめんごめん。話に夢中になってて。よっと。あと少し遅かったら回避できなかったよ。ありがとう杏奈ちゃん。」
「おかげで貯めの時間…稼げたし結果…オーライ、だよ。よし…倒した…。」
「なんか今の杏奈ちゃんピンチの姫を救う騎士みたいでカッコ良かったよ。」
「そういうRPもRPGの楽しさ…だよね。knightは…百合子さんの方…だけどね…。」
「じゃあウサギのヒーローみたいな!うん、ウサギが英雄っていうのは新しいかも…。」
「可愛い…かも。」
「カッコ可愛いって良いよね!あっ、レアドロは…なしかぁ。」
「まあそんなものだよ…。」
百合子さんの発想は面白いな。豊か過ぎて少し妄想の世界に旅立ってしまうこともあるけれど、それはそれでいいと思う。好きなものを語る人は一番かわいい。
杏奈も百合子さんみたいに自分に正直に生きていけたらなって。嬉しそうに自分の世界を語る彼女を見るとよくそう考える。
「それにしてもやっぱり、ここ経験値おいしいよね。もうすぐレベルアップしそうだよ。」
「現状…最高効率だと思う…。まだあまり広まってないから…人も少ないし…。」
「それにしてもよくこんな良いとこ見つけたね。私だったら絶対見逃してたよ。」
「依頼の報酬が少なすぎるのが…少しおかしいと思って…。だから…別のイベントの…出現条件なのかなって…。」
それもあるけれど運が良かったっていうのが強かったっていうのもあるかなとも思ってる。
「なるほど。ってもう四時半ね。そろそろ材料買いに行かないと。」
「…そうだね。キリもいいし…。」
私はすぐにパソコンをシャットダウンしてから、百合子さんの方を見る。彼女はパソコンを閉じて、テーブルの上のお菓子の袋を片づけている。
杏奈も見習ってコップをシンクへと運ぶ。洗うのは帰ってからでもいいかな。チョコーレートを作るときにまた洗い物出ると思うし。
「それじゃあ行こうか!」
「…うん。」
杏奈は力強く頷いた。
そして二人で近くのショッピングモールへと出掛けた。
「色んなチョコレート売ってるね!うわぁ、これとか可愛い。」
「ホントだ…。こっちには…ネコさんのもある。…かわいい。」
「ね!ってあそこにいるの飛鳥ちゃんじゃない?」
飛鳥はチョコレートをいくつも手に取ったり、ショケースを眺めたり、顎に手を置いて少し考え込んだりしている。
「…そう…だね。誰かに、あげるチョコを…選んでるのかな…。」
「声かけてみよっか。飛鳥ちゃん~!」
飛鳥は杏奈たちにに気付いたようで、
「ん?ああ、杏奈と百合子か。二人もチョコレートを選びに来たのかい?」
「いや、私たちは作ろうと思って材料を買いに来たの。」
「なるほど。そういう方法もあるのか。でも生憎僕は簡単なものしか作れなくてね。」
「でも簡単だよ。溶かして固めるだけだし、アレンジとかはレシピ見ながら作ればそんなに失敗なんてしないし。飛鳥ちゃんも一緒に作ろうよ。」
「前に言ったように僕は空気を読めるつもりでね。それに、この後ちょっと友達の家にお呼ばれしていてね。」
「桃子ちゃんとこのみさんにも声掛けたんだけど、今日は仕事だって。」
「仕方ないさ。仕事があるだけ羨ましい。」
「そうかもしれないけど…。」
「まあそれじゃあ頑張って。僕は先に帰るよ。」
「…チョコは…買わないの?」
「実は友達の家で作ることになっていてね。だからここには見学に来たってわけさ。」
「でも…さっき作れないって。」
「ああ僕はできないから教えて貰ってね。それにさとりも作れるらしいから大丈夫さ。」
「そうなんだ。じゃあまた明日!」
飛鳥は踵を返し、右手を上げて去っていった。
「このみさんと桃子さんも…誘ってはいたんだね。」
なんだか少し寂しい気持ちになってそう呟いた。なんだか杏奈はたまたま誘われたみたいだったのに…。
「えっとほら。」
百合子さんはスマホを少し操作して杏奈に見せてくれた。どうやらLINEのトーク画面みたい。
2/6
このみ:来週ってバレンタインでしょ。
このみ:だからみんなでチョコレートを作るのはどうかなって。
百合子:いいですね!私もちょっとチョコレートには自信があるんです。
このみ:それは楽しみね!私も料理は自信あるのよ。来週が楽しみね!
