数日後、ブラムはファミリアの隅で体育座りしていた。
「打ち上げ……出たかった……」
行った時には終わってた。ガランとした店の中であの店の店員に慰められてたのを思い出すと、思わず泣きそうになる。
「はぁ……」
ため息をつきながら歩き出した。
「……いいもん。こうなったら一人でやけ食いしてやる……」
ボソボソボヤきながら歩いてると、リヴェリアとすれ違った。
「あっ、おはようございます。リヴェリアさん」
「ブラム。おはよう。一昨日はどうしていなかったんだ?」
「行った頃には終わってたんですよ……」
「フムッ……聞きたいことはあるが、ちょうどいいところに来た。中庭にアイズがいる」
「へっ?め、珍しいですね。いつもならこの時間、モンスターに恨みがあるのかってレベルで狩りしてるのに……」
「声をかけてやれ」
「へっ?」
「ほら、行け」
「ええっ⁉︎なんでいきなり……」
「いいから行け」
「は、はぁ…」
とりあえず返事をしてブラムは中庭に向かった。そこには、本当にアイズがポツンと座っていた。何も知らないブラムから見ても、元気がないように見える。
「どうしたんだろ……」
気になって中庭に降りた。
「ヴァレンシュタインさん。おはようございます」
「………ブラム。おはよう」
「どうしたんですか?こんな所で……」
「ちょっと、ね……。でも、大丈夫だよ」
「大丈夫の人の顔じゃないですよ。大蛇丸の手元に落ちたサスケみたいな目してますよ」
「………そう?」
ボケてみたものの、ツッコミは来ない。これは重症だとブラムは思うと、思考を変えた。
「ヴァレンシュタインさん、喧嘩しましょう!」
「………はっ?」
「ストレス溜まってる時は発散しなきゃダメですよ!ほら掛かってきやがれ金髪!」
「どぉーん!」
後ろからティオナがブラムに飛び蹴りした。その後ろからレフィーヤとティオネが歩いてくる。
「て、ティオナさん⁉︎何するんですか!」
「何物騒なこと言ってるの?それに、ブラムとアイズじゃ喧嘩にならないでしょう」
ティオナから鋭く言われ、項垂れるブラム。
「そんな事よりアイズ、買い物行こう!」
*
で、年の最北端にあるホームから近い北のメインストリート。商店街みたいな感じで活気付いている。
「ったく、強引に連れ出して……」
「いーじゃん、たまにはさ!パーっと気晴らしに買い物行きたいってティオネだって前に言ってたでしょ!」
「あの、ティオナさん、それで何を買うんですか?」
「服、服買いに行こう!」
「ま、待ってください!僕もですかぁ⁉︎」
「いーのいーの!暇でしょ?」
「そういう問題じゃないですよ!」
「じゃあ……私と買い物したくない?」
「うっ……そ、それは……超したいです、けど……」
「じゃあ決定!」
「………はぁ」
で、五人はさっそく店を見つけた。
「あたしとティオネがよく行く店が、ここ!」
「えっ、ここって……」
レフィーヤが引き気味に呟いた。アマゾネスの服飾店だ。レフィーヤもアイズも頬が若干赤く染まってるし、ブラムに至ってはすでに真っ赤だ。
「久しぶりねー、私もちょっと羽目を外しちゃおうかしら」
「アイズ、行こう!」
「え、あの……」
ティオナのティオネに挟まれてアイズが連行される中、レフィーヤも慌てて後を追った。当然、ブラムは入るわけにはいかず、店の前で立ち尽くすだけだった。
「……帰っていいかなぁ、僕」
「何やってんのー!ブラムー!」
店の中から一旦、外に出てきたティオナが手を振っていた。
「ええっ⁉︎ぼ、僕もですかぁ⁉︎」
「当たり前てしょー。何を今更」
「む、無理です!僕、男ですよ⁉︎」
「かんけいなーい。早く来なさい」
言いながらブラムの手をティオナは掴んだ。
「や、やだよ!……って、力強ッ!」
「あんたとあたしじゃ、力比べにならないっての!無駄な抵抗はやめてお姉ちゃんの言うこと聞きなさい!」
「誰がお姉ちゃん⁉︎」
無理矢理、引き摺られた。
*
