Fate/Problem Children   作:エステバリス

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どうも、プリヤコラボでイリヤ好きの親友をFGOという奈落に引きずり込んだ作者です。

清少納言に対する多くの暖かい御言葉、ありがとうございました! ぶっちゃけどんな苦言が来るかビクビクしてましたけど、よく考えたらあんだけ設定弄りまくってて今更オリジナルって気がしてきましたね!




くえすちょんふぁいぶ 力を重ねて、独力で

 

 

春日部 耀はらしくもなく"サウザンドアイズ"に貸し与えられた一室の布団に倒れ込んだ。端的に言うと疲れたのだ。

 

清少納言に彼女にとっては思い出したくない屈辱の"フォレス・ガロ"戦と"ペルセウス"戦について鬼のような追及をされただけに飽き足りず、あろうことか彼女は自分達が元々どんな世界にいたのかまで問い詰められた。

 

流石に白夜叉が時間も時間だと言って仲裁に入ってくれたが、それでも今の時刻は余裕で丑三つ時。試合開始の時間が夕方からでよかったと安堵するばかりだ。

 

「耀さん? 起きていますか? ジン=ラッセルです」

 

さて寝よう、と思っていた頃にノックと共に聴き親しんだリーダーの声がした。ちょっとイラッとしたが、こんな時間に来たという事は込み入った話でもあるのだろうか?

 

「起きてるよ。上げた方がいい?」

 

「いえ、このままでもいいです。ただ僕が言うことを耀さんが聞き入れてくれるのなら、上がった方が都合がいいかと」

 

「………? わかった。上がって」

 

「はい、失礼します」

 

言うが早いか、ジンはさっさと部屋に上がり、一言断ると布団で転がっていた耀から少し距離をおいた場所に正座した。

 

あ、と耀が気付く。これは果たして人と会話するのに相応しい格好なのだろうかと。

 

そこまで考えると途端に赤面した耀はサッと立ち上がって、ギフトカードに持ち込んでいる水の入ったペットボトルを二つ取り出して一つをジンに渡す。

 

「ご、ごめん。私かなり失礼な格好で」

 

「い、いえ、耀さん含め皆様がふてぶてしくて失礼かつ我儘なのは承知していますので」

 

「ケンカ、買おうか?」

 

「す、すみません。つい思った事が言葉に」

 

とにかくこれでは話が進まない。ジンはひとつ咳払いをしてペットボトルを受けとると、空いている手で"造物主の決闘"の"契約書類"を取り出した。

 

「黒ウサギと白夜叉様から聞きました。耀さんは"造物主の決闘"のサポーター枠を使う事を否とした、と」

 

「……それが、何か?」

 

サポーターをつけろ、という旨の話ならば何度も言わせるなとでも言いたげに、可能な限り声のトーンを落として対応する。ジンはすぐにそれを察して「いえ、その事じゃありません」と取り繕う。

 

「決勝トーナメントに勝ち上がった"ラッテンフェンガー"と"ウィル・オ・ウィスプ"はいずれも土着信仰や知名度によってコミュニティ名になった者達です。僕も特に"ラッテンフェンガー"について知っておきたいので、決勝トーナメントの総当たり戦を控えてる耀さんと一緒に勉強でもしてみようかと思いまして」

 

「……でも」

 

「ダメですか? どうせ清少納言さんに付き纏われた疲労で寝るつもりだったでしょう? 寝てしまったら寝てしまったで勝手に切り上げますから、できるところまでやってみませんか?」

 

むぅ、と返答しかねる。わざわざ寝るつもりだったと察しておきながら誘ってきたのはギフトゲームで"ノーネーム"が名を残す手段で一番目の前にあるものとわかっているからだろう。

 

無理を言って誕生祭に来た理由とコミュニティのため、を引き合いに出されれば問題児であれお人好しでもある。加えてロクに人と交流をしなかった耀ではこの誘いを無下にする事もできないし、反論する事もできねば断る理由もない。

 

