Fate/Problem Children   作:エステバリス

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征服王じゃなくてケイネス先生が出た。20連引いたらケイネス先生が三人来た。

まさかこれは作者の髪が後退する前触れ……!?とかどうでもいいことを思いながら執筆した二章第一話です。

どうぞ。




第二運命劇幕 火龍誕生動乱"サラマンドラ"
くえすちょんわん 碧羅の蒼、染まる紅


 

 

━━━夢を、見た。

 

凄惨な夢だ。その世界の常識は黙認された無法により滅ぼされた。

 

何処とも知らぬ下水道に一人の女性が立っている。その傍らには複数の死体と、靄のかかった幼い少女。

 

「……━━━……、おかあ、さん」

 

「ヒッ……!?」

 

少女の問い掛けに応えることはしなかった。ただ、その声に怯えて逃げ場のない此処に逃げ場を求めるだけだ。

 

「こ、来ないで……なんなのよ、()()!?」

 

女性はただ喚き散らす。目の前の異常に耐えきれず、叫んでいるのだろう。それもそのはず、少女が今片手に持っているのは指を喪った手だ。そんなものを少女が愛おしそうに握っていることなんて、あり得ないにも程がある。

 

だが少女はなにを馬鹿な質問を、とでも言わんばかりに嬉々として、靄ではっきりした表情は見えないが確かに嗤った。

 

「なにって━━━()()()()()()()?」

 

その言葉を聞いた途端、女性の意識は肉体から乖離した。身体と頭が切り離され、思考を司る脳に血が巡らなくなったのだ。

 

少女は死体となったそれを小さな身体で抱え、"The Jews are not the men That Will be Blamed for nothing"と乱雑な字が書かれた壁に触れる。すると壁は少女の身体をすり抜けて一つの小部屋にたどり着く。

 

おもちゃ箱から飛び出た人形や豊満な胸部のマネキン、何本かのナイフと━━━二十はあるだろう、女性の死体がそこには転がっていた。

 

「ん、しょ……」

 

女性の死体が転がる場所に座るや否や、少女は適当に何本かの刃物と裁縫道具を見繕う。そして少女は作業に乗り出した。

 

首、胴体、四肢、手首、足首、指、耳、鼻、黒子、陰部、胸部、髪、脳味噌、内臓━━━一人一人細かく解体して行く。

 

「おかあさんはどんなおかあさんがいいかな」

 

肢体が全身鮮血に濡れても構うことなどなく独り言を呟く。

 

『おかあさんはおおきいひとがいいな』

 

『おおきいひとがいい』

 

『わたしたちをいっぱいだきしめてくれるんだ』

 

「そっか、うん、うん。そうだよね」

 

身長の大きな胴体を選んで台に乗せる。乳房も一番大きいものにして、腕も脚も長く、その手は自分達を包み込んでくれるような手。足はできるだけそれに合った普通くらいのものを。そして指は細くしなやかに。

 

「おかおはどうしよう」

 

『きれいなひとがいいな』

 

『みんなが嫉妬しちゃうようなおかあさんがいい』

 

「わたしたちもそうなの。おかあさんはやっぱり、きれいじゃないと」

 

そう言うと先程殺害した女性の首を選ぶ。

 

パーツは揃った。いらないものはぜぇんぶ食べちゃえ。

 

それぞれのパーツとパーツを糸で繋いで、ひっつくテープで脆いところを補強する。髪も繋いで、きっちりとさせて、作業に移ること数十分。

 

「できた!」

 

『すごいすごい!』

 

『おかあさんだ!』

 

『アハハハハ!』

 

周りの喝采を得ながら出来上がったのは、女性だった。だがそれは肌の色や指や脚の大きさなど、不自然極まりない部分が多々あり、人と呼ぶには少しどころではないほど粗末なものだった。

 

「おかあさん」

 

『おかあさん』

 

『おかあさん』

 

