Fate/Problem Children   作:エステバリス

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これから在日ウルク民を名乗ろう。そう思った七章だった。

そして最終章も始まりました。人類史を取り戻す戦いの最後のGrand Order、各々が信じるサーヴァント達を信じましょう。

それにしても沖田さんと結婚してジャックを養子に迎え入れたいだけの人生だった……

↑ここまで投稿時間の約二日前に予約投稿時に書いた前書き
↓ここから投稿日に書いた前書き

こんないい話っぽい流れで前書き書いたのになんでマスターが歴戦の猛者からシロアリになってるんですかね……あ、バルバトスくんぼく昨日キミのドロップ情報出回る前に一回下見して寝ちゃったから復活して。

ソロモンくん除夜の鐘扱いされてたけどこれ下手したら聖夜の晩餐になっちゃうよね。

って追加魔神柱で沖田さん助けに来てくれたよオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサンオキタサン




くえすちょんてん あゆむ、まなぶ

 

 

ヘンリー・ジキル。そしてハイド。この二つの名は日本でもそれなりに知られた名である。

 

彼、いや彼らは"ジキル博士とハイド氏"というタイトルで一八八六年にイギリスで出版された後天的な乖離性同一障害を扱った作品の主人公である。

 

十九世紀ロンドン、精神病により心をコントロールできなくなった父と世界平和、科学の発展の為に"人間の善悪を完全に分断する霊薬"を完成させたジキル博士が自身を実験台として服用し、『一つの肉体で善悪が不完全に分離された』という物語。

 

ハイドというのはジキル博士が霊薬の服用によって生まれた悪の人格であり、ジキル博士が元々持っていた強烈な悪性そのものだ。

 

ハイドは自身の発明を神への冒涜だと異端者扱いした者達への復讐を遂げ、やがて薬無しでも勝手にハイドになってしまう自らに懊悩して最後にはジキル博士は完全にいなくなってしまう。という物語だ。

 

それが"サウザンドアイズ"幹部白夜叉が保有する二騎のサーヴァントの一騎、アサシンの真名である。

 

「ただの暗殺者と思っていたが……その実享楽的に人を殺す狂人だったか、バーサーカー!」

 

「応よ! 俺はジキルが切り離し、ひた隠しにしたあの甘チャンの本性ッ! 言ってみれば、俺こそが本物の"ヘンリー・ジキル"って訳だ!」

 

ギャハハハ! と下卑た笑い声を上げながらジキル……否、ハイドは小さなナイフで神格を手にしたヴェーザーの魔笛と切り結ぶ。

 

「ヒヒヒハハ!! オラオラどうしたよ神格持ちとやらァ!? もっと俺と楽しめねぇのかああん!?」

 

「言ってろ、快楽殺人鬼が! コイツでも食らっとけ!」

 

ヴェーザーの魔笛がその怪音を鳴らす。その超振動はハイドの持つナイフからハイド本人の元に伝わる。

 

「ッチィ!」

 

思わずナイフを手放した途端、それは呆気なく破裂した。だがハイドは一切悲観しない。むしろその笑みを深めるだけだ。

 

「ざぁんねんだったな……得物なら、ほぉらまだある」

 

ニタァ、とその口を裂きながら砕かれた物と全く同じナイフを取り出す。更にコートから薬を取り出して飲み干すとその身体を震わす。

 

「あの偏屈キャスターの具象化魔術とジキルの薬学知識……これを俺が使えば底無し武器無限って寸法よ。ヒヒ」

 

清少納言はかなり高度な道具作成能力を持つ。本人はそれと執筆しかできないと言っているが、その二つに関しては白夜叉も素直に認める物だ。特に道具作成は武器や執筆道具と特定の何かに縛られない。

 

「オラよ!」

 

ナイフをヴェーザー目掛けて投擲する。それを弾こうとするも、ハイドがナイフに宿る魔力を炸裂させる。

 

武器に内包された魔力を炸裂させる魔術、壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)。内包された魔力を炸裂させるという都合、武器の本来の用途からは大きく離れつつもその用途以上の単純な破壊力を引き出す魔術である。

 

だがそれは自らの得物を破壊するという事。普通はそんな事はどれだけ簡単な魔術原理であってもやろうとはしない。

 

━━━だが、清少納言をはじめとした"武器を精製できるサーヴァント"ならば話は別だ。武器の替えが利く、自らの切り札はその得物に非ずという彼女らはいくらでも武器を破壊できる。切り札の武装が無いが故の戦術である。

 

