Fate/Problem Children   作:エステバリス

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前回、信長と共闘していた女性が誰なのかわかりづらくしてしまった事、誠に申し訳ありませんでした。

彼女は清少納言です。

一先ずはそれについての謝罪をさせていただきました。




らすとくえすちょん 嵐の中で動き出す運命

 

 

─────有体に言えば、地獄絵図だった。

 

虚空を仰ぐ。少女の見上げた”上”には、空などありはしなかった。故に、”虚空”である。

 

「─────」

 

黒く濁った雪を踏みしめる。道には人などおらず、ただただ黒い何かが”上”を覆う。

 

この世の中に救いなど無ければ、解脱した先にも救いなどありはしない。解脱した末にあるのは、ネズミに食い潰される己の身体だけ。

 

ギシ、と何処かで何かが軋む。殺風景な世界に女の嬌声が響き渡る。

 

少女はその声の意味を理解してはいない。いや、仮に理解していてもそれは今の少女には何の感情も与えない、些末な日常音に過ぎない。

 

此処は倫敦(ロンドン)。時代が生んだ魔の霧が蔓延る死界魔霧都市(ミストシティ)

 

◆◇◆

 

”アンダーウッド”フィル・ボルグの丘陵。

 

十六夜とジャックは騒動が収まり日も沈み始めた頃に”アンダーウッド”に到着していた。

 

「なるほどな、清流と新緑、大自然の都。北側とは面白いくらい真逆だな。出来過ぎなくらいだがいい具合だなあ。抱きしめてやりたい。ていうか抱きしめに行っていいかレティシア?」

 

「構わんがジャックも連れて行ってくれよ。色々なものを見せてこの子に世界の広さを教えてやってほしい」

 

「OKOK、解ってるよ。さあ行くぞジャック」

 

「うん!」

 

そう言うと十六夜はジャックを背におぶって走り出す。人をおぶっているという都合速度を抑えているが、それでもジェット機もかくやという速さで走る中ジャックはしっかりと風景を目に収める。

 

「おにぃさんおにぃさん! あっち! お水がすごい!」

 

「おお、ありゃあ見事な大瀑布だな。その辺でひと眠りしてみるか?」

 

「きもちいいかな?」

 

「そりゃやってみないとわかんねえな。だから寝てみよう」

 

十六夜が手ごろな水樹に寝そべるのに倣ってジャックもこてんと寝転がる。

 

不思議な弾力だった。水分を多く含んだ葉のベッドは心地良い弾力で身体を押し返す。まるでウォーターベッドのような感触だった。別に十六夜はウォーターベッドで寝た事はないのだが。

 

「んぅ……きもちぃ……」

 

寝そべったジャックはあっという間に葉に身を任せてうとうととし始めていた。

 

「いいシチュだ。酒の肴一つあれば最高だが、まあそれは仕方ない。黒ウサギ辺りがいれば巨人族の話でも聴いていたんだが」

 

まあ今日は空だけで十分だな、と心の中で付け加える。なにせ空が綺麗だ。自然に溢れてヒトの文明の英知が限りなく少ない南側から見る空の風景はまさしく絶景だった。

 

「ジャック、起きてるか?」

 

「んぅ……?」

 

「見ろよあの空。満天の星空だ。デネブ、アルタイル、ベガ。夏の大三角っていうんだ」

 

「さんかくぅ……?」

 

寝ぼけながら十六夜の差す方に目を向ける。すると彼女はみるみるうちに半目だった顔を子供らしいものに変えていった。

 

「なにあれ! なにあれおにぃさん! すっごく綺麗だよ!?」

 

「おお、浪漫が解ってるじゃねえか。昔はよくこうやって星見てたっけか」

 

以前は暇を持て余していたためよく見ていた。なるほど、”ペルセウス”の旗印が降ろされた時から思っていたのだが、箱庭でも星の位置は向こうと変わらないようだ。

 

最近は周囲とこの小さな妹の事で頭がいっぱいでなかなか空を見る暇も無かった。

 

