幻獣王が行く!!   作:トリィケンスケ

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追いかけっこの後は魔神退治

 

「な、本当に常識外ね」

 オリオトライが驚愕の声を上げた。

 それほどの事象が起きたのだ、オリオトライの眼前で。

 

「それ、無刀取り?」

「Jud.、そして、俺の勝ちです」

 オリオトライの剣が麒鳳(きほう)の手に握られている。

 そして次の瞬間、麒鳳が剣を放り投げ、激突コースに居たオリオトライを抱きしめた(・・・・・・)

 オリオトライは抜け出そうと身をよじるが、抜け出せる気配はない。

 そしてそのまま地面に叩きつけ、マウントポジションに入る。

 まるで襲っているように見えるのは、仕方がない事か、妬ましい。

 

「あ!教師と生徒の禁断の恋だ!」

「うわあああああああああああああああああ!?」

おちけつないさ(落ち着きなさい)あまさ(浅間)

「ナイちゃんが思うに喜美ちゃんが落ち着けばいいと思うな」

「ほう、拙僧もこの関係は知らなかったぞ」

「自分も同じに御座る」

「ナルゼ、ちゃん、何を、書いて、るの?」

「あ~、今話しかけないで、超集中してるから」

 後ろから追い付いてきた生徒達はそれを目撃すると同時に、騒ぎ立てる。

 その喧騒を聞いて麒鳳は眉を少し上げ、オリオトライの上から退く。

 そして生徒達の方を向き、うるせぇ!!、と一喝する。

 生徒達は見事に直立し、静かになる。

 それを満足気に見た後、身を起こしていたオリオトライを見る。

 

「大丈夫ですか?先生」

「Jud.、負けるのは久しぶりね、流石!」

「Jud.、武蔵最強は伊達ではないですから」

 オリオトライが賞賛を送り、麒鳳は腕組みをしながら答える。

 生徒達は次のアクションを待っている。

 するとオリオトライと麒鳳は目を合わせた、アイコンタクトだ。

 

「よし、じゃあ授業は俺が引き継ぐ、智良(ちい)!」

「申請は通したよー、へっへっへー」

 いきなり後ろから声がかかる。

 うお!?、と生徒達が驚くのを無視して麒鳳は頷く。

 そして生徒達に背を向ける。

 

「行くぞ、ちゃんと着いてこいよ?」

 Jud!.、という返答を聞いた後、麒鳳は駆け出した。

 

 

「よし、ここか」

 品川のヤクザの事務所の前に麒鳳は降り立った。

 ぜぇはぁごほ、という後ろの生徒達の(うめ)きを背に受ける。

 情けねえな、と言う麒鳳に生徒全員が、ふざけんなぁ!、と声を上げる。

 それを無視して麒鳳は正面を見る、貨物庫を改造したと思われる建物だ。

 

「生存者は・・・孔明(こうめい)(すず)か、まあ途中リタイアも救護したし、まあまあかな」

 鬼ー!、と聞こえるが、種族的に鬼じゃねえよ、と返す。

 ふむ、と目の前の貨物庫改造型ヤーさん事務所を見て、どうしたものか、と考える。

 正面玄関をブチ破るか、窓を破るか、と。

 どちらにせよ全員を一度に相手にしないように気を付けなければと思う。

 すると、正面玄関が鋭い音を立てて開いた。

 

「誰だてめえは!?」

「ふむ、魔神族か、こっちに来たのは最近かな?」

「ああ!それがどうした!?」

 なら仕方ないなぁ、と麒鳳は薄く笑う。

 相手は赤色の鱗と四本の腕を持つ魔神族。

 

「体内機関に流体炉に近いものを持ち内燃排気の獲得が早く、肌は重装甲並で筋力は軽量級武神並」

「よく知ってるじゃねーか!遠足は他所でやんな!ガキ共!!」

「ま、夜警団にも頼まれているし、引く気はないけどな」

「ああ!?てめぇ・・・」

 赤色の鱗を持つ魔神族は、四本の腕を前に掲げてチャージを仕掛けてきた。

 彼にとってそれが自信のある技だと一目で分かる程に強力な技だ。

 

「仕方ねぇ、皆にやり(やす)い方法でアイツを倒してやるから、よく見とけ」

 後ろで倒れている生徒の方を向いて、麒鳳は声をかける。

 生徒達は身を起こし、後ろ!後ろ!、と叫ぶ。

 

「まずはステップワン」

 麒鳳は跳躍し魔神のチャージを避けながら、右の足ですれ違いざまに右角を蹴る。

 魔神は小首を傾げるほどの衝撃しか来ないことを確認し、方向転換をしようと足に力を込める。

 