まあ、とはいえ単なる道具作成では精製にはある程度の時間を要するし、キャスターと言っても大した魔力量を持たない清少納言では大量を作るという行為自体が難しい行為だ。

 

「ドヤされんのはどうせジキルだ。俺は最後の一本まで遠慮無く使わせてもらうぜ」

 

「御愁傷様ってか!」

 

大地を割る一撃で迫り来る無数のナイフの爆発を防ぐ。幾つものナイフが衝撃波でヴェーザーの元に達する事無く割れ、爆発する。

 

「遅ェ!」

 

「なっ━━━」

 

爆煙に紛れたハイドはジキルと全く同じだったその姿から二足の魔獣に姿を変えていた。

 

その脚は持久力を度外視した形状となっており、ジキルよりも速かったハイドを遥かに上回る速力を発揮する。

 

更に爪はナイフよりも遥かに長く延び、先端から根元までその全てが貫通、切断に特化した凶悪なものに変貌している。

 

「━━━グッ、ガ」

 

そこまで理解したのと同時に、ヴェーザーの心臓はハイドの爪によって貫かれていた。

 

最後の足掻きと言わんばかりに魔笛を握り締める腕に力を籠めようとするも、その腕も簡単に切り飛ばされた。

 

「……チッ、なんだ。呆気ねえな」

 

ヴェーザーが呟いたのと同時に爪が引き抜かれる。身体の支えを失ったが、それでも彼は気丈に立ち続ける。

 

「ヘッ、どうよ? コイツが俺の実力ってヤツだ」

 

「ああ……正直嘗めてたわ。その辺りの木っ端アサシン程度ってな。だが……サーヴァントってのは厄介だなぁ」

 

ケッ、と自嘲気味に嗤う。召喚の触媒の魔笛こそ壊れなかったものの、心臓そのものが無くなれば彼がこれ以上この箱庭に留まる事は不可能だろう。あり得るとすれば、またこの魔笛を触媒に召喚されるといったところか。

 

「長居はしたくねえからよ……やってく」

 

「OK。死になクソ悪魔」

 

ヴェーザーが最後の言葉を告げる前に彼の首が飛んだ。立ち続ける四肢と吹き飛んだ頭はそれから数秒とかかる事無く、箱庭から消え去った。

 

「クッククク……さぁ~て、まずは一匹だ。次はどいつを━━━ッ!?」

 

恍惚としてハイドは人型に戻ったが、その瞬間に身体を言い様のない激痛が襲った。痛みにハイドは混乱しながらもその正体不明には思い当たる節があった。

 

「……白夜叉ァッ……!あのクソチビがッ、俺に令呪を使ってやがったな……!」

 

ハイド自身の意識は朦朧としていたが、ジキルと白夜叉が契約した時の事だ。彼女はジキルの『正義の味方として在りたい』という願いを叶えるべく何の躊躇もなく令呪を切っていたのだ。

 

その内容は"宝具はジキルが敵と定めた人間と相対した時のみ使用が可能"と"ハイドが相対した敵を殺害した時、ジキルに戻る霊薬の服用を強制する"というもの。

 

あの時は流石のジキルも二つの令呪を躊躇なく使った白夜叉に感服し、同時に困惑したものだ。それと同時に、ハイドという己の悪性に悩まされる事無く正義であれる事を可能にしてくれた白夜叉に感謝もした。

 

「クソッ、クソクソクソッ……! 畜生が……!!」

 

結局、ハイドは令呪の縛りによって霊薬を服用した。薬の効き目は早く、ほんの一瞬生き地獄とも言える激痛が襲った後、ハイドの恨み節は直ぐ様消え去り彼の目には確固たる理性が宿った。

 

「……ふぅ、全く、ハイドも無茶苦茶をする。何がドヤされるのは僕だから気にしない、だ。本当に肉体ごと切り離す霊薬を作って殴り飛ばしてやろうか」

 

英国紳士であるジキルらしからぬ発言ではあったが、その対象が自身が最も憎む己の悪性なのだ。多少当たりがキツくなるのも仕方のない事だろう。

 

「探索組に合流しよう。ハイドになっても生物である以上僕じゃペストとは相性が悪い。そこは彼らの役目だ」

 

◆◇◆

 

「何よっ……何よ何よっ! いくらサーヴァントだからって涼しい顔で境界門(アストラルゲート)の操作は無茶苦茶じゃない!」

 

ラッテンは苛立たしげに逃げ回る。不思議な事に清少納言は追ってこない。もしかして境界門の開門には特殊な手順を踏む必要があるのだろうか、と思いながら走り回っていると━━━

