戦女神×魔導巧殻 ~転生せし黄昏の魔神~   作:Hermes_0724

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第二章:中原東方域
第二十話:アヴァタール地方東方域


ラウルバーシュ大陸中原、アヴァタール地方東域は、南にリプリィール山脈の北端、北には魔神が跋扈するケレース地方とに挟まれている。古来より、東域諸国と西方諸国とを繋ぐ貿易路として、商人たちの行き来も盛んであり、人間のみならずエルフやドワーフ、更には獣人族までもが部落をつくり、生活をしてきた。しかし、より多くを求めるのがヒトというものである。部落同士の衝突は絶えず、数百年間に渡って戦乱の地域となっていた。その殆どが、人間同士の争いであり、他の種族たちは人間の愚かさ、あるいは性をジッと眺めていた・・・

 

 

昨日までの激しい闘いにより、無数の死体が野を埋めている。鳥や獣が死体を貪り、辺りには血と腐臭が漂う・・・

 

リプリィール山脈北端の麓にある「彩狼の砦」を万を超える軍が取り囲んでいる。メルキア国万騎将アウグスト・クレーマーは従者を連れて、馬を進めた。砦が開かれ、旗を掲げた男が出てくる。クレーマーが口を開く。

 

『彩狼の砦が主、イザール殿とお見受けした。我が名はメルキア国万騎将アウグスト・クレーマー!一騎討ちの申し出に応じて下さったこと、まずは感謝を申し上げるっ!』

『イザールである。高名なるクレーマー殿がお相手とは光栄だっ!この一騎討ちに我が勝てば、メルキアは軍を退く。二言は無いなっ!!』

『メルキアの旗と我が誇りに賭けて誓うっ!そちらも、一騎討ちに負けし時は砦を開く。それに相違ないか?』

『相違ない。配下の者たちにも、そう言い含めてある』

 

双方が頷き、馬を進める。ちょうど二十歩のところで止まり、剣を抜く。互いの剣気が研ぎ澄まされる。双方の陣営が固唾を飲んで見守る。

 

『『いざっ・・・!!』』

 

馬を駆けさせる。二十歩の距離があっという間に埋まる。双方の剣が交錯する。ただ一合の交錯。それで決着がついた。クレーマーの背後で、イザールが馬から落ちた。メルキア軍から喝采が上がる。砦は白旗を掲げ、門を開いた。

 

『我が君、クレーマー殿が勝利をしましたぞ。ご指示を・・・』

 

参謀のベルジニオ・プラダが主君に指示を求める。白いマントを羽織った男が頷き、指示を出す。

 

『これより、彩狼の砦に入城する。全軍に徹底させよ。略奪、暴行の類は一切、禁じる。それを破る者は、如何なる地位の者であろうと極刑に処すとな』

 

メルキア国当主、ルドルフ・フィズ=メルキアーナは、勝利に沸くことなく、彩狼の砦に入った・・・

 

 

 

 

レミの街からレンストの街まで、ちょうど一月で到着をした。途中で二度ほど魔物に襲われたが、難なく退けた。今回の行商は、かなりの利益になったらしく、プルノーは上機嫌だった。あの行程で死者が一人もいなかったというのは、幸運だったのかもしれない。まあ、約一名は不能になったが・・・

 

任務完了の書類にサインをしたプルノーが、手を差し出してきた。

 

『あなた様がいなければ、私はとうに骸になっていたでしょう。ぜひまた、護衛をお願いします』

 

オレは握手をし、書類を受け取った。レイナと一時別れ、ドルカの事務所に向かう。

 

 

 

 

『ディアンッ!よく戻ってきたっ!聞いてるぞ、大活躍だったそうじゃないかっ!』

 

ドルカは両手を広げてオレを迎え入れてくれた。ドルカ斡旋所にとっても、今回の仕事は利益になったのだろう。執務室に通されたオレを酒が待っていた。

 

『凄腕と思ってはいたが、まさか魔神を退けてしまうとはな・・・ お前さんは噂になっているぞ』

『オレ独りの力じゃない。レイナという仲間に助けられたしな・・・』

 

ドルカはレイナに興味を持ったようだ。人材こそ商品である斡旋業者にとって、レイナは垂涎だろう。「ぜひ今度、会わせてくれ」と懇願された。次の旅を考えると、同じ斡旋所から派遣された方が良い。二、三日以内に連れてくると返答した。

 

酒が程よく回ったところで、オレは今回の行程の報告をした。ドルカが関心を示したのは、やはりリプリィール山脈を抜ける道についてである。オレたちはカップを持ったまま、壁に貼られた地図の前に立った。

 

『・・・なるほど、確かにこの路なら、一週間から十日は早く、レミの街に着くな・・・ その路は、今後も使えそうなのか?』

 

オレは首を横に振った。

 

『無理だな。魔物だけなら、腕の立つ護衛を数人つければ問題無い。問題はこの路が、竜族の支配域である可能性があることだ。狩人たちも、単身だから黙認されているのかもしれない、と言っていた。もしそうなら、行商隊が往来するようになれば、彼らが黙っていないだろう・・・』

『うーん・・・』

 

ドルカは唸った。あまりにも惜しい路である。商人はあの手この手で、不可能を可能にするものだ。ドルカ斡旋所がこの路を開けば、莫大な利益になる。

 

『この路が、使えるようになるには、どんな条件が必要だ?』

『そうだな・・・』

 

オレは少し考えて回答した。

 

『竜族との交渉が不可欠だ。彼らに、この路の通行を認めてもらう必要がある。だが、竜族が一行商と直接交渉などするはずがない。となれば・・・』

 

オレはリプリィール山脈西側を示した。

 

『この地域に、統一国家が誕生する必要がある。国の代表者が、竜族と正式に交渉し、境界線を明確に決める。その上で、道を整備し宿場などを設ける・・・』

『・・・俺が生きている間は無理そうだな・・・』

 

ドルカは頭に手を当て、ため息をついた。オレも頷いた。少なく見積もっても、あと百年は掛かるだろう・・・

 

余談ではあるが、リプリィール山脈を抜ける道の情報は、行商人たちにも広がり、何隊かが実際に踏破を挑んだ。だが、どの隊も戻ることは無かったという。この路が安全に通行できるようになるには、四百年の歳月が必要であった。その頃には、かつてこの路に挑み、唯一、踏破に成功した行商隊が存在したことなど、忘れ去られていた。

 

ドルカは気を取り直して、カップにワインを注いだ。次の仕事の話である。

 

『お前さんを指名した依頼が、何件か来ている。暫く休んでもらってもいいんだが・・・』

『その依頼の中に、アヴァタール東方域に行く依頼は無いのか?』

 

ドルカはニヤリと笑みを浮かべ、オレに書類を示した。

 

 

 

 

レミの街からの三十日間は、ある意味で往路よりも苦痛だった。街に立ち寄ることなく、殆どを野営で過ごす。毎夜、剣を振るったが、躰の火照りは収まらない。狂おしい一月だった。でもそれも、ようやく今夜で終わる。彼に後ろから貫かれ、躰の奥を突かれるたびに、私は歓喜の嬌き声を上げるだろう・・・

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