Fate/Problem Children 作:エステバリス
今回は歯切れが悪くなりそうなので結構短め。最初のパート前回と都合させればよかったかなーなんて思いながら初投稿です(大嘘)
「さて、話を戻しましょうか。といっても私もあくまでクイーンに聞いただけの話ですので、実際に耳にした訳ではありません」
秘閃・ウサギ返しが炸裂した直後、フェイス・レスはさも当然といった風に話を再開する。そのあまりの変わり身の早さにはさしもの黒ウサギも脱帽モノである。
「時間も有意義に使うべきでしょうし詳細は省きます。”全権階層支配者”となったレティシア=ドラクレアはその際手にした権限と恩恵を利用して上層の修羅神仏に戦争を仕掛けようとしたそうです」
「レ、レティシア様がそのような事を……!?」
”ノーネーム”一同はそろって顔を見合わせる。普段温和な彼女が戦争を仕掛けんとしたという事がどうにも信じ難いのだろう。
「その戦争って……つまり、”魔王ドラキュラ”として?」
「いえ、そこまでは聞き及んでいません。ですが、その後戦争を阻止しようとした同族の吸血鬼達が革命を決起し、同族殺しの末吸血鬼は滅んだ、と」
「レティシア様が、同族殺しを……!?」
「はい。これに関しては当時を知るクイーンの言葉なので間違いないかと」
うっ、と怯む黒ウサギ。
同族での殺し合いとは即ち、コミュニティ間での殺し合いをしていたという事でもある。酷く沈鬱とした雰囲気に包まれた”ノーネーム”メンバーだったが、サラは成る程、といった表情で”
「そうか……第四の勝利条件である”玉座に記された獣の帯を
「……そうでしょうか」
「それ以外どう解釈すればいい。”獣の帯”、”砕かれた星空”といった抽象的なキーワードに比べて格段に解りやすい。
ペナルティを受け、いよいよ後の無くなった吸血鬼達は革命主義者Xを追い立てて殺し———」
「なんの解決にもならなかった訳だ
……ぬ、と不服そうに十六夜を見つめるサラ。
「いやいや、まだ解らんぞ。この革命主義者は生きていた、というオチも有り得る。なにせ純血の吸血種だ。不老で今も死んでいないという事だってある」
「じゃ、ソイツをこれから探して殺すか? この四つに分かれた地区でさえ恒星級の距離が開いた箱庭で、生死不明の吸血鬼一匹を探すか? 馬鹿も休み休み言え」
ぬぬ、と何も言い返せなくなる。やはり口で彼に勝つのはかなり難しいのだ。
彼は話し合いは終わった、と言わんばかりに立ち上がる。
「いずれにせよ情報不足だ。何から考察するにせよ決定打に欠ける以上ここで話しても仕方がない。
で、俺から提案だ。地上に残って巨人族から”アンダーウッド”を守る部隊とあの居城に乗り込んで直接クリアを目指す部隊。”龍角を持つ鷲獅子”連盟は退こう運搬を請け負うコミュニティもある。飛行手段も事足りる」
彼の提案を聞いたジンは即座に彼の発言をフォローするように言葉を付け足す。
「それにか……あの古城に連れ攫われた人達も心配です。もし仮に彼らがペナルティを受けているとすれば時間もないでしょう。多少強引と言われようがそちらの方向で話を進めるのが妥当かと。この続きはまた今度、情報が整ってから改めてという事で」
さり気なく、とはまったくいかなかったが同志を助ける為の口実作りもしっかりしておく事も忘れない。
サラもまたその意見を頭ごなしに否定せずコクリ、と快諾した。
「解った。精鋭を選りすぐり、二日以内に準備を整えよう。その時は申し訳ないが、両コミュニティ共加勢を頼みたい。
……それと、心ばかりのもてなしではあるが、両コミュニティには最高級の客室を用意してある。このような状況ではあるがせめて”アンダーウッド”を楽しんでいってくれ」
