放浪者ロロ異界見聞録 Self-interpretation 作:Boukun0214
あの合戦から何日か過ぎた。
そのあとは特に危険にさらされるようなこともなく、比較的平和に過ごしていたが、その反面、帰れる手掛かりも、全くといっていいほど見つからなかった。
「よし!」
急に、同行者が叫んだ。彼はなにかと突発的なスピリットだということは、もう承知していた。
「ど、どうしたの?急に大声出して。」
「村で買い物をしよう!」
「なんでまたいきなり・・・」
彼は遠くを仰ぐような仕草をした。私も彼の見ている方向に目を凝らしてみたが、なにも見えなかった。彼にはなにか見えているようだ。
「お前のその服も、ボロボロになってきたしな。ここは優しい優しい俺がなにか買ってあげよう!ってことさ。」
「あ、ありがとう。」
確かに、私の服は随分とボロボロになっている。この世界に来てから、枝や草を集めただけの簡単な寝床でしか寝ていないので、起きているときはともかく、寝ているときに所々が傷んでしまうのである。
正直、身体が物凄く痛い。寝心地も最悪だし、そもそも風呂にも入れていない。そういう面も含め、早く帰りたい。切に。
そこから数時間歩いたら、彼の案内通り村に出た。村は小規模とは言えど、人の集まる場所なのでそれなりの活気があってなんだか懐かしくなってしまった。
「さあ、服屋行くか。」
「あ、うん。」
彼に引っ張られ、ついた先には、皮膚が黒光りする鱗で被われた人のようなスピリット、-多分、竜人だろう。-が営む呉服屋のような場所だった。服が雑多滅多に置いてある。畳むという意識がないのか。
「こんなの良いんじゃねえか?」
と言って、彼が持ってきたのは白くて大きいマントに緑色のフード付きの半袖の上着、それとセットのようなベルトポーチ付きの半ズボンに、赤いネクタイが付いた白いシャツ、そして、マントを止める羽のようなアクセサリーだった。
「・・・コスプレ?」
「は?」
「あ、いや、なんでもない。はは。」
悪くない組み合わせだが、何処からどう見ても私の世界でこれを来ていたら然るべき場所でないと完全に痛い人だ。しかし、こちらは買ってもらう身なので文句は言わなかった。それにまあ、ちょっと、格好いい、し。
「よし。じゃあ、コレ着よう。はい。」
私に手渡された服を着てみると、まだ着なれていない感じはあれども、それなりに様になっているようだ。サイズも悪くないし、動きやすい。
「あ、フール・・・?」
着たあとに同行者の方を見た。すると、彼は竜人の店主相手に値切り交渉をしていた。
「いやぁ、親父ぃ、儲かってるんでしょ?ね?だからさあ、もうちょっとまけてくんない?」
「お前・・・もうほとんどタダ同然だろ!?これ以上何を値切るって言うんだい!?」
「ほら、わかるでしょ?ね?こっちも旅しててさあ、お金ないんだよぉ。ね?ね?」
誰か助けてくれと言わんばかりに私の方を見てきた。ごめんなさい。私はこっち側です。ハイ。
それにしてもどうやって値切ったのだろうか。この一式で相当すると思うのだが、タダ同然とは・・・。
この男、計り知れない。
で、結局。
「いやぁ~。良かった良かった!」
「なんか店主さんが可愛そうになってきた・・・」
「ん?じゃあ返すか?」
「イエ。着マス。」
あろうことか彼は青いブーツも一緒にほとんどタダ同然で買うことになった。というか、タダだった。もう二度と来ないでくれと言われてしまった。
「じゃあ、次は武器か。」
次の犠牲者は武器屋になったようだ。ご愁傷さまです。
武器屋はパッと見て、想像していたものと同じだった。大中小様々な剣なり槍なり。防具も少しだが置いてあった。
どれでも好きなものをと言われたので、近くにあった小降りのナイフを持つ。
「~~ッ!」
物凄く重たかった。コレは無理だ。他の刃物も似たようなもので、私には振り回せそうにない。盾はもっと重いし、戦えそうにない。
「お前、やっぱ、力ねえな。わかってたけど。」
「いやわかってたなら一言いってよ!剣がこんなに重いなんて初めて知ったよっ」
「ここまで力が無いとなるとなぁ。やっぱ、お前は魔法使い向きかな。」
そう言って、フールは1つの杖を私に寄越した。乾いた木で作られた簡素な杖は軽く、私でも持つことができた。
「魔法使い、ねぇ。」
「うんうん。お前はよわっちいから、後ろから援護するくらいが丁度いい。」
「うーん。杖って、意味あるのかな・・・」
この間、魔法を使ったときは杖がなくとも普通に使うことができた。剣士が剣を必要とする理由はわかるが、魔法使いにとっての杖とはどういう意味を持つのだろう。
『フレイムダンス』
なんとなしに、杖を振るいながら私が使える唯一の呪文を唱える。すると、炎の渦が店の中に躍り出た。
「あっちぃ!!!ロロ!おまっ、何すんだ!」
ギリギリ標準が外れたようで、炎は空気を焼き、その後消えた。要するに、空振りだ。当たっても困る。
彼が横でなんだかんだ言っているが、私は、とあることを感じていた。あの、魔法を使ったあとのどうしようもない疲労感が少ないのだ。具体的には半分ほどの疲労ですんでいる。これなら、普段の倍とは言えないが、多くうてるかもしれない。
「杖、すごい。」
「気に入りましたか?こちらはドラグ族の祈祷師が使っているものと同じ木から掘り出したものでして・・・」
私が杖の効果に感動していると、武器屋の店主が笑顔でセールスをしてきた。すると、その店主に、これまた笑顔で一人の道化師が近付いてきた。
「ねえねえ、お兄さん。その杖いくら?」
「はい。こちらは・・・」
なんていうか、その、・・・ご愁傷さまです。