サウザー!~School Idol Project~   作:乾操

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二期十話冒頭のA‐RISEと男坂ですれ違うシーンで銀河英雄伝説を思い出した人は少なくないはずだけど自分以外見たことがない。


第16話 μ'sのキャッチフレーズ! 穂乃果、愛する者のために餅をつけ!!

+前回のラブライブ!+

 『鬼の哭く街』カサンドラに攻め込んだ羅将ハン。巨大な童貞とかオリエントな童貞を倒した彼は予想以上に手ごたえの無いこの国にやや失望していた。

 そんな中、彼はカサンドラ内で一枚のチラシを見つける。

「ラブライブ……? なんだこの童貞チックなイベントは」

 だが、見てみると全国スクールアイドルのトップが集うと書いてある。

 スクールアイドルの大会……。

「粟立ちの予感!」

 ハンはそう呟くとともにカサンドラを後にした。

 

 

 除夜。

 歌合戦が終わり、ゆく年くる年が始まってもなお、サウザーは相も変わらずうるさかった。大晦日だけ特別に夜更かしを許されている子供みたいなものである。

「見ているがいい、新年を迎えた瞬間、おれは地上には立っていない!」

 城の広間でサウザーは年明けの瞬間に集中していた。

 そして、時計の秒針が零時を示そうとした瞬間、サウザーは「とあっ!」という掛け声と共に跳躍した。同時、外から新年の鐘が厳かに鳴り響いた。

「フハハハハハハーっ!」

「お見事でございますサウザーさま」

 着地して満足げに笑うサウザーにブルが拍手を送る。

「それではサウザーさま、今日はもうお休みになりませんと」

 いつも十時までには寝るサウザーであるから、ブルはそう進言した。歯も磨いたし、あとはパジャマに着替えてベッドに入るだけである。

 だが、新年特有のテンションでギンギンに目が冴えているサウザーは、「今日はまだ寝ん!」と高らかに宣言した。

「なんでも、世の下郎どもは新年を迎えるや初詣とやらに繰り出し神に願いをかなえるよう命令するそうではないか?」

「微妙に違いますが、そうですな」

「我々も繰り出そうではないか?」

 サウザーはニヤリと笑いながら言った。

「この辺りの神社となれば神田明神ですな」

「神田明神の神に、どちらが各上の存在か知らしめる好機と見たな!」

 彼はそう言うとマントを翻し全軍に出撃命令を出した。

 

 

 その頃、μ'sの二年生&一年生は揃って神田明神へごく普通の初詣に向かっていた。

「まったく、なんでみんな着物じゃないのよ」

 道中マキはしきりにこう愚痴っていた。皆がそれぞれ普段着なのに対し、マキだけが振袖だったのである。母が新年と言えばこれだと言って着付けたらしいが、やはり年頃の娘、一人だけでは恥ずかしかったようだ。

「いいじゃん、似合ってるにゃ~」

「似合う似合わないじゃなくて。なんか私だけ張り切ってるみたいだし、それに……」

「それに?」

「動きにくくって、襲われたら即座に反撃できないじゃない」

「さすが、世紀末に片足突っ込んでる勢はものの考え方がちがうにゃ」

 そんなことを話しながら歩き、男坂のところまでやって来た。すると、神田明神の方から知った三人組が階段を降りてくるのが見えた。

「A-RISE出雲」

「それはサンライズね。あけましておめでとう、あなた達も初詣?」

「おめでとうございます!」

 A-RISEの三人は既に初詣を終えたらしい。何をお願いしたのか気になったが、訊くのもあれなのでとりあえず「はい」とだけ返事をした。

「そう……」

 ツバサは微笑むと、穂乃果たちの脇を通り過ぎた。そして、去り際に振り向き、

「本選には『ヤツ』が現れる可能性が高いわ。くれぐれも気を付けて……ラブライブ、優勝しなさいよね!」

「……! はい!」

 ツバサからのエールを受け、穂乃果は大きな声で返事をする。

 ラブライブ……本選……。

 そう、μ'sは(ついでに5MENも)関東代表として本選に駒を進めたのだ。

 分かっていたことだが、A‐RISEに言われると、なおのこと現実として胸に迫る。優勝すると言った手前、あくまで通過点の一つをクリアしたに過ぎないのだが、それでも嬉しい物は嬉しかった。

