放浪者ロロ異界見聞録 Self-interpretation   作:Boukun0214

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呆気ない

あの後、村で紙とペンを別で買って貰った。

と言っても、同行者は値切りに値切りを重ねて、提示価格の三分の一で買っている。彼曰く、「大抵、値切られる前提なんだから良いんだよ。」とのことだ。

この紙とペンは時折綴っている日記の足しにしよう。

 

「・・・・。」

「・・・ねえ、フール。」

「あ?」

「・・・暑くない?」

「ん?まあそうだな。近くに沼があるしな。」

 

沼。沼が原因でそこまで暑くなるものだろうか?だが、その疑問の答えはすぐに見付かった。そこから数分ほど、歩いた先に、それはあった。

答えはやはり、沼だった。

赤い輝き。大地の鼓動を感じた。

要するに、マグマ溜まりだ。それがとても大きな規模で広がり、まるで沼のようになっていた。暑いのも当然だ。

初めて見る灼熱の沼。しかし同行者が私を引き止める。

 

「覗き込んだらガブリといかれるぜ」

 

沼の中に何者がいるというのか?

見たところ、およそ生命が存在できるような環境ではない。例えばここで、私が沼に足を踏み入れれば、たちまち燃え尽きてしまうだろう。

このマグマは、生命と呼べるものを否定する類のものではないのだろうか。

などと考えていると、沼から噴水のように、赤い柱が上がった。炎の柱だ。

思わず目を見張った。この殺伐とした世界で、綺麗だと思ったのは久しぶりだ。周囲の暑さすら忘れるほどだった。

何となく、この世界は夢ではないということは諦めのような実感として自分の中にあった。

 

「やっべ、ロロ!逃げるぞ!」

 

我に返ったときには遅かった。同行者が炎に包まれた。

「フール!」

彼の身体には、刃を持った、そして炎を纏う魚のようなスピリットが噛み付いていた。

炎の柱は彼らの群れが飛び出した合図なのかも知れなかった。そのスピリットを排除することを考えたが、あの呪文では炎を消すことはできない。炎を躍らせる(フレイムダンス)のだから当然だ。炎に焼かれる同行者を目の前にしながら、私に成す術はない。

 

「ああアアアァァァァ!!!!」

全身を包む炎にそれでも彼は耐えていた。

しかし、別の角度から飛び出してきたスピリットの刃が、彼のノドを切り裂いた。

「ァ...」

同時に、断末魔が消えた。

終わりは想像以上にあっけなく訪れたのだった。

 

 

 

その後のことは、あまりよく覚えていない。

ただ恐怖から、その場を一目散に駆け出した。沼から離れ、暑さが和らぐところまで走って、転び、また起き上がり走った。杖は手放さなかった。右手に持っていると走り辛いが、それでも、手放せなかった。

一頻り走り、夜が来た。

周囲に身を休ませられそうな所は無く、その場にへたり込んで眠ろうとした。

だが眠れそうにもなく、そうしていると涙が零れてきた。

それも、失った痛みより、当たり前の死への恐怖が強かったのだから、私は救えない。

いやそれは本来当たり前のことだったが、このときの私にはそれ以外の感情が無かったのだ。

 

そして気付いた。

私は、門の前にいた。

 

それは私がこの世界に来たとき、通ったもの。同じ場所に、変わらずそれは鎮座していた。

その門からは機械が流れてくる。

どうやら、あちら側の物質も流れ着いてくるらしい。その文明の香りに私は吸い寄せられるように、門へと触れようとした。

 

「おい、何してるんだお前。」

 

背後から声がした。

振り替えると、数名の竜人──この、燃え盛る世界の住民がいる。彼らは恐竜の死体を引きずっていた。確か、竜人と恐竜は戦争しているのだったか。

 

「いえ······あの······」

「ったく。迷子か?そこにいちゃ危ないぞ。少し退いてなさい。」

 

手に何やら工具のようなモノを持つ竜人が私を門の前から押し退ける。

その竜人は座るなり門から流れ出た機械を分解し始めた。

 

「お前大丈夫か?とりあえずこれで顔拭けって。」

 

最初に私に声をかけた竜人から布を受け取り、涙やら泥やら鼻水やらで汚れていた顔を拭う。ごわごわしていて、肌が痛いがそれは我慢した。

 

「で、何でこんな外れにいるんだ?どこの村の出だ?」

「······帰れない」

「あー······この御時世だしなぁ。とりあえずうちのところ来るか?探せば宿くらいはあるぞ。」

 

どうせ行く宛もない。うなずく。

 

「こっちは大体使えそうなのは集まったぞ。」

「よし、じゃあ帰るか。ついてこい」

 

くたくたになった体は休息を求めていた。

それでも竜人達について行き、町らしい場所に到着した頃には夜が更けていた。

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