牛頭とフォルネウスの一騎打ちです
今、ナザリックはどの階層も最低限防衛できる程度しか下僕が配置されていない。この防御が手薄の状況でナザリックが襲撃されたらひとたまりもないだろう。
第五階層までは。
【第六階層コロッセオ】
ナザリックで働く者が一同に集結し固唾を呑んで彼らを見守っている。皆の視線の中心にはフォルネウスと牛頭がいた。
2人は睨み合いお互い全力を出せる間合いで臨戦態勢に入っている。張り詰めた空気が会場内を埋め尽くしたその時――フォルネウスが仕掛けた
フォルネウスが静かに腕を上げると牛頭は武器を握りしめ白く深い息を吐きスキル発動の準備に入る。
フォルネウスが腕を下げると背後からおびただしい数の『何か』が召喚され牛頭に目掛け襲いかかる。それを見きった牛頭はスキルを発動しその軍勢に武器を振るう。
轟音が鳴り響き会場内が熱狂の嵐に包まれる中、アインズは間の抜けた口調でポツリと呟いた
「どうしてこうなったんだよ...」
ナザリックに牛頭とフォルネウスが働き始め5日。
最初は2人がしっかりと働けてるか心配になっていたのだが、フォルネウスはデミウルゴスと共にナザリックの防衛を強化する仕事を任されるほど有能だった。
一方、牛頭はナザリックの門番を任されていた
牛頭にどの様な仕事に就きたいのか?と尋ねたところ
「儂はアインズ様とナザリックヲ守護する者…しかし各階層には守護者たる面々が揃っている…ならば全てノ始まり、入り口ノ番ヲしたいと考えているのですが」
と言っていたのでナザリックの番人に就任した
忠誠の儀を終えてから最初の3日間は研修期間みたい感じで2人に第一から第十階層まで見てもらい、各階層の住人たちと親睦を深めてもらった。
しかしその中以外や以外、牛頭は多くの者から親しくされていた。俺はてっきりフォルネウスの方がナザリック受けしやすいと思っていたのにな〜
新参者のドリヤードやリザードマンに聞いたところどうやら牛頭が人気な理由は、温厚な性格に合わせお父さんやお爺さんを思わせる喋り方、着ている甚平の下町感が親しみやすさを倍プッシュしてるっぽい
逆にフォルネウスは教科書に乗るような几帳面な動きが他の一線を引きすぎて近寄りがたい存在になっている
歩くとき足音はおろかスーツ同士が擦れる音すら聞こえないとかどうなってんだよ
デミウルゴスやバーのマスター、恐怖公と仲良くしてるあたり仲間を作りたくないのでは無いらしい
今度機会があるならフォルネウスと恐怖公を呼んで上に立つに相応しい言動を教えてもらおう
そんな事を考えてるとドアをノックする音が聞こえた
「アインズ様執務の最中失礼します。牛頭とフォルネウスがアインズ様に謁見を申し立てておりますが」
「(アルベドか...)よい、入るように伝えよ」
扉を開けフォルネウスと牛頭が入ってきた
「フォルネウスに牛頭よどうした?」
「アインズ様失礼します。私達はアインズ様に創造され5日程が過ぎアインズ様が設けてくれた期間でナザリックの歴史・地理などを隅々まで知ることが出来ました。」
「しかし皆は創造されて間もない儂らノ能力などはまったく知らないわけです…そこで皆に儂らノ力ヲ見せる機会が欲しいノですが」
たしかにそうだ今この二人が言った事は正しい。
ナザリックで働く以上味方がどの様な能力を持ってるか知っていて損はないだろう。
「良い二人の意見を許可しよう。」
「ありがとうございますアインズ様。」
「そうだなどうせなら力を見せるなら早いほうが良いだろう、少し待て」
アインズはどこで力を見せるか考え第六階層のコロッセオを選択した。アウラにも許可を取り1時間後に会場内に皆を集めるよう指示を出した。
「アインズ様会場まで設けていただいた事深く感謝します。つきましてはこれからの段取りは我々にお任せください。」
フォルネウスは深く礼をすると1時間後に向け準備に入った
(じゃあ俺はのんびり待ちますかね...)
