Fate/Problem Children 作:エステバリス
三章ですよ三章! ここからジャック以外にもサーヴァントが活躍したりしなかったりする三章です!
くえすちょんわん 語り部必死に、韻を踏む
事の始まりは、一つの杯を巡る英傑達による戦争だった。
その杯は伝承に在るが如く、あらゆる願望を成就させる万能の器。
七騎の英傑と七人の魔術師はそれを求めて利害関係を結び、戦った。
それが、サーヴァントとマスター。箱庭の聖杯戦争のモデルになった、人が神秘に至るための手段であった。
そしてそれは同時に、箱庭の聖杯戦争における致命的な欠陥でもあったのだ。
ワタシはここに記そう。ワタシの知った二つの聖杯戦争。きっと門外不出になってしまうであろう、真実の構造。
いやはやそれにしても、神々の思いつきには困った物だ。その分子供に読み聞かせる子守唄には、いいアクセントなのだが。
◆◇◆
とある暗がりの中、ジャックは悩ましげに足下の印を眺めていた。
バツ印。目を凝らしてよく見ると多くある別れ道の足下と壁には全て同じ印と塗り潰されたような跡が着いていた。
(えっと……これでぜんぶ。さっきのおじさんは「ちゃんとしたクリア方法が存在するゲームだから安心するといい」って言ってたから……)
もう一度ゲームルールを読み直そう。そう思い至った彼女はポーチの中にクシャクシャにして放り込んだ"契約書類"を再確認する。
『ギフトゲーム名"征服王の迷宮"
プレイヤー
・ アサシン
ホストマスター
・ ロード・エルメロイⅡ世
クリア条件
・ 迷路の走破
敗北条件
・ 制限時間(二時間)の経過
・ 上記の勝利条件を満たせなくなった場合
禁即事項
・ プレイヤーは壁の破壊をしてはならない
・ 途中乱入して来るもの、障害物は攻略する必要がある
・ プレイヤーが死亡してはならない
宣誓
上記を尊重し、誇りと御旗の下、"ノーネーム"はギフトゲームに参加します
"エルメロイ家"印』
一目ゲームルールを見ればただの迷路ゲーム。そしてこの通りゲーム盤もただの迷路。なのだが……
(これじゃあ迷路じゃなくて迷宮だよね。迷路って書かれてるからぜったい出口はあるはずなんだけど)
迷路と迷宮には似ているようで明確な違いがある。前者が入り口、出口共にあり、後者においては入り口のみしかないという点だ。迷宮の突破、というものだとするとそれはそれで面白いのだが。
右手法、トレモー・アルゴリズム、オーア・アルゴリズム。思い付くあらゆる方法を試したがどれもダメだった。
では視点を変えよう。迷路と迷宮の違いに答えがないのなら文面だ。
例えば走破。普通はこういう場合、走破というよりは突破、脱出、と言うべきではないか。
脱出は危険な場所、状態から抜け出す事。プレイヤーが死亡してはならないという一文からすると、確かに本質的な意味で危険の存在しないこの状況で脱出は似つかわしくないのかもしれない。
次に突破。困難や障害を突破する事。一見間違っていないが、これは突き破るという行為による突破だ。その向こう見ずな攻略は壁を破壊するという行為に繋がりかねない。
ならば、走破はどうだ? 走破は突破とは意味合いが同じだが、それは突破のような問答無用なものとは違い、予定通り走り抜ける事を言う。
つまるところこれは、予定通りに攻略しろという事か。ルール違反は絶対ダメなようだ。
それにまだある。ゲーム名は迷宮とあるが、クリア条件は迷路となっている。つまるところは、ゲーム開始時には迷宮、ゲームクリアをしている時には迷路に変貌していると捉えればいいか。
他にはなにがあるか? ゲーム状況には何もないが、何もないが故に態々征服王という名を使うという理由があるのだろうか。
征服王。この異名に引っ掛かる名前は二つとない。
イスカンダル、あるいはアレクサンドロスⅢ世。世界的にも高名な英雄であり、様々な逸話を持つというどっかの小説とかの主人公みたいな偉人だ。
例えば、師に高名な哲学者アリストテレスを持ち、彼の死後エジプトに一時代を築いた救世王プトレマイオスⅠ世は彼の学友であると同時に彼の臣下であった。武勇伝も枚挙に暇が無い。有名な話はゴルディアスの結び目という━━━
「━━━あっ」
