ロキファミリアの囮役   作:杉山杉崎杉田

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逃足

女とアイズが互角に斬り合う。

 

(強い!これほどの冒険者の名も武勇も聞いたことがないなんてありえない!)

 

すると、レフィーヤが魔法を詠唱した。

 

「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。女、弓の名手なり。狙撃せよ妖精の射手。穿て必中の矢、アルクス・レイ】!」

 

魔法が女に迫る。だが、それを片手で受け止めた。

 

「そんな、受け止めるなんて……⁉︎」

 

それを横に打ち払う。

 

「レフィー…」

 

と、言いかけたアイズに迫った。

 

(くっ……!やるしかない!)

 

アイズはそう判断すると、目付きを変えた。

 

「【目覚めよ】!」

 

それな直撃し、女は吹き飛ばされる。だが、平気な顔で起き上がった。

 

「あぁ…捜し物が二つ同時に見つかるとはな。今の風…そうか。お前がアリアか」

 

その瞬間、アイズの表情が凍りついた。だが、それもつかの間、アイズの唱えた詠唱が荷物であった玉に響く。それが、アアアアアア!と鳴き出し、玉から飛び出て、鼻の死骸に飛び付く。そして、花がバグンと起き上がった。

 

 

「テメェら、確実に一匹ずつ仕留めろよ!逃げたらぶっ殺すからな!」

 

ボールスの声に、「おうっ!」と男たちの野太い声が響く。

 

「ふぅ…一時はどーなることかと思ったが立て直せたな……」

 

だが、他の奴がぼーっと何かを見ていた。

 

「オイ!何ぼさっとしてやがる!蹴り飛ばすぞ!」

 

「あ、あれ……」

 

「ああ?」

 

男の指差す方を見ると、ボールスの表情も変わった。場所変わってティオナ達もそれを見ていた。

 

「ちょっ…なにあれ」

 

「似てる…あいつ、50階層の……‼︎」

 

そこには、デッカい花から飛び出た50階層のデカブツがあった。うわあ、説明下手過ぎんだろ。そいつが「オオオオオオオオ!」と雄叫びを上げる。

 

「もうここらへんでモンスターに狙われてる人いないよね?」

 

「助けたそばから広場に追い返したでしょ!私達も戻るわよ!」

 

言いながら姉妹はそれに突撃。ボールスの所。

 

「こっちに来るな…」

 

「どこから現れた、と問いただしたいところだが、始末する方が先だな」

 

「あぁ、そうだね」

 

「何でてめーらはそんな冷静なんだ⁉︎ちったあ慌てろ!」

 

リヴェリアとフィンにボールスがツッコむ。すると、そこにアイズが戻ってきた。

 

「リヴェリア、レフィーヤ達を!」

 

そう言うと、すぐにアイズはその場から離れた。そして、モンスターはそれを追った。

 

「狙いはアイズか!」

 

「発動してる魔法に反応してるのかな」

 

リヴェリアとフィンがあとを追う。その二人にレフィーヤが聞いた。

 

「あの、ブラムくんは?」

 

「お前たちと一緒じゃなかったのか?」

 

「チッ……一体どこに……!」

 

一方、モンスターの根元。ティオナとティオネが戦っていた。

 

「そりゃあーー‼︎」

 

足である花と頭をぶった切った。

 

「っしゃ‼︎」

 

と、笑うが、ぶった切ったはずの足が動き、ティオナを上から殴る。

 

「っ⁉︎」

 

慌ててガード。

 

「いったぁー⁉︎力メチャクチャ強くなってるんだけどー⁉︎しかも首落としたのに動くのー⁉︎」

 

「当たり前でしょ!ありゃもう足の一本に過ぎないでしょうが。そりゃ動くわよ!」

 

冷静に足の一本をズタズタに切り裂いたティオネが叫んだ。モンスターはアイズへの攻撃をやめない。腕の触手を槍のように飛ばす。

 

「くそッ!」

 

ティオネが思わずそう吐き捨てて離脱しながらナイフを投擲した。

 

 

リヴェリアが弓を構えた。そして、矢に縄を結び、矢を放った。その縄をフィンは掴む。矢はモンスターに刺さり、槍を振り回しながらモンスターの足をぶった斬った。

 

「レフィーヤ、以前行った連携を覚えているな?あれをやるぞ」

 

「わっわかりました!」

 

リヴェリアがそう言うと、レフィーヤも準備に取り掛かる。

 

「てめーら、遅れを取るな!ここがならず者の街だってとこを見せてやれ!」

 

ボールスの声で男達が武器を構えて突撃した。だが、

 

『オオオオオオオオ!』

 

モンスターは一喝し、全体に触手を振り下ろした。

 

「うおお!やべぇ、死んじまう!」

 

「ちょっと!周りの奴ら避難させなさい!庇いきれないわよ!」

 

ティオネが怒鳴り散らした。

 

「ちょくちょくぶった切ってるのにー⁉︎」

 

「恐らく魔石が埋まってるあの上半身を狙うしかなさそうだけど…悠長なことは言ってられないな。やっぱりリヴェリア達に任せるしかないか」

 

