Fate/Problem Children   作:エステバリス

11 / 42


この作品は精神汚染ガンギマリのキャラが多くなってしまうのかもしれないと思いつつ投稿。

今回のお話の前に一言。作者はルイルイが大好きです。




くえすちょんあんのうん 理想を追うは、我が望み

 

 

ゴリッ、バリッ……という骨の砕ける音が聞こえる。ライダー……メドゥーサの失われた左腕をその小さな口で精一杯に頬張り喰らうアサシンの姿は異常そのものであり、蠱惑的でもある。

 

━━━人は喰い物じゃない。

 

先程アサシンの記憶の中にいる人物がそう言った言葉だ。だが問題ない。相手はメドゥーサ(非人間)、人じゃない。

 

というかむしろ、アレはなまじ人の姿をしているだけあって背徳的だ。規制された禁忌を破り蹂躙する。たったそれだけのことを、悪を己の本質とするアサシンにとってはこれ以上にないくらいに甘美なトッピングとしてしまう。

 

これは人としての抗えない本質というものだ。"カリギュラ効果"といい、その語源はアメリカであまりに強烈で上映規制されてしまった映画"カリギュラ"を怖いもの見たさや、規制されたからこそ見たいという民衆があまりに多かったことに起因する。

 

そんなことは関係のないことか。閑話休題。

 

女性にしては、否、男性からしても結構な身長を持つライダーの指はその身長に比例して細く、長いものだった。

 

そのライダーの指を咥える。チュッ、チュッ……と飴でも舐めているかのような音を出し、飽きがくれば一気に噛み砕く。それを繰り返すつどに五度。気付けばライダーのものだった腕は、そのままライダーの切断面と嵌まらないであろう小ささの、掌はあって指が全て失われている。

 

「おいしい……」

 

既に鞘にチョッパーを収めたことで開いた血塗れの右手を、また血を被った自分の頬に這わせる。

 

この怪物の身体はとても美味だ。恐怖の鮮度、というものが多少足りないことには納得が行かないが、少なからず恐怖しているライダーと意味がわからない、といった風に目を丸くしているルイオスの二人の姿を見ているともっとシたくなってくるし、もっとこの珍味を味わいたいとも思う。

 

もっと食べられると思うと興奮でじゅんとしてくるし、食べるのにはまた手間を掛けないといけないと思うと切なくもなる。

 

残りの分も早々に食べ切ると少女はその無垢な笑みをライダーに向けてくる。

 

「━━━ねぇ」

 

「………ッ!」

 

「わたしたちと、もっとヤろう?」

 

「何、を」

 

()()()()()()だよ?」

 

食べ合いっこ、という言葉を聞いた時点でライダーはアサシンに襲い掛かっていた。この少女の精神は壊れているなんてものじゃない。今箱庭に居る者として、この快楽食人鬼だけは葬らなければならないと確かに判断した。

 

食人種や殺人種など、箱庭には人を殺す種族などごまんといる。だが、これはその類いじゃない。単に己の心を満たすための快楽を得て、愉悦を感じる。これを"悪"と呼ばずしてなんとする。

 

ライダーの釘剣とアサシンのチョッパーがぶつかり合う。ライダーが片手しか使えない以上アサシンの方は安心して両手で一本のチョッパーを支えられる。

 

素の筋力値はライダーの方が強いが、両手で得物を支えるアサシンは先程とは違って拮抗している。

 

「なにやってるライダー!"魔眼"を使えェッ!」

 

「随分と余裕がなくなってるじゃねぇか坊っちゃん!それとも、俺が相手ならサーヴァントに命令できるくらいに余裕なのかい!?」

 

「ッそ!一々茶々を入れてくれる!アルゴールゥ!お前もだ!いつまで手こずっている!?なんで"名無し"程度に"ペルセウス"が、僕が圧されてるんだよ!?」

 

ライダーの腕斬りを切っ掛けに崩れ始めた状況に苛立ちを覚えたルイオスはヒステリックに叫ぶ。その内容も自らの地位を盾に振る舞っていたことがわかる浅ましく、寂しい物。

 

「僕はペルセウスの子孫なんだぞ!?アテナの加護を授かってそこにいるゴルゴーンの魔物を討ち果たし、その栄華のままにアンドロメダと結ばれ、以来魔物殺しの栄光を受け継いできたペルセウスなんだぞ!?」

 

理解できなかった。今まで父が、先代が、ペルセウス本人が築き上げたコミュニティの誇りがたった一日で脆くも崩れ去る。それも二十に満たない少年と小さな、見るからに情弱な一騎のサーヴァントだけにだ。

 

コミュニティの誇りという部分を過剰に、歪んで受け継いだルイオスは正気を喪う。弛緩した表情から涙と鼻水と涎を垂らして笑い叫ぶ。

 

「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソでクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ!!!!!!!やれよアルゴールッ!!!ライダァアアアアァァアアッ!!そいつらを石にしてでも、宮殿そのものを魔物にしてでもそいつらを殺せェッ!!僕の誇りに傷をつけたバカな奴等を!!石に変えてバラバラバラに砕いて、魔物に喰わせてこのゲームを終わらせろおおおおおおおおおおおおおおお!!!??」