『おかあさん』

 

「『おかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさん』」

 

一心不乱に女性に抱きつく。当たり前だが女性の身体は揺れるだけでなんの反応も示さない。

 

女性の指が偶然少女の背中に絡み付く。その感覚を味わった少女は至上の笑顔を覗かせて、一層抱きつく力を強めた。

 

「おかあさん」

 

『おかあさん』

 

「アハハハハ」

 

『アハハハハ』

 

『アハハハハ』

 

「『アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ』」

 

奇妙なその空間で起こった数奇な光景。暫く少女達は幸福の笑顔をしていたが、やがて動かない母に関心をなくしたのか、その身体を離す。

 

「……つまんない」

 

『つまんなかった』

 

『ぜんぜんたのしくない』

 

『つぎのおかあさん、さがそ』

 

少女達はもう、これまで殺した母親達のことなどついぞ、思い出すことをしなかった。

 

━━━人々は恐慌をきたし、サタンが再びこの世にあらわれたと興奮気味に語るものも多かった。

一八八八年 無名の伝道師

 

◆◇◆

 

最悪な目覚めだった。ジン=ラッセルは気が狂いそうになる夢から覚めた。

 

「お、御チビ起きたか。結構うなされてたみたいだが、どんな夢見たんだ?」

 

「……おはようございます、十六夜さん。少し寝ぼけてたみたいで……すみません」

 

十六夜の追及は無視する。話していて気持ちのいい内容でもないし、話すようなことでもない。

 

三日前態々寄ってきたジキルが話した通りだった。

 

サーヴァントとマスターは令呪という絶対的な繋がりを得る以上、精神にも当然繋がりは発生する。その最たる例が━━━

 

「……夢、か」

 

ポツリと溢すように呟く。目覚めそのものは全然よろしくなかったが、おかげで目は覚めた。

 

そう、確か自分と十六夜はコミュニティ、"ノーネーム"の書斎にいたはず。"ペルセウス"とのギフトゲームで己の力不足……特にサーヴァントを使役するというコミュニティとして大役であるはずのそれを果たすことができずにいた事を、コミュニティの復興が現実視できるようになったかもしれないという今の段階でようやく自覚したのだ。

 

正確には自分が力量不足であることは黒ウサギに養ってもらってるような日々だった頃から実感していた。今思うと本当に少し前までの自分は具体的な未来図を描くことすらままならない子供だったのだと殊更恥ずかしくなってくる。

 

だからこうして子供の自分でもコミュニティの役に立てるように、どうすればいいのかを暫く考え積めて━━━辿り着いたのが知識量の増量。

 

十六夜がいくら膨大な知識を持っていたとしても肝心の彼が作戦会議の場でいなくなって、それ以上解くことはできませんでした、では話にならない。

 

「話したくない夢みたいだな。それなら深く聞きはしねぇよ」

 

元々追及する気もなかったのか、十六夜の質問はあっさりと終わった。はっきりと目を覚ました以上、読書に没頭せねばという使命感が彼を動かして本に目を移す。

 

(ハーメルンの笛吹男……西暦1284年にドイツのハーメルンと呼ばれる街で起こった130人の子供の一斉行方不明事件を基にして造られた"グリム童話"の一つ)

 

子供達を拐ったとも。共に旅立ったとも言われる謎の笛吹男、パイドパイパーの存在や消えた子供達の行方など、風評や伝聞なども経て複雑化していく。その姿は童話というより伝奇と言った方が正しいだろう。

 

「いーーーざよい、くぅぅぅぅぅん!!」

 

そんな折に十六夜と時を同じくして"ノーネーム"に加入した同志、久遠 飛鳥の声が聞こえてくる。切羽詰まっているのか、彼女らしからぬ時間帯を弁えない大声だった。

 

が、次に行われた一連の動作はジンの度肝を抜くものだった。二人が読み終えて━━━あるいは次に読むものとして準備されていた山積みの本を踏み台にして跳躍。清楚という単語の似合う彼女が繰り出したのは、予想外の膝。

 

この技には見覚えがある。そう、確か昔コミュニティの大人が好いて見ていた影響で何度か見せられたプロレスの必殺技、その名は閃光魔術(シャイニング・ウィザード)!!