まったく、以前の乾いた生活とは無縁な事柄であった。

 

(鈴華と焰は元気にやってるだろうかな。ふてぶてしく生きてるんだろうが、焰は俺がいなくなる前に事故ったから心配ではあるな)

 

似つかわしくない郷愁をしながら目を瞑る。

 

するとすぐにがさ、という音が聞こえたため振り向く。

 

「……ん? どうしたんだ黒ウサギ」

 

「どうしたもこうしたもないですよ。十六夜さんとジャックさんがなかなか来ないから心配して探しに来たんですよ。”主催者”への挨拶は大事な事なんですよ?」

 

「ああ、そりゃ悪かったな。まあそういうなよ。敵情視察も大事だからな」

 

「敵情視察、ですか?」

 

黒ウサギの問いにおう、と答える。

 

「巨人族じゃねぞ。この”アンダーウッドの大瀑布”だ」

 

へ? と首をかしげる黒ウサギ。十六夜はその反応を待っていたとばかりに笑う。

 

「絶景っぷりじゃ”世界の果て”に劣るが、ここまで整地された自然の風観は俺も流石に見たことがねえ。なあ黒ウサギ、ジャック。俺達も()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「─────うん! うん!」

 

「えっと、つまり十六夜さんは”地域支配者(レギオンマスター)”としてこの”アンダーウッド”を超える舞台を整えるという事ですか?」

 

「そうだ。なにも二一〇五三八〇外門に限った話じゃない。領土を拡大すれば出来る事も格段に増える。ギフトだって集まりやすくなる。……今はまだ農地を整えるとかそういう程度だが、聞けば”アンダーウッド”は十年でここまで復興したそうじゃねえか。目標としてはこれ以上ないくらいだろ?」

 

ヤハハハハ! とすっかり板についた笑い声をあげる。ひときしり笑うと黒ウサギに向かって振り向き、告げる。

 

「満天の星空に旗を掲げ、地上で最も華やかなコミュニティ。これだけのコミュニティが出来上がったら誰の耳にも届くだろ? 例えばいなくなったヤツらとかな」

 

「─────っ……!」

 

「─────だが、まずは巨人族だ。目標が早々につぶれちまったら敵わないだろ? ”階層支配者”就任なんかより早く決着をつけてやる」

 

「ふふ、なんとも十六夜さんらしいですね。ならばこの黒ウサギも巨人族の殲滅に一役買うと致しましょう!」

 

「わたしたちもがんばる!」

 

二人もシャキっと答える。それを見て気をよくした十六夜は軽薄に笑う。

 

「そんじゃ明日には三人でカチコミだな。英気でも養おうぜ」

 

ゴロン、と再び寝転がる。

 

黒ウサギは彼の横に座ると申し訳なさそうに呟く。

 

「え、えっとですね十六夜さん。話がひと段落ついたところで悪いのですが、実はヘッドホンの件でお話が……」

 

「ん? なんだ、春日部の三毛猫が自白でもしたのか?」

 

へ? と素っ頓狂な返事をする黒ウサギに気を良くして毛玉の入ったボトルを取り出す。

 

「こんな解りやすい証拠があったんだ。これじゃ探偵気取りすらできねえ。てっきり春日部が差し向けたんだと思ってもみたが……こんなあからさまな証拠を残すようなヤツじゃない。だったら単独犯かってな」

 

そう言うと彼はボトルを投げる。

 

黒ウサギはそれを慌ててキャッチするとかあれの顔色を窺うように話し掛ける。

 

「……もしかしなくても怒ってますか?」

 

「いや全然? レティシアとジャック、それからリリには言ったが知り合いが作っただけの一銭の価値もないヘッドホンだ。俺はただ広告塔してただけだしな」

 

「は、はあ……」

 

「それよりだ。手紙に書いてあった例の仮面騎士の事だ。そっちのが気になるね。で、強いのか?」

 

「それはもう、お強いですね」

 

「へえ……」

 