1時間後に俺は各階層守護者を引き連れコロッセオのVIP席に座り、彼らが出るのを待っていた
会話をしながら待ってると二人が入り口から姿をした
いつもと違う外見の2人を見たセバスやコキュートスは武者震いしている
しかしそれも無理はない。フル装備の2人は強大なオーラを放ち、アインズでさえ多少の恐怖を隠しきれなかった。
牛頭はいつもと少し違う甚平に袴と言うスタイルだがよく見ると草履が鉄下駄に変わっていた。武器は金と黒が主体の薙刀『岩融(いわとおし)』
岩融とは昔、弁慶と言う破戒層が持っていた巨大な薙刀でユグドラシル戦国シリーズの中で1・2を争う攻撃力を持った武器である。
あと牛頭は通常青色の甚平を着ているのだが今日は朱色の甚平を着ていて少し小さめで動きやすそうなのだが、おかげで隠していた『モノ』が丸見えになっていた
フォルネウスはスーツの服にオーバーコートと何とも様になる格好をしていた
武器はダガーナイフ『Buch der Nacht(夜の帳)』を片手に持っている
二人を見ているとコキュートスが質問してきた
「アインズ様、失礼ナガラオ聞キシマス...牛頭トフォルネウス二ハドノ様ナ能力ヲオ与エニナッタノデスカ?」
コキュートスはチキチキと大顎を鳴らしこちらを見ている
「ふむ...そうだな牛頭には1対多、フォルネウスには多対1の能力――とでも言っておこうかこれ以上はネタばらしになってしまう。…そう言えば牛頭がコキュートスと一度手合わせしたいとか言ってたな機会があったら戦ってみるか?」
「マコトデゴザイマスカァ!!!牛頭トハアッタソノ瞬間カラ手合ワセ願イタク思ッテマシタァ!!!」
コキュートスは興奮のあまり口から冷気が漏れだしてるのに気づいていなくコロッセオ内の気温が一気に下がるのを感じた。
「まぁ今回は力を見せるだけの模擬戦だし牛頭もフォルネウスも本気を出さないだろう、コキュートスお前と手合わせするときは本気を出すよう伝えておこう...おっともう始まるか」
「それではナザリック新守護者の二人による模擬戦を始めたいと思います。司会はこのデミウルゴスがお送りいたします」
「フォルネウスよわかってるな?」
「牛頭よ私を誰だと思ってるのです?無論承知のうえですよ。さて始まりの銅鑼が鳴りますよ」
会話を済ませ二人は武器を構えた。
準備を確認したデミウルゴスが部下の魔将にアイコンタクトをすると特大のハンマーを持った怪物が現れ大銅鑼の前に立ち、体をしならせ力の限りハンマーを銅鑼にぶつけた
戦いの合図と共にフォルネウスが姿が消え牛頭の周りでは金属同士がぶつかり合う音が聞こえる
(…え?なになに!?)
何がおきてるかサッパリわからない!!!
フォルネウスが消えた瞬間から牛頭の周りでは火花が散っている。
俺と同様、他の守護者達も今何が起きているのかわからないのか唖然とした表情を見せている。
横を見るとセバスが前のめりの体勢で汗を垂らしながら忙しく目を動かしてるあたりフォルネウスはとてつもないスピードで牛頭に攻撃を仕掛けてるらしい
(マジかよ...《センサーブースト/感知増幅》と《パラノーマル・イントゥイション/超常直感》、その他もろもろのバフをしてもやっと目で追えるレベルとかありえないだろ!?)
フォルネウスは本気で牛頭に攻撃している。
アインズは牛頭が心配で仕方がなかった。
しかし――あの連撃の嵐の中、牛頭の体力がまったく減る気配がない。俺は戦いが始まる前双方に《ライフ・エッセンス/生命の精髄》をかけHPの最大値を確認しておいた。未だ牛頭のHPバーはまだ1メモリも減少していない
(嘘だろ?牛頭はまだ一度も攻撃を喰らってないのか!?)
その答えは単純、なんと牛頭は攻撃を全て叩き落としていた。
「…流石ですね。だてに貴方もアインズ様に創造された身では無いようです。」
「御託は要らない、そろそろ主も体が暖まってきた頃だろ?」
「そうですね、では行きますよ!」
フォルネウスは牛頭への攻撃をやめ後ろに飛び退くとオーバーコートを翻し祈るかのように手を天にかざした
「おいで下さい《サモン・グリード・フィッシュ/貪欲な怪魚》それと《サモン・トレンチ・ウーズ/海溝の粘体》」
フォルネウスの頭上にポッカリと黒い穴が広がり、その中から巨大な魚とスライムが出てきた。貪欲な怪魚に海溝の粘体、どちらも魚・スライム種では上位に入る強さを誇るモンスターだ
「お、お姉ちゃん...あ、あれって...」
「うん、どちらも上級モンスターだね。レベルはそうだなー...60から70くらいかな?」
「あ、アインズ様…あの召喚獣を出す能力...あれがフォルネウスさんの力ですか?」
「えっ!?あー…その通りだ、フォルネウスには召喚獣を召喚する職業《サモン・マスター》を持っている。あのくらいできて当然だ。」
フォルネウスは召喚士だ。アウラも同じことができるが、アウラの召喚するモンスターにはレベルも能力もふた周りほど及ばない。
