遠征の帰り道。17階層。
「まだまぁ行けたのに〜暴れ足んないよ〜!」
「しつこいわよあんた、いい加減にしなさい」
ティオナがティオネにツッコまれた。
「団長がもう何度も説明したでしょ?あのモンスターにやられて、物資が心もとないって」
「食べ物は迷宮で調達すれば何とか持ったじゃん……」
「武器や道具はどうにもならないでしょう。それに、ブラムもそのザマだし」
ブラムはティオナの背中で寝息を立てている。
「ぶー!そもそもなんであたしが背負わなきゃいけないのさー!」
「決まってんだろ。喜ぶからだ」
ベートがニヤニヤしながら言った。
「ベートに聞いてないし!」
なんてやりながら歩いてると、一同の後ろにミノタウロスが数体現れた。
「ほら、ベートがうるさいからミノタウロスが来ちゃったじゃん!」
「関係ねえだろっ。ちっ、バカみてえに群れやがって……」
「リヴェリア、これだけいるし、私達もやっちゃっていい?」
「ああ、構わん。ラウル、フィンの言いつけだ、後学のためにお前が指揮を取れ」
「は、はい!」
で、バトル開始。と思ったら、ミノタウロスの全員がティオナに襲い掛かる。
「え?な、なんで?なんでぇええええ⁉︎」
背中にブラムがいる為、戦えないティオナは逃げ出した。
「おいバカ女!そっちは上層だぞ!」
「ち、ちょっとぉおおおお!」
「追え、お前達!」
リヴェリアの声で全員が追った。
「……そうか、ブラムを背負ってるからか」
「納得してる場合かババァ!」
ティオナブラムを追い掛けるミノタウロスを倒す一同。だが、何匹かは全員を抜けていった。
「遠征の帰りだって言うのに……!」
「あの、私っ、白兵戦は苦手で……!」
「杖で殴り殺せんだろ!」
「は、はいぃ……!」
一方、ティオナとブラム。
「な、なんであたしが逃げなくちゃいけないのぉ!」
「ZZZ……」
「こんのっ……!人が酷い目にあってるってのに……!でも、ブラムの気持ちが少し分かった気がする……!」
ボヤきながら走る。1階層、また1階層と逃げて行く。
「な、なんでこんな時に限って階段ばかり出てくるのぉ〜⁉︎」
改めて、囮役のブラムのすごさを思うティオナだった。そして、5階層。気が付けば、後ろにミノタウロスの姿が無いことに気付いた。
「ありっ?」
そして、背中のブラムがいなくなってることに気付いた。
「……落としちゃった」
*
5階層の別の場所。未だ目を覚まさないブラムにミノタウロスが鼻をスンスンさせる。そして、あ〜……っと口を開きかけた時だ。
「うああああっ!」
白い髪の少年がミノタウロスに斬りかかった。
『ヴヴォオオオオオオオオッッ‼︎』
だが、咆哮だけで弾かれ、壁に叩き付けられた。
「う、うああっ……」
背中を強打して、起き上がれなくなる白髪の少年。そして、ミノタウロスが再びブラムに口を近づけた時だ。スンッとミノタウロスの身体に光が入った。
「え?」
『ヴォ?』
少年とミノタウロスの間抜けな声が出た。その瞬間、ミノタウロスの身体からブバッと血が噴き出た。そして、アイズは少年の方を見た。
「大丈夫ですか……?」
だが、返事はない。
「あの……大丈夫、ですか?」
もう一度聞いた。困り果てたアイズはとりあえず手を伸ばそうとした。その時だ。
「だっ……」
「だ?」
「だぁああああああああああああああ⁉︎」
全速力で逃げ出した。ぽかんとするアイズ。
「……っ、……っっ、……くくっ!」
後ろを見ると、ベートが必死に笑いを堪えていた。アイズは不満そうな顔でベートを睨んだ。すると、さらに別の所からティオナが来た。
「おーい、今こっちから男の子がすごい勢いで走って行ったのが見えたんだけど……」
「ティオナ、正座」
「えっ?」
アイズが真面目な顔で言った。
「正座」
「や、ここダンジョン……」
「正座」
「でも、ブラムが……」
「せ、い、ざ」
「……はいっ」
この後、メチャクチャ怒られた。
*
で、ダンジョンを突破し、ロキファミリアは帰還した。
「ん〜〜‼︎二週間ぶりの外の空気!」
