戦女神×魔導巧殻 ~転生せし黄昏の魔神~ 作:Hermes_0724
TITLE:ドワーフ族の武器製造技術の特殊性に関する考察(B.Kassere)
イアス=ステリナでは、人間族は高度な科学文明世界を謳歌していた。環境破壊という深刻な問題はあったにせよ、純学問的見地に立てば、現在のディル=リフィーナのどの種族よりも優れた技術を持っていたと言えるだろう。しかし人間族は、ディル=リフィーナの誕生に伴い、それまで蓄積をし続けてきた科学を失ってしまう。なぜ、人間族が科学を失ったのかは不明だが、一説にはそれまで人間族が利用していた「電気」と呼ばれるものが、その性質を変えてしまったため、全ての機械が使用できなくなったと言われている。しかし、先史文明期の遺産の中では、稼働する機械も存在するため、この説には疑問視もされている。いずれにしても、人間族は蓄積し続けてきた科学知識を失い、原始文明へと戻った。それにより、ディル=リフィーナにおいては、ドワーフ族が最も優れた製造技術を持つ種族となったのである。
ドワーフ族は、武器や道具の製造技術が優れていると言われているが、これはあまりにも漠とした言い方であろう。具体的に、製造工程のどの部分が優れているのかを明確にしなければ、人間族の参考にはならない。私は数年間を掛けて、彼らの製造工程をつぶさに観察し、人間族の製造工程との比較を行った。その結果、彼らの製造技術で最も優れているのは「冶金」と呼ばれる技術だと判明した。
「冶金」とは、鉱石などから必要となる金属を抽出し、それを精製、加工し、実用可能な金属材料を製造する一連の技術工程を指す。鉱石から金属を抽出する技術を「採鉱冶金」、金属同士を組み合わせる等により金属の性質を変えることを「製造冶金」、金剛石などの粉末状の金属を一つの塊に変えることを「粉末冶金」、物理的な圧力を加たり、金属以外の他の成分と混ぜ合わせることを「物理冶金」と呼ぶ。
人間族と比べて、ドワーフ族はこの冶金の技術が優れており、それ故に、優れた武器、道具が製造できるのである。言い換えれば、この冶金技術を人間族が修得すれば、ドワーフ族と同様の武器、道具を造ることが可能である。ドワーフ族は、師弟制によってこれらの技術を伝えているが、人間族であれば、これを学問として体系化し、より広く、より深く研究をすることが可能である。私はあえて、この技術を「冶金学」と呼びたい・・・
『この剣もいいわね・・・』
レイナは一振りの剣を手に取った。鞘から抜いて、鑑定をする。目の前には多くの剣が並べられている。オレとグラティナは肩を竦めて、顔を見合わせた。レイナの剣選びは、まるで服を買いに行く乙女のようである。事の始まりは、昨夜になる・・・
『剣を一振り欲しいって?既に持ってるじゃない』
リタは腸詰肉を頬張りながら、オレに疑いの目を向けた。リタ行商店は、酒類販売の売上として、希少鉱物の他、多くの武器や道具を得ていた。その中から、剣を一振り欲しいと依頼をしたのだ。リタからすれば、売上金に手を付けるようなものなので、当然、渋い顔をする。
『オレじゃない。レイナが使う剣が欲しんだ』
『なぁんだ。イイよ。好きなの一本、持っていきなよ』
『・・・・・・』
なぜオレは駄目でレイナなら良いのか、彼女の判断基準には甚だ疑問を感じながらも、オレは謝意を示した。翌日、売上金が溜まっている荷車を見て仰天した。大量の剣が並んでいるのである。リタが武器屋を開いたら、アヴァタール地方で最も充実した武器屋になるだろう。取りあえず、目ぼしい剣を選択し、机に並べたのだが、それでも十振り以上はある。
『あぁん、迷うなぁ~』
レイナがアレもいい、コレもいいと悩んでいる。こういう時は、男は黙って待っているのが正しいのだが、オレとしてはブレアードの魔術書を早く読みたいので、つい口を出してしまった。
『迷うのなら、ヴェイグルに鑑定をしてもらったらどうだ?』
『いいのっ!私が使うんだから、私が選ぶっ!』