「私達、あのA‐RISEに勝ったんだね……」

「そうですね。未だに信じられません」

 ことりと海未も感慨深げに話す。

 それにしても、気になるのはツバサの言っていた『ヤツ』についてである。

「それって、やっぱり例の羅将ハンのことなのかしら」

「伝説のスクールアイドル『修‐羅イズ』、それが私達の前に現れるなんて……ピャアア……」

「穂乃果はどう思いますか? 羅将ハンの話……」

「『スクールアイドルとは何か』って哲学しちゃう気分だよ。ていうかなんでみんな普通に話受け入れちゃえてるの?」

 仲間たちの適応力の高さに戦慄しつつ、穂乃果はツバサの背中を見送った。

 ツバサさんは……A‐RISEは、私達に思いを託してくれた。だから、それに応えるためにも精いっぱい頑張ろう。

 そう、思いながら。

 

 一方、穂乃果たちに見送られながら、ツバサはあんじゅと英玲奈に、

「今の私、カッコよかったかしら」

「まぁ、強者感はあったな」

「完全にフルハウスね」

「え、なんだそれは」

「前回言いそびれたから、言っとこうと思って?」

 三人はそれぞれの家に帰るわけだが、途中までは一緒である。初詣の客でにぎわう神田明神から離れるにつれて、街は夜の静けさに包まれるようになり、しんとした冷たさが三人を震わせた。

「後悔してるか?」

 ふと、英玲奈はツバサに訊ねる。

「何が?」

「迎えを寄越したことだ。あの三人に」

 最終予選、雪に閉じ込められ会場に向かうことがままならなくなった穂乃果、ことり、海未の三人にツバサはUTXから迎えを出して、μ'sは無事歌うことが出来、勝ち進むことが出来た。最終予選、次点はA‐RISEであった。つまり、あの時迎えを出さなければ、本選への切符を手にしていたのはA‐RISEだったのである。

 実際予選の後、ツバサは学校で幾人かにもったいないことをしたと言われた。 

 だが、ツバサは英玲奈の問いを一蹴する。

「英玲奈らしくない愚問ね」

「そうだな……すまなかった」

 英玲奈は満足そうに微笑むとそう謝罪した。

 敗退してなお、綺羅ツバサはA‐RISEのリーダーであり、スクールアイドルの頂点足りうる人物であった。

「……あら?」

 この時、あんじゅが何かに気付いた。

「どうかしたか?」

「何か聞こえたような……」

 ツバサはあんじゅの言葉を受けると地面に耳を当て、何が近づいてくるのか探った。彼女の耳に、振動となった音が伝わる。

「これは……バイクのエンジン音!」

「え!?」

「それも一台や二台ではないわ」

 音と振動はみるみる大きくなる。

 音の正体は向うから土煙を上げながら迫ってきた。

「フハハハハ!」

 ご存知、サウザー率いる聖帝軍である。彼はA‐RISEの三人を認めると全軍に停止するよう伝えた。

「あけましておめでとう。聖帝も初詣かしら?」

 ツバサに続いてあんじゅと英玲奈も挨拶する。だが、サウザーはそれに答えることは無く、

「『A‐RISE』……いや? 『負‐け犬』ではないか」

 ニヤニヤ笑いと共にとんでもなく失礼なことを言ってのけた。

「凄いぞツバサ、こんなに調子に乗ってる奴は始めて見たぞ」

「おれが乗っているのは時代の波だぞ? フフフ……このフィーバーっぷり、来年は紅白に出れるほどと言って過言ではない」

「過言でしょ」

「A-RISEの時代は終わり、スクールアイドルの頂点に立つのはこの聖帝率いる南斗DE5MENであるのは明白と言えよう」

 そう言うとサウザーは可笑しくてたまらないという風に高笑いした。

 人間はここまで調子に乗ることが出来るのか。

 A‐RISEの三人は二周ほど回って逆に納得した。きっと、彼が最終予選を突破できたのもこの良く分からない自信に依るところが多いだろう。

「……そう言えば」

 ここで、ツバサの脳裏に一つ疑問が浮かんだ。

「どうかしたか?」

「私達って、なんでμ'sに負けたのかしら」

「なんでって、そりゃ……」

 英玲奈とあんじゅはツバサの疑問に答えようとした。だが、

「……なんでだろう?」

 答えは出てこなかった。

 

