艦ラ松さん~カラ松、神通、ときどきレ級~   作:たんぺい

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プロローグ~ありそうでなかったデカパン転生~

「俺が、何したっていうんだよ!!」

 

ある街角の歓楽街の隅のまた隅、顔を真っ赤に染めた青年が吠えた。

 

その青年は整えた坊っちゃん狩りにデカいサングラスという似合ってるのか微妙な取り合わせ。

服装は、革ジャンに自分の顔がプリントされたTシャツ。

下はパリっとしていながらもどこか古くさいパンタロンのズボン。

そして、二十代半ばの癖に、年甲斐もなくじゃらじゃらとしたチェーンをぶら下げている。 

バイクにも乗らない癖に、何故か指ぬきグローブを両手に嵌めていた。

…ガイアが囁く感じに、「イタイ」男である。

そんな彼は、完全無欠に「出来上がり」、酔っ払いの口調のままうわごとのように続ける。

 

「兄貴も弟どもも、トト子ちゃんも親父もおふくろもついでにスタッフも、この松野カラ松をなんだと思ってやがるんだぁ!ちくしょう…」

 

そう、彼は「松野カラ松」という、松野家の6人兄弟の中での次男たる男だった。

彼は上記の通り、「イタイ」性格の上に無職のニートと有り体に言えばクズ野郎の四文字で説明出来るダメ男である。

とは言うものの、案外とその性根は優しく真面目な面も強い。

特に人格面で言えば、根が優しい分、イタイ性格さえ除けば兄弟随一のツッコミ役のチョロ松よりまともな部類である。

どちらかというと、不良じみた見た目に反し、要領の悪い天然という感じの人物であった。

 

しかし、どうにも要領が良くない性格のせいか、カラ松周りでは極度に周囲の扱いが悪い。

カラ松の誘拐事件の際などでは、犯人のチビ太ですら全力で同情するほど、身内にフルボッコにされていた。

…カラ松に非が無いわけではないが、クズ野郎は山のように居るなかでカラ松だけが割りを食うのがほとんどなので、端から見ていたら確かにかわいそうなレベルだった。

ぼやきの一つぐらい出るだろう。

…まあ、今もつい二十分ほど前まで、チビ太の屋台で何時もの如くツケで呑んでるあたりは同情できないのだが。

 

そんな見苦しいながらもかわいそうな男を、心配そうに見ていた男が居た。

全裸に、パンツ一丁で。

 

「…カラ松くん、かわいそうダス、なんとかしたげたいダス」

「…あ、誰かと思えば、お前デカパンか!やなせ先生に謝ったのか?」 

 

そう、リアルに寄せると通報されるこの男、その名の如く「デカパン」という。

その不思議な巨大なトランクス型パンツからは、様々なモノが取り出せる。

金の玉やら、ボール二つやら、竿やら、キノコやら、バナナやら。

 

「全部チ○コじゃねえダスか!チ○コと玉のことばっかりじゃねえダスか!後、デカパンマンはアレ本気で怒られるからもうやらないダス…」

「トッティよろしく『もうとっくの昔に』…」

「赤塚先生ならともかくも他の作者相手にそれは多方面から殺されるダス!!主にアニメスタッフが!せっかくカラ松くんに良いものをもって来たのに…」

 

良いもの?とカラ松が聞き返すと、デカパンはふふんと鼻息をならし自分のトランクスをごそごそと漁る。

そして、テレテレッと、金曜夜7時のテレ朝のアニメのひみつな道具を取り出すときのBGM風の何かが流れつつ、

デカパンは何故か右手が丸い手に変形しながら件のアイテムを取り出した。

それはピンク色をした、西洋風のシンプルな四角いドアだった。

その名も…

 

「『どこかにいくドア』~!(声がしゃくれながら)」

「お前アウトだろそれ!てか古い方の声に寄せてんじゃねぇ!似てねえし!!」

 

…完全にアウトなシロモノだった。

 

デカパンはカラ松のツッコミは無視しつつ、その使い方を説明する。

いわく、自分を本当に必用としてくれる存在に出会うように、その扉は次元を越えて行き先を指定する。

そして、ドアを潜り抜けた瞬間、その時空へと開けた者を誘う。

それは、例えば、剣と魔法の異世界かもしれないし宇宙人との戦争の最中かも知れない。

或いは、それこそ近所の恋人の家に飛ばされるかも知れないだろう。

その扉の向かう先の答えは…一方通行なだけに、誰にも知らない。

知るは運命と扉その物ぐらいである。

 

「…本気でときどき思うんだが、デカパンって何者なんだ…」

「さあ、赤塚先生のキャラに答えを求めるのはヤボってもんダス」

「そうか、それも風が知っているだけ、か…」

 

カラ松はあらゆる意味で遠い目をしつつ、己の置かれた状況を確認する。

 

自分を必用としてくれる世界。

魅力的だ、あまり魅力的な世界だ。

この世界ではカラ松という存在は、有り体に言えば犯罪者でこそ無いが駄目人間の類いだろう。

それは、カラ松にとってすら、承知の上だ。

そんな自分を必用と言ってくれるとは、なんと、ありがたい。

それは大人になればなるほど、或いは抗えない、魔性の誘いである。

仮に、悪魔の手招きだとしても、だ。

 

とは言うものの、それはカラ松のすべてを棄てるに等しいという話でもある。

つまり、カラ松の存在がすべて抹消されるに等しい。

そして、彼が居なくなって、悲しむ存在も…

悲しむ…かな…しむ……?

 

「…デカパン、俺はあらゆる意味で目が覚めたわ、荷物纏めるからちょっと待っててくれ」

「あいあい、わかったダス」

 

…そうして、3時間後。

私物を段ボールに纏めたカラ松は、その荷物ごとその扉を潜り抜けたのだった。

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