戦女神×魔導巧殻 ~転生せし黄昏の魔神~   作:Hermes_0724

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第二十六話:友人

プレイアの街での滞在初日、予想通りリタとの相部屋だ。野営でも同じテントで過ごしたため、自然にリタとは親しくなった。物心ついたときに家を失い、流れ歩いたため、歳の近い友人は一人もいない。でもリタとは自然に話をすることが出来た。私より八歳年上なのに、まるで同い年のように笑い合う。こうした楽しさは初めてだった。でも・・・

 

彼の腕の中で目覚めたい・・・

 

その想いは募った。この街にも浴場はある。だからそこで彼と過ごすことは出来る。でも躰は満足しても、心は満足しなかった。彼と燃え上がり、燃え尽き、至福の中で眠り、目覚めて彼の寝顔を見る。口づけをして、起こしてあげる・・・ そんな一晩を過ごしたい。

 

 

『ねぇ、レイナ~』

 

二つ並んだベッド。腰かけている私に対して、自分のベッドでゴロゴロと転がるリタが話しかけてくる。私の顔を見ながら、真顔で聞いてくる。

 

『ディアンとは、どこまで進んでいるの?もう一線超えちゃった?』

『えっ・・・』

 

私は一瞬で、顔が朱くなった。リタはニンマリ笑った。起き上がって、私の傍に来る。

 

『おや?おやおやおや?一線どころか、これはかな~り進んでいると見ましたよ?』

 

リタは私の後ろの回り込んで、いきなり両手で私の胸を掴んだ。

 

『この!この破廉恥なオッパイで、彼のアレを挟んでいるのか!』

『ちょっ・・・リタ、止めてっ・・・どうして・・・』

 

どうして解ったのか。リタは笑いながら私の横に座った。

 

『ヘッヘーンッ!このリタ姉さまをバカにしてもらっちゃ困りますねぇ~ こう見えても、それなりに男は経験してるんですよ~ オンナが自分のオトコを見る時の眼なんて、すぐに分かるっての!』

『うぅっ・・・不覚・・・』

 

リタはケラケラと笑い、言ってくれた。

 

『ニヒヒッ!早く彼の部屋に行きなよ。私のことは、気にしないでイイよ』

 

 

 

レイナはリタと同じ部屋で過ごしている。今夜も恐らくは来ないだろう。結界を張っておくのもバカバカしいので、オレは普通に本を読んで過ごしていた。飛行魔法の研究が行き詰っている。重力制御の術式が、どうしても解らない。六大魔素とは違う魔力の使い方のはずだ。仮に、重力の大きさや方向を改変できたとしても、今度は慣性の法則が影響する。無重力状態となって、単に「浮いているだけ」では、オレの求める飛行魔法には程遠い。

 

いっそ、魔神ハイシェラを探して聞こうか・・・

 

首を振って、すぐにその案を取り消す。あまりに危険すぎる・・・

キャッキャと女たちの声がする。レイナとリタが話をして盛り上がっているのだろう。オレ以外の人と、付き合いが無かったのがレイナだ。リタという友人が出来たことは、彼女にとっても幸福だろう。オレが思索に耽ろうと思っていた時に、扉が叩かれた。開くとレイナが立っていた。急いで、結界を張らなくては・・・

 

 

 

彼との寝物語、私の至福の一時だ。自然と、リタの話になる。

 

『・・・姉がいたら、あんな感じなのかしら・・・』

『・・・ヒトとして生きる道もあるぞ?』

 

彼の問いかけに、私は首を横に振る。リタは、私の初めての友人だ。とても大切な友人だ。だから・・・

 

彼の使徒になったら、一番最初にリタに告げよう。きっと、解ってくれる・・・

 

 

 

 

メルキア国首都インヴィティアの郊外では、新兵二千人が調練に明け暮れていた。クレーマーは腕を組んで、その調練を見守る。たとえ示威行動であっても、主君と自分が陣頭に立つ。十一年前のようなことがあるとは思えないが、ただの一矢が、悲劇に繋がる可能性もあるのだ。あれだけ手こずった「彩狼の砦」の精兵たちである。肉体はそれなりに出来上がっていたが、規律と指示に従うという面ではまだまだであった。クレーマーは二千人の部隊を半分に分け、それぞれに指揮官を配した。自分が鍛えた、若く優秀な指揮官である。

 

『良いかっ!今回の出兵は、殿自らが陣頭に立たれる。殿の御前で、無様な行進など見せるわけにはいかぬぞっ!』

 

指揮官たちの檄が飛ぶ。起立・気をつけ・礼、あるいは右・左・右・左、行進訓練というものは、一見するとバカバカしい訓練に思えてしまう。だが軍隊というものは、上官と規律に対しての絶対服従が基本である。そうでなければ、万単位の軍事行動など不可能だからだ。そのための基礎として、全体一致行動の訓練があるのだ。

 

『あと三週間、何とかなりそうですね・・・』

 

副官の言葉に、クレーマーが頷いた。

 

 

 

 

久々に、レイナの口づけで目覚めた朝、宿泊している宿に、神殿からの使いが来た。水の巫女からの呼び出しである。武器を持たず、オレ独りで来いという。レイナは顔色を青ざめさせ、リタは口をパクパクとさせた。口の端からパンのカスが零れている。オレは同意し、使者の後に続いた。レイナに魔神剣を預ける。

 

『大丈夫だ。話をしてくるだけさ・・・』

 

恐る恐るオレの愛刀を受け取った彼女を背に、オレは笑いながら手を振った。

 

 

 

 

もうすぐ、あの男が来る。彼が水に手を浸した時に、彼の記憶が見えた。

 

ヒトの魂と魔神の肉体を持つ存在・・・

 

魔神という存在自体が危険だが、それ以上に危険なのは、あの男の考え方だ。あの男の考え方は、現神にとっても古神にとっても、危険極まりないものだ。ディル=リフィーナの世界そのものを破壊しかねない。だから私は、あの男を呼び出した。話をし、意見を聴き、あの男の方向を定める。その結果次第では・・・

 

殺さなければならないかもしれない・・・

 

魔神との会談に向けて、私は覚悟を決めた・・・


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