 

 正月休みが終わり、校舎が解放されるとμ'sは練習を再開した。本来なら穂乃果は生徒会の仕事もあるんのだが、九柱の守護星ことヒフミトリオが代わりに仕上げてくれた。

「足向けて寝られないね」

 ストレッチをしながらことりが言う。

「全くだよ。おかげでラブライブに向けて集中できるけど、私が生徒会にいる意味も分からなくなるね」

「穂乃果は業務的にいてもいなくても変わりませんよ」

「海未ちゃんひっどーい」

「冗談ですよ」

 本選に向けて練習に励む彼女たちを学校中が応援しているのだ。これは嫌でも優勝しなければならないだろう。

 そんな本選であるが、ルールが従来の予選とやや違っている。それについては花陽が説明してくれた。

「選曲とか衣装とかは公序良俗に反しない限り自由。ただ、会場は晴海で、投票形式は会場投票とネット投票で行われるんだって」

「ふーん、この間の世紀末モヒカンスタイルは使えないのね?」

「なんでエリチ少し残念そうなん?」

「まぁ、会場と投票形式が少し変わるだけで実質従来通りで大丈夫です! ただ、今度は事前の印象付けが今まで以上に重要で」

 

 一同は一旦部室に戻り、パソコンでラブライブの公式ページを開いた。

 各グループの紹介ページに、『キャッチフレーズ』の項目が追加されているのが分かる。

「『おまえのようなババァがいるか』『今日を生きる資格なし』『戦いの荒野で死にたい』……ほぇー、色々あるんだねぇ」

 穂乃果は趣向を凝らしたフレーズの数々に感心する。

「そのチームを一言で表すような、そんなキャッチフレーズが理想です!」

「そう言えば、5MENはどんなキャッチフレーズなの?」

 訊かれると花陽は画面をスクロールして5MENの項目を表示した。

「えっと……まだ決めて無いみたいだね」

「すぐ決めそうな気がしたから意外だなぁ……ていうか恐っ!? プロフ画サウザーちゃんのドアップかよ!?」

 画面いっぱいに広がるサウザーの笑顔に恐怖する穂乃果。それを他所に、一年生ズは5MENのキャッチフレーズ予想で盛り上がる。

「サウザーの事だから、どうせアレでしょうね。『退かぬ! 媚びぬ省みぬ!』」

「いや~分からないにゃ。『客はすべて下郎!』かもよ?」

「『愛などいらぬ!』じゃないかな?」

「とりあえず、5MENよりも今はうち等のキャッチフレーズやん」 

 μ'sを簡潔に表現する、そんなキャッチフレーズ……。

 一同は腕を組んで考える。しかし、こういったものはそうポンポン浮かんでくるものではない。まして、一介の女子高生に、である。

「μ's……みゅーず……あ」

 穂乃果が何か閃いた。

「思いついたのですか!?」

「全然」

「ぜんぜ……じゃあ、何を――」

「餅つきしよう!」

「は?」

 想定外の言葉に唖然とする仲間に穂乃果は繰り返し言った。

「餅つきしよう、餅つき!」

 

 

 二日後。

 穂乃果の家である和菓子屋『穂むら』の前に人だかりが出来ていた。その中心では穂乃果が蒸したもち米を臼に移している。

「で、なんで餅つき?」

 ニコが質問する。これは今日まで一同が思っていた疑問でもあった。

「いやさ、そう言えばみんなにお礼してないなーって」

 海未と一緒に杵でもち米を潰しながら穂乃果はそう答えた。

 キャッチフレーズを考えている時、穂乃果はなぜ自分たちがここまで来られたのかを考えた。

 μ'sがA‐RISEを破り本選まで来られた理由。それは、μ'sだけでなく、音ノ木坂の生徒を初め、色々な人の応援や手助けがあったからである。最終予選だけで見ても、音ノ木坂の生徒がジャッカルたちに立ち向かってくれたから、A-RISEとUTXの生徒が雪に閉ざされた穂乃果たちに手を差し伸べてくれたから、突破することが出来たのである。どれか一つでも欠けていたら、突破はありえなかったであろう。

