壁に叩きつけられたアイズに、レヴィスはさらに拳で追撃する。
「あなたは……⁉︎」
「しゃべる暇があるか。まだ足りんな」
レヴィスは追撃をやめない。アイズの超速の斬撃がレヴィスの肩を切り裂く。それを全く気にすることなく、拳を振りかぶって渾身の一撃を放った。
間一髪、後ろに回避するアイズ。放った拳からズズッと天然武器を引き抜いた。
「な、何だアイツ……出鱈目だ」
ルルネが唾を飲み込む。
凄まじい撃ち合いに、ベート、ブラム、レフィーヤ、フィルヴィスが駆け出した。
「あっちもヤバイですが……!」
ベート達が援軍に走り出していく中、アスフィは別方向に進路をとった。目指すのは食料庫の大主柱に寄生してる宝玉。
それを確保しようとした。だが、その真横から奇襲を受けた。
「なっ⁉︎」
紫のフーデッドローブ、そして不気味な紋様の仮面。そいつにアスフィは殴り飛ばされた。
「アスフィ!」
「まだ仲間が⁉︎」
その仮面の襲撃者に、レヴィスが声を張り上げた。
「完全ではないが、十分に育った、エニュオに持っていけ!」
その襲撃者はそう返事をすると、その場を離脱した。
「ルルネ、止めなさい!」
アスフィに言われ、ルルネはその方へ走り出す。
「巨大花!」
そこでレヴィスが叫んだ。アイズを一度吹き飛ばし、大主柱に巻きついている残る巨大花へ命令した。
「生み続けろ!枯れ果てるまで、力を絞り尽くせ!」
瞬間、大空洞が鳴動した。全員が顔を上げる。
直後、天井、壁面、大空洞全体の蕾が一斉に開花した。
すべての食人花が、ギョロリとブラムを睨んだ。
「…………えっ」
マジで?みたいな声を上げる。直後、全部が全部ブラムに襲い掛かった。
「嘘オオオオオオオオおおおおおお‼︎⁉︎」
「ブラ……!」
助けに行こうとしたアイズにレヴィスが襲い掛かる。剣を弾かれてしまった。
「しまっ……!」
アイズが声を上げる。
さらに、怪物の宴。それも通常のものとは比較にもならない。それらが全てブラムに襲い掛かった。
「な、なななななんでだああああ‼︎こいつらには僕がどんな風に見えてるわけ⁉︎」
「黙ってろクソガキィッ‼︎」
その中に突っ込むベート。ブラム狙いで隙だらけのモンスター達を次々に蹴り倒して行く。
「ベートさん、待った!」
だが、ブラムがそれを止めた。
「なんだこんな時に‼︎」
「レフィーヤさんに詠唱準備させて!僕が引きつけるから纏めて消し飛ばさせてください‼︎その間、ベートさんはアイズさんの援護、その他の方はモンスター一掃後に全員でアイズさんの援護‼︎」
「テメェ一人で保つと思ってんのか⁉︎」
「だから早めにお願いします‼︎」
「逃げ腰なのか強気なのかわかんねぇな……!」
だが、確かにこの数を一匹一匹消すのは骨だ。
「チッ……!おいッ!」
「え……?」
ベートはレフィーヤに声を掛けた。
「早く詠唱しろ!」
「で、でもっ、私は……」
「いいからやれ!テメェは雑魚だが、そのアホみてえな『魔力』だけは認めてやる!あのクソババァを、超えてみせろ!」
ベートは怒鳴ると、ブラムに言われた通り、モンスターの群れを突っ切ってモンスターの群れへ突撃した。
レフィーヤも詠唱を始めた。
「【ウィーシェの名の下に願う!森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来れ!繋ぐ絆、楽園の契り。円環を廻し舞い踊れ。至れ、妖精の輪。どうか、力を貸し与えて欲しい】」
高速で詠唱を編上げ、魔法名を唱えた。
「【エルフ・リング】」
そこから、召喚した攻撃魔法の詠唱に移った。
*
「ふおおおおおおお‼︎」
モンスターの群れの攻撃をギリギリ回避するブラム。
「『跳躍』!『跳躍』!『跳躍』!『ちょうや……ふぬをッ⁉︎」
めっちゃ魔法を使っていた。精神枯渇は既にいつ来てもおかしくない。
「左上だチビ!」
「っ⁉︎」
ベートの怒鳴り声が聞こえた。左上からモンスターの口が迫っていた。
それを蹴り飛ばすベート。
「気張れよクソガキ‼︎テメェの考えた作戦だろうが‼︎」
「はい!」
そう言うと、ベートはモンスターの群れを突っ切り、アイズの元へ向かった。
(そうだ、ここで僕が踏ん張らないでどうする……‼︎)
心の中でそう呟き、ブラムは相変わらず逃げ続けた。
*
レヴィスの一発でも当たれば即アウトの攻撃を、アイズは紙一重で躱し続け、廻し蹴りなどを見舞う。
「剣技に比べれば拙いものだな」
「っ⁉︎」
風の力が加えられた強力なアイズの一撃を、剣の柄でで難なく弾き返し、反撃を返す。
(剣があれば……!)