促され、全員は一斉に席を立つ。
これにて初日の攻略会議は終了。”ノーネーム”一同は主賓室に向かうべく、大樹の幹に作られた水のエレベーターを使ってゆっくりと下っていく。
その際十六夜はポツリと呟いた。
「……お嬢様はどう思う?」
「どう、って?」
「レティシアが魔王になって同志を虐殺したって話だ」
彼らしいストレートな質問。飛鳥もまた彼女らしさを崩さずにそうね、と呟く。
「昔の彼女なんて知ったこっちゃないわ。今のレティシアは、私達のよく知るレティシアは金髪の可愛いメイドさんでしょう? ならそれでいいじゃない。略奪されたままだなんて黙っていられない。
というか、それを言うなら貴方の大事な大事な妹にも同じ事が言えるわよ」
「……そうだな。全面的にその通りだ。俺も人の事言えねえわな」
……因みに、十六夜が聞いていた事はそういう事では無かったのだが。それはそれで面白いか、と思ったのと確かに倫敦の伝説的殺人鬼を妹的存在として甘やかしている自分がそれを言えたものでもないしそれ以上は言わない事にする。
「Yes!宿場に着き次第ギフトゲームの考察をしちゃいましょう!」
「ええ、春日部さんの事よ。どうせお腹でも空かせてるに違いないからさっさとクリアしましょう」
「え? ゲームの考察なら終わってるぞ?」
「「「は?」」」
唐突な告白。ジンは驚かず、呆れもせずじとー、と彼を見つめるだけ。
「えーっと、あの、常連さん? 貴方さっき議長に『情報少ないしさっさと諜報隊寄越すべき』みたいな事言ってませんでした?」
「うん? なんだ、そんな風に聞こえたのか。俺は『情報少なかったけど謎解き終えたしさっさとゲームクリアしようぜ!』っていう意味で言ったんだが」
ついでに救援部隊でも編成してくれたら嬉しいなー、なんて。その程度に。
確かに彼は『ゲームクリアの為の部隊』と言っていたが、まさか文字通りだとは思いもしなかった。
「んまあでも、誤解してるんならそれはそれで好都合だなー。ウチの可愛いメイドを何処ぞのコミュニティにくれてやるのは俺も嫌だしなー。もし仮にそんな事になったらそれこそ殺し合いだったわー」
白々しい事この上なかった。
キャロロはこの白々しい演技に一瞬目をパチクリとさせていたが、やがてスッ、と冷静になり
「……この件に関しては議長に報告を」
「何!? 全品五割引!? なんて気前の良さだ、俺達には絶対にマネできないな!」
「いやんする訳ないじゃないですか♪」
逆廻 十六夜はどこまでもあくどい男だった。
◆◇◆
吸血鬼の古城、城下。日差しをシャットアウトした事と雷雲の付近に点在する事により吹き荒ぶ湿った風が耀とガロロを通り過ぎる。
箱庭の吸血鬼の歴史をアーシャと共に一通り聞いた耀はふむ、と思案に明け暮れる。そんな彼女を見たガロロは手で膝を叩きながら問う。
「どうだ嬢ちゃん。俺の話は役に立ったかい?」
「私にゃ全然わっかんね。やっぱ”革命主導者”ってのがキーワードなんじゃねえの?」
「……ありがとうガロロさん。なんにも役に立たない」
そのあまりにもあんまりな物言いに二人は思わずずっこける。それを見てすぐに自分が一言足りていなかった事を理解すると「や、そうじゃなくて」と弁明する。
「私が知りたかったのは吸血鬼達の趨勢の話じゃなくてそれより前。”革命主導者”っていうのはクリアの非現実性からきっとミスリードだと思う。で、私が知りたかったのは、このお城が”
「……どゆこと?」
「このゲームの名前だよ。”SUN SYNCRONOUS ORBIT”。直訳すると太陽同期軌道……なんていえばいいか、そう、太陽と特定の距離を保って飛ぶ人口衛星の事を指すんだ」