そんなわけで暫く反論を考えて思い付けなかった耀は眠たそうな眼を擦り、水を軽く一杯煽ると軽く頬を叩いてからジンの提案に頷いた。

 

「わかった。じゃあ一緒に"勉強"しよう」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

さて、そうは言ったものの、勉強とは基本的に一般的な価値観で言うと退屈なものだ。箱庭は非科学と言うべき面において便利なのだが、実のところ科学水準に関して言うならば耀のいた世界に遠く及ばない。

 

文献は書物で、食料保存はギフトカードでといったもので事足りる。冷蔵庫は基本的に存在しないし、その気になれば食料の保存程度外付けのギフトでもなんとかなる。

 

何が言いたいのかと言うと、あまりにも高水準な科学に慣れ親しんだ耀からすれば態々紙を捲ってあれじゃないこれじゃないと一所懸命になって探すのがたるい。十分で飽き始めた。

 

探したいものさえあればその名前を打つだけで全てを知ることができた情報共有万歳な環境で育った弊害だ。"勉強"が死ぬほど面倒だと思った事は恐らくこれが最初にして最大だ。

 

「……あの、耀さん。露骨に飽きてますよね」

 

「そんなことない」

 

ジンの問いは即座に反論。気が抜けた頃にポーカーフェイスを全く崩さずマッハに答えるものだから流石だ。

 

「だいたいジンより先に寝たら歳上失格だし……失格だし」

 

「二度も言わなくてもいいですよ……それに寝てしまったら勝手に切り上げるって言ってるんですから。辛くなったら遠慮なく寝てください」

 

む、と今日何度目かの不満を抱えながら再び本に目を落とした。そうまで言われれば寝てしまうと負けな気がしてきた。いいよ、だったら逆にジンが寝るまで続けようじゃないか。

 

そう思った耀は一念発起してウィル・オ・ウィスプに関する文献を眺める。

 

「………」

 

「いやいや寝るにしても早すぎるでしょう」

 

すぐにコクリと首を傾げると即座にツッコミが飛んで来る。その返答が楽しかったのか、耀はらしくない笑顔を見せる。

 

「冗談」

 

「なっ……冗談ならやめてください」

 

なにが面白かったのかジンには理解しかねた。だが同時に耀が普通に笑った瞬間を初めて目の当たりにしたジンは若干バツが悪そうにはにかむ。

 

そうしてまた会話が途切れた。元々勉強をする気で来たジンと人と話すことが苦手な耀では仕方のない事なのかもしれないが、ようやくここで今まで自分達が二人きりになって喋った覚えがない事に気付いた。

 

「……あの、耀さん」

 

「何?」

 

「耀さんのいた世界って、どんなところだったんですか? 眠らないための話題程度ですが」

 

そう、と頷く。しかしなんというか、耀にとってはあの世界が彼女基準で普通なのだ。箱庭と何がどう違うかくらいしか語れない。

 

なのでとりあえずふぅ、と一息吐きながら今さっきまで読んでいた文献に目を落として……本の一ページを綺麗に伸ばす。

 

「……本は、とりあえずこれくらい薄かったかな」

 

本じゃなくて量子タブレットだけど、と心の中で呟く。するとジンはそれに興味深そうに食い付いてきた。

 

「そ、そんなに薄い本があるんですか!? そ、そんなのでそもそも本として成り立っているんですか!?」

 

「シー、夜中だからあんまり騒がないの」

 

「あっ、す、すみません」

 

「ううん。ジンのリーダーじゃないところ見れて私も面白かったよ」

 

また顔を崩して笑う。普段無愛想で仏頂面な少女がそういう面を見せられると"そういうお年頃"に入りかけているジンからするとたまったものじゃない。

 

「クアンタムPCって言ってね。アクセサリーとか爪とか、そういうところに埋め込まれている0,0x単位にまで極小化されたチップから操作一つでモニターが出て来て、それでインターネットに繋いで本みたいに沢山情報が手に入る。そういう場所」

 

「……えっと、インターネット……?」

 

