そんなわけで、街の出入り口を一斉封鎖。
「集まるのが早かったね」
「呼びかけに応じねえ奴は街の要注意人物一覧に載せるとも脅したからな。そうなりゃどこの店でも即叩き出しだ。この要所を今後も利用してえ奴等は、嫌々でも従うってもんよ」
「それに、一人でいるのは恐ろしい、か」
フィンとボールスが人集りの前で話していた。
「お前ら以外の第一級冒険者が見つかりゃあ、わかりやすかったんだがな……」
「多分、騒動になるのも計画の内ってところなんじゃないですか?だからこそ、変装してたり、公式のレベルを偽ってたり……後アレだ。何処かに隠れてたり……」
「………なるほどな。安易に疑われない対策の一つや二つは取っている筈だと」
「は、はい……」
ブラムの意見にボールスが相槌をうった。
「この人数を調べるの、大変そうだね……」
「うん、でも……ここからもっと、数を絞れるから」
ティオナの台詞にアイズが言った。
「ハシャーナさんを襲った人は、女の人の筈だから……」
「あ、そっか!女の冒険者だけを調べればいいんだ!」
「それくらい気付きなさいよ、あんた……」
「付け加えるなら、男の欲情をそそるような体の持ち主、という点だな」
「それなら楽勝じゃん!」
ティオナは言いながらブラムを引きずってきた。
「な、なんですか⁉︎」
「ブラムを興奮させるような体型の人って事だよね!」
「うえっ⁉︎」
「無理よティオナ、ブラムはあんたの身体でも反応するから」
「それどういう意味だぁ!」
じゃれ合うアマゾネス姉妹の隣でフィンが言った。
「まずは無難に、身体検査や荷物検査といったところかな」
「うひひっ、そういうことなら……よぅし、女どもぉ⁉︎体の隅々まで調べてやるから服を脱げーッ‼︎」
『うおおおおおおおおおおおおおおッッ‼︎』
ボールスの声で男達が熱烈な歓声を上げる。当然、女性冒険者は、ふざけんなーッ!死ねーっ!と声が上がる。
「馬鹿なことを言っているな。お前達、我々で検査をするぞ」
リヴェリアの呼び掛けで、「はーい」「うん」「男共の団結力ってなんなの?」「わ、わかりましたっ」と声が上がる。で、アイズ達は横一列に並んだ。だが、
「逃足くん!私を調べて!」
「お願い!」
「体の隅々まで!」
「何でもしていいから!」
「えっ?えっ?ええっ……?」
顔を真っ赤にして動揺するブラムを御構い無しに女共は詰め寄った。
「うわあ……人気者ねぇ……」
「あ、押し倒された」
「ていうかお持ち帰りされた」
「た、たすけてええええええ!」
ブラムが助けを求めるも、ティオネ、ティオナ、アイズ、レフィーヤ、リヴェリアはふいっと顔を背けた。その時だ。
「……?」
アイズの視線の先には犬人の少女がポーチを持って逃げ出そうとしていた。
「アイズさん?」
動きを止め、じっと彼女を見るアイズの視線の先にレフィーヤも気付いた。その少女は集団の混乱を利用するように逃げ出した。
「行こう」
「は、はい!」
アイズとレフィーヤは後を追った。
*
(……まだ追ってきてる……!)
逃げながら犬人の少女は後ろを見た。
(……⁉︎ 一人足りない?)
その瞬間、前にアイズが降りた。
「えっ⁉︎」
「は、挟み討ち大成功ですね。流石はアイズさん……!」
「ううん、レフィーヤが頑張ってくれたおかげだよ」
それを聞いて、ヘナヘナと座り込む少女。
「事情聴取は団長達に任せた方がいいですね」
「うん、広場に戻ろう」
「やめてっ!」
泣きそうな顔でレフィーヤに飛び付く少女。
「お願いっやめて。あそこに戻ったら今度は私が…!きっと私が……!お願い…お願い…」
「どう、しましょうか……?」
とりあえず、人の少ないところで話を聞くことにした。
「貴方の名前は?」
「ルルネ…ルルネ・ルーイ」
「レベルと所属を教えてもらえますか?」
「第三級レベル2、所属は【ヘルメス・ファミリア】」
「どうして広場から逃げ出したの?」
「……殺されると思ったから」
「それは、貴方がハシャーナさんの荷物を持っているから?」
アイズに聞かれて、ビクッとするルルネ。
「ど、どうして貴方がハシャーナさんの荷物を……⁉︎」
「ちっ、違う!私は……!」
レフィーヤに聞かれ、少し慌てるも、もう隠しきれないと観念したのか語り出した。
「私は依頼を受けたんだ。この街で受け取った荷物を地上に…依頼人に届けてくれって…。指定された酒場に全身型鎧の冒険者が荷物を持って来るから、合言葉を口にして受け取れって」
「役割を分担させて、しかも別派閥の人を雇うなんて……」
「依頼人は誰?」
「……わからない。誰もいない夜道でいきなり真っ黒なローブを全身に被ってて男か女かもよくわからなかった。怪しいって思ったけど…報酬も前金もめちゃくちゃ良かったから」
「あれ?でもルルネさんはレベル2ですよね?リヴィラの街をソロで往復するの危険じゃないですか?」
レフィーヤに言われてまた、ギクッとするルルネ。
「そ、その…ヘルメス様に昇格したことは隠しておけって言われてて…実は、レベル3なんだ」
「アイズさん、やっぱり団長に知らせた方が……」
「ダメ!人がいる所は怖いっ。きっとハシャーナを殺ったやつはまだあそこにいる!荷物を持ってるってバレちゃえば今度は私が…⁉︎」
ガタガタと震えるルルネを見ながらアイズは言った。
「私達にその荷物を渡して」
「……詮索しないで絶対に誰にも見せるなって言われてたんだけど…」
死ぬくらいなら、というニュアンスで荷物を手渡した。
「……!」
「なっなんですかこれ……⁉︎」
それは、小さな玉の中に胎児のような物が入っているものだった。
(これは…ドロップアイテム?新種のモンスター?この感じ……)
その退治が目を薄く開いた。
(なにこれ……?)