フィンの視線の先ではリヴェリアが詠唱していた。

 

「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ。同胞の声に応え矢を番えよ】」

 

前衛なしにリヴェリアは詠唱。当然、狙われるわけだが、詠唱を止めてリヴェリアは攻撃を回避。その時だ。別の詠唱がモンスターの背後から聞こえた。

 

「【雨のごとく降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え】」

 

レフィーヤが背後で詠唱していた。

 

「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】‼︎」

 

それがモンスターに降り注ぐ。大きく怯んで隙が生まれたとき、上からフィン、ティオナ、ティオネがモンスターを斬り裂いた。だが、それでも死んでない。湖に向かって逃げ出した。が、それを追う影がまだある。

 

「【終末の前触れよ。白き雪よ、黄昏を前に風を巻け。閉ざされれ光、凍てつく大地。吹雪け、三度の厳冬、我が名はアールヴ】」

 

リヴェリアが杖をモンスターに向けた。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】‼︎」

 

モンスターを凍らせた。が、凍りつく前に自分の下半身を斬り落として湖に向かった。それを、ティオナとティオネが追った。

 

「あんたは左から!」

 

「わかった‼︎」

 

もう反撃の手段はない。二人は武器を振りかぶった。

 

「「逃すかぁ‼︎」」

 

見事にモンスターを魔石ごとぶった斬った。落下しながらティオナはガッツポーズ。

 

「やりーっ!」

 

「バカティオナ!魔石ごと吹っ飛ばしてどうすんのよ!」

 

「あっ。……アイズとレフィーヤ大丈夫かな?」

 

「誤魔化せてないわよ」

 

「ブラムはどうしたんだろうね?」

 

「そういば、さっきお持ち帰りされ……」

 

ドッボーンと落ちた。

 

 

その頃、アイズ。ギンッガァンッカッ!とさっきの女と戦っていた。相手の攻撃を剣で受けた。が、その隙に蹴り飛ばされる。

 

(『エアリエル』)

 

クリスタルに直撃する前に風を出してなんとか着地した。

 

「便利な風だな。アリア」

 

「その名前をどこで⁉︎」

 

「さぁな」

 

構わず近づいて来る女。アイズは、こいつが自分より強いと感じていた。

 

(だとしても……‼︎)

 

風を使って突撃した。それを女は剣で打ち払うが、さらに風を使って死角へ強制的に移動した。

 

(この一撃に……!)

 

剣をふりかぶった。

 

(全てをっ!)

 

と、振り抜いたら下に躱された。

 

「人形のような顔をしていると思ったが」

 

隙だらけになったアイズに女は剣を思いっきり振り抜く。

 

(エアリエル最大……!)

 

剣をなんとか自分の前に回したが、強力な一撃が思いっきりアイズをぶっ飛ばした。剣を手放され、岩に突っ込むアイズ。

 

「あっ……うぅ……」

 

意識が朦朧とする中、女はゆっくりと近づいて来る。

 

「やっと終わりだ」

 

女は拳を振りかぶった。それが、アイズに振り下ろされた時、

 

「わっせろーい!」

 

間抜けな声と共にアイズの姿が消えた。拳は岩に突き刺さる。

 

「うわあ!あんなの当たったら死ぬよ!」

 

「………なんだ?」

 

緊張感のない声に女が声を漏らした。見れば、逃足がアイズを抱っこして逃げていた。

 

「………ブラム?」

 

「だ、大丈夫ですかヴァレンシュタインさん!てか何ですかあの怪力ババァ」

 

その声にビキッとおデコに青筋が浮き出る。

 

「だぁれが怪力ババァだクソガキィッ‼︎」

 

そして、追いかけて来た。

 

「き、来たぁああああっ‼︎」

 

ブラムもスピードを上げる。

 

「なっななななんなんですかあの人!ヴァレンシュタインさんがやられてたから来てみたら……!」

 

「ブラム………」

 

「な、なんですか⁉︎」

 

「私を下ろして逃げて」

 

「はぁ⁉︎何言っちゃってるんですかあんた!」

 

「私を運びながらじゃあ、いつか追い付かれる。私を置いて、ブラムだけ逃げて」

 

「バカ言わないで下さいよ!仲間殺されそうになって置いていけるか!」

 

「ブラム……」

 

「いいから頼られて下さい!逃足の二つ名は伊達じゃない!」

 

「!」

 

少し、嬉しかった。今まで、自分より歳下の人に「頼られろ」なんて正面から言われたことはなかった。

 

「………ありがとう」

 

思わずキュッとブラムの手を握って呟いた。

 

「えっ⁉︎なんて⁉︎」

 

「……なんでもない」

 

後ろを見れば、近付かれずも離れずにブラムの後ろにくっ付いている女。

 

「ああクソッ!しつこいなあ!ストーカーか!」

 

「誰がストーカーだぁああああッ!」

 

「聞こえてたぁ⁉︎」

 

「ブラム、前!崖!」

 

アイズが珍しく叫んだ。確かに目の前は崖になっている。

 

「掴まっててください!」

 

「う、うん……!」

 

ブラムは大きく跳んだ。

 

 

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