黒ウサギが珍しく即答で答えるのでますます興味が湧いてくる。

 

「この収穫祭で十六夜さんを倒せ者がいるのだとしたら、それは彼女において他にないでしょう」

 

黒ウサギの最大級の賛辞を受ける仮面騎士に想いを馳せながら星空を見上げる。

 

「そうか……ならその件に関しては巨人族に感謝しねえとな。お陰でここにいられる期間が増えたんだ。ましてやそんな面白いヤツがいるなら是が非でも相手になってもらわねえとな」

 

「感動を求めて、で御座いますか?」

 

「そうさ。それがないと人間は腐ってっちまう。チャンスがあればそれを補填しないとな」

 

ヤハハ! と笑う十六夜。そろそろ話しが長くなってきて退屈になっていたのか、ジャックもそれに便乗してやはは! と笑う。

 

そして黒ウサギは悪影響が出てる……と頭を抱え、静かに微笑む。

 

「……昔、貴方と似たような事を仰る方がいらっしゃいました」

 

「へえ? そりゃなかなか見どころのあるヤツだ」

 

「ええ、何といっても我々のコミュニティの元参謀でしたから”主催者”がメインの方だったのですが、決まって言っていました。『主催者は参加者を感動させるのが義務だ。金やチップの縁はそこまでで終わる関係だけれど、感動は消えない。何故ならば、それは生きる糧なのだから!』と」

 

でも人気もあったんですよ~、と楽し気に語る黒ウサギ。十六夜はそんな彼女を見て先ほど以上に興味を惹かれたような発言をする。

 

「……へえ? 女だったのか?」

 

「YES! レティシア様とはまた別ベクトルの麗しいブロンドだったのです! とても魅力的な方でした」

 

「………………ふうん? ソイツは黒ウサギと仲良かったのか?」

 

「仲がいいもなにも、黒ウサギをコミュニティに保護してくださった方なのです。見た目はジャックさん程度の頃でしたかね。無類の子供好きでして、快活で聡明で……黒ウサギの憧れのお方でした」

 

黒ウサギは立ち上がり、満天の空を見上げて確かに笑う。それは強がりの作り笑いではない。”彼女”を信じているからこそ出せる、心からの笑顔だった。

 

「何があっても、あの方だけは絶対に無事です。不思議とそんな風に思わせてくれる方でした。だからこの窮地にこそ黒ウサギはコミュニティの助けとなり、恩返しがしたいのです。……考えれば考えるほど十六夜さんにそっくりな方です」

 

ムンッ、と力を入れる黒ウサギ。しかし当の十六夜は何処吹く風といった風に視線を空に移していた。

 

「……って、聞いていましたか十六夜さん? この黒ウサギ一世一代の告白を」

 

「……いや、悪い。アルタイルは何処だったかなって」

 

「もう、十六夜さんったら。らしい返事ですがまったくらしくないですね。アルタイルは鷲座の主星で─────」

 

そういって指をさした先には、なにもなかった。アルタイルや鷲座どころか、《《星が一条たりとも存在しなかったのだ》》。

 

え? と辺りを見回す間もなく、指をさしていた場所に鷲座が現れた。

 

「……なんだ、今の?」

 

見間違えでなければ星が一瞬だけ一斉に姿を消した。

 

そして、異変は伝搬するように連鎖する。

 

─────目覚めよ、林檎の如き黄金の囁きを。

目覚めよ、四つの角のある調和の枠よ。

竪琴よりは夏も冬も聞こえたる。

笛の音色より疾く目覚めよ、黄金の竪琴よ────!

