オーバーロード ~破滅の少女~   作:タッパ・タッパ

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ほぼオリキャラですのでご注意ください。

特典小説のデスナイトがいい味を出していたので。

2016/5/21 「店員オーバー」 → 「定員オーバー」 訂正しました
 句点が重なっているところがありましたので、訂正しました
2016/9/16 「堀」「塀」に「ほり」「へい」とルビをつけました
2016/11/18 「~行った」→「~いった」 訂正しました


第12話 おまけ リュースの大冒険

 自分はデスナイト。

 至高なる御方アインズ・ウール・ゴウン様がカルネ村というところにいらっしゃった際に創造された。

 

 

「それにしても消えませんね、こいつ。」

「やっぱり死体を触媒にすると召喚時間が無限になるんでしょうか?」

「うーん。とりあえず、識別用に何か名前を付けませんか?」

「名前ですか。どんなのがいいか……。あ、そういえば、こいつの素材にした奴。名前、何とか言ってましたよね」

「あー……たしか、ベリュース隊長でしたっけ?」

「確かそんな感じだったような……。よし、デスナイトよ。お前にはリュースという名を授ける」

 

 デスナイト=リュースは喜びの雄たけびをあげた。

 

 

 

 ベリュース隊長というのは、自分の素材になった人間ではなく、あの時、自分が殺した人間のような気がするが、至高の御方には深いお考えがあるのだろう。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 リュースは再びカルネ村へとやってきた。

 至高の御方アインズ様の御盟友でもあるベル様がこのカルネ村を発展させるそうだ。自分はその手助けである。

 

 最初は村に入り口で敵が来ないか見張っていた。

 自分が立っている横で、ベル様は見る見るうちに防御施設を作っていく。(ほり)(へい)、それに石垣に櫓。

 非常に強固に見えるが、村への入り口部分にしか作っていないのは何故なのだろうか?

 あれでは簡単に回り込まれると思うのだが。

 

 頭の悪いリュースには分からないが、ベル様には深いお考えがあるのだろう。

 

 

 今日はベル様に狩りに連れていっていただいた。

 他のお供はソリュシャン様と村のゴブリンたち。

 村の防衛はストーンゴーレムらが来たため、一時的にならそいつらに任せても大丈夫らしい。

 

 カルネ村から結構歩いていき、そこから森の中へと踏み入っていく。

 なんでもカルネ村の近くは森の賢王というのが縄張りにしているらしくて、出来るだけそこから離れた方がいいそうだ。

 ベル様にそんな配慮をさせるとは、森の賢王という奴はなんという不遜な存在なのだろう。命令さえあれば、今すぐにでも始末してくるのに。

 

 そんなことを考えていると、ベル様から「リュース、行ったぞ!」と声がかかった。

 見ると、人の胸辺りまでの体躯を持つ巨大猪がこちらに向かってくる。

 

 動じることなく、その突進をタワーシールドで受け止める。地鳴りのような重い響きとともにそいつの突進が止まった。その隙に、フランベルジュで心臓を一突きにしとめた。

 ベル様から「よくやった」とお褒めの言葉をもらう。実に誇らしい。

 

「あ……」

 

 地に倒れた巨大猪はブルブルッと体を震わせたあと、従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)となって立ち上がった。

 

「あー、そっか……。デスナイトが仕留めると従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)になるよなぁ……。んー、でも、ならない条件とかあるのかな? ちょっと試してみるか」

 

 ベル様について、しばし狩りから離れる。そこで虫や小動物に対して、ベル様に指示されるとおりに攻撃してみた。その結果、自分が直接殺した相手は従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)になるが、間接的に殺した場合、例えば盾で弾き飛ばした先にあった石などにぶつかって死んだ場合は死体のままであることが分かった。

 

 この結果は我が事ながら驚愕だった。

 

 自分が殺せば、殺した相手は従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)になる。それが当たり前だと思っていた。まさか、殺し方を工夫することでアンデッドにせず死体のままにしておくという発想自体、自分の頭にはなかった。

 そのようなことを考えつくとは、なんと聡明な御方なのだろうか。

 

