「クソが……!!」
エバーグリーンが倒された後カルディア大聖堂では、ラクサスが怒りの表情を浮かべていた。
「なんでエバがレーヴェごときにやられんだよ、ア? いつからそんなに弱くなったぁエバァ!!!」
柱を殴りながら怒りの言葉を口にするラクサス。そんなラクサスに、フリードが歩み寄る。
「レーヴェの力を甘く見過ぎたな。オレかビックスローが行くべきだった」
「なぜ戻ってきたフリード」
「ゲームセットだからな。人質が解放されたら、マスターはもう動かない」
だが、ラクサスはキッとフリードを睨みつけからの横に雷撃を放つ。
「ラクサス…」
「終わってねえよ。ついて来れねえなら消えろ。オレの
「いや、もう終わってるさ」
「「⁉︎」」
聞こえてきた声の方を向くとそこには、レーヴェがいた。
「やっと見つけた。聖堂に隠れてるなんて思わなかったわ」
「レーヴェ……」
「さぁ、これで終わりだ。さっさと、マスターに謝りに行けよ」
レーヴェがラクサスに対して謝りに行くのを促すが、ラクサスは黙り俯いたままだった。そして……
「……黙れ‼︎」
レーヴェに対し怒りの雷撃を放った。
「フリード、お前は他のメンバーをやれ。レーヴェは、俺がやる」
「……分かった。本気でやる。後悔するなよ」
そう言い残し、フリードはその場を去った。
「さて、レーヴェ。寝たふりはもういいぜ。さっさと、起きろよ」
ラクサスがそう言った直後、レーヴェは起き上がり、服の汚れをパンパンとはたき落した。
「相変わらず頑丈だな。
「当然だろ。
その先ずは修行方法は、常軌を逸脱した肉体改造。
彼は、体術や魔法攻撃を受けることにより身体中を傷つけ、魔法耐性を上げるものだった。
その後に、武術の型を学ぶのだ。
「でも、フリードに他の奴らを倒させに行っても意味ないだろ」
レーヴェの言うことは、最もだった。
もう人質は解放され、マカロフはラクサスの要求を呑む必要はないのだから。
だが、ラクサスは意味深な笑みを浮かべる。
「さて、それはどうかな?」
そう言って、ラクサスは腕を高らかとあげた。レーヴェは、防御態勢を取ったが何も起きなかった。
「外に出て、空を見てみな」
レーヴェは外に出て空を見上げた。空には、無数のラクリマがあり街を囲んでいた。
レーヴェは聖堂の中に戻りラクサスに尋ねた。
「なんだあれ?」
「神鳴殿……聞いたことあるんじゃねぇか?」
「⁉︎」
神鳴殿……高電圧の雷を帯電させた雷の
それが、街の上空に並べてあるということは、戦いに関係ない者達まで巻き込むということだ。
「あんた、正気か?」
「勿論。ルールが一つ消えたからな」
「……今解除すれば余興で終わる可能性がある」
すると、ラクサスはレーヴェの言葉を切り捨てた。
「これァ潰し合いだぁ‼︎どちらかが全滅するまで終わらねぇ‼︎」
「……なら、止めてやるよ。俺があんたをな‼︎」
「こいよ、レーヴェ‼︎」
ラクサスは、レーヴェに対し手に溜めてあった雷を放つ。それをレーヴェは横にステップで避けた。
現状、遠距離で攻撃で出来るラクサスの方がレーヴェと違い圧倒的に有利だった。
(しょうがない)
レーヴェは、ラクサスの攻撃の射程外に離れた。
「我が深淵にて煌めく
レーヴェを中心に聖堂の地面に魔法陣が発生する。
「クロノ……ドライブ‼︎」
クロノドライブ……自身が認識した対象の周りの時間の流れを上げる魔法である。ただし、あくまで本人の速度は変わらないため元が遅いと精々人並みである。さらに、人体には直接作用させることができないと言う欠点を持つ。