そこで気付いた。ゴルディアスの結び目とは"難題を一刀両断に解くが如く"のメタファーとして有名である。フリギアという地で牛車に乗って現れた者が王となる、という予言によって現れた農民ゴルディアスが王として迎え入れられた。その際に「この紐を解いた者が王となる」として荷車に結ばれた紐の事だ。
征服王イスカンダルもそれに挑み、はじめこそ普通に解こうと思ったもののやがて痺れを切らして一刀両断したというものだ。
これに壁の破壊を禁止するルールと障害物は必ず攻略せよというルール。これらを照らし合わせると見えてくる答えは……
「ゴルディアスの結び目みたいなものをこわせばいいのかな」
倫理は無くともサーヴァントなのだから知識はある。常識がなくとも思考する力はある。それがジャック・ザ・リッパーというサーヴァントだ。
そしてこの迷宮はくまなく探したのだから、ゴルディアスの結び目に相当する物にも検討はついている。そもそも、荷車なんて怪しい物にチェックをつけない方が変なのだが。
さて、制限時間も短くなってきた。急いで実行に移さねば。
暫く走って見つけた荷車の紐を迷わず斬る。すると荷車が突然動きだし、壁を突っ切って破壊して行った。
「………」
ちょっと想像していたのとは違う答え合わせに唖然としていたが、すぐに気を取り直して荷車を追う。
出口は程無くして見えてきた。そこには今回のゲームのホストマスターである男性、ロード・エルメロイⅡ世が待ち構えていた。
「ふむ……少し遅かったが、概ね予定通りだな。ご苦労だったなアサシン。ゲームクリアおめでとう」
「ん」
ロード・エルメロイは煙草を吹かしながら事務対応のようにゲーム結果を記録すると彼はすぐに壊れた迷路の復元をする。
「おじさん、それどうやってるの?」
「む……これか。これは魔術というよりは数学の領域なのだが、入射角や速度といった物を設定して修復方法も構築。パターン化しているのだ」
「???」
「……わからないならいい。難しい事を言い過ぎたな、すまない」
ロード・エルメロイはギフトカードから赤いマントを取り出す。それを少し躊躇いつつもジャックに手渡した。
「改めておめでとう、アサシン。これがゲームクリアの報酬、征服王イスカンダルのマントだ。ゼウスの血族である彼の王の力を纏ったこのマントは彼の権能のほんのごく一部を振るう事ができる」
「けんのー?」
「うむ、ごく身近な例を挙げれば天候操作だな。天候が安定する箱庭においてはあまり意味が無いようにも見えるが、能動的に雨を降らせる事が出来れば水には困らないだろうし、東側では天候の傾向で栽培し辛い植物を育てたりも出来るやもしれん」
「……すごいってこと?」
「まあそうだな。詳しくはミスター・ラッセルに伝えておこう。キミはそう深く考えずに、コミュニティの為になる上に戦闘にも活用出来る便利なギフトを手にしたと思えばいい」
なんだかあまり釈然としなかったが、ひとまず頷く。
およそ二時間ぶりに見た太陽の光はどちらかと言うと暗がりの方が慣れたジャックには眩しかったようで目を細めてゲーム盤から離れていく。
そもそも、こうなった理由を説明するには少しばかり時間を遡る必要がある━━━
◆◇◆
それは"
「━━━という訳でギフトゲームに関しては追い追い。コミュニティの現状をお伝えしますね。黒ウサギ、リリ。お願い」
威勢良く返事をしたリリはピンと背筋を伸ばし、はきはきと現状報告を始めた。
「えっと、備蓄に関しては最低限の生活を営む分ならば向こう一年は問題がありません」
「へえ? 急になんで」
「一ヶ月前の"黒死斑の魔王"の階級が推定五桁と認定されたからです。"
パタパタと尻尾を振り回して黒ウサギのように喜ぶ。
隣に座るレティシアは眉を潜めてそっと嗜めた。
「リリ、はしたないぞ」
「あっ、ご、ごめんなさい……」
顔を真っ赤にして尻尾を忙しなく動かしてしょんぼりするリリ。
耀はそれに苦笑いを浮かべながら話の続きを促す。
「"推定五桁"って事は本拠を持たないコミュニティだったの?」
「はい。本来ならたった三人のコミュニティが五桁認定される事はそうないみたいです。ランサーとキャスターはどうやら利害の一致で共闘していただけだったようですし、ペストが神霊だった事やゲーム難易度等も考慮したとのことです」
初めて聞く箱庭基準に十六夜十六夜は興味深そうな視線を向ける。