思わず、アイズは後ろに倒れそうになった。
「アイズさん⁉︎だ、大丈夫ですか?」
「……うん、平気」
「だ、大丈夫なのかよ…やっぱりコレ、やばい代物だったのか⁉︎」
ルルネも心配するように言った。
「と、とにかく、私が団長にこれを届けます」
「ごめん、レフィーヤ……」
「謝らないでください。こんな時くらい私が…。それじゃあ、いきま……」
と、言いかけた時、後ろでドオォン!と轟音が聞こえた。振り返ると、前に見た花が暴れていた。
*
街の方。
「なにモンスターの侵入を許してやがる⁉︎見張りは何やってんだ!」
ボールスの怒号が響き渡る。
「ティオナ、ティオネ、彼等を守れ!」
「はい!」
「うん!」
今回は武器のある二人が花を片っ端からぶった斬る。
「フィリア祭の時といい、こいつらどこからあらわれるのよ!」
「みんな、逃げちゃだめだって!」
ぼやきながら二人は戦った。
「リヴェリア、敵は魔力に反応する、できる限り大規模な魔法で付近のモンスターを集めろ!ボールス、5人一組で小隊を作らせるんだ、数で当たれば各班一匹は抑えられる!」
「わかった」
「お、おう⁉︎」
「くそっ……この忙しい時にブラムはどこで何をしてるんだ……!」
フィンは思わず毒付いた。
*
その頃、アイズ達の所にもモンスターは来ていた。アイズがなんとか撃退する。
「有難うございます、アイズさん!」
「う、うそだろ⁉︎あっちからまだ来るぞ!」
「レフィーヤ、先に広場へ行って!」
「アイズさん⁉︎」
アイズは花に向かっていった。
「おいっ!剣姫行っちまったぞ⁉︎」
「ルルネさん!」
「えっ!いいのかよ⁉︎」
レフィーヤは撤退を選んだ。その時だ。目の前に黒い鎧の男の冒険者が現れた。それが迷いない歩みで二人に近づく。
(だ、男性の冒険者……?でも……)
レフィーヤは覚悟をすると、杖を出して言った。
「と、止まってください!」
その瞬間、手を伸ばしてレフィーヤの首を絞めた。
「がっ……⁉︎あ〜……」
「うっ、うぐるあああッ!」
ルルネが果敢にもナイフを出して挑んだ。だが、まったく相手にされずにその辺のクリスタルに叩きつけられる。そして、メキッと首が折れそうになった時、ゴガァアアアアッ!とクリスタルが崩れ、モンスターが倒れた。
「っ⁉︎」
さらに、そこからアイズが飛んできて、奇襲を仕掛けた。それが冒険者の仮面を真っ二つにした。
「レフィーヤ、大丈夫?」
「げほっけほっ……は、はい」
「貴方がハシャーナさんを殺した人?」
アイズが剣を構えて聞いた。
「……だったらどうした?」
「女性の声⁉︎あ、あなたは男性のはずじゃあ……⁉︎」
レフィーヤが聞いた。
「引き剥がしただけだ。死体からの顔の皮を引き剥がして被ってるだけだ」
「……それじゃあその顔は、ハシャーナさんの……?」
「あぁくそっ、きつくてかなわん。いい加減、宝玉を渡してもらう」
鎧を全て取ると、女は剣を抜いてアイズに斬りかかった。それをガードするアイズ。
「あぁ、やはり強いな」
「っ‼︎」
お互いに斬りかかった。