戦女神×魔導巧殻 ~転生せし黄昏の魔神~   作:Hermes_0724

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第十七話:レミの街

レミの街は、リプリィール山脈の東側麓にあり、ニース地方の北西の端に位置する。ここからアヴァタール地方に行く路は二つある。一つは、一度南方を目指し、山脈を回り込む形でディジェネール地方を抜け、闇夜の眷属の支配域を北上する路である。もう一つは、リプリィール山脈に入り、アヴァタール地方に一気に抜けてしまう路だ。しかしこの路は、竜族の支配領域を通る必要があること、また強力な魔物を相手にする必要があることから、実現不可能と言われていた。

 

今回、オレたちは竜族の支配領域の南端ギリギリを掠めるかたちで、リプリィール山脈を超えたが、本当に竜族の支配域に入っていなかったかは確認のしようが無い。レミの街で合流した狩人たちも「竜族が黙認しているのかもしれない」と言っていた。「そういうことはもっと早く言え」と思ったが、いずれにしても帰り道は、南回りで帰るべきだろう。

 

『ディアン殿は命の恩人です。心から感謝を申し上げます』

 

意識を取り戻したオレをプルノーは満面の笑みで迎えてくれた。この笑顔の下に、強かな計算が働いているのだろうが、それは商人ならば当然である。オレは捜索隊を出してくれたことに素直に感謝を示した。男護衛三人衆も回復しているらしい。もっとも一人は、白髪になっている。下半身まで機能していなかったら哀れだ。

 

『この街では、アヴァタール地方には無い希少な素材が安く手に入ります。一方、海から遠いため塩が高値で売れます。レンスト=レミの行商路は、利益の大きい路なのです。なんとか、その路を短縮したく、リプリィール山脈超えを考えたのですが・・・』

『やはり、復路は南回りで行きますか?』

 

プルノーはため息をついて頷いた。当然の判断だろう。魔神が出ることは恐らくは無いだろうが、あの山への恐怖心は、レイナを含め護衛たち全員に植え付けられている。復路まで山越えを企図していようものなら、オレも強硬に反対するつもりだった。

 

『しかし往路だけでも、予定より一週間以上早く到着をしました。しかも、魔神を退けたという噂は、近隣の村まで届いているそうで、運んできた塩や他の商品まで飛ぶように売れています。これも全て、ディアン殿のお蔭です』

 

頭を下げるプルノーに対し、他の護衛たちにも感謝を示してやって欲しいと伝えた。実際、レイナや、レイナを捜索した護衛たちがいなければ、オレは死んでいただろう。もちろんです、とプルノーは言いながら、復路の前に残りの報酬を渡してくれた。本来の金額より上乗せされている。他の護衛たちにもそうしているようだ。

 

『この街には一月ほど滞在をする予定です。その後は南回りで、およそ一月を掛けてレンストの街に戻ります。店の護衛は他の四人がやってくれるそうですので、ディアン殿は一月間、ゆっくりご静養下さい。この街の郊外には、温泉などもあるそうですよ』

 

湯につかりながらレイナを抱くのも悪くない・・・

オレはプルノーの好意を受け取ることにした。

 

 

 

『くぅぅっ・・・』

 

下から貫かれ、背中が震える。彼の両手が私の胸を掴む。明日から三日間は、店の護衛役は無い。彼は私を温泉に誘った。彼の回復には必要だと思い、同意したのだが・・・ 「ひょっとして、もう回復しているのではないか?」 そう思うほど、彼は逞しかった。そんな疑問もすぐに愉悦の中に消えていく。私は髪を振り乱し、身体を上下させた・・・

 

 

 

レミの街を歩きながら、オレは人々の生活を観察した。取引は全て、物々交換である。貨幣を知らないわけではないだろうが、国家統治による通貨発行が無ければ、取引を媒介する”共通信用”が無く、物々交換とならざるを得ないのだ。龍人族から貰った宝石は、あと三粒しかないが、オレはこの村で全てを使い切るつもりでいた。ミスリル剣に代わる新しい剣を買うためだ。

 

『ねぇディアン、あそこに鍛冶屋があるわ。剣が手に入るかもしれない』

 

レイナは少し、はしゃいでいるように見えた。温泉場所は、街から馬で半日近く掛かるらしい。街を離れるわけで、オレ一人の判断は許されない。一泊で温泉に行きたいとプルノーに相談したら、笑って同意をしてくれた。レイナを連れていくことも暗黙の了解になっていた。すぐに出発しようと思っていたが、レイナが反対をした。街を出る以上、万一を考えて剣を用意しておくべきだと言うのだ。魔力も回復しているし、剣が無くても問題は無いのだが、拒否する理由も特にない。オレとレイナは街に出た。

 

 

レイナはイラついていた。かれこれ一刻以上、男はディアンの掌を見ている。

 

ディアンとレイナが入った鍛冶屋は、剣も取り扱っているようだった。出てきた男は背が低く、顔半分が髭に隠れている。剣を注文したいと言うと、男はディアンをしげしげと観察し、腕や腰、太腿などを触った。

 

『・・・大仕事になる・・・』

 

ざらついた小声でそう呟いた男は、いきなり店を閉め、それからずっとディアンの掌を見ていた。椅子に座ったディアンは黙って掌を見せている。その表情は、どことなく楽しんでいるようだった。

 

『・・・魔神の剣を鍛つなんて、初めてだぜ・・・』

 

男の呟きにレイナはギョッとしたが、ディアンは表情を変えない。目の前の男の眼力はそれ程だと、確信していたのだ。男はようやく、掌を離すと、今度はじっとディアンの顔を見た。やがて、呟くような小声で話し始めた。

 

『・・・俺が鍛つ以上、半端な剣にはしたくねぇ。最高の素材を使った名剣、いや・・・魔剣を鍛ってやる・・・』

『・・・有り難いお言葉ですが、オレはこの街に一月しかいません。また、お支払いはこれしか渡せないのですが・・・』

 

ディアンは宝石三粒を示した。男は頷いた。

 

『・・・十分だ。あとは、お前がその剣を持っている姿を見せてくれればそれでいい。二十日後に来てくれ・・・』

 

男はそういうと、宝石を取って店の奥に引き込んでいった。

 

 

『変わった人だったわね。ディアンの掌をジーと見て・・・』

『レイナ、あれは人ではない。ドワーフだ・・・』

 

ドワーフ族は、龍人族やエルフ族と同じように排他的で、人付き合いをする種族ではない。鍛造の技術に優れ、ドワーフ族の中でしか伝わらない技術や知識も多い。見た目は中年だが、おそらく数百年は生きているはずだ。オレに触れた時に、魔神だと気づいたに違いない。

 

『・・・二十日後と言っていたな。楽しみだ・・・』

 

オレは馬を奔らせた。レイナが慌てて、オレの後を追った。

 

 

 

洞窟内に声が響く。湯気の中に白い肌が踊る。女は喜悦の表情を浮かべて喘ぐ。坐った状態で繋がっている男は、女の細い腰を引き寄せた。胸の谷間でうめく男を女が優しく撫でる。いつまでも続く二人の愉悦を蒼い月だけが覗いていた・・・

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