「殺し方次第では従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)にはならないのか。んー、もしかしたらデスナイトにアンデッド作成のスキルが備わっていて、デスナイトが殺した瞬間、自動発動するようになってるのかな? そのスキルの発動や解除が出来れば、ひと手間かけなくて済むかもしれない」

 

 ベル様はそうおっしゃったが、スキルの発動や解除というのがよくわからない。お役に立てずにしょんぼりしていると、「まあ、とりあえずはやり方が分かっただけでいいや。狩りに戻るとしよう」といって、再び狩場に連れていってくださった。

 

「んーと、結果的に鳥3羽、シカ2頭か。まあまあかな? じゃあ、帰ろうか」

 ベル様が宣言為され、全員帰り支度をする。

 

 せっかくだからという事で、ベル様は先程の従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)となった巨大猪の背に獲物を括りつけられた。たしかに疲労のないアンデッドに荷物を運ばせることで他の者の負担は軽くなる。巨大猪は生きている時とは違って、体を捩りながらまるで病に侵されたものが無理に体を動かしているがごとく歩く。しかし、その割には歩く速度は遅くはない。

 

 じき、村へと帰りついた。

 

 巨大猪の背から獲物を降ろしていると、「ん? もしかして、これ焼いたら食えないかな? 食えるんだったら運ぶ手間が省けるな」とベル様がおっしゃった。

 

 怯える野伏に肉を切らせ、その場で焼いてもらう。

 村人はおろか、ゴブリンたちですらドン引きしている。

 

 他人の視線による無言の圧力にも屈せず、一切の先入観を捨て、ありとあらゆるものを自分の肌で体験、検証しようするその探求心は、本当にご立派だと思う。

 

 

 やがて焼きあがった肉をベル様は口に頬張り、盛大に吐き出されていた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 トブの大森林内の湖畔。水面ギリギリの山肌にぽっかりと穴が開いている。入ってすぐ勾配になっているため先は分からないが、その穴の奥はかなり広そうに感じる。

 

「リュース。お前に任務を与える。ここのダンジョンにはナザリックのダミーにするつもりだけど、まだ怪物(モンスター)が一匹もいない。だから、お前は自身の能力を使って、このダンジョンに入れる大量のアンデッドを作って連れてこい」

 そう言って、地図をお出しになられた。

「ええと、現在地がこの辺。それで、だいたいこの辺りが森の賢王の縄張りみたいだから、ここ以外の場所で狩ってくるように」

 

 リュースは雄たけびをあげた。

 ついに!

 ついに自分が至高の御方のお役に立てる!

 しかも、自分たった一人に与えられた任務だ! 絶対に成功させねばならない。

 偽物とはいえ、至高の御方の迷宮にふさわしい強さを持ったアンデッドを連れてこよう。

 

 そして、リュースは森の中へと駆けていった。

 

 

 

 ガッ!

 心臓を突き刺されたゴブリンが倒れ込む。

 そして、しばらく待つと従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)となって立ち上がった。

 

 あれからしばらく森をさまよった。

 従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)となって付き従うのはホブゴブリンやゴブリン、悪霊犬(バーゲスト)、それに熊など。そして、それらによって殺されたゴブリンやイノシシなどのゾンビがついてくる。

 従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)に殺されたものはゾンビになり、そちらは数に限りなどないが、リュースが殺したことにより従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)として連れていける数には限りがある。より強い者に遭遇し殺して従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)にする事を考えると、従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)の数はある程度余裕を持たせておかなければならない。気をつけておかないと、せっかく強い奴を見つけても、定員オーバーで従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)になれなかったりする。だから、定期的に従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)は減らす必要がある。

 今も、ミミズや昆虫など、リュースが歩く際に踏みつぶしたものまで従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)となってついて来てしまっている。そいつらを始末しておく。

 

 たくさんの従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)を作りだすなかで一つ発見したことがある。

 従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)を作る際、どうやら身体に一撃を与えて殺した方が良さそうだというだ。相手の殺し方を各種検証してみた結果、手や足に攻撃を加え切り落としてから殺してしまうとその部分が欠損したまま従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)になるため、動きに制限が加わってしまう。そこで胴体を切断しない程度の攻撃、可能ならば心臓への一突きで殺すと、最もいい状態の従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)になる。

