ブラムが目をさますと、ロキファミリアの保健室的なとこよだった。
「………あれ?」
「お、起きた」
声がしてそっちを見ると、ティオナとティオネとレフィーヤとアイズが座っていた。
「うえっ⁉︎」
「もう顔赤くしなくていいよー」
「そ、そんなこと言われても……」
ティオナに言われるも、ブラムの顔は赤いままだ。
「あの、花は?」
「倒したわよ。あんたの作戦通りね」
ティオネに言われて、ホッとするブラム。だが、すぐにティオナの顔を見てハッとした。
「す、すみませんでした!」
「? 何が?」
「大声で……その……」
「………忘れてた」
思い出すと、ティオナは指をゴキゴキと鳴らす。
「そうだったねー。お仕置きだった」
(言わなきゃ良かった……)
心の中で後悔してると、ティオナの手が自分の顔に伸びた。反射的に涙目で目を瞑ると、「なんてね」と声がした。
「?」
「うそうそ、怪物祭に来る前にあたしも酷いこと言っちゃったし、おあいこ」
「……すいませんでした」
心底ホッとするブラム。あのデカイ花を地面に叩きつける拳を食らったら一歩間違えようが間違えなかろうが死ぬ。
「で、どうだった?モンスターの体の中」
ティオネに聞かれた。
「どうも何も……気持ち悪かったですよ。ヌメヌメするし変に暑いし外からの衝撃直で来るしなんか臭いし……もう二度と食われたくないです」
「そりゃそうよね」
ふっと息を漏らすティオネ。
「にしても驚きましたよ。モンスターの口からブラムくんのマスクが出た時は」
「本当だよね。思わず『吐け!』って言っちゃったもん」
レフィーヤとティオナが言った。
「ブラム」
アイズが声をかけた。
「な、なんですか?」
「……ダメだよ、無茶したら。今回も女の子を助ける為にやったんでしょ?」
ギクッと、肩を震わせるブラム。
「……前にフィンに言われてたけど、他の人を助けるためにブラムが死んでもいいなんて事はないんだよ?」
「……ごめんなさい」
シュンっとして謝るブラム。すると、その頭をアイズが撫でた。
「ここにいるみんな、仲間なんだから」
(………正直、ヴァレンシュタインさんには言われたかない)
「………何か失礼なこと考えてなかった?」
「そ、そんなことないですよ!は、はは……」
心の中で「鋭い……」と思いながら苦笑いを浮かべた。
*
翌朝、朝食の準備中。素振りを終えたアイズが食堂に向かうと、キッチンに人が集まっていた。
「…………?」
「あ、アイズさん!」
「……レフィーヤ、何事?」
「それが……」
チラッとキッチンを見るレフィーヤ。そこでは、持ち前の敏捷値を活かしてブラムが全員分の食事を一人でこなしてた。どうやってるのか、フライパン10個分を一人で操っている。
「………すごい」
「これもう女子力とかそんな話じゃないですよね……」
レフィーヤが言った。だが、ブラムは納得していない。
(もっと……もっとだ……!もっと速く……!)
