Fate/Problem Children 作:エステバリス
二章最終話となります。今回はエピローグというわけでかなり短めですが、大事な事書いてあるからここ必修ですよ!(伸びる棒で黒板叩きながら)
偽りの伝承たるステンドグラスが全て砕かれ、真実の伝承たるステンドグラスが掲げられて"黒死斑の魔王"とのギフトゲームが終了してから一日が経過した頃。
完全に快調した耀は改めてカボチャ頭の彼━━━ジャック・オー・ランタンと対面していた。
「ヤホホ。まずはギフトゲーム攻略おめでとうございます、春日部嬢」
「私、参加してないよ。本当におめでとうを言うなら彼らに言ってあげるべきだと思う」
「いえ、社交辞令というものです。それに一番の功績を挙げたコミュニティに感謝と拍手喝采が無いのもどうかと思いまして。素直に受け取って戴きたい」
「じゃあ、一応受け取っておく」
耀が頷くとカボチャのジャックは気分を良くしたようにヤホホ! と笑う。かと思えば今度は申し訳なさそうに肩を小さくさせる。
「……そして謝罪を。ルールに縛られていたとはいえ私はゲームに参加する事すらままならなかった。自惚れているつもりはありませんが、今回のゲームで死亡してしまった多くの"サラマンドラ"の者達。もし私が参戦できていれば彼らを救う事ができていたのではと思うと」
「それを言うなら私もだ。だからジャックが気にする必要はないと思う。だってそれは、間が悪かっただけ……らしいから」
つい先日自分を言いくるめた(とよくわからないけど悔しいので思う事にした)彼の言葉を思い出しながらカボチャのジャックを諭す。
そんな彼女を見た彼もまた、笑い出す。
「ヤホホホホ! 良い顔をなさるようになりましたな春日部嬢。どうやらあの敗北から一週間、貴女の心も大きな転機を迎えたようだ」
「……かも。少なくとも今までよりはよっぽどマシになれた自覚がある」
「良い、良いです。では私も間が悪かったという事で納得しましょう。元々傷心の貴女を諭すつもりで呼んだのですが……いやはや、まさかかえって諭されるとは」
受け売りだよ、と軽い気持ちで彼の感謝を受け止める。彼の言葉を思い出すと額辺りにひんやりとした感覚が来るので思わず腕で拭う。
それを見てカボチャのジャックはますます気分を良くしたように笑うので、少しだけむっとなってしまう。
「……そんな事より、ジャックに聞きたい事がある」
「でしょうね。答えられる範囲でならば答えましょう」
途端に明るげな雰囲気は消え失せる。耀はどうやって声を出そうと少しだけ逡巡していたが、すぐにストレートに聞くべきと至る。
「私達のジャックと貴方はどういう関係なの?」
ギフトゲームの時に彼は明らかに耀達の知るジャックについて言及していた。
━━━
知っていますよ、春日部 耀嬢! 貴女は自身の無力さを恨んでいる! 貴女は今、自分より遥かに幼い子供に自分が潜り抜けた危険よりも遥かに危険な場所に置かせてしまっている事に罪悪感を感じている!
なっ━━━!?
ですがそれは何故でしょう!? 彼女達ジャックが幼いからでしょうか!? 故に情が移ったのでしょうか!? それこそ何故!? 彼女はサーヴァント! 言わば亡霊でしょう! 何故、そんな彼女を幼いからという理由で手を差し伸べそうとするのです!?
知ったような風に!
知っていますとも! "わたし"はずっと貴女達を見ていた! なればこそです!
