サウザー!~School Idol Project~   作:乾操

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お久しぶりです。
投稿遅れた上に駆け足展開で短いのを許してほしい。


第6話 非情の予言! μ's、 お前たちは予選突破できない!!

 

 +メリー・クリスマス+

 

 サンタさんを信じているマキちゃん。毎年プレゼントを持って来てくれるのだという。

「ぬぅ、おれのところには来んぞ!?」

「サウザーは良い子じゃないからでしょ」

「二人ともまだそのようなものを信じてるのか」

「む、シンはサンタを信じていないのか?」

「当然だ。そのようなもの、ガキの妄想に過ぎん」

 シンはリアリストであった。

 だが、そんな彼にマキは反論する。

「何言ってるのよ。グリーンランドには国際サンタクロース協会があるし、デンマークのコペンハーゲンで毎年7月に会議も開いているのよ。それに、クリスマスには毎年北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)がサンタをレーダー、衛星、戦闘機で追跡しているわ」

「…………!?」

 サンタさんは実在するのか……!? シンに衝撃が走る。

 そして強く思う。

 もし、マキの言う通りサンタさんが実在するのなら……。

 この思いを、あの人に届けてほしい―—。

 …………ケン!

 

 

 

 

「『修‐羅イズ(シュライズ)』……!?」

「なに、その……冗談みたいな名前」

 穂乃果たちはそのグループのネーミングセンスに絶句した。しかし、名前はさておき実情は恐ろしいグループであったらしい。

 海の向こうにあるという『修羅の国』。12歳で戦いに身を投じ、15歳までに100度の死闘を制したものだけが生きることを許されるまさしく修羅たちの国。その国を支配する三人の羅将たちこそが『修‐羅イズ』である。

「羅将一人の力は、第三の羅将の時点で我らA‐RISE20組分に匹敵する」

「A‐RISE20組分……!?」

「凄いのか凄くないのかイマイチ分からないにゃ……!」

「第二、第一の羅将についてはもはや未知のレベルだ」

 英玲奈の語る修‐羅イズの凄さにはピンとこなかったが、深刻な表情から察するに余程なのだろう。

 それにしても、何故A‐RISEの三人はこのことをμ's、そして5MENに話したのであろうか。

 シュウがそのことを訪ねると、ツバサはどこかその話をはぐらかすように、

「それはそうとして……今度の予選の場所を探しているんでしょ?」

「あ、はい。でも、良いところが無くって」

 穂乃果は困ったように笑うと頭をかいた。すると、

「私達、屋上にステージを設営してライブをするのだけど、もし良かったら、一緒にどうかしら」

「……へ?」

 想像もしない、突然の誘いであった。言われた瞬間、穂乃果たちは目の前のデコ助は何を言っているんだろうと思った。

「フハハハハ! 面白いではないか」

 シェイクをテーブルに戻して(結局ほとんど吸えていない)、混乱する穂乃果たちに先んじサウザーは高らかに笑う。

「我ら南斗DE5MENに正面から勝負を挑むとは、見上げた下郎もいたものだ!」

「サウザー、少しは控えてください……」

 海未がサウザーに囁くが、無論きく耳なぞもたない。だが、ツバサもサウザーに負けじと大きく笑い、

「その意気や良し、と言ったところね。それで、どうかしら?」

 ツバサからの誘い、受けないサウザーと穂乃果ではなかった。

 

 

 一同はツバサからの誘いを受けると礼を述べてUTXを後にした。

「よかったんですか穂乃果にサウザー、ほいほい受けてしまって……」

「いいんじゃないかな」

「あのような下郎、南斗鳳凰拳の敵ではない」

 呑気なものである。

 しかし、どうしても気になるところもあった。

「目的が分からぬな」

「ああ、それに、なぜか我々が予選会場を探していることを知っていた」

 シュウとレイが言う。

 もしやすると、μ'sと5MENはA‐RISEにマークされているのではないか? だとしたらなぜ?

「このおれの美しさを脅威に感じたのだろう!」

「ユダよ、出番がないからと無理に割りこむ必要はないぞ?」

「うるさい!」

「脅威か何かには感じられているのだろう」

 様々な疑念と同じくらいの期待を胸に一同は秋葉原を去っていく。

 なんにせよ、予選まで二週間。μ'sと5MENに出来ることと言えば、それまでに準備を万全なものにしておくことぐらいである。

 去りゆく一同の背中を、ツバサはカフェテリアの窓から眺め続けていた。

 

 

 そして、あれよあれよと二週間。

 UTXから貸し出された控室でμ'sメンバーは準備に勤しんでいた。

「改めてハラショーな衣装ね。衣装はらしょう」

「んふっ……、絵里ちゃん似合ってる~」

 ことりの作ってきた衣装は可愛らしい妖精を思わせるデザインであった。妖精的なデザインの中に以前の帝都進撃の経験が生かされている。元斗、天帝の意匠が組みこまれているのだ。