 ベル様が、一見当然と思えるようなことも先入観を持たずに創意工夫していたのを思い出し、自分なりに色々試してみた結果だ。

 何事も当たり前と考えずに試行錯誤することで良い結果に結びつく事がある。

 リュースは一つ賢くなった。 

 

 

 リュースは自分に付き従うアンデッドの群れを眺める。

 その総数は数十にも及ぶ。

 だが、駄目だ。

 この程度では駄目だ。

 

 自分に下された命令は、ナザリックのダミーのダンジョンに入れるアンデッドを調達すること。それなのに、自分が作ったアンデッドはその辺にいる最下級の怪物(モンスター)ばかり。

 とてもではないが、ダミーとはいえ、この程度の怪物(モンスター)ではふさわしいとは言えない。

 どこかにもっと強大な怪物(モンスター)はいないのか。

 

 森を駆けていたリュースは、その足を止めた。

 日は傾き、空は紅く染まりかけている。そんなほのかな茜色が混じった光に照らされた森の下草。それが何者かに踏みつぶされているのを見つけた。

 レンジャーの職業(クラス)特殊技術(スキル)を持たないリュースでも分かる、何か大きなものが複数通った跡。

 リュースはその後をたどっていった。

 

 ほどなく、この跡を残していたその正体を見つけた。

 そこにいたのは人型の巨大な怪物(モンスター)たち。オーガと、……先頭の方にいるのはトロールだろうか。計十数体の群れが森の中を移動していた。

 

 うむ。こいつらなら、まあ、及第点だ。

 少なくとも、ゴブリンやホブゴブリンよりはいいだろう。

 

 リュースは一気に襲い掛かった。

 足音を忍ばせるなどしなかったため、オーガたちはすぐに気づいたが、武器を構えるよりも早くリュースの剣がその体をとらえる。

 瞬く間に、オーガ3体が切り捨てられた。

 

 突然の襲撃に混乱した群れがようやく態勢を整えた。

 一匹の巨大なトロールが前へと出てきた。複数の動物の皮をはぎ集めて作った革鎧を身に着け、巨大なグレートソードを手にしている。しかも、どうやらその剣は普通のものではなく魔法がかかっているようで、何かの毒のようなものがその刀身を濡らしている。

 

「何者だ、お前! 俺を東の地を統べる王であるグだと知っているのか!」

 

 びりびりと空気が震えるような大声。だが、その声に動じることなく、リュースは自分の名を名乗った。

 

「ふぁふぁふぁ! 臆病者の名前だ! 俺のような力強い名ではない、情けない名前……な、なんだ?」

 

 笑い声をあげていたグが声を詰まらせる。リュースから発している怒りの殺気を感じ取ったためだ。

 

 この愚かなトロールは自分の名を!

 至高なる御方より直接賜ったリュースという名前を侮辱した!!

 許されるはずがない!

 万死に値する!!

 

 もはやグに言葉を発する(いとま)すら与えず、リュースは躍りかかった。

 

 

 

 森の中に激しい音が響く。

 リュースとグの死闘はいつ果てるとも知れず続いていた。

 

 デスナイトは元来、防御に長けたアンデッドだ。その堅牢な防御はグの爆撃のような連続攻撃を防ぎ続けていた。ごくまれにその剣が体に届く事があるが、微かな傷を与える程度で致命傷を与えるには至っていない。そしてアンデッドであるリュースの身体には、その大剣の持つ毒の効果は無意味であった。

 だが、リュースの攻撃もまたグに対して有効打を与えるには至っていない。グの身体に幾度も剣で斬りつけるも、トロールの再生能力はその傷を瞬く間に治してしまう。

 

 すでに日は暮れ、辺りは闇が支配している。

 両雄譲らず、この戦いはいつまでも続くと思われた。

 

 だが――

 

「はあっ、はあっ……」

 

 グの息が切れ始めた。

 

 いかに強靭な体力を有しようとも、あくまでトロールであるグは生きた存在である。いつかは疲れ果てる。

 それに対してリュースはアンデッド。疲労などしない。

 

 グの剣を振るう速度が落ちはじめ、だんだんとリュースに押され始める。

 そして、ついにそのグレートソードを持つ腕をフランベルジュがとらえ、骨を半ば断ち切るほどの深い傷を負わせた。

 