 だから、こういった形でとりあえずお礼をしなければと思ったのだ。

「そう言うわけで、今日は暇を持て余してるオトノキ生に来てもらったの」

「穂乃果らしいハラショーな発想ね。ところで……」

 絵里は穂乃果を称賛しつつ、女子高生の中に紛れ込む異質な人物に目を向けた。

「あれなに」

「サウザーちゃんだよ」

「見ればわかるわ」

 此度の餅つき大会には南斗DE5MENGも招かれていた。だが、他の面々は新年ということで何かと忙しく、暇なサウザーだけが参加という事になったのだ。

「馳走になってやらんこともないぞ?」

「なんでアイツあんなに偉そうなのよ。ていうか、なんで招いたの?」

「まぁ、何だかんだ言ってお世話になったし、サウザーちゃんが居なければμ'sも無かったからね」

「む……それは、そうだけど……」

 元々μ'sは穂乃果、海未、ことり、そして不法在学していたサウザーによって結成されたグループである。実際のところ、サウザーが居なくてもμ'sは結成されたであろうが、その傍若無人っぷりで様々な困難を乗り越えて(というより突き壊して)きたのは事実である。

「何をもたもたしている。早くつけい!」

「やっぱ帰ってもらいましょう?」

「まぁまぁ」

 サウザーに急かされたこともあり、準備が出来るやさっそく餅をつき始めた。杵を振るうのは穂乃果で、餅を返すのは海未である。

 二人の息はピッタリで、みるみる餅が完成していく。

「ほう、これが餅つきか」

「サウザーちゃんは初めて見るの? なんなら少しやってみる?」

 穂乃果はそう言って杵をサウザーに手渡す。サウザーはそれを半ば奪うように取ると、大きく振りかぶって高笑いと共に臼に振り降ろした。そして、それはお約束ともでも言いたげに餅の上にあった海未の手を直撃する。

「なっふううう!」

「うわー! 海未ちゃーん!?」

「ぬぐぐぐ……サウザー! 世紀末でなかったら複雑骨折どころではありませんよ!?」

 赤くはれた手をフーフーしながら涙目の海未が吠える。意外と大丈夫そうである。

「臼も……割れて無いね。よかった……」 

 穂乃果も店の財産が無事なのを確認してホッとする。

「もー! 杵は振り降ろすんじゃなくて重さに任せて落とすようにするの分かった!?」

 言っておくと、杵で思いっきりつかれた場合本当にシャレにならない事になる。良い子は絶対に真似しないようにしよう。

 悶着合ったものの、餅は無事完成し、来ていた人全員に配られた。つきたてほやほやの餅は美味この上ない。花陽などはそのままプレーンな餅を食べながら至福の表情をしている。

「はわぁ~白くてもちもちで、美味しいなぁ」

「あんまり食べると太りますよ」

「そう厳しく言わずにさ、ほら花陽ちゃん、まだまだあるからドンドン食べてね」

「はぁ~い」

 るんるん気分でお代わりを受け取る花陽。だが、そんなところへいらんことするのがサウザーの神髄である。

「砂糖醤油をかけないと画竜点睛を欠く云々」

「ああああああああ!?」

 皿に受け取ると同時、花陽の白く輝く餅はサウザーの手によって甘しょっぱくて風味豊かな砂糖醤油に侵食され、香しく輝く物体へ変貌した。実に美味しそうであるが、花陽にとってそれは許されざる行為である。

「撲殺日和、です!」

 怒り心頭の彼女は杵をブンブン振り回す。だが、一介の女子高生が振り回す杵なぞ、南斗鳳凰拳伝承者からすれば蚊がとまっているようなものだから、サウザーは高笑いと共にひらりひらりと躱すばかりである。

「こらこら花陽、殺るなら食べ物を作る道具以外で殺りなさい」

「エリチのアドバイス正しいけど間違ってるやん」

 

 餅つき大会が終わり、メンバーはそれぞれ後片付けをする。サウザーはいるとかえって邪魔だからカレー粉をまぶした餅を与えてその辺に座らせた。

「喜んでもらえて良かったねっ」

「はい。お餅も美味しかったですし」

 穂乃果の言い出した突拍子もない話であったが、いざ実行してみるとかなり盛り上がり、ちょっとしたお祭りのようになった。かわるがわる杵を振るい、餅を返し、また、持ちよった具をつけて食べたりもした。