「ルイちゃんの服素敵だったから」

「良いセンスだわ」 

 ニコも髪をセットしながらことりを称賛する。

「おっ、ニコちゃんの髪型が浦安のネズミみたいだにゃ!」

「訴訟ものやん」

「これはお団子になってんの!」

「フハハハハ!」

 そんなところへサウザー率いる南斗DE5MENが入室してくる。

「準備は出来たかな? ん?」

「まぁだいたいは。サウザーちゃん達相変わらずそのタンクトップなんだね」

「素晴らしいセンスであろうが」

「う、うん……?」

「無理しなくて良いぞ」

 レイが半ばあきらめたように言った。

「μ'sのみなさんはいるかしら?」

「うわ、なんだこの人口密度は」

「濃ゆい空間ねぇ」

 5MENに続いてA‐RISEの面々も来訪した。いい加減控え室の人口密度が大変なものになりつつある。

「今日は一緒にライブが出来て、とても嬉しいわ」

「そんな、こちらこそうれしいです!」

 ツバサの言葉に感激するように穂乃果は答える。

 二週間前に出会ったとき以来、μ'sと5MENの中でA‐RISEが何を考えているか分からない、という話が度々起きていたが、穂乃果はそのような事気にしない少女である。

「ふふっ、今日はお互い予選突破を目指して高め合えるライブにしましょうね」

「は、はい!」

 

 ライブはA‐RISE、μ's、5MENの順で行われる。

 一番がA‐RISEなのは会場の都合当然として、二番目、三番目をどちらにするかは決めていなかった。しかし、サウザーの、

「大トリに相応しいのはこの聖帝サウザーをおいて他におるまい?」

といういつもの謎の自信により順は決められた。

 開始の時間となって、一同は観客席の後方へと移動する。

「そう言えば、A-RISEのライブって初めてですね」

「ニコちゃんと花陽ちゃんは行ったことあるの?」

 ことりが訊くと、二人は「もちろん!」と強く頷いた。

「もうすごいわよ? 同じ学生なのが嘘みたいだもの」

「粟立ちが止まらないですよ!」

「そんなにすごいんやね」

 そんなすごい人たちのライブが始まろうとしている。 

 

 A-RISEの踊り、歌は学生のそれを裕に超えるものであった。A-RISEのライブはビデオで幾度となく視聴したものだが、それらすら上回る動きだ。慢心せず、絶えず練習してきた証拠であろう。

「素晴らしいパフォーマンスだな」

 シュウが感心した様子で言う。レイも、

「女学生とは思えんな。アイリが熱中するわけだ」

 A-RISEのダンスがキレキレなのは大人の事情にもよるのだが、それはひとまずいい。

 問題は、この華麗なショーの後に自分たちが唄い踊ると言う事実だ。

「大丈夫でしょうか」

 海未が弱気な声を上げる。

 そんな彼女に穂乃果が、

「大丈夫だよ! この日まできっちり練習してきたし、それに」

 彼女が振り返る。そこには、μ'sを(ついでに5MENも)助けたいという音ノ木坂の仲間たちが手を振りながら控えていた。

「私達は九人だけじゃないから」

「その通り!」

 便乗するようにサウザーが叫ぶ。

「今回は聖帝軍音ノ木坂分隊に加え、照明設備の扱いに長けた帝都の下郎も動員しているから、無敵感が尋常ではないわ」

「勝手に聖帝軍扱いすんな!」

 音ノ木坂生徒から抗議の声がぶーぶー上がるがサウザーは文字通り一笑に付した。

「まぁ、実際今までうまくやって来れたんやし、今回もいつも通りいけばええんとちゃう?」

「希の言う通り。努力は嘘をつかないわ」

 そう言うと絵里は海未の背中をポンポンと叩いた。

 そうこうしている内、A-RISEのパフォーマンスは終了し、会場は大喝采に包まれた。インターネット上における得票数もうなぎのぼりである。

「ほぁ~……」

「さすがA-RISEね~……」

 花陽とニコはメロメロだ。ユダなどは、

「フン、おれの美しさの足元にも及ばぬわ!」

 などといっているが、そこそこ感心してはいる様子だ。

「キャラの濃厚さでは負けんかもしれんな」

「どういう意味だシン」

「とにかく、次はμ'sであろう。精一杯頑張ってきなさい」

 ギャーギャー喚くシンとユダを尻目にシュウがそう声を掛けてくれた。

「はい!」

 μ's一同は元気に返事をした。同じ南斗でもサウザーとは大違いのリアクションである。これが人徳の差である。

「よーし、それじゃあ行こう! μ's、ミュージック……」

「スタート!」

 