ティオナが伸びをしながら言った。
「……今にして思えば、今回僕走ってしかなかったような……」
「いつものことだろう?」
フィンが言った。
「あー!開き直ったな!僕だって少しは戦いたいのに!」
「まぁまぁ、いいから戻ろう。僕達のファミリアに」
フィンが言うと、ブラムは文句あり気に黙った。で、ファミリアに到着。した瞬間、
「おっかえりぃいいいいいいいいいっ!」
ロキが飛びついて来た。それをアイズ、ティオナ、ティオネと躱し、最後尾のレフィーヤがとばっちりに合った。
「ロキ、今回の遠征での犠牲者は無しだ。到達階層も増やせなかったけどね。詳細は追って報告させてもらうよ」
「んんぅー……了解や。おかえりぃ、フィン」
「ああ。ただいま、ロキ」
で、レフィーヤの身体をしばらく堪能してると、ハッ!としてロキは立ち上がった。
「ブラムは、ブラムはどこやー!」
ギクッとしてリヴェリアの後ろに隠れるブラム。だが、リヴェリアはすぐに退いてしまった。
「ええっ⁉︎リヴェリアさ……」
「見っけぇええええ!」
ガバッと抱き締める。その間にレフィーヤは脱出し、他の団員たちも自分達のやる事をする。
「ロキファミリア唯一のショタ枠!フィンはアラフォーやしモノホンやぁー!」
「やめてくださいっつーの!ていうか、僕15歳だからショタって歳じゃ……」
「身長155くらいしかないガキが何を言っとるんやー!それで獣人なんて反則やろー!」
「ひ、ひゃあぁあっ!」
ギューっと抱き締められ撫でられ喉元ゴロゴロされ尻尾を握られた後、もう一度抱きつかれた。顔を真っ赤にして抵抗しようとすると、耳元で囁かれた。
「……また、ずいぶんと身体傷んでんなぁ」
「っ」
「まぁスキルだの囮役だの色々と理由はあるんやろうけど、無理はあかんよ?」
「………はい」
無理をしてるつもりはなかった。ただ、みんなの為になるならという思いで行動してきたつもりだった。
「ま、そんだけや」
言われて、ブラムは解放された。
「あっ、今日中にステイタス更新しけりゃ、夕飯後うちの部屋まで来てなー。今晩は先着十人やで」
「……はい」
返事をして、自室に向かった。
*
夕食後、ブラムはロキの部屋に向かった。コンコンとノックする。
「どうぞ〜」
「し、失礼しまぁす……」
遠慮気味にブラムは言いながら部屋に入った。
「ほぉう、今日はアイズたんじゃなくてブラムが一番乗りか。まぁええやろ。おいでおいで」
言われて、ブラムは服を脱いで背中を出すと、ロキに向けた。
「さて、じゃあ更新するで」
背中をついっついっと弄られる。そのロキの手が止まった。
「ど、どうかしたんですか?」
「い、いや……なんでもないわ」
が、ロキは思わず冷や汗を掻いていた。
(力G238、耐久H112、器用E432、魔力G221……ここまではええのに、)
唾を飲んでその先を続けた。
(なんや、敏捷SS1047って……)
もはや、呆れることしかできなかった。
(確かに仕方あらへんとは思うんやが……この子の敏捷はまだ上がる言うんか)
果たしてこれを伝えていいものなのか。少し悩むロキだった。
「神様〜どうですか〜?」
「あ、ああ。すまん。まぁいつも通りや」
「そうですかぁ……。敏捷とかもうSいってても良いと思うんですけどねぇ……」
(Sどころじゃないんだなそれが)
「はぁ……早くランクアップしたいなぁ」
「無理や。敏捷はLv5以上でも、他のステイタスが低過ぎや。たまにはちゃんと戦った方がええなぁ」
「そんな事言われましても……スキルの所為で……」
「まぁ、スキルが影響しとるのは否定せんけどな。それでも強くなるには多対一もこなせなきゃあかんよ」
「は、はい……」
「今度、フィン辺りに色々教えて貰えばええんやない?」
「うーん……そうですね。分かりました。有り難うございます」
言いながらブラムは立ち上がった。
「では、失礼します」
「んっ、今度はええことしような〜」
「あ、あははっ……」
引き気味に出て行った。
「………あっ、ステイタス伝えるの忘れてたわ」
忘れてた。