「へえ? 難易度も桁数に関するのか」
「YES! ギフトゲームは本来神仏が恩恵を与える試練そのもの。箱庭ではそれを分かりやすく形式化したものをギフトゲームと呼び、難易度は己の格をそのまま表すのですよ」
━━━箱庭のコミュニティの格付けは強力な個人が幾らかいる程度では上がるものではない。
最下層の七桁を除けばそれぞれの階層に求められる条件があるのだ。
「本拠の階級を上げる方法は数多ありますが、分かりやすい一連を挙げるなら━━━"六桁の外門を越えるには、フロアマスターの提示した試練をクリアしなければならない"、"五桁外門を越えるには、六桁の外門の三つ以上勢力下に置いてその旗を飾った上で百以上のコミュニティが参加するゲームのホストを勤める必要がある"……とまあ、こんなところでしょうか」
前者は参加者としての力を求められる。
後者は主催者としての力を求められる。
即ち、六桁と五桁の魔王とでは使用する"
ピッと指を立てた黒ウサギは何時になく真面目な表情で補足をする。
「六桁の魔王と五桁の魔王とでは力量差はまさに雲泥の如くでございます。六桁の魔王ならば力ある個人や組織力さえあれば十分に攻略可能ですが、五桁以上はそうもいきません。それらは"主催者"として認められた強豪。"黒死斑の魔王"もルーキーとはいえ太陽の星霊を封印し、太陽神と一体化したカルナ様もゲーム参加の為に弱体化せざるを得なかった強力なものでした」
十六夜のそれに真剣な声音で同意をする。それほどまでに"黒死斑の魔王"は強力なゲームを持っていたのだ。
リリは本題に戻るように顔を上げた。
「えっと、それでですね。五桁の魔王を倒す為に依頼以上の成果を上げた十六夜様達には金銭とは別途に、恩恵を授かる事になりました」
「あら、本当なの?」
「YES! これについては後程通達があるので、ワクワクしながら待ちましょう!」
「それじゃリリ。最後に農園区の復刻状況を」
ジンが話を振った途端、リリはこれまでない位に顔を輝かせて報告を始めた。
「は、はい! 農園区の土壌はメルンとディーンが毎日頑張ってくれたおかげで四分の一は既に使用可能です! 田園の整備にはもう少し時間がかかるかもですが、葉菜類、根菜類、果菜類を優先して補えば数ヵ月後には成果が期待できると思います!」
ひょコン! と狐耳を立てて喜ぶ。荒廃しきった土地を一ヶ月で復興させられるとは夢にも思わなかったのだろう。
彼女の姿を見て飛鳥は得意そうに髪を掻き上げた。
「当然よ。メルンとディーンが休まず頑張ってくれたのだもの。復興なんてあっという間だわ」
「そうです、そこで本題です! 復興の進んだ農園区に特殊栽培の特区を儲けようと思うのです」
「特区?」
「YES! 有り体に言えば霊草・霊樹を栽培する土地ですね。例えば」
「うどんげとか?」
「マンドラゴラとか?」
「マンドレイクとか?」
「マンイーターとか?」
「YES♪ っていやいやいや最後のおかしいですよ!? "
「黒ウサ、おばあちゃん?」
「断じて違います!」
「……そう。なら妥協して、ラビットイーターとか」
「なんですかその黒ウサギピンポイントな嫌がらせは!?」
うがー! と今日もキレキレのツッコミを披露する黒ウサギ。
レティシアは全然話が進まない事に肩を落とし、率直に告げた。
「つまり主達には、農園の特区に相応しい苗や牧畜を手に入れて欲しいのだ」
「つまり、山羊や牛?」
「そうだ。都合がいい事に、南側の"
成る程、と頷く問題児&幼児。黒ウサギは"龍角を持つ鷲獅子"の印璽の押された招待状を開き内容を簡単に説明する。
「今回の招待状は前夜祭から参加を求められたものです。しかも、旅費や宿泊費は前回とは違い完全向こう持ち! "ノーネーム"とは思えないほど破格のVIP待遇なのデスヨ! 場所も南側屈指の景観を持つ"アンダーウッドの大瀑布"! 境界壁に負けない迫力の大樹と美しい河川の舞台! 皆さん大喜び請け合いです!」
黒ウサギがここまで強く推すのも珍しい。ロマンチストの十六夜でなくとも気になるというものだ。
「へえ、"箱庭の貴族"の太鼓判付きとは凄いな。さぞかし壮大なんだろうなぁ……お嬢様はどうだ?」
「あら、そんなの当たり前じゃない。だってあの"箱庭の貴族"がこんなに推しているのよ。目も眩む神秘的な場所に相違ないわ。……ねえ、春日部さん?」