あまり馴染みのない単語だった。そこについても耀は軽く説明を入れつつ話を展開していく。

 

例えば、インターネットは誰にでも使えて、簡単に求める物を探し当てられる本のようなものだと。例えば、あまりにも科学技術が発達しすぎた結果、食事も必要な栄養分だけが入っているカプセルで済んでいてジン達の慣れ親しんだ食事という行為は変わり者の趣味嗜好だとも。例えば……人類の医学がまさしく万能の領域にまで達し、既存の病全て……内部の細胞そのものが変化することで始まる癌すらも治すことが可能なほどのものだ。

 

「そんな世界なんですか……みなさん四人とも時代が全然違っているからそれを言ったら面白そうなことになりますね、きっと」

 

「だろうね。特に十六夜なんか目を輝かせそうだよ」

 

そのまま二人は笑い合い、互いの事を差し障りない程度に話続けていると、いつの間にか相当な時間になっていたのだった。

 

◆◇◆

 

そうこうしてやってきた本番、翌日の逢魔が時。

 

ジンは少しそわそわしながら耀を除いた"ノーネーム"一同と共に先日再開した幼馴染でこの誕生祭の主役、サンドラが特別に用意してくれた運営側の席に腰掛けていた。

 

「どうしたよ御チビ。あんだけ大層な啖呵を俺達にも白夜叉にも切っておいて、今更不安か?」

 

「い、いえ。そういう訳では。ただ、場合によってはゲーム中に魔王に乱入されて僕らが駆け付ける前に襲われる、という可能性もないわけじゃありませんから、少し警戒を」

 

「ふーん、まぁでもその心配は杞憂なんじゃねぇか? "主催者権限保有者は参加者となる際、身分の開示をしなければならない"、"参加者による主催者権限の使用を禁ずる"、"非参加者は祭典区域に侵入不可"……このルールを飛び越えてやってくるっていうのはそれはそれで面白そうなのは事実だが、その気配もない。加えて、このゲームは"審判権限"保有者の黒ウサギが審判をしている上で殺し御法度のルールがあるしな」

 

ですが、と言おうとしたのをぐっと堪える。十六夜の言うことは尤もであるし、ここでリーダーの自分が弱気な態度をとればそれを見た外部コミュニティの印象も悪化しかねない。

 

なのでジンは十六夜の発言を肯定しつつ、今度は視線をサンドラに移す。

 

「サンドラ、融通効かせてくれてありがとう。一応、僕らもキミの警護くらいはするからどっしり構えておいてね」

 

「ありがとうジン。でも大丈夫、周囲にはマンドラ兄様達もいるし、最近とっても強い人がコミュニティに加わってくれたの」

 

「強い人……? ああ、そういえばサーヴァントを手にしたって聞いたけど、もしかしてその強い人?」

 

「ええ、そうよ。出て来てセイバー」

 

サンドラの言葉から数秒後、何もない空間からチューブトップに上着、短パンといかにも活動的な外見をした女性が現れ、思わずジンは驚く。

 

━━━これはサーヴァント共通の能力、霊体化だ。老齢、幼年問わず同一人物であれば聖杯の恩恵によって全盛期の姿を憑依させる。あるいは死人や箱庭にいない者を全盛期の姿で呼び寄せるというシステムの副作用によってできたモノ。

 

霊体化したサーヴァントは直接主従契約を結んだマスターを除いて誰にも視認できず、物質的な干渉を断つ事ができる。

 

中にはこの霊体化を好まず、白昼堂々姿を晒す者もいるが……解りやすい例で言うなら相も変わらず十六夜の膝を占領するジャックだったり。

 

他にも交渉の場という事で姿を晒していたメドゥーサや戦闘の心配性がないとか、外の空気に触れていたいとかいう理由で霊体化をあまりしないジキルや清少納言といった面々としか顔を合わせた事がなかったので、霊体化の解除を初めて目の当たりにしたジンは驚いたのだ。

 

「セイバー、挨拶して」

 