 

「させるか」

 

「え、ちょ!?」

 

十六夜はジンの服のフードを掴んで自分の前方に設置する。そう、あたかもそれは自分を盾にしているかのようで━━━

 

「させるかっ!?」

 

目が覚めていたおかげで反応が間に合った。両手を重ねて飛鳥の膝とぶつかり合う。流石に威力を殺しきれなかったようで、二人の安全を考慮した十六夜によって足から着地できるように軽く投げ飛ばされる。

 

「あぶねぇじゃねぇかお嬢様」

 

「十六夜くんなら問題ないと思っていたわ」

 

「御チビが万が一寝惚けていたら致命傷だろ」

 

「それもそうね」

 

わかっているなら仕掛けないでほしいし盾にしないでほしいと思ったジンは間違っていないはずだ。

 

「ジンくん、大丈夫!?」

 

そんな自分を心配してきたのは彼と同い年くらいの、黄色の髪と頭頂部の耳に尻尾が特徴的な娘のリリ。幼いコミュニティメンバーの中で最年長に位置する年長組と十六夜によって名付けられたメンバーの中でリーダー的存在の彼女はしっかり者で責任感という点を加味するなら大人顔負けだ。

 

「う、うん。ありがとうリリ」

 

「そんなことよりお嬢様、どうしたそんな切羽詰まって」

 

「そうよ、十六夜くんこれを見て」

 

ピラ、と飛鳥が一枚の紙を手渡す。それを見た瞬間ジンはあっ、と思わず漏らしてしまった。

 

「えーと、なになに? 『北側の鬼種や精霊達が作り出した美術工芸品の展覧会及び批評会、加え様々な"主催者"がギフトゲームを開催。メインは"階層支配者"(フロアマスター)が主催する大祭を予定しています』だと?」

 

文を読んでいくうちにわなわなとしてくる。十六夜はバン、と招待状を机に叩きつけた。

 

「ふざっけんなよそんなことで態々俺の読書を邪魔した挙げ句シャイニング・ウィザードかましてあわよくば御チビを戦闘不能にして昼に遊び歩こうとしていた俺の邪魔しやがったのかなんだよマジでふざけんなよちょっと楽しそうじゃねぇか俺も行ってみてぇぞコラ♪」

 

ノリノリだった。想像以上にテンションがハイだった。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 僕ら財政難ですよ!? どこに北側に行くだけの蓄えがあるとでも! それにリリ! この人達は少しでも楽しそうなことがあると直ぐにでも駆けつける人達だから絶対に秘密って━━━いや」

 

ジンが途中で言葉を切る。なにかを思い付いたのか、いや、でも……と思案に耽る。

 

「━━━いえ、なんでもないです。僕としても北側に行くのは賛成です」

 

「ジンくん!?」

 

「へぇ、さっきの様子じゃ反対するかと思ってたが」

 

なんで? とは聞かなかったが理由は? と捲し立てるように首をジンの方へやる。

 

「"ノーネーム"には以前北側に親交深いコミュニティがありました。今となってはコミュニティの崩壊を折にほとんど親交はありませんが」

 

「それで?」

 

「風の噂でそのコミュニティがサーヴァントを得たと聞いています。コミュニティのリーダーとして、一介のマスターとしてこの大祭に参加することの利点を照らし合わせました。それにこの祭りで皆さんがなんらかのカタチで名を残せたのなら、僕らの目的もやりやすくなると思います」

 

なるほどね、と十六夜は頬杖を突いて嗤う。確かにジンの言っていることは筋が通っている。納得もできる。

 

