艦ラ松さん~カラ松、神通、ときどきレ級~   作:たんぺい

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五話~聖夜の二人、それ以外~

「…そう言えば、何か忘れてる気がする…」

 

ある部屋で、5人集まった男たちのうち、一人がこう呟いた。

ボンヤリとした瞳をなんと無しに空に浮かべながら。

頬杖をついて、そんな事を言い出した。

 

それを受けて、残りの四人は口々に口を開く。

 

「ええ~、お前が思い出せない事なら大したこと無いだろ」

「…むしろ、俺達クリスマスに何の予定の無い連中に、思い出す事の価値はあるのか…?」

「にゃはは~、そんな事より野球しようぜ!野球!」

「くっそ、スタバァコーヒーの件のせいで、ついにLINEの友達減ったぞ!」

 

…なお、彼らからはあまり興味を持たれていなかったが。

そんな彼らを見て、最初に口を開いた男が呆れた様に呟いた。

 

「…おそ松兄さんは緊張感持ちなよ、そして一松はもうちょい自身持って!そんで十四松は今日は寒いからパスな、そしてトド松は人の話に興味を持てよ!」

「うるせえぞチョロ松、今日はなんだか静かなのに…!」

 

…そう、彼らはカラ松の六子の兄弟たちである。

クリスマスだと言うのにまるで予定の無い彼らは、トト子に振られたのを期にとぼとぼ自宅に帰宅する。

そして、そんな絶望的な聖夜の静寂に、そんな何の内容も無い会話を繰り広げていたのだった。

 

しかし、おそ松のチョロ松に対する悪態に対し、チョロ松は何故か青ざめる。

とある恐ろしいことに、チョロ松は気がついたのだ!

 

 

「静か…そうだ!この一週間ぐらい、カラ松兄さん見てねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

そう、行方不明のカラ松についてである。

カラ松が行方不明だったという事に誰一人気がついてなかったのだ。

 

そこに口を出したのは一松達、弟組だった。

 

「…ああ、何か最近気分が良いって感じてたら、そうかクソ松が居ないのか」

「クソ松!?お前本当にカラ松兄さんに厳しいな!」

「…野球しないなら野球板しようぜ!」

「だから野球はどうでもいいよ!」

「あ、やっべえ!おもしろいLINEスタンプゲット!」

「お前は少しは会話に参加しろぉぉぉぉぉぉ!」

 

…なお、こいつらの反応はこんな感じである。

あまりに冷淡な弟達に、チョロ松はひっくり返ったという。

しかしチョロ松も今のいままでカラ松の事忘れてた事点で同罪な以上、ツッコミを入れる資格は無いのだが。

 

そんな彼らを見て、おそ松はゲラゲラ笑いつつ、一言言った。

そんなにカラ松が心配なら、メールでもしろよ、と。

 

おそ松にしては、至極真っ当な提案だった。

 

 

 

~一方、同時刻、とある鎮守府~

 

 

 

「…私は、最低だ…ごめんね、神通…」

 

鎮守府の寮の自室にて、とある軽巡が落ち込んでいた。

 

その長い長いマフラーは、メンポのように美しく白く輝いて。

そのツインテールは無風地帯の部屋なのに、何故か靡いている。

その薄紅色と白亜の装束は和風。

魚雷は、まるでスリケンのように怪しい輝きを見せていた。

彼女は、あからさまに川内である。

 

そう、彼女は神通の姉、一水戦の旗艦も勤めた軽巡の艦娘だった。

 

 

普段は夜戦夜戦と五月蝿くはしゃぎ、明るい姿を崩さない。

それでいて締めるところはきちっと締める、何事も全力投球。

若干ロリコンのケはあるが、部下にも優しく上司には礼儀正しい。

夜戦フェチ以外の事は、文武も炊事洗濯もパーフェクト。

 

何時もは、川内はそんな感じであり、夜戦以外では人気者である。

そんな彼女が落ち込んでいた。

 

神通の事で、だ。

 

 

彼女の様子が最近おかしくは、川内も感じていた。

 

何となく、何時も以上に疲れがたまっているというか、やつれている感じだ。

そう近ごろの神通に対し、川内は感じていた。

だが、神通は優しく真面目な旗艦の一人である、ただでさえ気苦労が多すぎる。

たまには神通だったとしても、疲れやすい日もあるだろうとたかを括っていた。

 

 

だがしかし、実際はどうだ?