 

 

 

 嵐のような予選から二日……結果発表である。

 結果はネットで発表され、上位五組が予選通過となる。

「いよいよです……」

 学校の部室では花陽がパソコンの画面とにらめっこをし、残るメンバーがその背中を緊張の面持ちで見守っていた。5MENのメンバーはサウザーの城で結果を確認するらしい。

「一位……A‐RISE」

 花陽の口から上位チームが発表されていく。一位に続いて二位、三位と告げられるがμ'sの名前は未だない。

「四位……南斗DE5MEN」

「えぇ……」

 μ'sより先に5MENの名前が読み上げられたことに多少ショックを受ける一同。だが、今はそれどころではない。出場枠は残り一つなのだ。

「ご、五位……」

 花陽が画面を恐る恐るスクロールさせる。

「み……」

「み……?」

「みー……」

「みー……?」

「みいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

「みいぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

 誰かがつばを飲み込む音が聞こえる。期待と不安に胸が張り裂けそうになる。動悸が早まり、胸が苦しくなる……。

 そして、ついに……。

 

 

 

 

「ミスターハリウッド」

 カモンビバリーヒルズ!

 

 

 

 

「うわああああああああ!」

 

 

 

 

 

 

「うわああああああ夢かああああああ!?」

 穂乃果はそう絶叫しながら布団を跳ねのけた。

 

 

 

 

「ひ、酷い夢ですね……」

「でしょ? いやー、夢で良かった良かった」

 放課後の部室、穂乃果はそう笑いながらジュースを飲んだ。

「なんて夢見てんのよ、縁起の悪い」

 ニコが半ば怒ったように言う。

「仕方ないじゃん、見ちゃったんだからさ……」

「大丈夫だにゃ、そもそもミスターハリウッドなんてチームないし」

「なくても、予選落ちが正夢だったなんて事もあるかもでしょーが?」

 ハァ、と不安げなため息を付くニコ。こういう時、縁起とかのことがいつも以上に気になったりするのだ。

 そんな面々を見て絵里が、

「みんなナンセンスよ、科学万能の時代に夢がどうとかって。やるべき事はやったんだから落ち着いて沙汰を待つの。チョコでも食べて落ち着きましょう?」

「エリチ、それ作りモンのチョコやで。エリチこそ落ち着き」

 いまさらどうやっても結果は変わらないとは言え、落ち着けというのは無理な話である。九人それぞれ落ち着きが無く、マキは室内を意味も無くグルグルと徘徊し、ことりは突っ伏してブツブツ念仏のようなものを呟いている。

「……更新来ました! 結果発表です!」

 パソコンの前の花陽が吠える。それに呼応するように、一同は彼女の後ろにゾロゾロと集結して画面を覗きこんだ。

「一位……A‐RISE……」

 花陽は緊張で震える手を押えながら画面をスクロールさせ、予選通過チームを読み上げる。 

 その予選通過チームだが、なにやら穂乃果の夢と同じ順位のようである。

「ヤバいよ! 夢の通りじゃん!」

「お、落ち着くのです穂乃果、沈着に、冷静沈着に」

「海未ちゃんこそ落ち着いて」

 海未をなだめることりの声も心なしか震えている。

 μ'sは恐慌寸前だ。

 が、しかし。

「四位、μ's……あ」

「あ」

 四位に自分たちの名前があるのを確認した瞬間、一同は一気にクールダウンした。

 μ's、予選四位通過!

「おぉ、やった! やったよー!」

 嬉しさのあまり穂乃果はピョンピョン飛び撥ねた。

「四位だよ! ラブライブだよー!」

「やりました! やりました!」

「ちゅんちゅん!」

 つられて海未とことりも一緒になって飛び撥ねる。

 だが、安心するのはまだ早い。マキが真剣な面持ちで、

「まだ5MENが通過したか分からないわ」

「マキちゃん、何だかんだ言ってサウザーちゃんたちが心配なのかにゃ?」

「5MENが予選落ちするとサウザーが家に来るのよ。是が非でも通過してもらってなくちゃ……」

 そういえばそんな話もあったなぁ、と思いかえす。その場の思いつきで言っただけであろうから気にも留めていなかったが、名指しされた本人からすれば可能性がわずかでもあるだけで十分脅威というか恐怖なわけだ。

「それで花陽! 五位は!?」

 マキは満足げにしていた花陽にパソコンへ向かうよう急かす。

「えっと待ってね。えーと、五位は……な……」

「な……?」

「なんと……」

「なんと……!?」

 マキの胸が期待に膨らむ。

「南斗……」

 

 

 

「南斗五車星」

 

 

 

 

南斗DE5MEN

予選敗退!

 

 

 

 

 

 

つづく




これからどうなってしまうのか!?

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