 

「見つけたわ、本物のネズミ取り道化師(ラッテンフェンガー)

 

「っ、貴女━━━」

 

そこで待ち構えていたのは飛鳥。彼女は先日ラッテンが捕らえたはずだ。それが突然消えた。何処に行ったのかと探してはいたが、まさかこのタイミングで来るとは。

 

「けど、今更貴女一人が帰って来たところで! 押し潰しなさい、シュトロム!」

 

「━━━いいでしょう。ならばこちらも。やりなさい、()()()()!」

 

◆◇◆

 

「おいきなさい、ダイナ。ふわふわ地面を走る小鳥を食い潰しておやり」

 

アリスが絵本の中から猫とビンを呼び、猫にそのビンを飲み干させた。すると猫はたちまちにその身体を大きく変貌した。

 

ダイナ。不思議の国のアリスに登場するアリスの飼い猫の事だ。アリスは不思議の国に訪れて幾度かその猫の話題を出していたが、その悉くがやれ「ネズミを食った」やれ「鳥を簡単に捕まえる」という話をその動物達の前で話すものだから大不評を買っていた。

 

さて、そんな猫が目の前に鳥と称された獲物がいればどうなるかなど、深く語る必要はあるまい。

 

「━━━ッ」

 

ジャックは煩わしそうな顔を見せてマントに隠し持っているメスをダイナの目玉めがけて投擲する。目に迫る凶器を本能で恐怖したダイナは飛び退いてみせるが━━━それこそ彼女の思うツボだ。

 

「後ろよ、ダイナ」

 

「ふっ」

 

アリスの忠告がダイナの耳に入った頃にはもう遅い。既にジャックは肥大化した猫の背後に回っており、どう足掻いても暗殺の射程内だったのだ。

 

シュパンッ、と小気味のいい音が猫の首から響く。肥大化に伴い屈強なものと化した首は温かなバターを切り分けるかのように削ぎ落とされた。

 

「流石よ、ジャック」

 

「アリスはぜんぜんへんてこてん。こんなんじゃ、わたしたちを殺せないってわかってるくせに」

 

「そうよジャック。だって今日は挨拶だもの。『ひさしぶり。”ワタシ”を覚えている?』……てね」

 

「ううん。わかんない。■■■はしってる。でもアリスはわかんない」

 

「そうよ、それでいいの。”アタシ”(アリス)もジャックとははじめましてだから。でもね、ひさしぶりなのよ、ジャック」

 

一見して二人の会話は致命的なまでにチグハグだ。だが二人は互いの言わんとしている事理解している。なぜだと問われるとなぜだろう、と答えられる()()があるし、それもまたチグハグだと理解している。

 

「ジャック、少しお話をしましょう。()()()()()()って知ってる?」

 

「……?」

 

かばん語言葉、あるいはポートマントー。それはルイス・キャロルが考案した新たな言語の事だ。例えば、滑らかと粘っこいを合成して粘滑(ねばらか)といった風に一と二という異なる意味合いを持つ二節を二つの異なる意味を同時に内包する一プラス二という言語に変える。

 

「本当は詠唱簡略系統のスキルなんだけど、私はアリスだからちょっと融通が利いたみたいなの」

 

「それが、黒死病のドーマウス?」

 

「そう、そうなの。イキモノ二つと非生物を組み合わせるの、面白そうだから試してみたんだけど……何事も想い描いた通りには行かないのね。ティーカップがアヴェンジャーと笛吹き道化の器になっただけ。二人にはなぁんにも変化は起こらなかったの」

 

クルリ、クルリとジャックの周囲を回りながらアリスは楽しさとつまらなさを混在させた口調で話す。ジャックはただぽかんと話を聞いているだけだ。

 

「ねえ、ジャック。私達は縁があるわ。それに貴女とお話をして確信したの。やっぱり私には誰かと一緒じゃなきゃダメみたい。私と貴女、()()()()()()()()()()?」

 

「ひとつ、に?」

 

「そう! ひとつに! 私、貴女の事がはじめて会う前から大好きだったの! だからジャック、あの時みたいに私とお友達になりましょう?」

 

「……ごめんなさい」

 

しかしジャックはアリスが話し終えて二秒と経たないうちに返答を返した。たどたどしく、感情を読み取り辛いものであったが、その言葉尻とジャックの言動にはハッキリとした、それでいて愛情を含んだ拒絶だった。

 