店内はやはりというかなんというか、乳首と股間と肛門を隠せればあとは何でもいいと思っているような服で溢れていた。それを見た瞬間、やはりノコノコついてきてしまったことに後悔したブラムとレフィーヤだが、そんなの構わずにティオネが、もはや服であるのかすら分からない布を持ってきた。
「アイズ、これ着てみない?貴方、体の線が細いから、きっとよく似合うわよ」
「なっ、なんでアイズさんがここの服を着ることになってるんですか⁉︎」
「別にいいじゃない、せっかくなんだし。レフィーヤもどう?」
「き、着ません!」
レフィーヤが全力で首を横に振る。アイズも視線をどこかに泳がせていた。
周りに変な目で見られてないか不安なブラムは、なるべく目立たないようにしていたのだが、それを悪意ゼロで、いや悪意はあるんだろうけどブチ壊すのがティオナだ。
「ブラム、これなんてどう?あたしとお揃い〜」
ティオナが自分と同じ服を持って来た。お揃い→ペアルックと一瞬迷ったが、速攻で理性がそれを打ち払う。
「……いやいやいや!無理無理無理無理!まずなんで僕の服選んでるんですか!しかもそれ、女性用でしょう⁉︎」
「性別なんて関係無くない?」
「あるよ!」
その様子を見ながらティオネは呟いた。
「………団長に着せるのもアリかもしれないわね」
*
「っくしゅん!」
「フィン、風邪か?」
「いや、大丈夫だよリヴェリア。ちょっと悪寒がね……」
「?」
*
「とにかく、こんな淫らな服をアイズさんに着させるなんて、私が許しません!」
「でもこんな服を着たアイズも見てみたくない?」
「……………」
ティオネに言われて、頭の中でティオナとお揃いの服を着たアイズが思い浮かんだ。が、
「レフィーヤ?」
「んひゃあぁあああ⁉︎」
ティオネが現実に引き戻した。
「考えてたでしょ?」
「ありえません!」
「おーい、見て見てー!」
またまたティオナがやって来た。今度は試着して来たようだ。
「この店の変わり種、似合う?」
いわゆる、チャイナドレスという奴だ。だが、レフィーヤはティオナの腰のあたりをジーッと見た後、疑わしい目線で聞いた。
「……あの、履いてます?」
「見えるのはマズイかな〜って思って」
「もっとダメですよ‼︎」
レフィーヤのツッコミも虚しく、ティオナはブラムの目の前に行った。
「どう?似合う〜?」
「………………」
「? ブラム?」
その瞬間、ブバッと鼻血を噴き出してブラムは倒れた。
「ちょっ……ブラム⁉︎」
「うーわ……ヤバッ」
「レフィーヤ、ティッシュある?」
「あっ、はい!」
とりあえず、急いでティオナは着替えさせられた。
*
で、今度はヒューマンのお店。
「「「おおおー!」」」
ティオナとレフィーヤが見繕った服をアイズが試着し、ティオナ、ティオネ、レフィーヤが感嘆の声を上げる。
「似合ってます、アイズさん!」
「うんうん、すごくいい!ロキがいたら飛びついて来そう!」
「肌は綺麗だし引っ込んでるところは引っ込んでるし……うらやましわね本当」
と、黄色い声が飛び交う中、アイズは鼻にティッシュを詰めたブラムを見た。
「とても良くお似合いですよ」
言われて、アイズも若干嬉しそうな顔をする。
「アイズ、これにしよう!」
「う、うん……」
「結局、ヒューマンのお店で買っちゃいましたね」
「まぁ、無難だしね。こだわりがなかったら普通にここでしょ」
ここに来る前に色んな店を回っていた。特にブラムが普段買う店がレディース店だと分かった時は、壁に頭を打ち付けるブラムを止めるのが大変だった。
「お金は……」
「僕が払いますよ」
アイズの台詞をブラムが遮った。
「えっ、でも……」
「いいからいいから。こういう時に男っていうのは使うものですよ」
「……自分で言うの?マゾ?」
「ち、違いますよティオネさん!」
逃げるように服を持ってレジへ向かった。で、買って来るとティオナが言った。