しかし最も恐るべきところは――
『数』
である
「まだまだ行きます」
フォルネウスが開いた門は閉じず続々と召喚獣が飛び出してくる。その数は10、20、30体を超え合計50体の召喚獣が召喚された。
だが門から呼び出された軍団を見た牛頭は口角を上げ高笑いをしフォルネウスに向かい言い放つ
「これしきが主さんのノ実力か...笑ってしまうな。」
牛頭は岩融を横一閃に引くと50の内30の命が散っていった。
「本気で来い。儂も隠さず全力で行くぞ。」
そう言うと牛頭は普段隠している――今は丸出しのモノを「開いた」
牛頭の腹部には金庫の様な、溶鉱炉の様な蓋が付いている。
アインズは牛頭を作るとき牛頭本来のイメージでは何かインパクトが足りないと感じそこで西洋の邪神を取り入れてみた。名は「モロク」牛の頭を持ち腹部に暖炉があるのが特徴的な邪神であった。
今ここに居る牛頭はそのモロクの影響もあり、腹部に暖炉がある。
「スキル発動ぉお!!!モロクの祭壇!!!」
その効果は能力付与&バッドステータス追加である
本来モロクとは7つの生贄を捧げるとそれに応じた恩恵を人に与える神で、ここで言う『生贄』とは相手であり『恩恵』とは己である。
このスキルが発動すると相手に7つの弱体化系バッドステータスを己には7つの上昇系のバフをかけることができる
「これで主さんも本気を出さんとな」
アインズの前で失態を見せたフォルネウスは、触手を怒り狂ったように動かし牛頭に指を向ける
「失礼っ...しました。この牛野郎が...覚悟しろ!!!」
フォルネウスは深呼吸をしスキルを発動した
「来い我が直属の軍隊!スキル発動
《侯爵の号令》」
フォルネウスはレメトゲン72悪魔の1人で階級は侯爵。侯爵とは階級的に上から2番目で、全ての悪魔の元締めの1人である
フォルネウスが両腕を上げると先程とはケタ違いの門が開き中から空を埋め尽くすほどの召喚獣が出現した。
その数666体、このスキルで出てくる召喚獣は種族はバラバラだが一同にレベルは固定されていてLv66である
その大軍団を前に牛頭は自分の技の準備に入るほど落ち着いていた。
フォルネウスは腕を降ろすと666体の軍団は牛頭めがけ一気に襲いかかった。
牛頭は腰を落とし息を吐き、今自分の放てる最大の技を繰り出した。
「うぉおおおおおお!!!刻め!!!砕け!!!スキル発動!!!《千刃万打》ぁ!!!」
666の軍団と幾重にも重なる攻撃がぶつかり合いコロッセオ自体が壊れるかと思うほどの衝撃が生まれた
「どうしてこうなったんだよ...」
模擬戦終了後、俺は2人を呼び出した
「お前ら馬鹿じゃないのか!?模擬戦のはずだろ?何本気で戦ってるんだよ!?!!?」
「ア、アインズ様大変すいませんでした!皆に自分の実力を見せつけるはずが、2人とも我を忘れ...」
「アインズ様、儂たちは自分の力が知りたかったノです。しかしこノ罪、とても拭いきれる程では...すいませんでした。」
「2人共反省しろ!とりあえず第六階層に行ってコロッセオの掃除をしてこい!朝までに終わらせとけよ!」
(まったく親の顔が見てみたいよ!.....あ俺か)
「スマンなフォルネウス、主ヲ挑発するような発言をしてしまい申し訳なかった」
「良いのです牛頭よ、私も貴方に向かい牛野郎などと暴言を吐いてしまいすいませんでした。」
「そもそも私が
『――模擬戦は本気で戦うこと』
という2人で交した約束を破ってしまった私が…ん?あれは?」
2人の視線の先には座って先程まで自分達が闘ってた場所をジッと見るコキュートスがいた。
なんでここに居るのか頭にハテナマークを浮かべる牛頭とフォルネウスはとりあえず近寄ってみたがコキュートスは気づきもしない
牛頭はコキュートスの肩を叩き揺さぶってみた
「主さんよ主さん...コキュートス!」
「オッオオ牛頭デハナイカ!ソレ二フォルネウスモ...」
「ソレ扱いですか...まぁいいでしょう。コキュートスさんはここで何を?」
「アア...先ノ戦イガ素晴ラシク感動デ我ヲ忘レテシマッテタヨウダ...」
「儂らノ闘いはそんなに素晴らしかったノか?」
「当タリ前ダ、アノ闘イ八素晴ラシカッタ私モ2人ト闘ッテミタイト感ジルホドニナ...」
「それは良かったです。こんど...いつお許しになるかわかりませんがアインズ様に許可を取り行こうと思います」
「...?イッタイナニヲダ?」
「私もコキュートスさんと手合わせしたく思いましたので...ね牛頭」
「おう儂も主と是非手合わせ願いたいな」
「ソレハマコトカ!?」
3人はいつ許しが出るのか散々話し合い、そして語り合い夜は開けた。
話が終わりコキュートスが自分の守護階層に戻ると牛頭とフォルネウスは掃除のことを思い出した
コキュートスが帰ったあと掃除を思い出した2人は召喚獣やスキルを使い掃除を朝までに終わらせました