 苦痛の声をあげるグ。とっさに周囲にいる部下たちを見回し「お、お前たち! こいつを殺れ!」と叫んだ。

 

 だが、それは悪手だった。

 先ほどまでギリギリ均衡の戦いをしていた者を前にして、配下の者たちに命令を下すその姿は隙だらけだった。

 そして、リュースはその瞬間を見逃さなかった。袈裟懸けに力を込めて振り下ろす。

 

「グオオオォォォ!」

 

 鮮血が噴き出し、グの身体が大きく(かし)ぐ。トロールの生命力をもってすれば致命傷ではないが、たまらず膝をつく。

 そこへリュースは剣を突き立てた。

 

 一思いに鋭い剣が心臓を貫いていたら楽だったかもしれない。

 だが、リュースの手にしているのは刃が波打った肉を切り裂くフランベルジュ。本来、刺突には向いていない武器だ。

 その刃先はトロールの頑健な肉体に阻まれ、心臓の一歩手前で止まっていた。

 

 リュースは力を込めてえぐるように自らの剣をグの身体へを押し入れていく。

 グの絶叫が響く。自らの頑強な肉体とトロールとしての再生能力が、剣が突き入れられるのを押しとどめ、苦痛を長引かせる。

 グン。リュースは剣先にグを刺し貫いたまま、その剣を上へと向けた。

 グ、自らの体重によって身体が沈み、剣先が体の内部へと潜っていく。

 断末魔の叫びをあげるグ。

 ついに剣が心臓を貫き、その背へと突き抜けた。

 

 リュースは勝利の雄たけびをあげた。

 

 

 後はただの殲滅戦だった。

 

 自分たちのリーダーが殺されたことに、配下のトロールとオーガ達は我先にと逃げ出そうとした。

 リュースは剣を振り払い、グの死体を傍らに投げ捨てると、逃走しようとした者たちを次々と切り捨てていった。

 ほどなく、新たに従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)となったトロールとオーガの一団が仲間に加わった。

 その光景をリュースは満足そうに見つめる。

 

 このような者達ならば、主にも満足いただけるだろう。さあ、もっともっと強者のアンデッドを増やさなくては。

 

 リュースは再び歩きだした。

 

 その時――

 

「……こいつは一体、何者なんじゃ……」

 

 駆けだした足を止める。

 周囲を見回す。

 

 確かに今、何者かの声が聞こえた。

 しかし、見渡す限り周囲には誰もいない。

 

 隠れているのか?

 リュースは咆哮をあげながら、周囲の木々や草、岩など手当たり次第に切り倒す。その剛力の前にあらゆるものが鎧袖一触になぎ倒される。

 ひとしきり暴れた後、再度、周囲を見回すが、やはり目につくようなものはいない。

 

 ――逃げたか。

 

 新たなアンデッドを加えられなかったことをやや残念に思いながら、リュースはアンデッドの群れを引き連れ森の中へと走って行った。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「お、恐ろしい。……あ奴はいったい……」

 

 リュラリュースはようやく不可視化を解除した。

 アンデッドの群れが姿を消してから、かなりの時間が経っている。

 だが、そのくらい待たなくては、再びあの集団が戻ってくるのではという恐怖には勝てなかった。

 

 身を隠していた岩の陰から身を起こす。

 周囲の光景は、あのわずかな暴虐の時間で一変してしまっている。アイツは一抱えもありそうな木をまるで雑草を刈るかのごとく切り倒し、強固な岩をまるでバターにナイフを入れるかのごとく切りつけた。

 あの時、とっさに木の陰に隠れず岩の陰に伏したのは正解だった。木の陰に隠れていたのならば、隠れた樹木ごとリュラリュースの身体は切断されていただろう。

 現にリュラリュースの隠れていた岩には、振り回した剣閃がまざまざと残されている。

 

「あのような輩がうろつくとなると、この辺りも危険かもしれん。森の賢王に話してみるか、もしくは住処を変えねばならんな」

 

 そうつぶやくと、リュラリュースは森の中へと消えていった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓の執務室。