「ただし、僕らが財政難なのは先程言った通りです。なので僕から大祭に参加することの条件として、皆さん、もしくは"ノーネーム"が北側でなんらかの名を残すことと、今回の旅費の出費は皆さん持ちであること。僕や黒ウサギにコミュニティの子供達、コミュニティからは一切支援はしません。こればっかりは絶対です」

 

耀がおずおずと手を挙げる。どうぞ、とジンは促す。

 

「旅費っていくらくらいかな」

 

「そうですね……"境界門"(アストラルゲート)の利用、宿泊、食費、ギフトゲームのチップ……諸々を勘定すると、行き帰りで、僕ら五人だけでも"サウザンドアイズ"製金貨十二枚は下らないと思います。ちなみに言うと僕らの全財産の三倍はあります」

 

「さっ、」

 

「三倍……!?」

 

「たかいの?」

 

「超高いな」

 

「……徒歩で行くっていうのは?」

 

「980,000kmの距離をですか?」

 

さすがにこれには十六夜も閉口した。この箱庭、どんだけ広いんだ。確か箱庭全体の表面積は恒星級と聞いたが東から北までそれでは小惑星クラスも距離が離れているとは思いもよらなかった。

 

「十六夜くん、なにかいい案はないかしら」

 

「……あー、確か"境界門"の所有管理権は"サウザンドアイズ"持ちだったはずだ。向こうに上手く掛け合えばなんとかなるかもな」

 

「滞在費と食費は?」

 

「向こうのギフトゲームで調達するのが手っ取り早いだろ。最悪食費だけなら今個人的に持ってるだけでもなんとかなる」

 

そそくさと作戦会議に入る三人。実のところこれは祭りに行かせないために言った無理だ。とはいえあのコミュニティがサーヴァントを従えたという話を聞いたのは本当だし、ジン本人も前述の理由で行けることなら行きたい。要するに彼らを試しているのだ。

 

ちら、と会話に混ざっていないジャックを見る。彼女はなにやら羊皮紙に外見や内面からは想像もつかないような達筆で英単語を並べていた。

 

「ジャック……なに書いてるの?」

 

ジン(ますたぁ)。おにぃさんたちがね、これ書いてって」

 

ビシッ、と目前に叩きつけられる。ジンは少し目を細めて、下記途中の文に目を移す。

 

「『黒ウサギへ。北に行って来る。御チビからは了承を貰ってるので御チビも連れていく。なお、ガイドが子供一人だけだとアレなので黒ウサギも来ること。来なかったらみんなでコミュニティを抜けます』……」

 

絶句、というか呆れ。こんな脅迫紛いの事をせずとも彼女なら「問題児様方をそんなところに行かせて何食わぬ顔でコミュニティで待つことなどできません!」と言って追い掛けてくるだろう。彼女の中では完全に≪コミュニティの子供達>>>>(越えられない壁)>>問題児達≫という絶対的なお利口様カーストが出来上がっているのだから。

 

「リリ、これもってってね」

 

「え、あ……うん、ジャックちゃん」

 

おずおずとリリが受け取る。逆らえない圧力と言うのだろうか。今の彼女は殺人鬼というより天邪鬼だ。

 

「うし、それじゃ意見も纏まったし……ていうかそれしかマトモな案がなかったから行くか、"サウザンドアイズ"」

 

そうこうしているうちに三人の方も終わったようだ。ジンは少しだけ自棄になって、大人しく四人に着いて行った。

 

 






開 幕 精 神 汚 染 。

ジンがこの時点で考えるようになっているのは"ペルセウス"戦でなにもできなかったという罪悪感がサーヴァントを使役するマスターの立場からも掛かって責任を二倍感じたといった感じです。

FGOは茨木童子が気になるところですね。作者、☆4以上のバーサーカーはランスロットしかいないので尚更気になります。

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