「そろそろお昼にしない?あたし、お腹空いちゃった」
「少し早いような気もするけど、そうしましようか。レフィーヤ、何かお店知ってる?」
「えっと、確か、この先にカフェがあったような……」
「僕、ラーメンが食べたいです」
「「「却下」」」
「なんで⁉︎」
なんてやってると、前からロリ巨乳の女の子がティオナにぶつかった。
「わっ⁉︎」
「おっと、ごめんよ、アマゾネスくん!すまない、急いでいるんだ!」
その女の子はそそくさと先へ行ってしまう。
「今の可愛い女の子、女神様ですよね?」
「そうみたいね。何だか慌ただしいけど……どうしたのティオナ?」
「胸がすごい大きかった……あの身長で」
「…………」
声を暗くするティオナを呆れ気味に全員で見やってると、声が聞こえてきた。
「頼むよ、この服を仕立て直してくれ!確かにここで買ったんだ!」
「し、しかし女神様、当店ではそういった奉仕は扱ってはなく……」
「ケチくさいこと言わないでくれよ!今日は宴があるんだ、ほつれてるところだけを直してくれれば、みっともなく無くなればそれで構わないからさ!」
その会話を聞いて、ティオネが「ああ」と声を漏らした。
「そういえばロキが言ってたわね、神の宴が近いうちにあるって。自分は行かないようなことも言ってたけど」
「ふぅーん……」
「あれっ?ブラムくんは?」
気が付けば、ブラムの姿がない。すると、さっきの会話から聞き覚えのある声が加わった。
「あの、良ければ僕が直しましょうか?」
「本当かい逃足くん!でも、できるのかい?」
「ほつれを直すくらいなら……。直さないと、その……困るんですよね?」
「ああ、是非頼むよ!」
それを聞いて、ティオナもティオネもため息をついた。
「……直せるの?あいつ」
「さぁ……」
「本当に女子力高いですね……」
なんて話しながら待つこと数分、
「出来ましたけど、これでいいですか?」
「おお!完璧だよ、ありがとう逃足くん!」
「あの、その呼び方やめてください」
「このお礼はいつかするから!じゃあまた!」
店から走って出て行くロリ巨乳と、その後に出てくるブラム。
「もう、急にいなくならないでよー」
「す、すみません。困ってたみたいなので……」
「罰としてお昼全員分奢りだからねー」
「ええっ⁉︎そ、そんなお金ないですよ!」
で、カフェを見つけて丸テーブルに座った。
「ねぇ、この後はメインストリート行こうよ!」
「繁華街ね……私はいいけど」
「私も大丈夫です」
「アイズも行こう!夜にならなくてもあっちはすごい賑やかで、楽しいよ!」
ティオナがアイズに微笑んだが、返事はない。
「アイズ?」
「ごめん、ティオナ……」
「…………」
自分が落ち込んでいるのを気遣ってくれている、と察したアイズは思わず謝った。それにティオネもレフィーヤも思わず黙り込む。そのアイズにブラムが言った。
「謝るところじゃないですよ、ヴァレンシュタインさん」
言いながらブラムは無茶苦茶甘ったるい抹茶オレを啜る。
「そうだぞアイズ。ブラムだって、謝って欲しくてあたしを差し置いてアイズにプレゼントしたわけじゃないんだよ?」
「さ、差し置いてって……」
ティオナの台詞にブラムは困ったように笑みを浮かべた。すると、アイズは微笑んで言った。
「……ありがとう、ティオナ、ブラム」
その瞬間、ティオナはガバッとアイズに抱き付いた。
「ティ、ティオナさんっ、抱き着く必要はないんじゃあ……」
「あ、なにレフィーヤ、羨ましいの?」
「ち、違うっ……!」
「でもダメー。アイズの隣はあたしの特等席だから!」
「………⁉︎」
「ふふ、素直になった方がいいんじゃない、レフィーヤ?」
アイズの肩に両手を回して、レフィーヤに見せつけるようにアイズと頬を触れ合わせる。くすぐったそうに片目を閉じるも、アイズは抵抗しなかった。レフィーヤが動揺し、ティオネは面白そうにみまもり、ブラムは見ていていいのか分からず、とりあえず俯いて誤魔化した。