「―――!?」

 しかしそれは叶わず、膝が震えて力を失った。

 木床の甲板を砕き、その下を抉りつつ魔神族は止まった。

 

「クソがぁ・・・!」

 魔神は未だに力が入らず、立てていない。

 

「魔神族の弱点がこれだ」

 生徒達の方を向き、何事もないかのように麒鳳は解説をはじめる。

 

「生物には頭蓋(ずがい)と脳がある、魔神ももちろん同じだ。頭部を揺らすことで脳と頭蓋の内側がぶつかり、神経系が麻痺してこういう結果になる」

 うめき声を上げながら立ち上がろうとする魔神を指して、麒鳳は解説を続ける。

 

「まあ脳震盪(のうしんとう)だな。それを起こすために効果的な方法があるわけだ」

 麒鳳は無防備に魔神に近づき、右角を指で指す。

 

「頭部に密着しそれでいて最も遠い場所を叩けば、振動は大きくなって脳震盪が起こりやすくなる。人間なら顎の先端、魔神なら―――」

 そこで魔神が動いた。

 震える腕を構え、麒鳳を殴ろうとしているのだ。

 しかし麒鳳は軽く跳躍し、右角をもう一度蹴った。

 

「この曲がったホーンの先端部だな、コツは曲がった所に引っ掛けるようにすると良い」

 魔神が構えた拳は力なく地面に落ち、魔神はうめき声を上げる。

 

「とは言うものの、魔神族や大型生物は身体の様々な所に神経塊があって、こういう状態になると脳の代わりに働き出すんだよ、だから回復も早い」

 麒鳳は困ったような表情を顔にだし、解説を続ける。

 

「だから回復する前に打撃した場所の対角線上を強く打撃する。これがステップツー」

 麒鳳は自分が打撃した右角の先端の対角線上にある左顎を蹴った。

 そして鈍い音が辺りに響くと、魔神は白目を剥いて倒れた。

 

「他のコツは固く見える所を叩いて振動を直に届ける事だな。やっちゃいけない事は首を埋める方向から打つことだな、真上とかチャージ正面とかな、衝撃が抜けて意味がなくなる」

 そうすると事務所からまた何かが出てきた。

 

「ふ、あの若造は負けたか」

 黒い鱗を持つ魔神だった。

 熟練と言っていい様な風にチャージ体制に移る。

 

「俺はあの若造とは違うぞ」

 その魔神は両角の横に腕を配置した。

 角を狙おうとすれば、迎撃されるだろう。

 

「じゃあ、もう1つのやり方を教えよう」

 麒鳳は生徒達に笑いかける。

 

「おおおおおおお!!」

 魔神がチャージを開始した。

 甲板を削り、明らかに必殺の一撃。

 しかしそれの正面に立った麒鳳は魔神に向かい疾駆した。

 

「ハッ!!」

 魔神の迎撃を避けて魔神の顔の前で拳を握った麒鳳は、その拳を魔神の顔に放った。

 その拳は魔神の眉間あたりに当たった。

 次の瞬間、魔神は後ろに跳ね返るように吹っ飛んだ。

 

「ぐがあああああああ」

 そのまま事務所の正面玄関の中に突っ込んでいき、中に居たヤクザを押しつぶした。

 

「ホールインワン、ビューティホー」

 後ろで智良が言葉を放ちながら拍手する。

 他の生徒は、こんなんできねぇよ!!、とツッコミを入れていた。

 オリオトライは、流石ねぇ、と呟いた。

 

「こんな感じだ、授業終了!」

 麒鳳がそう言い放ち、他の生徒が立ち上がろうとすると、人影が現れた。

 

「おー?皆、何やってんだ?」

「よおトーリ、吹っ飛ぶのと、ヤクザに特攻するのとどっちがいい?」

「おいおいおいおい!そんなことやったら俺死ぬじゃーん、俺ダメじゃーん」

「じゃあ両方って事で」

 ヤクザの事務所に人が吹っ飛んで逝った。

 しかし運良く当たったのが最後の一人だったようで、死なずに済んだようだ。

 

「あっぶね!“ぬるはちっ!”が壊れるかと思った!」

「なんで授業来ないでエロ本買ってんだよ」

「これエロ本じゃねーよ!本バージョンもあるけどゲームだよ!」

「どうでもいい」

「そんな事より俺さ、皆に言いたいことがあるんだよね!」

「話を聞けよ」

 現れた“不可能男(インポッシブル)”こと“葵トーリ”は半目で自分を見る生徒達の方を向き、言葉を放った。

 

「―――明日、俺、コクろうと思うわ」




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