━━━
初対面である筈なのにサーヴァントがいる事、そしてその名が"ジャック"という幼い少女である事を彼は知っていた。
そして彼の名が"ジャック"である事。これを偶然で片付けてはいけないと耀の心が叫んでいる。
「……そうですね。春日部嬢、"バタフライ・エフェクト"をご存知ですか?」
「……えっと、確か二十世紀の気象学者の提唱した"ブラジルの蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすのか?"っていう奴だよね」
「そうです。その議論は二十一世紀において未だに決着は着いていませんが、それの決着が規模の大小は兎も角として"
「……えっと、つまり『間違いなく関係あるけど今は教えられない?』」
「ヤホホ! まあそういう事です。貴女方"ノーネーム"が対魔王コミュニティだというのならばいずれ否応なく語らねばならなくなる時が来るでしょう。それまでは私と彼女は関係がある程度に覚えておけば問題はありません」
「じゃあそういう事にしておく」
本題を語り終えた途端、話す事がなくなってしまった。耀はこのコミュ症も解消しないとなぁ、と思いながら話題探しに入る。
「ああ、そうだ」
かと思えば、カボチャのジャックが口を開く。
「暫くした後、"ウィル・オ・ウィスプ"主催のギフトゲームが開かれる予定です。詳細は追って伝えます。勿論私も主催者側として参加しますので、リベンジに燃えるというのならば参加してみては如何です? 景品もいい物を用意していますよ」
「本当?」
「ええ、本当です。個人的にも子供には楽しんで戴きたいし、コミュニティとして見ても魔王への対抗策として"ノーネーム"と親交を築くのも悪くはないと思っておりますしね。いやはや、貴女を含め皆様才覚に溢れた良いコミュニティだと思っております」
カボチャのジャックが言う事に偽りは無い。そう感じ取った耀は彼の誘いに迷う事なく頷く。
「じゃあ喜んで参加する。その時こそ雪辱戦。今度こそ私が勝つ」
「ヤホホ! 良い威勢です! ではその時をお待ちしておりますよ、春日部嬢!」
◆◇◆
とある場所のとある部屋。カルナを伴って帰って来たアリスは適当極まる声で帰還を告げる。
「帰ったわ殿下」
「マスター、今帰った」
「ご苦労だったアリス、ランサー」
殿下は定型の労いの言葉をかけると、用意されていた椅子に座るよう二人に促す。
遠慮なく腰掛けるアリスに「オレは構わん」と遠慮するランサー。殿下はそうか、とだけ返すとすぐさま本題に移る。
「ランサー、アリスはどうだった?」
「量り辛いな。手を抜いてはいなかったが、あくまで"出した手の内"でだ。恐らくはまだ切っていない手があると見るべきだろう。それを加味した上でオレが評価するなら……アリだ。限定条件下でサーヴァントを呼び出す破格の能力もあるし、概念付与に関しては……アウラの方が詳しいだろうが、出立前に評価していた事を考えるとそれなり以上はできるのだろう。そもそも戦えるキャスターというだけでも戦闘面ではアンデルセンよりマシだ」
それだけ聞くと殿下は満足したように微笑み、次いで別の質問を投げ掛ける。
「見たところアヴェンジャーは倒されたようだが、誰がやった? ルール上白夜叉は参加できないだろう。そうなると彼女のサーヴァントか?」
「ああ、それは━━━」
「"
「……ふむ?」
「"名無し"が倒したわ。サーヴァント持ちよ」
「……それと殿下、力が削がれていたとはいえオレと互角以上に競い合った猛者もいた。これはあくまでオレの勘だが……間違いなく我々の大きな壁になるだろう」
「ほう、マハーバーラタの大英雄カルナをしてそこまで言わせるか。いいぞ、俺も興味が出た」
興味深そうな笑み。暫くそのまま"ノーネーム"に関しての談義で盛り上がったりもした。
「ああ、そうだ」
やがて殿下が思い出したように話を変える。
「お前達が誕生祭に出掛けていた一週間のうちにこちらも色々進展があってな。中でも大きいのはアレの解析がかなり進んだ事だ」
「アレが、か」
殿下とカルナの間でだけ勝手に話が進む。それが気に食わなかったアリスはむっとしながら食い下がる。
「殿下、カルナ。私にわからない言葉で会話をしないで頂戴」
「ん、ああすまない。アレというのは三年程前、聖杯戦争の開催を告げられたのとほぼ同時期に発見された物でな。調べれば調べる程面白い事がわかっていく」
殿下がアウラの魔術で小さく複製させたそれの模型を取り出す。
「……何これ? 丸いわ」
「強大な魔術炉心である事以外わからない事だらけだったのだが、つい最近になって唐突に解析が進んでな」
殿下はマイペース気味に語り、模型をバラバラに分割して異なるカタチに組み上げていく。
「まずは用途がわかった。次に名前が判明した。そして最後に、面白い事が浮き彫りになった」
わざと答えをはぐらかそうとする殿下に少しイラッと来る。アリスは無言でいいからさっさと進めろと目で言うと殿下は笑顔を崩さずにそれに応えて組み立てる速度を速める。
「コイツの名前は"八一号聖杯爆弾"。三年前唐突にこの世界に現れた、"オリジナルの聖杯"だ」
再構築されていた球状の物体━━━爆弾は丁寧に、金色の杯へと姿を変えていた。
ここから聖杯戦争の始まりや本作のジャックにも着眼していきます。従って登場キャラもポンポン増えます。
では、以前から言っていた章末のサーヴァントマテリアルもご覧くださいませ。