「ごめんねアリス。きっとちょっとまえだったらうん、っていえたとおもうの。でも、いまはダメ。おにぃさんがいるの。ますたぁ(ジン)がいるの。ヨウがいるの。アスカがいるの。黒ウサとレティシアもいるの。みんながいるの。みんなは、わたしたちのかぞくなの」

 

まるで慣れない風に本を読むように、不自然な途切れ方とはきはきした喋り方でジャックは真摯に応える。

 

「だから、わたしたちはアリスと一緒にはなれないの」

 

ジャックはアリスが不機嫌になると思いながら応えたが、その実アリスはジャックの予想を裏切るようにクスクスと笑っていた。

 

自分の望みを断られたのに、何故? 子供のジャックには理解が追い付かない。

 

「そうなのよ、そう簡単にうんと言われたらつまらないわ。私の描く物語(ストーリー)にはまだまだ貴女が活躍してくれないと困るもの。最後まで、最後の最後まで……ランサー」

 

笑顔、ただ笑顔。アリスはそこで話を切り上げると十六夜と肉弾戦を繰り広げるカルナの制止にかかる。

 

「なんだアリス。オレはお前の与太話に付き合う暇などないが」

 

「引き上げるわ。今大事なのは戦力を手にいれるよりも今の戦力の確認。それも終わったし無用な犠牲と無用な情報漏洩は避けるべきよ。貴方も力を制限したまま決着が着くのは不本意でしょう?」

 

「……そうか。確かにそうだな。いいだろう、命令とあらば」

 

拳と鍔迫り合いになっていた槍を大きく薙いで距離を取りつつアリスの手を掴む。

 

「また会おう十六夜。次に会うならばその時こそ、オレの全力で貴公と戦う事を誓う」

 

十六夜が返事をするよりも早く、二人はアリスの転移魔術でその場を去った行った。

 

「……ちっ、行ったか。まあいい、今はギフトゲームだ。ジャック、俺達も手筈通りに行くぞ。魔王を叩く」

 

「うんっ、いこ、おにぃさん」

 

「おう……あ、そうだ」

 

十六夜は歩き出そうとした時、ふとなにかを思い出した。

 

「なあジャック。さっきアリスに誘われた時、俺達が家族だからって断ったよな」

 

「う? ……うん」

 

「……その事でなんだが。俺はちゃんとお前の()()になれてるか?」

 

自分らしくない質問だな、とつくづく思う。ジャックが義弟と義妹をミックスしたような少女だからなのか、あの流星群の夜からその事が頭から離れない。

 

自分が子供の扱いに慣れている自覚はあるが、箱庭という場所に身を置いているせいかきちんと対応できているかが不安だ。特にこの少女にはその思いが強い。

 

そう考えての質問だったのだが、ジャックは屈託のない笑みを浮かべながら十六夜の背中に乗っかった。突然でサーヴァントの身体能力を生かした一瞬の出来事だったので流石の彼も面食らったが、ジャックは自身の顎を彼の肩に乗せて頬が触れ合うような距離で囁いた。

 

「おにぃさんは、おにぃさんだよ。わたしたちのおにぃさん。わたしたちによくないことや、たのしいことを教えてくれる、わたしたちだけのおにぃさん」

 

「━━━、そう、か。OK、それなら俺も責任取ってお前の家族になってやるさ。楽しい事に嬉しい事、それに悔しい事や苦しい事。そういうの全部を愉しんで……人生を彩る大事な愉悦を教えてやるさ」

 

「うん! おにぃさん、いこ、いこ!」

 

「おう、じゃあまずはその為にも魔王退治だな!」

 

少女は歩む。初めて知った温もりを胸に抱き、初めて手にした家族の手を繋いで。

 

少年は歩む。家族を捨てた対価に手にした新たな家族を導き、教えられ。自分は今、()のようになれているかと夢想しながら。

 

 






早いものが、去年の本日この投稿時間こそがFate/Problem Childrenの第一話投稿日です。当初はジャックのFGO実装記念に息抜きを兼ねて書こう、というものだったのに今や執筆の中心です。

また、そういう経緯で生まれたためあまり定まっていなかった設定も七割がた固定(残り三割は細かい部分の設定)。気が早い話ですが第二部も自分の中で確定しております。

さて、この時期が一周年という区切りがいい頃なので2016年のFate/Problem Childrenはこのお話で終わりです。一年使って二章終わらないのか……と頭を抱えたくなる案件ですが、少なくとも第一部は必ず完結させます。

それでは皆様、また来年にお会いしましょう。

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