ヤケにシリアスに汗を流しながら言った。
「クロックアップ」
ウオオオオオッとフライパンを振るった。
「何やってんだあのバカ」
ベートが呟いてさっさと朝食を取りに行こうとした時だ。アイズと目が合った。
「っ‼︎」
「あ、ベートさん。おはようございます」
「……よっよぉ」
なぜかギクシャクした態度。それに不思議に思ってると、
「おはよー!アイズー!」
ガバッ!とティオナがアイズに飛び付いた。
「おはようティオナ」
「朝食行こ!お酒で大恥晒してアイズに合わせる顔もないバカ狼なんて無視して」
「なっ‼︎貧相くれてんじゃねーぞ!このど貧相女‼︎」
「ド貧相とか言うなぁあああああ‼︎」
「朝っぱらからうるさいぞ!お主ら騒ぐでない!」
ガレスに見つかった。
「三人ともそこに正座じゃ!上級冒険者としての立ち振る舞いを今一度正してやるわい!」
「え、私も……⁉︎」
納得しないながらもアイズも説教を食らった。
*
一方、キッチンでも別の戦いが始まっていた。一人でキッチンを占領しているブラムの横にティオネが立っていた。
「ちょっと、私も料理作りたいんだけど」
「後にしてください」
ブラムにしてははっきりした言葉が逆に反感を買った。
「ほぉ?言うじゃない。でも団長の料理は私が……」
「いやほんと気が散るんで静かにしててください」
イルァッと来た。
「へぇ、言うじゃない。そこまで言うからには私より美味しい料理作れるんでしょうね?」
「さぁ?」
もう生返事だった。
「なら、試してみる?」
「さぁ?」
「団長に食べてもらって、どちらが美味しいか決めてもらいましょう?」
「さぁ?」
「負けた方はしばらくの間、勝った方のペットだからね!」
「さぁ?」
我慢の限界だった。
「あんたおちょくってんの⁉︎」
「さぁ?ガレスさん、ベートさん、ラウルさんの料理できました〜」
「このっ……!上等じゃない!」
言いながらティオネは無理矢理、コンロを一ヶ所奪った。ブラムがとりあえず全員分の料理を終わらせ、あとは自分の分だけだという頃、ちょうどティオネも終わらせた。
「出来たわ!」
「フゥ……後は自分の分だけかな」
「いいから団長の分の料理を出しなさい!」
「へっ?団長の分はコレですけど……」
と、ブラムは超美味そうなオムライスを指した。
「なら来なさい!勝負よ!」
「何の?」
「料理よ!」
ティオネは自分の料理とブラムの作ったオムライスも持ってフィンの前へ移動した。
「………あれ、団長が食べるの?」
思わずブラムは独り言を呟いた。それもそうだろう、皿の上にはトリコに出てきそなサイズの魚が盛り付けられていた。
「だ、団長……一応、胃薬っす」
「恩にきるよ、ラウル。……なんで朝から料理勝負の審査なんてしなくちゃいけないんだよ」
と、コソコソと胃薬をもらった後、フィンは覚悟を決めた。まずはティオネの料理から。
「どうぞ、団長♪」
「と、とりあえず一口だけね?」
「はい!」
で、一口。食べてみると、まぁ、その、なに……量に物を言われた不味くはない感じだった。が、この量を食べるのはやっぱりキツイ。
「つ、次はブラムの料理を……」
「えーもっと食べて下さいよ団長」
「そ、そうしたいのは山々なんだけど、お腹いっぱいになると公平な審査が出来ないだろう?ティオネだって公平にブラムを倒したいだろ?」
「そうですね!」
チョロい、と全員が思う中、フィンはブラムのオムライスを食べた。
「あー……んっ。おお……フワフワしてて美味しい……」
「はうっ!」
すごく幸せそうにオムライスを食べるフィンを見て、ティオネは思わず倒れそうになった。
(お、オムライス+団長……なんて破壊力‼︎)
そして、膝を着いた。
「負けたわ……」
「ええっ⁉︎」
フィンが思わず声を上げた。だが、割と本気で悔しそうに号泣するティオネにそれ以上はツッコめなかった。その、ティオネの元にブラムが皿を持ってやって来た。
「あの、これティオネさんの朝ごはんなんですけど…」
と、オムライスを差し出してくる。
「ダメよ!」
「何が⁉︎」
「悔しいけど、私はあなたのペットなのよ。朝ごはんでは無く餌と呼びなさい」
「えっ⁉︎僕ティオネさんに何かした⁉︎」
さっきまでのやり取りを生返事で返していたブラムは困り果てていた。フィンに答えを求めるも、麻薬かってレベルで人をダメにするオムライスに五感すべてを味覚に集中させているため、気付いてくれない。
「あ、あの……なんの話だか分かりませんけどっ、そんなやめて下さい……!」
「そうはいかないわ!私は負けた以上は自分の作ったルールに従うわよ!」
「ええっ⁉︎ていうかまず僕は何に勝ったんですかぁ!」
困ったようにため息をつくが、ティオネは本気の顔だ。おそらく意地でもペットとしての自分を曲げないだろう。
「はぁ……じゃあ放し飼いするので好きにしてください」
「分かったわ!」
結局、解放した。