放浪者ロロ異界見聞録 Self-interpretation 作:Boukun0214
私は、ロロ。
この世界に訪れた、人間である。
この世界に訪れて数日、私は、大きな鎌を持った同行者にこの世界を案内されていた。
「お前のいた世界とやらは、多分、平和だったんだろうな。お前の顔を見ればわかる。」
「え・・・僕、そんなに平和ボケした顔してる・・・?」
私の言葉を聞くと、同行者はアッハッハと笑い、どうやら気にいったようだ。
「平和ボケか!そういう表現もあるんだな!」
「ええぇ。。。何でそこがツボ?」
私のツッコミなど気にせず、同行者はこんなことを言う。
「そうだ。面白ぇこと知れたし、ひとついいこと教えてやるよ。・・・見てな。」
彼はそう言うと、肩に担いでいる大きな鎌を右手で振り上げ、呪文を叫んだ。
『フレイムダンス!』
鎌の軌道から炎の渦が生まれ、周囲を焼き尽くす。
そして、その炎は空を燃やしたあと、熱もなく消えてしまった。
「フレイムダンスだ。お前よりも弱いやつなら、大体はコイツでなんとかなるぜ。」
「なんとかなるって・・・物騒な。」
このときは、私はこの呪文がどれだけ私の身を救うことになるかなんて考えてもいなかった。
「物騒か?そんなこと言ってたら、この世界で生きていけねぇぞ。」
いまいちまだ実感がわいていなかった私は、この直後にこの、『赤の世界』の、『異界』の片鱗を知ることとなる。
「グギャアァァァァ!!!!!」
突如周囲を斬り裂く恐竜の雄叫び。
その後、確かに人のような悲鳴が聞こえる。
「こ、コイツ!」
「お前はそっちに回り込め!」
そして、ブシュッと何かの吹き出る音のあと、硬いものが砕ける音。
「マズイ!アイバーンだ!!」
同行者の視線の先を覗く。
すると、そこには人のような、しかし竜のような、確かに知性があると思われる生き物と、それを踏み潰し、喰い荒らす、一つ目の竜がいた。
「竜人どもが!ヤツを刺激しやがったな!!」
どうやらあの出で立ちは人のようで、皮膚を被う鱗や爪は竜のようでもあるスピリットは、竜人というらしい。
「おいロロ!逃げるぞ!運が悪けりゃ俺らも殺られる!」
「・・・」
私の思考はどうでもいいことばかりを反芻する。
それほど、今の私にはこの風景は耐えがたいものだった。
「おい!!ロロ!!」
しかし、同行者の声で私は我に帰った。
私は身をひるがえし、逃げようとする。
だがそれも判断が遅かったようだ。
一つ目の竜は、私のことも彼らの仲間だと思い込んだのだろう。
その怒りと殺意の籠った目に睨まれ、私は竜人たちを思い出して動けなくなってしまった。
「立て!逃げろ!」
そしてその、一つ目の竜は空へと舞い上がり、そのままこちらへと細長い口を槍のようにこちらへ向けてくる。
「あ、あぁ・・・」
上空から襲いくる一つ目の竜。
脳裏に浮かび上がったのはこの地で学んだばかりの呪文だった。
わたしの震える唇がフレイムダンスを紡ぎだす。
『・・・フレイムダンス』
突如、私の身体に大きな疲労感が襲いかかり、その場に倒れこみそうになる。
そして、踊り狂う火炎が私の目の前で一つ目の竜を焼き尽くした。
「ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!」
一つ目の竜の断末魔。
それは、竜の肉が四散することで掻き消えた。
「・・・・・・」
私は、目の前で起きた現象と自らにのし掛かる疲労で、口を利くこともできない。
「・・・とりあえず、ここを動こう。他にもいると困るからな。」
同行者は私に手を差し出し、私を起こしてくれる。
身体がまだ震えている。
「この世界じゃ、ただ生きるために必要な分だけ殺せば、生きられるって訳じゃねぇぞ。」
「・・・うん。」
私がもともといた世界では、少なくとも、私が暮らしていた場所は、生きるためには、食べるための命しか奪っていなかった。
そんな、私の当たり前は、この世界には通用しない。
「おい。どうした、ロロ。」
「・・・僕の世界での、習慣なんだ。」
"習慣"というには、色々な方法がありすぎるかもしれない。でも、私は、竜人と呼ばれた彼等の亡骸に、手を合わせた。
「変わった習慣だな。・・・まあ、俺には、無い発想だわな。」
「あのさ。」
私は、同行者に問いを投げ掛けた。
「この世界って、こういうことが、沢山あるの?」
同行者はしばらく考えてから、うんざりしたように答えた。
「ああ。随分と前からな。昔から世を支配していた"恐竜"と、突然現れた"竜人"が、戦争してんだ。竜人は、いわば侵略者さ。」
侵略者。
その言葉を口にする彼の表情は、どうにも読むことができなかった。
「今のは?今の、一つ目の、竜は?」
「アイツは、アイバーンだ。ここいらにはいくらでもいる。戦争には関係ない。どうせ、竜人様の気まぐれで狩ってただけだろうよ。」
「そうなんだ。。。」
竜人とはなんとも愚かな生き物なのだろう。
我々、人間のようではないか。
「まあ!俺にどうこうできるわけでもねぇし、今に始まったことじゃないんだ。難しく考えるのはナシな!」
同行者はそう言って歩き出した。
そうだ。もうしばらくはこの世界で暮らすのだから、この世界の出来事を難しく考えるのはよそう。
考えるのは、その時が来てからで十分なのだ。
「うん。」
今は、それでいいではないか。