百合子:ですね!
2/10
このみ:(>_<)
このみ:ごめん百合子ちゃん。
このみ:来週の一三日私と桃子ちゃんお仕事入っちゃって。
百合子:そうなんですか…。お仕事なら仕方ないですね。
百合子:大丈夫ですよ。杏奈ちゃんと飛鳥ちゃんと一緒に作ります(*'▽')
このみ:ごめんね~。
百合子:いえいえ。
2/10
百合子:それでね。一緒にチョコレート作るのはどうかなーって。
†飛鳥†:僕もかい?いや遠慮しておくよ。
百合子:えー、なんでー('Д')
†飛鳥†:まあそうだね。僕は料理をあまりしないからってことにしておくよ。
百合子:でも簡単だよ?
†飛鳥†:百合子の簡単が僕にとっての難しいかもしれない。
†飛鳥†:少し風呂に入って来るよ。また明日ね。
百合子:何かはぐらかされた気がする…。
百合子:また明日(*'▽')
「このみさんから誘われてはいたんだけどね。」
「そう…なんだ。杏奈…後から…呼ばれたのかと思ったよ。」
そこで百合子さんはなるほどと何かを理解した顔をした。
「単に言うのを忘れてたっていうより、杏奈ちゃんいつも一緒にいるでしょ?だからもう誘っていた気分になっていたっていうか一緒にやるつもりだったていうか。」
百合子さんは赤い顔をして少し自分の服の裾を掴みながら答えた。なんだか杏奈も少し恥ずかしくなってそっぽを向いた。
「そう…。」
「ま、まあじゃあ材料買いに行こう!確か売り場はあっちだよね!」
「うん…。あっそこ、右。」
「…それから材料を買って…百合子さんと一緒にチョコレートを…作ったの。チョコレートは…生チョコだったから…柔らかさ…大変だったけど、百合子さんに言われた分量通りに…作れば何とか…うまく作ることができたよ…。」
「そうかい。それは良かった。そう言われると何だかこのチョコレート少し暖かい感じがするよ。」
「暖かい…?溶けてる…の?」
「友情の味ってやつかもね。…もしかしたら甘酸っぱいかもしれないな。」
「もう…飛鳥は…そんなこと言って…。杏奈は百合子さんといると落ち着くってだけだよ。事務所のみんなも同じ。それを言うなら…飛鳥もさとりと最近よくいるし。…」
「そうかな?まあ一緒に暮らしてるしね。それは当たり前さ。」
「…同棲乙です。」
「事実を言ってるだけじゃないか。皮肉になってないね。」
杏奈は少しムッとして言い返す。
「…ばーか。」
「なかなかそんな真っ直ぐな悪口聞かないな。じゃあ次のテストで勝負しようか。もちろん理科か国語辺りで。」
「やだ。…音楽ならいいよ。」
「音楽に点数はつけられないと思うけどね。」
キンコーンカーンコーン♪
「…授業始まるし…この話はまた後ね。」
「…仕方ない。」
飛鳥はやれやれと首をかしげてから自分の席に戻っていく。途中で慣れた手つきでエクステを外しながら。次の授業は中田先生だから…。セカイへの抵抗とか言っていながら先生によって外してるじゃん…。
杏奈はもう一度、今度は小さな声で呟く。
「…ばーか。」
友情が恋に変わるのはいつだろうか?(正直描写不足感あるのでまた加筆修正すると思います。)
半年ぶりくらいにまとまった休みがとれたので今日からゆっくりしたいと思います。その分次回投稿は早めになるか遅めになるかは未定ですが。
今回もお楽しみに頂けたら幸いです。
P.S 仕事先で貰ったチョコレートって正直お返しが大変ですよね…。