 

最後の叫びはあまりの絶叫に声が裏返っていた。目も血走り、髪はボサボサになっている。

 

だがそのルイオスの絶叫が引き金となり、アルゴールの歌が響き渡る。

 

刹那、"白亜の宮殿"の岩から天井から置物まで、あらゆるものが蛇の怪物となった。

 

「アハハハハハハハ!!これでお前達の敵はまた増えたぞ!もう逃げられない!"白亜の宮殿"という戦場そのものがお前達の敵になってしまった以上はなァ!」

 

「ああ、そういやゴルゴーンにはそういうのもあったな」

 

が、十六夜の反応は極めて淡白だった。彼の目は既に失望に塗れていて、ゆっくりと拳を振り上げる。

 

「それなら、()()()()()()()()()()

 

バゴォンッ、文字にするとこんな文字だ。決して生物が生物に対して拳を降り下ろして鳴っていい音でなければ、当然宮殿を殴って鳴るような音でもない。例えるならば神鳴だ。

 

「ッぐぎぎ……━━━!!魔眼だ!魔眼を使えって言ってるだろ!?終わらせろよ!?こんなバカみたいな戦い、すぐに終わらせろ!!」

 

ルイオスの唸り声を聞き届けたアルゴールとメドゥーサは、多少躊躇いはしたが、すぐさまその眼を開眼させた。顔を覆うバイザーを消失させて、髪と同じ薄紫の、どこか異常を感じる瞳を晒す。

 

これこそがゴルゴーンという怪物を怪物たらしめ、その銘を轟かせた"石化の魔眼"(キュベレイ)。視線の先に存在するものを問答無用で物言わぬ石の塊に変え、永遠の生という無間地獄を味わうこととなる。

 

「死んでしまえ!死ね!死ねぇ!消えろ!アハハハハハハハハ!!!」

 

視線が視覚化されて、高速で飛び交う光の柱が二人に向かう。その視線の先にいる二人にはこれまでで一番獰猛な笑みを浮かべる。

 

「━━━呵ッ、ゲームマスターが今更小狡いことしてんじゃねぇぞ!!」

 

「えいっ」

 

十六夜はその光を直接押し潰した。裏拳の要領で魔眼の 光に触れるとその瞬間、石になると思われた十六夜によってその光が逆に粉砕される。

 

一方のジャックは更に有り得ないことをした。その瞳と眼を合わせたかと思うと、アイスブルーの瞳がまるで宝石のように変質し出した。その瞳からまた光が迸り、光同士がぶつかり合い━━━互いの光という概念そのものが石化した。

 

「石化のギフトを、無効化!?それにあっちは相殺だって!?」

 

「そんなバカな!?十六夜さんのギフトはただ一つだったはず、なのに相反する力を共有させているとでも!?」

 

黒ウサギはまず十六夜の起こした事象をありえないと断じた。

 

箱庭は人類史や神話に在るあらゆる物事を内包するが、その箱庭でも有り得ないものは確かに存在する。

 

その一つが、十六夜のギフト。彼の保有するギフトは"正体不明"(コード・アンノウン)一つだけ。今十六夜が発動したギフトを打ち消すギフトそのものは箱庭でもそう珍しい物ではない。

 

ならば何が有り得ないのか━━━それは十六夜が人間であるにも関わらず星霊アルゴールを圧倒していたことだ。複数の能力を保有するギフトは多くあっても、肉体を強化することと起こった事象を無に還すギフトとでは力の本質というベクトルが真逆なのだ。そんなギフトは在るはずがないし、在っていいはずがない。発火性のある氷など、存在してはいけないのだから。

 

そしてジャックもまた異常だった。今彼女が発動させたのは紛うことなく、"石化の魔眼"だった。

 

切り裂きジャックが仮に"魔眼"の類いのギフトを持っていた怪物だとしても、その候補に石化が挙がることなどない。

 

ジャック・ザ・リッパーという銘を冠するそれは解体の享楽者。間違っても人を石に変えることに快楽を感じるモノではない。それが"石化の魔眼"を持つなど、いくら創作などのイメージによって本来あるはずのなかった力を得るサーヴァントであろうと有り得ない。

 

ライダーはその姿を見たときに悟った。アレは己の魔眼と全く同じモノだと。あの瞳は間違いなく、メドゥーサのそれと同一の"石化の魔眼"(キュベレイ)だ。

 

何故アサシンがそれを使ったのかは、想像がつく。アサシンがライダーの腕を喰らったのは恐らく、ただ単に悦楽を得るだけのものではなかったのだろう。サーヴァントの身体を喰らい、その技能を吸収(ドレイン)するため。

 

だが、そんなことは不可能であるはずだ。できても自己改造の類いのギフトによって喰らったモノの魂のカタチを模倣し、自己を確立させるといったところが関の山のはずなのだ。

 

それでもアサシンが今魔眼を使ったという事実は覆らない。十六夜と同じ、根拠や過程はどうあれ結果が存在してしまっている以上はそれは確かに起こった事実である。

 