「本当はUTXの人にも来てもらいたかったんだけどね、さすがにね」

 穂乃果は苦笑しながら言う。UTX、そしてA‐RISEの三人には、彼女たちの分も歌うという形で恩返しをしよう、ということになった。

「で、キャッチフレーズ、どうするの」

 道具をよっこいせと持ち上げながらニコが訊く。

 精一杯のパフォーマンスが恩返しになるなら、万全の態勢で本選に臨む必要があるわけで、それにはまず素敵なキャッチフレーズを考えなければならない。

 しかし、ニコの心配とは裏腹に、穂乃果は確信したような表情をしていた。

「私、気付いたんだ」

「気付いた?」

「何に?」

 一同が問い返す。

 

 μ'sがなぜ頑張ってこられたか。それは、たくさんの人の支えがあったから。

 これは既に分かり切った話である。

 だが、μ'sにとってその『たくさんの人々』は支え以上の存在……μ'sの原動力そのものと言っても良かった。

 

「『客はすべて下郎!』とか言ってたけど、そんなことなかったんだよ! 応援してくれている人と一緒に、一歩ずつ前に進んで、少しずつ作り上げて行って、夢をかなえようとする……それがμ'sなんだよ!」

 共に舞台を作り上げる。

 そういう意味では、世紀末感あふるるμ's´時代から変わらぬ魅力ともいえた。

「それを、さっきの餅つき大会で思いついたんですか?」

「うん!」

 穂乃果は海未の問いに笑顔で答える。

「ちょっと無理がないかにゃー?」

「凛ちゃん、これは尺の都合ってのもあるんやで。そろそろ纏めとかにゃあかんし」

「なるほど」

「台無しだよ!」

 なにはともあれ、μ'sのキャッチフレーズは決まった。

 そして、それを餅を食べつつ傍から眺めるサウザーもまた、5MENのキャッチフレーズを閃いていた。

 

 

 

 

 数日後。

 UTXの校舎に設置されている巨大モニター。μ'sや5MEN、ほかにも様々な人が注目するそこに、本選へ駒を進めたチームのキャッチフレーズが映し出されていた。

 流れるように次々と映し出される様々なフレーズたち。どれもこれもそれぞれのチームの思いがこもった出来である。

 そして、ついにμ'sのものが映し出される。

 

μ's

 

『みんなで叶える物語』

 

「素敵なフレーズね」

 いつの間にか隣に立っていたツバサが穂乃果にそう語りかけた。

「ツバサさん! ありがとうございます! 餅つきしてたら思いついたんです!」

「シチュエーションが謎だけど、まぁいいわ。……私ね、どうして自分たちがμ'sに負けたのか不思議に思っていたの」

 だが、今日このキャッチフレーズを見て理解できた。A‐RISEになくてμ'sにあった物。言葉では言い表せないが、確かに存在するものだ。

「穂乃果さん、心の底から応援するわ。あのキャッチフレーズにある『みんな』の一人として」

 そう言うと彼女はニコリと笑みを見せた。ライバルとして、そして、μ'sの一ファンとしてツバサは穂乃果たちを応援するだろう。

「ツバサさん……」

「ふふっ……あっ、ほら、次は南斗DE5MENのキャッチフレーズよ」

「えっ?」

 μ'sの素敵なキャッチフレーズに続いて登場したのは南斗DE5MENである。キラキラと輝く青春を体現したかのようなものであるから、見る人々の期待は高まった。

 そして……。

 

南斗DE5MENG

 

『下郎たちに作らせる十字陵』

 

 

「えぇ……」

 それは、μ'sメンバー全員の口から共通して漏れた声であった。

「下郎たちに作らせる」

「十字陵……」

「ある意味予想外のフレーズですね……」

「凛たちのとリズムが微妙に被ってるのもムカつくにゃ」

「否応なしにテンションが下がるやん」

 ちなみにこのフレーズは下郎たち(オトノキ生)が一生懸命餅をついている様を見て思いついたそうである。最低である。

 

 かくして、μ's、そして南斗DE5MENは本選に向けての準備を着々と進めていた。

 だが、ラブライブとは別に迫りくるものが存在した。

 三年生の卒業……そして……。

 

 




たぶん今年最後の投稿です。
よいお年を。

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