Fallout:J 作:札幌統合最高司令部
『あの日』より二か月が経過しました。
青葉たちは津軽海峡を突破。予想通り人民解放軍の封鎖線は機能しておらず、平和そのものの航海。
ですが、流石の青葉にも海に溶けた放射性物質を吹き飛ばすことは出来ません。
青葉、司令官の被ばくが心配です……。
おっと、司令官が戻ってきちゃいます……それじゃあ今日はこれで。
認識番号JSFG‐054ML027B「青葉」、アウト。
目の前には荒れ狂う津軽海峡。
一世紀以上前にはまだ青函トンネルが開通していなかったこともあり、海上を連絡船で行き来していたらしい。
実際、事故も結構多かったようだが……まあ、昔の話だ。
この津軽海峡の向こうには、ここからは見えないけれど北海道が存在する。
かつては蝦夷地と呼ばれていた北海道。私と……私の「相棒」はそこからやってきた。
やってきたというか『帰ってきた』という表現が正しいだろうか。
まあ、日本国だったころの面影は……影も形もないけれど。
私は津軽海峡から目を背ける。すると目の前には杜撰なつくりの民家。民家と呼ぶことも叶わないぐらい酷い造りだった。
空しいものだ。恐らくは建設業者を呼ぶことすら叶わず、しかし地方ごとに設けられた移動制限のためにこの寒い東北から逃げることも出来ず。致し方なく知力の限りを尽くして建設されたのがこの民家なのだろう。
そして私は民家へと入る。
何のためって? そりゃあ……物資の調達のためだ。
めぼしい物を探し……非常食らしきものを手に入れる。
強盗?
いや、言い訳はすまい……好きに言ってくれ。
なに? 誇りはないのかって? その腕に付けた日章旗は偽物かって?
ああ偽物だ。もはやこの日章旗を掲げる場所なんて存在しやしない。
私は祖国を失った。対馬事変で初陣を飾り、九州、沖縄、そして日本アルプス……多くの戦地を転々としてきた私にとって祖国は全てだった。
よもや家族も友人もいない。最後の拠点であった北海道も……二か月前の核戦争でおしゃかになった。
この現実から目を背けたいという願望が、私の視線を泳がせる。
そしてそのせいで、私の視界は余計なものを捉えた。
「あ……」
写真。
家族写真。
収められているのはきっとこの家の主であったのだろう三人家族。背景には東京スカイツリー。
ああ、これは本土戦以前の写真だ。まだ私に家族や恋人がいて、現実も頭の中もお花畑だった時代。
懐かしい。
ふと手元を見れば、分厚いが最低限の視界を保証してくれる放射線防護ガラスの向こうに、これまた分厚い手袋に包まれた私の手。
その上に乗っかった非常食はとても小さく、汚染されている可能性も考えるとあまりに小さな収穫。
これが現実である。
「……!」
と、
あまり長居は出来ないし、する必要もない。私はさっさと民家を出る。
民家を出ると再び出迎えてくれる津軽海峡。一体ここは青森県のどこなのやら。本来ならば東北割譲以前の地図と地形を比べればいい話だが、なんでも二か月前の地理情報は全てが役に立たないらしい。
それほどに二か月前の戦争の傷跡は大きく、そして今なお生み出される膿は地球上全ての自然を、人類を、文明を飲み込もうとしている。
二か月前の戦争とは……まあつまり、全面核戦争である。
アメリカ合衆国と中国。あとその他諸々の勢力による核による報復による報復が繰り返された……有史以来最大のエネルギーが投射され、そしていかなる紛争よりも短い時間にて終結した戦争。
アメリカ――――自由と民主主義を掲げ、既に自称と化していたが世界の警察を名乗り続けた我らが日本国の盟友。
中国――――共産主義を掲げ、世界の混乱や祖国の没落に乗じてこの日本列島をほとんど飲み込み、最後には日本列島攻略の功労者であるはずの半島国家すら自身の一部としてしまった狂犬国家。
どちらの政体が、経済が正しかったなど証明する術はない。恐らくはどちらも間違っていたのであろう。なんせどちらも消滅したのだ。それが結果であり、それが全て。
……何をセンチになってるんだか。どうせ私も死ぬ。どんな人間であれ女がいれば子孫も残せるが、あいにく私以外の生存者は男ですら見たことがない。
いや、悪いことばかり考えるのはよそう。世の中悪いことばかりではない。
なぜ私が「相棒」の反対を押し切ってまで津軽海峡を渡ったと思う?
それは生存者に出会うためなのだ。
東北や関東……現在の『倭人自治地区』は戦略価値も政治的な価値もない場所だ。
そしてまさか米軍の戦略核がここへ落ちたとは考えづらい。というか考えたくない。
東京まで……いやそうでなくとも途中で誰かに会えるのではないだろうか。私の同胞に会えるのではないだろうか。
そんな中米和平が成立する可能性ほどの希望に賭け、私はここにいるのだ。
「さてと……そろそろ戻るか」
携帯式のコンピューターに表示される時計を見つつ集合地点へと急ぐ。
「相棒」が待っている。
――――
「司令官!」
集合地点には、やはりというべきか「相棒」が先に来ていた。おーいと手を振れば、冬景色の中では見ていてこっちが寒くなる半袖セーラー服と、後ろで結われた紫色の髪が揺れる。
「すまん、遅れた」
そう言うと、
「司令官……青葉言いましたよね? ちゃんと時間は守ってくださいって」
「上官に説教するのか……」
二か月前ならここでポリポリと頭を掻くのだが……あいにく頭は防護服に保護されて触ることが出来ない。
「被ばく管理を青葉に任せたのは司令官ですよっ!」
そして防護ガラスの向こうで彼女はまくし立てる。
……説明は不要だろう。私は防護服、対する彼女は寒そうなセーラー服。
彼女は兵器だ。
そして、私はその運用担当官。
私の「相棒」最後の戦友は、兵器。
そう、これが現実だ。
登場人物!
【JSFG‐054「青葉」】
大東亜産業製の海上運用想定タイプの人型自立思考兵器。2050年代製の旧式ではあるが、残念ながら自衛隊の中ではかなり最新の部類に入る兵器である。
日本国海上自衛隊が保有。個別番号はML027B。
個体の性能を示す練度は公式99。
【氏名不詳】
動乱期以前の東京生まれ。日本国海上自衛隊所属。
国民背番号****‐****‐****。
階級は三等海佐。
あとがき!
……ごめんやらかした。
Fallout4日本語版記念ということで、まあ許してくださいな。
タイトルの通り、舞台は日本です。
導入のせいで青葉のよさが全然伝わってこないけど、次回からは伝わるよう頑張る。
……次回更新、いつだろうね?
文句と感想と要望、待ってます。