レイナはムキになる。
(ヤレヤレ・・・)
心の中でそう呟きながら、レイナの剣選びに付き合った。結局、二刻以上も時間を掛けて、ようやく一振りを選び出した。白い鞘と緋色の魔法糸が映える一振りだ。見た目は良いのだが、剣は使い勝手である。レイナは実の剣を使うが、最近はグラティナから、虚実の剣も教わっているようだ。剣士として一段の高みの昇るのであれば、剣もそれに合わせなくてはならない。レイナは、鞘から剣を抜き、構えた。
『思っていた以上に軽い・・・凄く振りやすいと思う』
『・・・試してみようか・・・』
グラティナが剣を抜いた。軽い試合をやるようである。
(美女二人が剣を抜いて構え合う様子は、中々見ごたえがあるな・・・)
オレは呑気にそんなことを思いながら、二人の試合を観ることにした。グラティナが一瞬でレイナに詰め寄り、斬り掛かる。レイナはそれを躱し、反撃をする・・・ほんの数合だが、試すには十分であったようだ。
『これにするわ。振りやすいけど、決して剣質は軽くなっていないみたい・・・』
『抜剣の速度が上がっている。実と虚の剣を使い分けるには、ちょうど良いだろう・・・』
レイナとグラティナがお互いに笑い合う。こうした様子を見ているとつい思ってしまう。
(二人同時に抱けないだろうか・・・)
そんな邪なことを考えていると、リタがやってきた。手を叩いてオレたちに告げる。
『さぁ、商品もそろそろ売り切れるし、明後日には出発しましょう。バーニエやプレイアに運んで、これをお金にしないといけませんからね。そこまでいってはじめて、行商は成功と呼べるのですっ!ニヒッ』
四つの豊かな乳房が男を挟み込む。二人が呼吸を合わせて、男に快感を与える。呻く男を見る二人の瞳は、愉悦で霞んでいる。男は二人に体を重ね合うように命じた。金の女が下になり、銀の女が上になる。男の目の前には、上下二つの花園が晒される。男はまず、下の花園から貫く。金の女が愉悦の声を上げる。続いて、上の花園を貫いく。銀の女が歓喜の声を上げる。上と下、交互に貫ぬく。二人の声が、男を愉しませる。三人の饗宴は夜遅くまで続いた・・・
出発の朝、リタ行商隊を見送る為に、大勢のドワーフ族たちが出てきた。これほど大勢が住んでいたのかと思うくらいの人数である。リタは次期族長のヴェイグルと話しをしている。バーニエ=古の宮間の行商について交渉をしているようだ。チスパ山は魔物が多いため、簡単には行商路は出来ないだろうが、リタなら何とか切り開くだろう。ヴェイグルはオレにも挨拶をした。
『世話になった。お前の話を聞いて、俺も将来について明るく考えられそうだ。妹への手紙は、リタに渡してある。道中、気をつけてな・・・』
ヴェイグルと握手を交わした後、族長のヴェストリオにも手を差し出した。
『ヴェストリオ殿には、大変お世話になりました。魔導巧殻の姉妹たちにも、宜しくお伝えください・・・』
『皆に笑顔が戻っている。しばらくは魔物の襲撃も無くなる。倅の代は、平和に暮らせそうだ。感謝するぞ・・・』
ヴェストリオがオレの手を握った。その瞬間、ヴェストリオの眉が上がる。
『・・・お主・・・』
『魂は人間ですよ・・・ご安心ください・・・』
『・・・・・・・・・』
ヴェストリオがオレを見つめる。やがてため息をついて笑みを浮かべた。
『・・・まぁ、先入観ではなく、見た事実を信じるか・・・』
ヴェストリオとの挨拶が終り、出発をする直前に、魔導巧殻のリューンが飛んできた。オレに頭に抱きついてくる。
『ディアン~ 寂しくなるですの・・・』
『リューン殿、またお会いすることもあります。それまで、笑いの神髄を鍛えておきますよ・・・』
『笑いはどこでも修行できますの♪次に会った時は勝負ですの♪』
『楽しみにしています』
リューンがオレの頬に口づけをしてくれた。リタが手を挙げた。
『さぁっ!出発しますよ~ バーニエの街へっ!気張って商売しましょう~!!』
古の宮の扉が開かれる。オレたちは光の中へと足を進めた・・・