「あいよ。オレはセイバー、色々あって"サラマンドラ"付きのサーヴァントになったんで、宜しく頼むぜもやし男」

 

「も、もや……」

 

「気にしないでね。セイバーは口が悪いだけでいい人だから。あと、あんまり性別には触れてあげないでね?」

 

「あ、うん……じゃあこっちも紹介しないとね……アサシン」

 

一応、聖杯戦争のサーヴァントという関係にある以上は親しい中でも線引きは必要だと思ったジンは敢えてクラスでジャックを呼んだ。一瞬ジキルがピクッとなったとも追記しておく。

 

十六夜に背中を押されたジャックはとことことジンの所に駆け寄ってきた。

 

「なぁに? ジン(ますたぁ)

 

「えっと、自己紹介してくれないかな。今の誕生祭においては友好的にしてたいからさ」

 

「うん」

 

そう頷くと、一歩前に出てサンドラとセイバーの目の前に立つ。首を傾げながら両手をマントから指だけ出して━━━所謂萌え袖状態で━━━人差し指を顔の近くに持ってくる。

 

「アサシンだよ、よろしくおねがいします」

 

あざとかった。一体何故そんな事を、と思ったジンは咄嗟に後ろで座っている十六夜に目を向けた。腹を抱えて爆笑していた。絶対あの人のいらない入れ知恵だ、と直感で確信した。

 

「……お、おう。なんだ、よろしく」

 

「えっと……ジン、この子が"ノーネーム"のサーヴァント……?」

 

「……恥ずかしながら。色々見た目通りな子だから間違いなく後ろで笑ってる人の入れ知恵だと思う」

 

暫くどうしようもない沈黙があったが、いたたまれなくなったジンがそう言えば! と無理矢理話を逸らす。

 

「セイバーといえば基礎的なステータスが最も優れた最優のクラスって聞いてるよ。そのセイバーを引き当てるなんて、凄いね!」

 

「そ、そうかな? でも、本当にセイバーは強いから色々助かってるよ。今回も直接護衛してくれるって言ってくれたの」

 

「んなもん当たり前だろ。あんなちゃっちぃ癖して小五月蝿ぇヤツらが周りにいたら余計な指図されて剣が鈍るっつうの。ガキを守るのは半端者であれ騎士として当然の行為だ」

 

ああ、この人はサンドラの言う通り優しい人なんだな、と理解する。ルイオスとメドゥーサは会話をしていなかった。ルイオスが一方的に命令して、メドゥーサが嫌々従う。今思えばメドゥーサが自分を殺したペルセウスの子孫であるルイオスにあまりいい感情を抱いておらず、先祖が殺したメドゥーサを軽視していたのもあるだろうが、恐らくそのギブ・アンド・テイクの関係こそがサーヴァントとマスターのあるべき関係なのだろう。

 

ジャックはそもそも甘えたがりの年頃なので特殊なので勘定には入れず考えても、マスターを人としての立場で理解しているセイバーはいい人だと感じた。

 

「……ん、そろそろ始まるな。マスター、あと御チビも見なくていいのか?」

 

「お、御チビ……」

 

そこで未だに笑ってる人と同じ呼ばれ方をされて、ジンはまだまだ未熟なのか……と肩を下ろさざるを得なかった。

 

 






ここに来てジンくんと春日部さんにフラグが立つとは誰が思っただろうか。作者も予想がつかなかったです!

いやしかし、各々の心情とかそういうところを考えるとこの二人がこのタイミングで近づくのはなるべくしてなった結果といいますか、全部幼女がガチの殺し合いしてる事に責任を感じたりマスターの立場として前向きになったせいと言いますか。



以下、いつものFGOトークコーナー

プリヤコラボですね。イリヤ大好き兄貴達には侮辱ととられてしまうかもしれませんが、クロの方が好きなのでちょっと安心しました。でも美遊が礼装で終わるのは許さないぞ!

あ、あとようやく静謐が出ました。苦節二ヶ月くらい……長かった……ようやく、ようやっと……!

え? イリヤ? ……聞かないでね?

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