「うん。これでガッカリない場所なら……黒ウサギはこれから"箱庭の貴族(笑)"だね。ね、ジャック」
「黒ウサは、もうダメダメだと思うの」
「"箱庭の貴族(笑)"!? なんですかそのお馬鹿っぽいネーミング!? ていうかジャックさん何を仰ってるんですか!? 我々"箱庭の貴族"は由緒正しい貞潔で献身的な貴族で御座います!」
「献身的な貴族っていうのがもう胡散臭いけどな」
「びんぼーきぞくだしね」
ヤハハ、と笑う十六夜と笑い方まで十六夜に似てきたジャックがからかうと、黒ウサギは拗ねたように頬を膨らませてそっぽを向いた。
十六夜達のやり取りに苦笑いを浮かべたジンは、コホンと態とらしく咳払いをして注目を集める。
「方針に関してはここまでです。……ですが一つ、問題が」
「問題?」
「はい。この収穫祭なんですが、二十日程に渡って開催されます。前夜祭を入れて二十五日。流石に約一ヶ月もコミュニティに主力が離れるのはマズいですし、そこでレティシアと共に一人か二人残って欲し
「「「「嫌だ」」」」
即答だった。四人揃って同じ答えだった。おかしい、ジャックは少なくとももう少し御し易かった筈なのだが。十六夜さんに本格的に毒されて来たのだろうか。
しかし、それで引いては以前のジンとは変わらない。コミュニティが力をつけ始めた今だからこそ、防備もしっかりせねばならない。"フォレス・ガロ"のような子供を拐って人質にする輩や魔王が来ないとも限らないのだから。
ジンはテーブルに身を乗り出して彼らに提案をする。
「でしたら、せめて日数を絞らせてくれませんか?」
「というと?」
「前夜祭を二人、オープニングセレモニーからの一週間を四人。残り日数を三人……コミュニティの守りはできるだけ薄くはしたくないですが、このプランでどうでしょう」
むっ、とお互いの顔を見合わせる問題児&幼児。
暫し見合わせた後、耀が質問を返す。
「そのプランだと、一人だけ全日参加になるよね? それはどうやって決めるの?」
「それは━━━」
当然席次順、と言おうとするが、それが箱庭の常識であっても彼らの常識とは限らない。
どうやって説明しようかと頭を捻っていると、十六夜が身を乗り出して提案した。
「なら前夜祭までの期間で誰がどれだけ行くか、ゲームで決めるのはどうだ?」
「ゲーム?」
「あら、面白そうじゃない。どんなゲームにするの?」
「そうだな……"前夜祭までに最も多くの成果を上げた者が勝者"。これでどうだ? 期日までの実績を比べ、収穫祭で一番成果を挙げられる者を優先する。……これなら不平不満はないだろう?」
十六夜の提案に三人は顔を見合わせる。それなら条件は五分五分だ。
三人は同時に頷き承諾した。
「わかったわ。それで行きましょう」
「うん。……絶対負けない」
「わたしたちもがんばるよ!」
不敵な笑みを見せる飛鳥とやる気を見せる耀、そして両手をグーにして胸元に持ってくるジャック。
こうして問題児三人と幼児一人は、"龍角を持つ鷲獅子"連盟主催の収穫祭参加を掛けてゲームを始めたのだった。
ジャックが段々おにぃさんに似てきました。子供は身近な歳上を真似るものですね! そのうち人理焼却ビーム染みたものぶっぱしたらどうしましょう(するわけがない)
以下茶番トーク
終章ピックアップ発表時
ぼく「マーリンピックアップだと? これはお正月に翁が来るな……石を貯めよう」
↓
お正月
ぼく「えっ お正月のピックアップは宮本武蔵なのか!!」
運営「ああ……しっかり引け」
ぼく「和服チョロあやねる欲しい……」
運営「有償ガチャもいいぞ!」
ぼく「………スッ(魔法のカード)」
運営「遠慮するな 今まで貯めた分もしっかり回せ……」
ぼく「武蔵ちゃん出た……うめ、うめ……」
運営「ただ今より山の翁ピックアップを開始する!!」
ぼく「えっ」
運営「このガチャを体で回せ! 今ピックアップしているのはプレイヤーの人気キャラにしてCVジョージの山の翁だ! 心配するな 計算上 再ピックアップもあり得る! ただし……いやしくガチャを回したヤツ程翁を引けない苦痛は続く!」
ぼく「翁出ない」
じいじ「爆死の羽 金を絶つか」
運営「まさか死ぬとはな……」
運営2「計算以下の課金力の落ちこぼれだ いずれ爆死する運命だ……」