 

それを聞いた瞬間、十六夜はハッとなって叫ぶ。

 

「この唄……マズい! 黒ウサギ、巨人族から奪った”黄金の竪琴”は何処だ!?」

 

「そ、それでしたらサラ様が保管を」

 

「破壊しろ! 今すぐにだ!! あの竪琴は─────」

 

『─────如何にも。貴様の想像通り、あの竪琴は”来寇の書”に記されし”トゥアハ・デ・ダナン”の神格武器。敵地にあって尚、その音色を奏で続ける神の楽器だ』

 

低く、老齢を思わせるしわがれた声。しかし発信源は解らない。

 

「おにぃさん……この声、なんかやだ」

 

三人は背中合わせになって警戒するが、声はその姿を嘲笑うように話し掛ける。

 

『そう急くな。”箱庭の貴族”とその同志、そしてそのサーヴァントよ。今宵は開幕だ。まずは─────讃えるがいい─────この狂宴の主賓の姫君、”ドラキュラ”─────系統樹の守護者にして系統樹の違反者。”魔王ドラキュラ”であるッッ!!!』

 

─────刹那、夜空が裂ける。晴れ晴れとしていた夜空は突如として暗雲に飲まれ、美しく光る星々はあっという間に姿を消した。

 

「まさか、あれが─────」

 

『そう、神話にのみ息衝く最強の生命体、龍の純血種だ!!』

 

「─────GYEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

その雄叫びは”アンダーウッド”を震撼させた。

 

龍の頭部は姿を見せているものの、その全長の多くは()()()()()()姿()()()()()()

 

「龍……これが、龍か!」

 

十六夜はかつてない威圧感に戦慄した。巨龍の現れた星空の歪みの先には宙を浮く城の姿が見える。

 

巨龍が吼える。それにあわせて落雷が降り注ぎ、居住区は瞬く間に阿鼻叫喚の景色に変貌し、それに拍車をかけるように人の悲鳴が聞こえる。

 

「こ、こんな時に巨人族まで!?」

 

「どうなってるんだよ! これじゃまるで()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

罵声と指示が飛び交う。巨龍の雄叫びはますます大きさを拡大させていくと、巨龍の鱗が大地に降り注ぐ。

 

「あれは……! 鱗から新種を産み落としています! まさか本当に純血の龍だというのですか!?」

 

「まごまごしてる場合か! さっさ降りるぞ!」

 

「黒ウサ、考えるより動こ」

 

「あ、は、はい!」

 

二人に一喝されて我に返る黒ウサギ。こんな時常にクール、あるいはマイペースでいられる十六夜とジャックは心強い。これが普段もう少し抑制されないかと悩みもするが、それこそ今は余計な事だ。

 

大樹の幹から飛び降りようとした三人はしかし、地下都市から高速で飛び抜けていくローブの女性と、その腕に捕えられた─────

 

「レ、レティシア様!?」

 

「く、黒ウサギ……十六夜、ジャック……!」

 

混濁した意識のレティシアは絞り出すように三人に声を向ける。

 

空を見上げた彼女はすぐさま状況を理解したようで、すぐにでも消えてしまいかねない意識を必死に抑えつけて喋る。

 

「じゅ、十三番目の……」

 

「え?」

 

「ッ……十三番目だ……! ”十三番目の太陽を撃て”……!! それが、このゲームをクリアする唯一の鍵だ────!!!」

 

断末魔の声にも似たそれを最後に、レティシアは巨龍に飲み込まれて光と化した。

 

そしてすぐ、”アンダーウッド”の空を黒い羊皮紙が覆いつくした─────

 

 

 

『ギフトゲーム名”SUN SYNCRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”

 

・プレイヤー一覧

 ・獣の帯に巻かれた全ての生命体。

 ※但し獣の帯が消失した場合、無期限でゲームを一時中断する。

 

・プレイヤー側敗北条件

 ・なし(死亡も敗北と認めず)

 

・プレイヤー側禁止事項

 ・なし

 

・プレイヤー側ペナルティ条項

 ・ゲームマスターと交戦し全てのプレイヤーは時間制限を設ける。

 ・時間制限は十日毎にリセットされ、繰り返される。

 ・ペナルティは”串刺し刑””磔刑””焚刑”からランダムに選出。

 ・解除方法はゲームクリア及びゲーム中断時にのみ適用。

 ※プレイヤーの死亡は解除条件に含まず、永続的にペナルティが課せられる。

 