だが、レーヴェにとってはそれで充分だった。
「行くぞ」
ラクサスは危険を感じ防御を取る。だが、それでも遅かった。
レーヴェは、肘打ちと裏拳で防御を崩し、掌底を浴びせる。そして……
「【震天空】‼︎」
氣を纏った拳でラクサスを吹き飛ばした。
「ふー。やり過ぎちゃったかな……」
レーヴェは、頭をポリポリ掻いて呟いた。
レーヴェは、ラクサスに対して油断出来ないため、自身の持てる力の全てを込め攻撃したのだ。だが、これは普通の一般人が受ければ間違いなく重傷、たとえ魔導士でも一週間は寝たきりになる可能性が高い。
「なるほど。
だが、ラクサスな何事も無かったかのように立ち上がった。
「へー、元気そうじゃん」
そう言うレーヴェだったが、内心では冷や汗をかいていた。
自身の攻撃がまるで届いていなかったのだから。
「ジジィがうるせえから、ずっと隠してきたんだがな。お前には、特別にみせてやろう」
そう言うと、ラクサスの犬歯が牙のように尖り、腕にはまるで鱗のようなモノが現れる。レーヴェは、その体の特徴に見覚えがあった。
「おいおい、あんた
「まぁな。さて、これを受け止められるかな‼︎」
ラクサスの雷を纏った正拳付きをレーヴェは回転して躱し氣を纏い肘打ちを後頭部に入れる。
だが、本気を出したラクサスはレーヴェ並みにタフになっていた。
ラクサスはこの攻撃を意にも介さず裏拳でレーヴェを吹き飛ばした。
「軽いぜ、レーヴェ。こんなもんか?」
レーヴェの誤算は、ラクサスが
滅竜魔法は術者の体を竜の体質へと変える
ラクサスは竜と同じ体を持ったといっても過言ではない。
だが、同時に違和感があった。攻撃のダメージをそこまで受けていない事だ。
ラクサスが本気で攻撃すれば、もっとダメージを受けていてもおかしくな無かった。レーヴェが、本気を出せない事は分かっている筈なのでわざわざ手加減したとしても、ここまでダメージが無いのか?そして、一つの結論に辿り着いた時だった。
「どわぁぁぁ‼︎」
ドゴーン‼︎
レーヴェの横に金髪の少年が飛び込んできた。
「いてて……旦那やっと見つけましたよ」
この旦那と言うのはレーヴェの事だ。
「遅いぞ、ライトニング」
「旦那が、居場所テキトーに伝えるからでしょ‼︎」
「五月蝿い。早くよこせ」
「あたたたた⁉︎旦那手がめり込んでますって‼︎」
レーヴェのアイアンクローから解放されたライトニングは、袋からあるものを取り出した。
それは、黒漆で塗られた太刀だった。
レーヴェは太刀を鞘から取り出し、刃の具合を見る。
「良い仕上がりだな」
「そりゃ有名な刀匠に頼みましたからね。ちゃんと、後でお金払ってくださいよ」
「払うって」
レーヴェとライトニングが会話している時、ラクサスがクククッと笑う。
やっと、対等に戦えるからだ。
「これで、五分だぜ。さぁ、戦おうじゃねぇか」
「いや、あんたの負けだ。諦めろよ」
その言葉に、ラクサスの眉毛がピクリと動く。
「ほー、そうか。だったら、勝って見せろよ‼︎」
そう言って、ラクサスは頬を膨らませた。
「雷竜の……咆哮‼︎」
雷の奔流は、レーヴェにでは無くライトニングの方に向かう。
突然の攻撃にライトニングは動けなかった。
「【剛の型─刹牙】‼︎」
抜刀術。レーヴェが、ライトニングの前に滑り込むように入り、刹那の間にしか現れない
斬られた奔流は、あらぬ所に着弾する。
「【剛の型─
クロノドライブの力が合わさり、疾風と化したスピードがラクサスを斬り裂く。
