艦ラ松さん~カラ松、神通、ときどきレ級~   作:たんぺい

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一話~ボーイ・ミーツ・艦娘~

「…なんだこりゃ?」

 

カラ松はその扉を開けた先の世界に飛ばされると、何時しか海岸に佇んでいた。

その海岸は端から端へと繋がる先が目視で確認できる辺り、海岸線自体が短いという事は容易に想像がつく。

視線をぐるりと後ろに見渡せば、何だか崖の天辺に朽ち果てたような古い洋館と無人の灯台が一つあるぐらいで、その周囲は森とも言えぬ林に囲まれていた。

生き物の声もうみねこやカモメの声が多少響くぐらいで、後は足元を蠢いているフナ虫ぐらいしか確認できない。

探せば野ネズミや野うさぎぐらいは居るのかも知れないし、或いは野犬や蛇などが潜んでるのかも知れないが…人の気配はなかった。

 

そう、明らかに、カラ松の居る場所は「無人島」だった。

 

「フ…俺の目映さにおののくなよ、誰でもいいから、俺の胸に何時でも飛び込んでおいで」

 

カラ松は、震える声でそう海岸で立ちながら虚勢を張るが、返事は無い。

というか、人の影すら見えてこない。

それどころか、カラ松のイタイ言葉に反応してか、海鳥の声すら聞こえなくなっていた。

…カラ松は、適当な口車に乗せて自分を無人島に送り込んだデカパンに対して怒りを抱きつつも、寂しさから泣きそうになっていた。

 

そんな自分を奮い立たせるように、彼は続ける。

 

「怯えることはない、俺は求められたら金以外何時でもウェルカムさ」

「う…ひ……ひ……と………?」

「…!誰か居るのか!?」

 

カラ松の言葉に対し、何処かからか女の声がする。

何処に居るのかな、とカラ松が辺りを必死に見渡す。

そしてぐるぐると視点を移動させ…あり得ないモノを見つけた。

 

その姿は、実に美しい。

ぼろぼろにその茜色の装束とハチマキを硝煙に焦がし、頬や手を煤だらけにしてもその美しさは衰えることはない。

だが、そのあり得なさは彼女が立った場所と武装にある。

どう見てもトト子と同じような体格なのに、あり得ない重量の砲を背負った姿がまずあり得ない。

だがそれ以上におかしな点は、明らかに鉄か何かの塊を背負った姿なのに、

彼女はまるでアメンボのように海に立っている。

頭の悪いカラ松ですらわかる、物理的に、今の彼女の姿はあり得ない。

 

陽炎なのか、幻なのか…或いは…

 

「…女神…?」

 

カラ松は彼女の姿を見て、ふと、そう漏らす。

だがその少女は、カラ松の言葉を聞くと、そんなこと有りませんと、小さく呟きながら首を振る。

そして物騒な砲が虚空に消えながら、少女は海岸線へ着くやいなや涙を流して倒れた。  

 

 

~それから、3時間ほど後~

 

 

「…おい、起きろ!起きろって!?」

「…う、あ…ひゃい!?」

 

カラ松の必死の言葉に、その少女ははっと目を覚ました。

 

気がつくとそこは森の中。

その少女は草原の上に横たわっている。

辺りには誰も居ない。

自分はぼろぼろ、それどころか、自分はさっきまで気絶している。

そして、眼前には二十代の成人男性…

 

「私にナニをしたんですかぁ!?ケダモノ!」

「ひでぶ!?」

 

…早合点して、その目の前の男を殴るのは、まあ防衛本能と言って良いだろう。

すぐに誤解は解けたため、今度はその少女は平謝りする羽目になっていたのだが。

 

「…本当にごめんなさい!助けてもらったのに、私、混乱して、混乱、しちゃって…」

「まあ気にすることはない、戦乙女(ヴァルキリー)が天国(ヴァルハラ)に連れていかれるより、ましさ」

 

若干、ほっぺが痛かったけどな…と苦笑いして、よりイタイ慰めの言葉をかけるカラ松。

そんな言葉に顔を真っ赤にさせながら、その少女は一瞬謝罪を止めて感涙する。

しかし、すぐにその少女は暗い顔を見せると、悲しい表情をして泣いたまま話を続ける。

自分は、赦される人間なんかじゃない、と。

 