 

セクハラ提督によるストレスと恐怖。

それが綴られた手紙と、写真による動かぬ証拠によりようやっと発覚した、神通の悲哀。

そして、その証拠の発覚と引き換えに起きた神通本人の行方不明という事件。

 

…神通一人の問題では済まない、大惨事ではないか。

姉ならば、神通の苦しみのサインの一つ、気付けたはずだったろうに。

 

下手したら脱走の罪で神通がどうなるか分からないという一大事。

自分が神通の気持ちにもっと早く気付き相談に乗れたらそんな事件になることはなかったはずだ。

だが、自分は、神通に何一つできなかった。

そんな思いが、川内を苦しめていたのだ。

 

…故に、川内はショックから、この一週間自室に引きこもってしまっていた。

同僚たちも川内の気持ちを鑑みて、そっとしていたという。

 

 

だが、そんな川内の部屋へ、クリスマスのこの日に強引に鍵を開けて突入する艦娘が居た。

 

 

同じく川内型の装束はサンタ風にアレンジし。

その姿はあからさまにゲイシャ。

何故かアイドルを自称する四水戦。

どっかーん!と現場に入った艦娘こそ、川内の末の妹、那珂であった。

 

 

「なんだよ那珂…今、私は気分が悪い…!」

 

川内は全力でそんなあらゆる意味でまったく空気を読めてない那珂にぶちきれるが、

とうの那珂はというと、完全に目を白黒させ、川内にこう返したのだ。

 

「川内お姉ちゃん、あのね…何処にも神通お姉ちゃんの手がかりなくて、最後の手段にダメ元で神通お姉ちゃんにメールしたら、本人から所在のメールがかえって来て、あわてて……!」

「な、なんだって!?」

 

そういうと、川内は急に目の光を取り戻したら、那珂を首根っこ引っ張り問い詰める。

那珂は苦しそうな表情をしながら、自分の携帯を川内に見せるのであった……

 

 

 

~一方、とある無人島~

 

 

 

「今日は、クリスマスなんだと」 

「そーですかー、私達だとなんだか色気無い気がしますけどね」

 

そんな事を言いながら、黙々と館の掃除にカラ松と神通は励んでいる。

神通とカラ松はあれから一週間、すっかり共同生活に馴染んでいた。

 

男女二人きりという状況でクローズド・サークルと聞くとロマンチックというかわくわくする気がするのだが…

本人達が呑気というか平和ボケしている上に、お互いに超奥手。

なんというか、すっかり兄妹のような位置にお互い落ち着いてしまった。

 

しかも、この島の支配者にはレ級という便利な全方位ツッコミ兼保護者も居るため、

物理的には二人ともあまり下の方向にはいかないという、ストッパーの存在も大きかった。

 

元々かっこつけで中身が伴わないヘタレのカラ松はもちろん、神通も真面目に見えて根っこがポンコツでトンチキだったりする為に失敗する事も山ほど有ったが…

それらが逆に、彼らの毎日のスパイスになっていた。

そして、レ級が被害を被る、それまでがワンセットだったという。

 

何と言うか、カラ松と神通にとっては、レ級の胃をリリースする代わりに温かく平和な時間が流れていた。

 

 

そんなおり、ふと、二人の体を震わせる物が同時に貫く。

何だろう、と気になりそれを探すと、見つかった。

…自分の携帯である。

 

一週間充電してないのによく持ったな、そう二人は同じ事を感じつつ、その携帯を確認する。

身内からの、心配がそこには書かれていた。

 

 

「…異世界なのに、電波つながったのかよ」

「ここ、そもそも圏外じゃないんですね…」

 

二人はとんちんかんなようなそうでもないようなツッコミを思わず入れながら。

 

 

そこに、たまたまレ級が通りかかる。

二人デ何ヤッテルノ?とレ級に聞かれたカラ松と神通は、顔を見合わせると、何処からかいきなり自取り棒を取り出して、三人のショットをおさめた写真を取る。

 

そのまま、彼らはそれを返信メールに添付した。

 

 

「ホント、何ナンダ…?」

 

 

レ級は仲良く笑い合うカラ松と神通に小首を傾げるしか、なかったと言う。

 

 

 

~一方、それぞれ~

 

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「何これぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

松野家宅、鎮守府の軽巡寮。

異世界のそれぞれの元居場所に、同時におそ松と川内のツッコミが響き渡る。

 

「『女神と堕天使と聖夜を過ごしてるから、みんなは安心しろ』…だと?」

「『深海棲艦に一般男性と捕まってしまってるけど、元気です』…だって?」

 

「 殺 さ ね ば 」

「 救 わ な い と 」

 

「待ってろよ、カラ松…!」

「待っててね、神通…!」

 

 

二人の兄と姉は、まったく逆な決意を固めたと言う。

知らぬは、カラ松と神通についでにレ級、そんな張本人どもだったそうな…

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