ロキファミリアの囮役   作:杉山杉崎杉田

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最強のオーラ

オラリオの喫茶店的な場所。そこで、ベルとブラムはお茶を飲んでいた。

 

「へぇ、じゃあアイズさんに相手してもらってるんだ」

 

「うん。この後も特訓なんだ。あと30分後くらいに。でも、アイズさんって本当にすごいね。あんな剣速、普通出せないよ」

 

「まぁね。直で見て来たから分かるけど、ガチで化け物だよアレ。怪獣レベルで」

 

「ははは、言い過ぎだよ」

 

「本当に。あれマジとんでもない。土星エンジンレベル」

 

「土星エンジン?」

 

「何でもない。でも、それだけあって怒ると怖いんだよね」

 

「へ?アイズさんって、怒ることあるの?」

 

「あれいつくらい前だったかな。一年ほど前?勝手に、というかわざとじゃなかったんだけど、アイズさんのジャガ丸くん勝手に食べたら、恐怖の無表情で特訓してあげるとか急に言われて一方的に……」

 

「あっ、ブラム……」

 

「ん?どしての?」

 

「う、後ろ………」

 

「へっ?」

 

後ろを見ると、アイズが立っていた。恐怖の無表情で。

 

「」

 

「ブラム、今日はベルと一緒に鍛えてあげる」

 

「へっ?いやっ、僕は別にっ……」

 

「来なさい」

 

「…………はい」

 

地獄を見た。

 

 

訓練のあと、何故か付いてきたヘスティアがベルに声をかけた。

 

「お疲れ様、ベル君!いやぁー、気持ちがいいくらいにボコボコにされていたね!」

 

「あ、あの、神様……あれでも僕、結構頑張っていたんですけど……」

 

「実に血も涙もない攻撃っぷりだった!これはヴァレン何某君は君のことをなんとも思っちゃいないね、うんっ!決まりだよ決まり!」

 

へスティアがベルの背中をバシバシと叩く。そんな事をしながら、帰宅のために四人で街中を歩いていた。

すると、ブラムの耳がピクッと動いた。

………何か、いる。近くに誰かがいる。それはアイズも気が付いたようで、通りの一角を見据え、足を止めた。

 

「っ!」

 

「うわ⁉︎」

 

立ち止まったアイズの動きを咄嗟にベルが倣い、一人何も感づいていなかったヘスティアは二人の急停止に驚きの声を上げた。

 

「………5、いや6人か……」

 

ブラムがあたりの匂いを嗅ぎながら呟いた。

すると、猫人の男が前方に現れた。ブラムは背中の剣を2本とも抜いた。

 

「ぶ、ブラム……?」

 

「ベル、退がってて」

 

直後、トンッ、と。

猫人は石畳を蹴って、ベルに斬りかかった。

その前に立ちふさがるブラム。胸に剣が貫通した。

 

「はっ………⁉︎」

 

「ブラム‼︎」

 

ベルが叫んだ。だが、ブラムは何食わぬ顔で口を開いた。

 

「痛いよ」

 

手に持った剣で、自分を突き刺した猫人に剣を振るう。

それを後ろに回避した。

 

「バカな……【逃足】ごときが俺の攻撃を耐えただと?」

 

「耐えてないよ。一回死んだ」

 

「⁉︎」

 

いつの間にか自分の後ろに回り込まれていた。

剣を振られ、それをいなす猫人。そして、ブラムの首を狙って剣を振った。

 

「『跳躍』」

 

その剣を、ブラムの前に出てきた透明のジャンプ台が弾いた。斬った強さをそのまま返され、後ろに大きく怯む猫人。その隙を逃さずに反撃しようとした。

だが、そのブラムに別の敵が襲い掛かる。振り下ろされた斧は、ブラムを真っ二つに両断した。

 

「何やってんだお前」

 

「すまん、助かった」

 

「何が?」

 

ブラムの声に、二人は大きくギョッとした。確かに今、真っ二つにしたはず。

相手の能力が得体の知れない以上、下手に手を出すのは危険だと判断した二人は、大きく飛び退いた。

 

「逃すと思った?」

 

それを、ブラムが許さない。高速で足を動かし、建物と『跳躍』を駆使して跳ね回る。

 

「目で追えないだと……?」

 

「奴は、本当にLv.4か?」

 

その速度を生かしたまま襲い掛かるブラム。そこに加わる三人の小人族、さらにアイズも参戦した。

 

「お、おいおいおいっ⁉︎」

 

ヘスティアが慌てたように声を上げた。

前後から容赦なく襲いかかって来る襲撃者を相手に、アイズとブラムは応戦した。

第一級冒険者の戦闘に、アイズはともかくブラムがついてこれているのは、ベルやヘスティアだけではなく、アイズも少し意外だった。

 

(『攻撃対象』が作用しないとここまで戦えるんだ……)

 

だが、様子がおかしい。格上相手に焦っている様子はなく、むしろ嬉々として戦っているように見えた。

すると、戦闘中に向こうの小人族が口を開いた。

 

「警告だ、【剣姫】。今後、一切余計な真似をするな」

 

「……それは、どういう……!」

 

「『遠征』だろうがなんだろうが構わねえ、迷宮にこもってろっつってんだよ、人形女」

 

「それはこちらの台詞だ」

 

中村悠一のような声でそう言ったのはブラムだった。

敵だけでなく、アイズやベルまでもが「誰だこいつ」って顔になった。

 

「貴様らは私のテリトリーに踏み込んだ」

 

(((わ、私?)))

 

「貴様らは迷宮にこもって永遠に冒険者ごっこを続けていれば良いものを……!ここから貴様らが生きて帰れると思うなよ‼︎」

 

(((お前が冒険者ごっことか言うな)))

 

「はっ、何かと思えば【逃足】ごときが我々を殺すつもりでいると?」

 

「【逃足】、か……。その二つ名も随分と安易に付けられたものだな」

 

(((神々につけられた二つ名を「安易」とか言ってるし)))

 

「なんだと?」

 

「私はこれまで、戦闘を行って来なかったゆえの二つ名だ。私が戦いを始めれば、別の顔が出てくることになるであろう」

 

(((別の顔ってなんだよ)))

 

直後、ブラムの姿が消えた。そして、いつの間にか猫人の目の前で突きを放っていた。

 

「⁉︎ は、速い……⁉︎」

 

「後ろだ!」

 

小人族に声を掛けられ、振り向きざまに剣を振るった。

その剣を避けるブラムの姿があった。だが、自分の眼の前にもブラムはいたはずだ。

 

「…………はっ?」

 

「これぞ、私の数値化出来ない程の敏捷のみが可能とする奥義『俊速分身』‼︎」

 

「「「す、スゲェ‼︎」」」

 

ツッコムことを忘れて、ベルもヘスティアもアイズも子供みたいな感想を口にした。

 

「フハハハハ!無数の私の前に朽ち果てるがいい!」

 

「チィッ……!おい、撤退するぞ」

 

「逃げるんすか?」

 

「【剣姫】に警告はした。俺たちの仕事は終わりだ」

 

「分かりました」

 

すると、猫人と小人族の六人はその場から消えていった。

緊張感が途切れ、アイズもベルもヘスティアも大きく息を吐いた。

そして、ブラムの方を見た。

 

「ほへ〜……き、緊張したぁ……」

 

「「「嘘つけ‼︎」」」

 

三人のツッコミが炸裂した。

 

 

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