・ホストマスター側勝利条件

 ・なし

 

・プレイヤー側勝利条件

 一、ゲームマスター”魔王ドラキュラ”の殺害。

 二、ゲームマスター”レティシア・ドラクレア”の殺害。

 三、砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に掲げよ。

 四、玉座に記された獣の帯を(しるべ)に、鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下にギフトゲームを開催します。

                               ”     ”印』

 

 

 

「ッ……魔王のゲームだと!? どういう事だオイ、レティシアは”元”魔王じゃなかったのかよ!」

 

「そ、それは黒ウサギも存じ上げませんが……!」

 

二人が言い合っている間、ジャックは静かに宙に浮かぶ城を見ていた。

 

何故かは彼女にも解らない。しいて言うのであれば直感か。ジャックは”あそこに誰かいる”と感付いていた。

 

その違和感、直感に注視しすぎてその他の事が目に入らなかった─────

 

だから、彼女の真上に巨龍の鱗が落ちてきている事に、彼女は全く気付いていなかった。

 

「クソッ、とりあえず今はこの状況をなんとか─────ジャック!?」

 

それに十六夜が気付いた時にはもう遅い。いくら規格外な身体能力を持つ彼であろうと、物事を認識するより早く正確な思考、行動に移せるなどありえないのだから。

 

「─────う?」

 

潰される。そう思った。

 

だがそれは、一筋の風と共に否定された。

 

「─────ふっ……ったあああ!!」

 

突如現れた和服を纏った男性がジャックを抱えると、そのまま流れるように鱗を避ける。

 

ジャックのいた場所はその直後に鱗に潰される。

 

あまりに突然の事で少しだけついていけなくなっているジャックに男は関係なく話し掛ける。

 

「危機一髪、でしたね……大丈夫でしたか?」

 

ジャックは彼の顔を見るだけで答えようとしない。

 

そんな二人に十六夜と黒ウサギが駆け寄る。

 

「も、申し訳ございません! ウチのコミュニティの者が」

 

「いえ、お礼には及びません。当然の事をしたまでです─────おや、貴方は」

 

男が向けた視線の先にいたのは十六夜だ。

 

十六夜もまた、あっ、と少しらしくない声を出す。

 

それもそうだろう。何故ならばこの二人は以前、出会った事があるのだから。

 

「……琥珀か?」

「ええ。その節はどうも。一先ず安全な場所まで行きましょう。この子の事もありますし─────」

 

琥珀がそういって再び視線をジャックに戻す。

 

ジャックは未だに琥珀を見据えたままだったのだが、しばらくしてまるで音階を奏でるように喋り出した。

 

「…………おかあさん?」

 

「「「…………は?」」」」

 

満場一致だった。

 

思わず十六夜がぷ、と笑いながらジャックの間違いを指摘しようとする。

 

「おいおいジャック。そいつどう見ても男だろ。女に見え─────」

 

そこで十六夜は言い澱んだ。何故なら彼もまた琥珀に一度同じ感覚を抱いたからだ。

 

まるで女みたいな事するな、と。

 

それは単なる見当違いかと見逃したのだが、同じ反応をした人間を見れば流石に十六夜も疑る。

 

そして、当の琥珀はというと─────

 

「……()()()()()()()() ()()姿()……!?」

 

本人のその言葉で、疑惑は確信に変わる。

 

─────コイツ、性別を擬態するギフトがある。

 

そう認識した瞬間、琥珀の姿が霞になった。

 

「なっ……!」

 

霞が晴れた先にいたのは、男らしい屈強な身体つきをしていた琥珀とは正反対の、桜色のハイカラな服を着こなす白髪の少女だった。

 

 






琥珀の正体は既存のFate/シリーズ登場キャラですが、当時の価値観における疑問点を追及していったところ、オリジナルのスキルが二つ追加されました。その一つが性別詐称という事です。これに関してはおいおい明かしていきますので。




茶番

学問神融解札(サイフナカ・メルトアウト)

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