そうして呆けて考察をしてしまっていたライダーは、致命的な隙そのものだった。完全に戦闘状況がリセットされてしまったライダーに無慈悲な殺人鬼の刃が光り、腕、両足と斬り離されて達磨となったライダーは支えを失い、顔から地に突き刺さる。

 

「……な、なんなんだよ、お前ら……!?なんだよそれは!?ありえないだろ!?」

 

吠えるルイオス。それを尻目に十六夜は己のギフトカードを彼に向かって提示する。これが俺だ、と。

 

「ギフトネーム、"正体不明"━━━ん、悪いな、これじゃわかんねぇか」

 

クソクソ、と吐き捨てる。ルイオスの眼は完全に諦めに至ったそれであり、つらつらと恨み言を馳せ始める。

 

「畜生……もう降参だよ。だいたいこの勝負、元々勝っても負けても"ペルセウス"の大局に影響なんてほとんどないようなもんだ……吸血鬼だって返してやる」

 

「……は?なに言ってんだお前。まだあるだろ」

 

失望した顔を向ける。まだ十六夜の飢えは渇いている。潤い切らないのは既に解りきっているが、僅かでもそれを解消しなければならないのだから。

 

「……残念ですが十六夜さん、恐らくそれ以上はないと思います」

 

「は?」

 

「鎖に繋がれたアルゴールの時点で疑問には思っていましたが、確信しました。今のルイオスにはサーヴァント、ひいては星霊を扱うことができないのです。ジャックさんがライダーさんを倒すことができたのも、ルイオスがサーヴァントを使うことができず、ジン坊ちゃんにはサーヴァントや星霊を十全に扱う"星霊使役者"(ジーニアー)を持っていたからこそでしょう」

 

その言葉にルイオスは表情を歪ませる。未熟と断じられたことの恥か、怒りか。だがその表情はあまりに弱々しい。

 

「なんだ、つまんねぇ。買い被りすぎたかねぇ」

 

まぁ、いいか。と呟く。そして十六夜はルイオスにとって絶望的なトドメを刺すことを選んだ。

 

「ああそうだ。お前、これで終わると思うなよ」

 

「な、何?」

 

「レティシアを返品してはい終了万々歳となるとでも思ったか?俺達はこの戦いに勝ったらまず、"ペルセウス"と何時でも、何処でも戦える権利を貰う。そうしたら次は自分達がゲームを構築する権利を貰って、次に人材を貰う。そしてギフトを奪って、領地を奪って、旗を奪って、名を奪う……くくく、そうすればお前達は……いや、お前は晴れて俺達と同じ"名無し"(ノーネーム)の仲間入りだ」

 

「な、や、やめろ!?僕のコミュニティが崩壊するじゃないか!」

 

「だったら死ぬ気で抗えボンボン七光り。抗って勝って、俺達を納得させてみやがれ。お前が喧嘩を売ったコミュニティは出身を保証することも、一度着いた火を火薬が無くなるまでやめることも出来ない問題児のコミュニティなんだぜ……?」

 

カタカタと震える身体を抑えてライダーを見る。失血のショックで気絶している。この聖杯戦争は終わりを告げたということを意味し、同時に達磨の身体では戦うことなどできないとも悟る。

 

「ジャック、こっちだ。もうライダーに用はない」

 

「うん」

 

ガタガタと揺らぐ身体をハルパーの鎌で無理矢理黙らせて立つ。負けを内心悟っているが、それでもこれは僅かな可能性に掛けた、意地の戦いなのは確かだ。

 

「負けられない……負けてたまるか……アイツらを倒すぞ、アルゴール……!」

 

「ちったぁマシな顔になったじゃねぇか七光りの坊ちゃん!さっきの軽薄な笑顔より何倍も魅力的だ!」

 

これが、"ノーネーム"というコミュニティがその名を轟かせることになる出来事のプロローグ。厚い物語の台本の、ほんの数ページ。

 

 






ジャンヌ・オルタなんていなかった。いいね?

今回の投稿にあたって、オリジナルな要素が出てきたのでジャックのステータスのようなものを載せておきます。


アサシン
真名: ジャック・ザ・リッパー(?)

属性: 混沌・悪(地)

ステータス
筋力: C、耐久: D、敏捷:A、魔力: D、幸運: E 宝具: C-

スキル
霧夜の暗殺A、情報抹消B、精神汚染B+、外科手術E+、自己改造B-、気配遮断A-

自己改造B-(原作では未所持のため説明)
自身の肉体を改造して自らを強化するスキル。ジャックは対象の肉体を自らの体内に入れることで一定時間肉体の本来の持ち主のスキルを一つ選択して使用することができる。
なお、このスキルを使用すれば使用するほど本来の英霊としてのカタチから外れて行く。

宝具
暗黒霧都(ザ・ミスト)(ランクD)

解体聖母(マリア・ザ・リッパー)(ランクD~C)

諸事情につき幾つかの能力が変質。ランクの変動と本来保有していないスキルを獲得している。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。