「赦されない?一体、何がなんだか…」

「私、軍人なのに、自分のために逃げちゃって、でもどうしたら良いかわからなくて…」

「なんだそりゃ、わかりやすく言霊に乗せてくれないか?」

 

カラ松の当然の疑問。

ぐずりながらも聞き出したその回答は、おおよそ纏めたらこんな感じだった。

 

 

その少女の名前は「神通」という。

かつてのWW2の武勲艦の軽巡洋艦の魂を宿す、「艦娘」という存在だった。

まるで一人の普通の少女の姿をしながらも、戦艦の力をそのまま振るえる英霊と言って良い。

神通もそのうちの一人だった

 

その艦娘は「深海棲艦」と呼ばれる、人類の天敵に立ち向かうために生まれた。

戦い、そして、沈み沈められながら、一進一退の攻防を広げていた。

そして、神通はその戦いの中で生きるべき存在…の、はずだった。

 

話を変えるが、艦娘という存在は例外無く見目麗しい。

神通も例によって贔屓目なしに美少女だ。

そして、海軍に所属する提督は大体が男…ようは、セクハラが日常茶飯時だった。

神通も、その被害者の、一人だった。

 

それでも、最初は肩を叩かれる程度の話だったのだ。

だが、「それ」は徐々にエスカレートしていく。

腕を捕まれ尻を触られ髪を撫でられて。

しまいには夜の誘いまで強要されるに至り、怖くなった彼女はついに決断する。

憲兵…陸軍の監視役に相談して、セクハラを止めさせてもらおう、と。

 

だが、さらにふと気がつく。

提督がセクハラする相手は、知る限り自分だけだ。

いや…或いは、数名ほど同じような被害者が居るのかも知れないが、ごく少ないだろう。

逆説的に、誰かが提督をセクハラ野郎と糾弾したなら、

その訴えた相手が誰かもすぐにわかってしまう。

 

…自分は深海棲艦は怖くない、戦いで傷ついて死ぬなら、本望だ。

だからといって、提督の社会的な報復が怖いかどうかは…

どこか身内に臆病な神通には、考えるだけで吐きそうになるほど別問題だった。

 

そして、神通は憲兵の詰所に自分の被害を書いた手紙と証拠を写真を放り投げるや否や、

そのまま勢いのまま寮にも戻ることもできないで海に飛び出したのだった。

だがそれがいけなかった。

たまたま野性の深海棲艦に出くわしてしまい、弾を積んでない神通はなすすべなく蜂の巣にされる。

なんとか逃げ出したものの、今度は帰り道どころかどこがどこなのかわからなくなってしまう。

途方にくれた神通は、とりあえず手近な陸地を探そうと必死にうろうろしていたのだった。

そうしたら、カラ松が佇む無人島に降り立ったという事だったのだ。

 

 

「…聞いてみたら、赦せねえ話だな」

「ごめんなさい!本当に、私、赦されない事ばかり…」

 

少女--神通の話を聞き、憤るカラ松。

カラ松の態度に心底申し訳ない表情で謝る神通だが、そうじゃないと右手で神通の口をカラ松が塞ぐと、こう続けた。

 

「…花は、愛でるものだ、断じて傷つけちゃ、いけない」

「は、花…?」

「花じゃないなら、やっぱりあんたは女神かな?人生の迷子の俺の目の前に降り立った、さ、少なくとも嬉し泣き以外で女を泣かせるのは…流石の俺もどうかと思うぜ?」

 

そのどこから来たのかわからないようなキザな台詞。

神通も流石にサムいなとは感じながらも…どこかほっとしていた。

そして、なぜだか別な意味で泣きそうになっていた。

…キザさが異常に鼻につく事を除けば、カラ松が害の無い優しい男だと感じたからだろう。

 

そんな彼らの前に…

 

「クッセエヨ!テカ痛エヨ!私ノ棲ミカデ、三文芝居ヤッテンジャネエ!」

 

黒づくめの白い少女が、風の妖精のごときツッコミを入れながら現れたのだった。

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