大空洞の片隅に突き立った《デスペレート》を見るが、剣は遥か遠くにある。
「いい加減、終われ!」
アイズに大剣が振り下ろされる。直後、
「失せろ‼︎」
ベートがモンスターの群れを突っ切って来た。
「よこせ、アイズ!」
それだけで理解したアイズは、ベートに風を渡した。そのベートの蹴りと入れ替わりで、アイズが離脱する。
「なにっ」
「大人しくしてろ化物女‼︎」
アイズが剣を取りに行く間、ベートが間を繋ぐ。
「邪魔だ!」
「ッッ……⁉︎」
紅の大剣が、ベートに襲いかかる。回避しては風蹴で受けながすも、一撃でも当たればアウトの必殺がベートの体を脅かす。
「どけ、狼人‼︎」
防戦一方になって来たベート。だが、無理矢理ベートは押し返した。
「てめえがッ、くたばれ‼︎」
「っっ⁉︎」
「雑魚どもがあがいてんだろうがよぉ⁉︎てめーごときを押さえねえで、どの面晒そうってんだァ‼︎」
男の意地がベートの限界を超えてレヴィスに食らい付いて行った。
ぶつかりあう大剣と白銀のメタルブーツ。ブーツに亀裂が走る。骨が圧砕した。
*
レフィーヤの詠唱が完了した。
「【焼き尽くせ、スルトの剣……我が名はアールヴ】!」
だが、放つか一瞬迷う。ブラムはモンスターの群れの中央、撃てば完全に巻き込んでしまう。
それを見越してか、ブラムから大声が飛んで来た。
「早く撃て‼︎」
「ッ‼︎」
「生き返るから、早く‼︎」
ギリッと奥歯を噛み締め、レフィーヤは魔法名を叫んだ。
「【レア・ラーヴァテイン】‼︎」
魔法円から召喚された巨炎が射出される。放物状に炎の極柱が飛び、ブラム諸共モンスターをすべて焼き尽くした。
*
「………はっ」
それを見て、ベートの口がつり上がる。殲滅されたモンスター。
「るォおおおおおおおおおおッッ‼︎」
白銀の蹴撃が、紅の大剣を跳ね返した。
「なっ⁉︎」
逆転の一撃。ベートは真後ろに吹き飛ばされ、レヴィスは上半身ごと後ろに仰け反った。
その直後、アイズがレヴィスに向かって突貫した。
「【目覚めよ】‼︎」
風をまとったアイズの一撃が、大剣を切断した。
さらに、レヴィスの胸部中心に剣を突き刺し、斬りあげた。
血飛沫が舞う中、さらにトドメに、風をまとった剣を振り下ろした。それを両腕を交差してレヴィスはギリギリガード。後方に大きく吹き飛ばされた。
「はぁ、はっ……」
息を切らすアイズ。
レヴィスがゆらりと立ち上がった。出血してる全身から魔力の粒子を立ち上がらせ、傷の治療を始めた。
「……今のお前には勝てないようだな」
淡々とそういうと、レヴィスは背後の石英を見上げる。
「この大主柱は食料庫の中枢だ、これが壊れるとどうなるか……知っているか?」
「っ⁉︎」
察したアイズは止めようとした。しかし、遅かった。
横殴りの一撃が大主柱に叩き込まれる。全体に亀裂が走り、甲高い破砕音が響いた。
「逃げなければ埋まるぞ?特に、助けが必要なお前の仲間はな」
満身創痍のアスフィ達に、魔法の行使で倒れこんでるレフィーヤ、足が砕けたベート、もはや目に見えないブラム。
アイズは唇を噛みしめた。他の冒険者たちも撤退行動に移ろうとしていた。
「怪我人には手を!荷物は捨て置きなさい、脱出が最優先です!」
「情けねぇ犬人とは違うんだ、助けなんかいるか!」
「あーっ、面倒くさい!これだから狼人は嫌なんだ!」
「ウィリディス⁉︎」
「だい、じょうぶ……」
全員でその場から離れ出す。アイズも全員を助けようとした。
「『アリア』、59階層へ行け」
背中に言葉を投げられた。
「ちょうど面白いことになっている。お前の知りたいものがわかるぞ」
「……どういう、意味ですか?」
「薄々勘付いているだろう?お前の話が本当だとしても、体に流れる血が教えているはずだ」
「………」
「お前自らいけば、手間も省ける」
「おい、【剣姫】!」
「アイズ、急げ!」
仲間達に声をかけられ、アイズは急いで退避した。