「これで終わりだ。早く、マスターの所に行ってやれよ」
「……まだだ。まだ、終わってねぇ‼︎」
そう叫んだラクサスは両手を合わせ、魔力を高めていく。少しずつ…、少しずつ…巨大な魔力の塊に変化する。
その魔法は、術者が敵と見なした全ての敵を一瞬で裁く、“妖精三大魔法”の一つ……“
レーヴェも自身の師匠から、聞いた事しかなかった。もし、話に聞いたとおりで、自分の考えが外れた場合マズイだろうと考えた。
だが、レーヴェはその考えに賭けて、静かに目を閉じ動かなかった。
ライトニングは、レーヴェの行動を見て驚愕した。
「ちょ、何やってんすか⁉︎逃げなきゃマズイっすよ‼︎」
「大丈夫だ。落ち着け」
「でも⁉︎」
「もう遅ェ‼︎“
両手を合わせ、その魔力が解放された。
魔法が発動し…教会から強烈な光が放たれ…その光は街中を覆い尽くしたのだった。
「オレは……ジジィを超えた……」
しばらくしてから光が消え、それと同時にラクサスは口角を吊り上げて、そう口にした。
だが……
「ゲホッゲホッ…うー、埃を吸い込んだ」
「ほら、言った通りだったろ。大丈夫だって」
レーヴェとライトニングは無事だった。
「どうなってやがる!!!! あれだけの魔力をくらって、平気な訳ねえだろ!!!!」
予想外の出来事に狼狽するラクサス。その疑問に対し、レーヴェが答えた。
「多分、町の人も誰もやられちゃいない」
「そんなハズはねえっ!!!! “
「それがあんたの〝心〟だ。あんたがマスターから受け継いでいるものは、力や魔力だけじゃない。仲間を思うその心だよ。あんたは、魔法に自身の心を見抜かれたんだ」
レーヴェが建てた仮説は、実はラクサス自身が無意識に手加減しているという事。
本当は、仲間の事を大切に思っているのだ。
「ジジィなんかどうなってもいいんだよ!!!! オレはオレだっ!!!! ジジィの孫じゃねえ!!!! ラクサスだっ!!!! ラクサスだぁあああーーっ!!!!」
まるで、泣くように吼えるラクサス。レーヴェは、ラクサスを倒す覚悟を決め静かに目を閉じた。
「もう終わりにしてやるよ……見切れるか、紅の戦鬼の一撃を……」
レーヴェは、抜刀の構えを取りその姿を忽然と消す。ラクサスは慌てて周りを見渡すがライトニングしか見えない。
(糞が‼︎どこにいやがる‼︎)
幾つもの可能性を考えラクサスが見たのは、上だった。
予想は的中。上空で闘気に覆われて紅く染まった得物を腰の高さで構えるレーヴェを視界に捉える。だが、時既に遅し。回避はもう間に合わない。ラクサスは、残りの魔力を全て雷の戟に変換しレーヴェに投げつけた。
「雷竜方天戟‼︎」
雷の戟が、レーヴェに対して飛んでいきレーヴェの太刀に戟が当たる。このままレーヴェが吹き飛ばされるか、それとも押し切ってラクサスが負けるか。要は、力比べだ。
「消えろ、レーヴェ!!!!」
「うおぉぉぉぉ!!!!」
結果は……レーヴェがラクサスの放った戟を断ち切った。
「【紅皇烈破】‼︎」
直後、ラクサスの周りで爆風が巻き起こった。
数十秒ほど続いた暴風、やがて収まりを見せて巻き上がった砂埃が晴れていく様に気付いたライトニングが見たのは、立っているレーヴェと仰向けで倒れたラクサスだった。
「やりましたね、旦那‼︎」
レーヴェに駆け寄るライトニング。だが、ライトニングが見たのは、涙を流しているレーヴェだった。
「なんで……あんたには、あんたを思ってくれる人達がいるだろう……」
to be continued