 そこではナザリックの主であるアインズとベルが、アインズ冒険者計画の最後の詰めの話し合いをしていた――のだが、すでに飽きてだらだらと雑談をしていた。

 

 ぼりぼりと煎餅を齧りつつ、ベルが口を開く。

「昔読んだ、古いマンガであったんですがね。強固な壁の壁面が崩れたと思ったら、壁の中に巨人が埋まっていたってのがあったんですよ」

「壁の中に巨人? 動かず、じっとしてたんですか?」

「ええと、確か……うろ覚えなんですが、光が当たらないと巨人の活動が停止するとかいう設定だったような……。まあ、それはいいんですが。カルネ村の防壁を作るときに、デスナイトを立たせておいて壁に塗りこめたら、基礎とかいらなくて済むと思いません?」

「いや、そんなことにデスナイト使うのはもったいないでしょう。普通に木を調達した方がマシです。……デスナイトと言えば、あのリュースってどうしました?」

「ああ、あいつなら。ほら、例のダミーダンジョンに入れるアンデッド、あれを確保させるために『大量のアンデッドを作って連れてこい』って命令して、トブの大森林に向かわせましたよ」

「……ん? そう言ったんですか?」

「はい。何か?」

「いや、具体的に何体って指定せずに『大量の』という曖昧な命令だけだと、その『大量の』というのを達成するためにいつまでもアンデッドを集め続けるんじゃないですか?」

「……あっ!」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 バシャリ!

 リュースの足が水辺に踏み込んだ。

 目の前には広大な湖、そしてそこへとつながっている湿地帯が広がっていた。

 

 あれから後もリュースはあちこちを歩き回り、配下を増やした。すでにリュースに付き従うアンデッド達は三桁を優に超えている。

 

 広い湖を前に、あまり中央へと行くと深みにはまる危険性を恐れて、外周の湿地帯をぞろぞろと歩き、あらたな獲物を探していく。

 

 その時、どこからか石つぶてが飛んできた。

 自身に飛来したものは盾で防ぐが、幾個かは後ろのアンデッドたちめがけて飛び、回避という事をしないゾンビたちに当たった。

 

 リュースは怒りの咆哮をあげる。

 このアンデッドたちは至高の御方に献上するためのもの。それを傷つけるなど決して許すわけにはいかない。

 

 見ると、沼地に生える草に隠れて、複数の蜥蜴人(リザードマン)達が顔をのぞかせている。そいつらはスリングに石を再装填し、再び投げつけようと回し始めた。

 

 だが、一瞬で接敵したリュースが剣を振り回す。隠れていた水草ごと、蜥蜴人(リザードマン)達はその鱗に覆われた体を切られ、水面へと倒れ伏した。

 

「て、てった……にげる!」

 

 声が響く。

 見ると、不思議な光沢を放つ白い鎧を着た蜥蜴人(リザードマン)が声をあげていた。

 その声に従い、隠れていた蜥蜴人(リザードマン)達が撤退していく。その中でも精鋭らしい幾人かのみが白い鎧の蜥蜴人(リザードマン)の背後についた。

 

 『白い鎧』の指示で蜥蜴人(リザードマン)達が動いたことを知り、そのリーダー格を始末してしまおうと、リュースは突進した。その勢いのまま剣を振るう。

 その剣は『白い鎧』が突き出した槍を容易く両断し――

 

 白い鎧を着た蜥蜴人(リザードマン)を弾き飛ばした。

 『白い鎧』は数メートルも吹き飛ばされ、苦痛のうめきをあげながら立ち上がろうとする。

 

 蜥蜴人(リザードマン)達は驚愕した。

 蜥蜴人(リザードマン)の四至宝の一つ、白竜の骨鎧(ホワイト・ドラゴン・ボーン)。つけた者の知性と引き換えに装甲が強固となる性質を持つ。そして蜥蜴人(リザードマン)の中でも歴代屈指の知能を持つ『鋭き尻尾(レイザー・テール)』の族長がその身に着けて以来、その装甲の固さはもはや伝説の鉱物で作られた鎧に匹敵すると言われていた。

 そして、その鎧を身に着けていた者が、このアンデッドの攻撃によりダメージを受けたのだ。

 