春日部 耀の生まれは問題児三人+一人の中では最も文明レベルが高い世界だ。例え十六夜の世界では知っている人がそういない単語であったとしても進んだ時代の彼女の世界ならば一般に普及していてもなんらおかしくはない。
「じ、人口衛星ですか!?」
耀の言葉に声を出したのはカボチャのジャック。しかし問われた耀もまさかジャックがその質問をしてくるとは思いもよらず、え、なんて間抜けな声が出る。
「人工衛星、知ってるの?」
「え、ええ。私が箱庭に招かれたのは一九六〇年代の事でしたから。一応……いえそれより春日部嬢、この城が人工衛星とは———!?」
「うん。でも箱庭的には人工というよりは、神造衛星って言うべきかな。多分その辺りは聖杯と同じだと思う。
話を戻すと、このお城が太陽周期に関わる神造衛星っていう仮説が正しいとすれば、それはこのゲームのタイトルからもわかる通り”太陽”や”軌道”に関するものなんじゃないかな」
おお、と感心するジャック。
「ヤホホ……では、吸血鬼はもしかすれば、我々の知る遥か未来からの来訪者、だったのかもしれませんね……」
「うん、それは私も思った」
箱庭はあらゆる時代と繋がっている。その為格時代の考察や迷信の入り混じった書物が散見されるのも致し方のない事だろう。
それに、ガロロ曰く彼等は環境変化によって太陽光が著しい弱点と化し、自らの住まう惑星を廃棄した者達。これらのファクターから、二人には吸血鬼という存在が近未来的な存在なのではないかという予想を立てたのだ。
(……あれ、そういえばカボチャのジャックが箱庭に来たのは一九六〇年代って言ってた……でも、それだと
てっきり切り裂きジャックによる殺人がパタリと止んだ日の付近で箱庭に招かれたせいで
そこで耀のふとした思考を遮るようにガロロが声を出す。彼は”衛星”という概念を知らないのだが、耀の最後の言葉に反応したのである。
「”太陽”と”軌道”が関連付けられるゲーム……するとお嬢ちゃんは”獣の帯”が”
「ゾディアック?」
聞きなれない単語に頭を傾げるアーシャと木霊の精霊キリノ。ジャックはそんな彼女らに対して諭すようにして説明する。
「”
「……こ、”黄道十二宮”……それって獅子座とか牡牛座とか水瓶座とかの星座の事ですか?」
「ヤホホ、正解です。そもそも十二の星座とは、太陽の軌道を三十度ずつズラして星空の領域を分ける天球分割法で―――」
ハッと、息を呑むように言葉を切る。
表面上は陽気にふるまうジャックだが、その裏では閃光が如く思考を巡らせる。
「天球の分割……まさか」
「うん。多分そういう事なんだと思う。第三の勝利条件、”砕かれた星空を集め獣の帯を星空に掲げよ”っていうのは天体分割法によって分かたれた十二の星座を集め、星空に掲げる……って意味なんじゃないかな」
ちょっとだけ不安に締める。彼女自身それがまだ確信に至ったわけではないと自覚しての事なのだが、周囲はその論にグッと息を呑む。
「ヤホホ……! グッド、グレートですよ春日部嬢! その推論は多くのワードに符号します! これはゲーム攻略の偉大な一歩です!」
「で、でも。星座を集めろって意味がまだよく解らない。これじゃ集めるものがわかっても打開策が組めないよ」
「いえいえ。例えそうだとしてもにっちもさっちも解らなかった先程とは見違える進歩ですヨ!」
「その通りだぜ嬢ちゃん! んじゃあさっさと手がかりを掴む為にガキ共にも伝えよう!」
豪快に笑い音頭を取るガロロ。これで希望の手がかりは見つかった。
彼女達はこのゲームから生き延びる為、動き始めるのであった。
みんな、シノアリスやろう!(ダイマ)
今回はあとがきネタないのでこれだけだよ!