 しかし、これはリュースとしても意外だった。

 容易く鎧ごと切断できると思って剣を振るったのに、あの白い鎧はリュースの一撃にすら耐えたのだ。よっぽど頑丈なのだろう。

 まあ、だからと言って勝敗は変わらない。確かにあの白い鎧は一撃では倒せなかった。しかし、見れば明らかにダメージは受けている。一撃で駄目ならば、何度も打ち据えれば倒すことは十分に可能だろう。

 

 リュースは足を進める。

 白い鎧を着た蜥蜴人(リザードマン)を周りの者たちが助け起こそうとしている。その場にいる者全員が死を覚悟した。

 

 

 だが、その時――

 

 ――暴力を具現化したかのごときアンデッドがその動きを止めた。

 

 

 突然、リュースの頭の中に自らの主、アインズ・ウール・ゴウン様の思念が届いた。

 今、どこにいるかと問われたので、広大な湖のそばと返した。

 従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)やゾンビ達はどのくらいいるのかと問われたので、後ろを振り向き、100以上と返した。

 次に届いた主からの思念は、帰還の指示だった。

 

 すぐさま踵を返し、主の下目指して駆けていく。

 もはや、その頭には先ほどまで戦っていた蜥蜴人(リザードマン)達の事はない。

 その背に従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)やゾンビ達が続く。リュースが切り殺した数体の蜥蜴人(リザードマン)達も従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)となって起き上がり後を追った。

 

 

 遠ざかっていくアンデッドの群れを『鋭き尻尾(レイザー・テール)』の者たちは呆然と見送っていた。

 

「な、なにーあれ?」

 

 族長の言葉に答える者はいなかった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 〈転移門(ゲート)〉を通り抜け、アンデッドの群れが小さな湖畔に現れてはダンジョンの中へと消えていく。

 

 あの後、1日ばかり歩いて移動したが、再び主から思念が届き、帰還にはまだ何日もかかると返したら、なんと〈転移門(ゲート)〉で即座に、このダミーダンジョンの入口へと繋げてくださった。

 リュースが集めてきたアンデッドの大群を見て、主とベル様はその数に驚き、また魔法の剣を持つトロールまでいることにたいそう喜んでくださった。

 そして、リュースにお褒めの言葉をかけてくれた。実に誇らしい。

 

「これで、大体はいいですかね?」

「ええ、最初はこれでいいでしょう。後は死体が手に入ったら随時、アンデッド作成で増やしていけばいいです」

「これで良し、と……そうだ。このダミーダンジョンですが、なんと呼びましょうか?」

「あー、そうですねぇ。何か名前を付けた方がいいですねぇ。どんなのがいいと思います?」

「うーん……。ウンゲホイアー……ゲフンゲフン……怪物牧場とかはどうでしょう?」

「ほう、なるほど」

「ベルさんは何かあります?」

「フム……エターナル・ダークネス・ケイヴとか?」

「うーむ。悩みますねぇ。……リュースよ、お前はどちらがいいと思う?」

 

 その問いにリュースは答えを逡巡した。

 自らの造物主たる至高の御方と、その盟友たるとても聡明な御方のお考えになられた名前。きっとどちらも大変素晴らしいものなのだろう。

 だが、しかし……なんと言えばいいのか……。自分は……。

 

 言葉を発しないリュースに、デスナイトには判断が難しかったかと思い、傍らにいた護衛のシズに同様に尋ねた。

 

「はい。どちらも甲乙つけがたいと思われます。」

 

 その答えにお二人はさらに名前の候補をあげ、相談なさっている。

 

 だが、リュースは気づいていた。

 お二人に問われたシズ様は『どちらも甲乙つけがたい』とは言ったが、『どちらも素晴らしくて(・・・・・・)甲乙つけがたい』とは言わなかったことを。

 

 口に出さずにいたほうが良いこともある。

 リュースは一つ賢くなった。

 

 




ナザリック勢なら、アインズ様が何を言っても素晴らしいと褒め称えそうですが、アインズ自らが作ったパンドラにうわぁと言ったシズなら……


今回ザリュースも出す予定でしたが、書いている途中にリュース、ベリュース、ザリュース、リュラリュースと『リュース』がつく名前ばかりが出る事に気づいたので出番なしにしました。
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